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2006年6月25日 (日)

もはや全国区ではない巨人戦放映権でパ・リーグ各球団は潤うのか?

マリーンズのV2で幕を閉じた二年目の日本生命セ・パ交流戦。球界改革の一環として、野球ファンに目新しい対戦カードを提供する名目の元にスタートしたが、本音ではパ・リーグ各球団がかつては1試合放映権料1億円といわれた対ジャイアンツ戦に代表されるセ・リーグの人気チーム相手との主催試合を分けてもらい、球界内部で所得の再分配を行ってセ・リーグとパ・リーグの間の人気の格差を少しでも埋めようという方策であるのは実は多くの野球ファンの間では周知の事実なのである。

そして一方、パ・リーグにとっての頼みの綱であるジャイアンツは人気の凋落ぶりが露呈し、テレビ視聴率は年々低下。原辰徳監督の元、近年にない好スタートを切った今年の4月、5月でさえ、堀内恒夫監督の元、最悪のスタートを切った前年に対しても視聴率が下がっているのだ。パ・リーグ各球団はそんなジャイアンツに頼っていて大丈夫なのか?敗戦処理。なりに考えてみた。

まずほとんどの方には釈迦に説法であることを承知の上で、現行の日本プロ野球界における興行収入の配分方法を説明しておきます。基本的に観客のチケット代による収入は全て主催球団の収入となり、ビジターチームには一銭も入らない。テレビ等の放映権料も同様だ。これにより、リーグに全国規模の人気球団が一つ存在すれば、それ以外の球団もその球団を相手に主催試合を行うことにより、たとえ客席の八割以上がビジターのファンで埋まって選手がやりにくくなろうとも、興行収入を考えれば万々歳なのである。

まず昨年の交流戦の観客動員の実績を振り返ってみると、パ・リーグの全ての球団はジャイアンツ相手の主催三試合の平均観客動員数が、パ・リーグ同士での公式戦の一試合あたりの平均観客動員を上回っている。(条件を極力等しくするため、キャパシティの異なる地方球場での開催を除いた平均を出しています。以下同じ。)最大がファイターズ。対ジャイアンツ主催試合の平均動員31,590人はファイターズの昨年一年間のパ・リーグ相手の札幌ドームでの主催試合の平均動員数20,498人に対し54.1%増である。最少のホークスでも、対ジャイアンツ戦平均33,890人はパ・リーグ同士の31,254人に対し、8.4%増。パ・リーグ全体では35.5%増となった。もちろん、目新しさに満ちて、年に三回しかない試合と、半年間ほぼ日常的に繰り返されている試合の平均を比較するのはフェアでないということは承知している。ところがこれをジャイアンツ戦以外のカードの交流戦と、パ・リーグ同士の対戦で比較するとジャイアンツ戦の際立ちぶりがクローズアップされる。ジャイアンツを除くセの5球団との計15試合(ファイターズはスワローズ戦1試合を札幌円山で開催しているため14試合)の1試合平均動員は、実はパ・リーグ同士の対戦での平均動員より少ない。リーグ全体では1.3%減となってしまう。ジャイアンツ戦以外のカードの平均動員の方が、同一リーグの対戦での平均動員より多いのはライオンズの12.0%増、バファローズの4.3%増のみで他4球団はジャイアンツ以外のセ・リーグ球団との対戦にありがたみを得られなかったことになる。しかし6カードトータルの平均で見ると、交流戦のパ・リーグ主催試合の平均動員21,239人はパ・リーグ同士の公式戦での20,245人より4.9%増だったのだ。

長くなったので要約すると、昨年の第1回の交流戦では対ジャイアンツ戦以外はパ・リーグ主催球団にとって観客動員では劇的にメリットをもたらしているとは言い難いのではないかということである。

↓詳しくはコチラ↓

「interleague2005douin.xls」をダウンロード

では今年はどうだったか。当然ながらまだ同一リーグ同士の対戦は大半が未消化なので、交流戦に限定して調べてみる。パ・リーグ各球団は今年の交流戦において対ジャイアンツ戦の動員を昨年より増やしたのか?減らしたのか?

