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2006年8月16日 (水)

真田裕貴を何故代えた?-これじゃあ若手が出てこない!(2)

15日のジャイアンツ対スワローズ戦は脇谷亮太と鈴木尚広が快速を発揮して走りまくり、先制、中押し、ダメ押しと稀にみる効果的な点の取り方をし、安定感抜群の内海哲也が好投。この日一軍に復帰した守護神豊田清の調整登板まで実現したジャイアンツファンにはたまらない、久々の好ゲームだった。しかし敗戦処理。的にはどうしても一言苦言を呈さずにはいられない。それは八回表の継投である。

ジャイアンツが10対1のリードで迎えた八回表。ジャイアンツは好投の先発内海に代えて二番手に真田裕貴を起用した。内海を敢えて降板させたのは次回登板がおそらく中四日での20日の対ドラゴンズ戦になるからで、疲労を残したくなかったのであろう。意図は理解出来る。ただ二番手で登板した真田の出来が今ひとつだった。

真田は先頭の代打・真中満に四球を与えた。9点リードして迎える先頭打者に四球を出すのはいただけないが、それでも続く青木宣親を打ち取り一死。これで立ち直るかと思ったら次打者アダム・リグスに死球。一死一、二塁としてしまった。いわゆる「一人相撲」状態だ。岩村明憲を打席に迎えるところで尾花高夫投手総合コーチと原辰徳監督が出てきて真田は交代を告げられた。

9点リードの八回表に何をばたばたしているのか、と敗戦処理。もテレビを観ながらいらいらしていたが、点差を考えれば、マウンドを林昌範に託すのではなく、敢えて真田に続投という選択肢はなかったのだろうか?

なにしろ9点差である。岩村に本塁打を浴びてもまだ6点差。リリーフを出すのはそれからでも遅くない。なによりも真田にこの回の落とし前を付けさせるべきではないのか。

おそらくこの回の真田登板の意図はこの1イニングを抑えて九回表は豊田のテスト登板という目論見だったのだろう。もっと緊迫した点差なら林か、久保裕也を回の始めから投入していただろうが、その必要はないから真田だったのだろう。しかし内容があまりにお粗末だったから林を注ぎ込んだ。おそらくはこんな感じだろう。

敗戦処理に言わせれば、そもそも真田の一軍投手陣の中での役割分担が曖昧なのが気にいらない。抑え役は豊田不在の間は高橋尚成が務め、高橋尚につなぐためのセットアッパーに久保と林というのが現状の布陣だが、リリーフ陣に関しては決まっているのはここまでで、真田と、豊田との入れ替わりで二軍に落ちた野間口貴彦の起用法にはどうにも方針が感じられないのである。あえて言えば便利屋扱いされているとしか思えない。

真田と野間口は、先発投手が足りない球団だったら先発要員として使われるだろう。ジャイアンツも決して先発投手が充分なわけではないが、何故か六連戦を五人で回し、誰かが中四日になるようなローテーションを組んでいるため、短い登板間隔で投げる先発投手の負荷を軽くするためにリリーフ陣を豊富にしており、真田と野間口もリリーフ要員に組み込まれていた。

原監督は久保と林に関しては何度か手痛い失敗をしようとも、基本的にセットアッパーの座から外さない。久保を一度二軍に落としたことがあったが、再登録してからは同じ使い方にしている。久保も林も今ひとつ安定感に欠けるが、他にこれといった人員も見あたらないし、ここまで高い授業料を払っているのだから、何とかもう一段階上のレベルになってくれというのはわかる。ならばなぜ、セットアッパー登板までの、いわゆる中継ぎ役に真田や野間口を徹底的に鍛えようと考えないのか。鍛える気があるなら、昨日の八回表は真田と心中するくらいの覚悟を持って欲しかった。

ジャイアンツに限らず、最近の傾向として抑え投手だけでなくセットアッパーまで勝ち試合限定に近い起用法になっている。昨年のタイガースのJFK、マリーンズのYFKにしても、同点、せいぜい1点ビハインドくらいで登板することもあるがほぼ勝ち試合(リードしている場面)限定となっている。するとそれ以外のリリーフ投手は、たしかに便利屋的な起用法にならざるを得ないが、それをきちんとこなすのは簡単なようで難しい。そしてその重要性に原監督以下ジャイアンツの首脳陣は気づいていないのではと疑わざるを得ない。

昨年は今季以上に投手陣崩壊が顕著だったジャイアンツだが、それでも悪いなりに何とか体裁を整えていたのは、ブライアン・シコースキーの存在があったからだ。146試合中70試合に登板して7勝1敗、防御率3.29というこの究極の便利屋をジャイアンツは解雇してしまった。解雇の理由について原監督は自身のHP、HARA Spirit 2005年11月15日付けで次のように語っている。

「シコースキーも解雇しました。非常にタフな投手で、監督として使い勝手がいい投手です。しかし、好不調の波も激しく、僅差でリードしている試合などに投げさせるのは不安もあります。あえてシコースキーが投げるポジションを若手に奪ってもらいたいのです。」

だったらなおさら真田裕貴でしょう!