1カードしかないため、対ジャイアンツ戦主催試合が火曜~木曜に組まれるか、金曜~日曜に組まれるかで条件が異なるといえる。昨年と同条件なのは共に週末に組まれたライオンズとゴールデンイーグルス、共に平日に組まれたホークスとファイターズ。この四球団で対ジャイアンツ主催試合の1試合平均動員が昨年より上回っているのはファイターズの9.6%増とゴールデンイーグルスの9.5%増。逆に下回ったのはホークスの1.3%減と、ライオンズの12.3%減。球団によって前売り券の発売開始時期は異なるだろうが、4月にジャイアンツが好スタートを切ったことを考えると、前売り開始時期にはジャイアンツは好調だったと推測されるだけにファンのジャイアンツ離れは深刻と観ることも出来てしまう。

ちなみに開催曜日にこだわらず、パ・リーグ全体での対ジャイアンツ戦主催試合の平均動員は26,969人で、昨年の27,072人に比べ、0.4%の微減である。

なおジャイアンツに代わる、オイシイ興行相手として注目されるタイガースを相手とするパ・リーグ各球団の主催試合を同様に調べると、パ・リーグ全体での対タイガース戦主催試合の平均動員はジャイアンツ戦を上回る29,007人!昨年はジャイアンツ戦より約2割も少ない22,570人だったので大逆転だが、こちらは28.5%増。ちなみに今年の交流戦における、この両球団を相手にした主催試合に占める土日開催は同数の六試合。以前に書き込んだ「真の観客動員力がある球団はどこか?」 に

次いで敗戦処理。流の調査ではまたしてもタイガースがジャイアンツを動員力の面で凌駕しているという結果に至った。

↓詳しくはコチラ↓

「interleague2005-2006douinhikaku.xls」をダウンロード

観客動員と並ぶ興行収入の柱となる、テレビ放映権に関してはどうか。敗戦処理。が生活する東京ではいまだにジャイアンツ戦(ホーム、ビジターを問わず)中心の放映であり、変わったのは局によっては放送延長時間が短くなったことくらいか。そこで、今年の交流戦期間に地上波のテレビ局はどんなカードを放送したのか調べてみた。昨今はBS放送、CS放送でほとんどすべてのプロ野球の試合が中継されているが、いかんせん、まだまだ大半の野球ファンがBS放送、CS放送という放送形態での視聴習慣をとっていないという話もあり、野球ファンのみならず圧倒多数の国民が接することの出来る地上波で調べてみた。対象はプロ野球チームの本拠地がある地域-北海道、宮城、東京(神奈川、埼玉、千葉を含む)、愛知、兵庫(大阪含む)、広島、福岡と、逆にプロ野球チームを持たない地域の代表として新潟、長野、愛媛をピックアップした。

まずジャイアンツのお膝元東京で、ジャイアンツ戦が地上波で放送されなかったのが5/11のバファローズ対ジャイアンツ戦、5/12のライオンズ対ジャイアンツ戦、5/195/21のゴールデンイーグルス戦の四試合もあった。これ自体アンビリーバブルな現象である。特に5/21のゴールデンイーグルス対ジャイアンツ戦は主催球団の地元、宮城でも地上波では放送されていない。今年になってジャイアンツ戦の放映権料は価格が下落したと報道されているが、かつては1試合1億円と推定されていた。これはテレビ局が放映権獲得に対して主催球団に支払う金額であり、テレビ局はその分を回収し、利益を上げるため、試合にCMを流してくれるスポンサーを探す。そしてそれは各テレビ局にとってオイシイ放送ソフト-即ちキラーコンテンツであった。ジャイアンツの人気はジャイアンツが本拠地を置く東京、関東と対戦する主催球団の本拠地だけでなく、全国区であるため、そのテレビ局の全国にある系列局に生中継され、そのスケールメリットを考えれば、トータルで1億円という放映権料は決して高くなかったのである。数年前までは。

しかしもはや、ジャイアンツ戦は全国中継されない。ジャイアンツ主催試合の大半を放送する日本テレビ系列はほとんどの場合、今回調査対象とした地域に関しては全国中継のスタイルをとってはいるが、それでも福岡の系列局がその時間帯にホークスの主催試合を流したり、大阪の系列局がタイガース戦を放送したケースもあった。また6/136/15のジャイアンツ対バファローズ三連戦はすべて日本テレビ系列が放映権を獲得したが、広島県では日本テレビ系列局が三日間ともカープ対ホークス戦を中継している。またセ・リーグ同士のカードでの対ジャイアンツ戦は頻繁に中継しているTBS系列が交流戦期間、ジャイアンツ戦を放送したのは宮城の系列局が5/19のゴールデンイーグルス対ジャイアンツ戦の1試合のみ。しかもこの時同局以外のTBS系列局は東京のTBSを含め(敗戦処理。調査地域では)どこもこの試合を中継していない。ちなみに同地区以外でこの試合をテレビ視聴するためにはBSデジタルで視聴するしかなかったのだが、全国エリアではTBS系ではなく、テレビ朝日系のBS朝日が生放送していた。

結局今年のパ・リーグ球団主催による対ジャイアンツ戦18試合で、敗戦処理。が調査した10地域すべてにジャイアンツ戦が地上波で中継されたのは5/14のライオンズ対ジャイアンツ戦、5/20のゴールデンイーグルス対ジャイアンツ戦、5/30のファイターズ対ジャイアンツ戦、6/10のマリーンズ対ジャイアンツ戦の4試合にしかならない。ちなみにこの4試合はすべてテレビ朝日系列の放送である。

テレビ朝日系列の場合、大阪の朝日放送(ABCテレビ)がタイガース戦を放送しない限り、ほぼ全域にジャイアンツ戦を放送しているようだ。

↓詳しくはコチラ↓

「interleague2006TV.xls」をダウンロード

ジャイアンツは近年、それまで日本テレビ系列に独占中継させていたジャイアンツ戦を一部NHKにも放映権を売り始めたが、昨年からテレビ朝日系列にも一部の試合を売っている。「讀賣vs朝日」の構図を考えると何とも皮肉な現象だが、全国の系列地区で放送されるというメリットを考えているのかもしれない。

今回各地域の放送の実態を調べて驚いたのは、観客動員力ではジャイアンツを凌駕したタイガースもテレビ放送においてはまだまだジャイアンツのような全国展開には至っていないということ。敗戦処理。の調査が全て正確で当を得たものとは言わないが、テレビ各局や、パ・リーグ各球団は「タイガース」をジャイアンツに代わるドル箱ソフト予備軍と見なした方がよいのではないか。企業と企業の長年の付き合いで、おいそれと人気の落ちた球団を見捨てられないジレンマもあるだろう。また視聴率という大テーマがありながらも、野球はスポーツであり、文化であるという認識があっては他のジャンルより長いスパンでの見極めが必要になるなどの様々な理由があるのだろう。簡単には「ジャイアンツ」というソフトを切れないだろうから、それならば「タイガース」を代替としてではなく新規追加と見なして育ててくれればよい。

ただパ・リーグ各球団に言っておきたいのは、ジャイアンツであるにせよ、タイガースであるにせよ、特定の人気球団を目当てにした交流戦の運営ではたかが知れているということ。ファンは常に新しいことを求め、慣れてしまうと飽きる。別発言で提案した分割開催など、次々とファンの興味をそそる新機軸を展開しなければ、所得の再分配どころかセ・パ共倒れにすらなりかねないということだ。

最後に、ジャイアンツ球団は故障者が続出し、お粗末な試合を続けている現在の視聴率低迷を嘆く前に、絶好調だった4月、そして5月の視聴率が前年を下回ったということの原因を徹底追究し、その対策を講じてクリアしなければならない。おそらくこれまでジャイアンツ球団のお偉方は人気凋落、視聴率低迷などのマイナステーゼはチームを強くすることで克服出来ると思っていただろう。もはやそれだけではないということに、もっと早く気付くべきだったのだ。

  • 本発言内で発表した各試合の観客動員数やその平均値、テレビ中継実績などのデータは敗戦処理。が各新聞等を見て調べたものを計算したり編集したものです。校正には充分注意したつもりですが、謝りがありましたらご了承下さい。またお気付きの方はその旨をコメントで指摘して下されば幸いです。

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