不甲斐ない登板をしたら制裁のように即刻マウンドから降ろすというのが、必ずしも最適な若手投手の育成法なのでしょうか?試合は育成の場より、勝敗を争っているわけだから、投手が危なっかしかったらすぐに次の投手に代える。これは正しい判断ですが、八回表で9点差という、敢えて真田を続投させて奮起を促すには格好の舞台だったのに、それをしない原監督。

別発言でも触れたが、なかなかファームから新戦力が上がってきそうにない今、一軍にいる未成熟な若手を鍛えるのが最も近道だと思うのに、ワンパターンのようにマウンドから降ろすだけ。起用法、育成法ともにもう少し融通というか、柔軟性に考えないと戦力は育たないだろう。

もっともこの傾向は原監督を始めとする現首脳陣特有のものではなく、ジャイアンツという球団の体質そのものなのかもしれない。

ベースボールフォーラムのジャイアンツ掲示板でしばしば議論を交わすTさんの意見によると、香取義隆、角盈男の時代以降、ジャイアンツには本格的なリリーフのスペシャリストが育っておらず、その原因は球団自体が昔ながらの先発完投至上主義から抜け出せず、素材の好い投手は先発完投型に育て、そのラインから外れた選手をリリーフに回すか、あるいは外国人なりトレードなどで外部から抑え役などを引っ張ってくればいいという程度の認識であるから、それが給料の査定にも反映し、現場の投手達も本気でリリーフのスペシャリストになろうなどとは誰も考えないというのだ。

敗戦処理。はこのTさんの意見は見事に的を射ていると思う。これに関しては(敗戦処理。は個人的にあまり信用していないが)スポーツジャーナリストの二宮清純氏も近著「プロ野球戦略会議」廣済堂出版刊でジャイアンツのフロントから、リリーフは先発投手がつとまらない奴がやる仕事という話を聞いたということをはっきりと書いている。

ジャイアンツは今シーズンを前にして監督の首をすげ替えるだけでなく、他球団からコーチ、外国人担当スカウト、コンディショニングコーチ、調査担当を獲得した。他球団のオーナー経験者まで迎え入れた。それでも成果が出ないのはいったい誰のせい?

いい素材がいない訳ではないのだ。育てて、鍛えてくれ。

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コメント

Eagles fly free 様、コメントをありがとうございました。

>個人的に豊田投手は、
「クローザー以外での登板はありえない(それぐらいの「格」がある)投手」
であり、
「クローザーとして使わないのならばそもそも一軍にあげるべきでない」
と思うのですが、この点、敗戦処理。さんのお考えは(以前豊田投手についてかかれていた記事を拝読しますに同意して頂けるような気がするのですが)如何でしょうか。

全く同感です。

二軍調整時の豊田は、当初は体調と照らして登板日を決めてその試合の終盤に1イニングというものだったのが、その後試合展開に即して抑えとして登板というように変わったと聞きましたのでそれなりのステップを経て一軍に復帰してきたものだとばかり思っていたのですが、一軍で調整させているのですね。

原監督と吉村二軍監督はうまくいっているのでしょうか?

今季の一、二軍の意思の疎通に関しては首をかしげざるを得ない点が多すぎます。

阿部も村田も故障という状況ではあったものの、ファームでもまずマスクをかぶらない原俊介にマスクをかぶらせたり、それは仕方なかったにしても翌日二軍落ち。

ファームの四番吉川をようやく一軍に上げたと思ったら、ファームで主に一塁を守り、代打攻勢などで選手が少なくなった時にたまに三塁や外野を守る程度の吉川を外野でスタメン起用したり、あの決勝打のあと、一度だけ打席に立っただけで二軍落ちとか、訳がわかりません。


その一方、姜建銘がようやく先発で起用され、見事なピッチングを見せてくれました。

原監督か尾花コーチがこのブログを読んでくれたのでしょう<笑>。

ただこれも、見方を変えれば、先日の真田や野間口のような短絡的な二軍降格と同様に、前回の先発で相手投手の打席での四球から崩れた西村への懲罰的なローテーション外しだったような側面であり、前にも書きましたが特に効果的とも思えぬ中四日を含む中五日、先発5人制ローテーションの見直しでは無いようです。


敗戦処理。も

>個人的に一プロ野球ファンとしては原監督の手による巨人再建が望ましいと考えているのですが、(負けが込んだ際のチームのまとめ方なども含め)まだまだ道程は険しそうですね。

同じように考えているので、今からでも何か兆しのようなものを期待しているのですが、どうなのでしょうか…。


投稿: 敗戦処理。 | 2006年8月23日 (水) 23時15分

こんばんは。

> 実は、それほど豊富ではないファーム観戦で、姜建銘登板の場面に遭遇出来ていません。
---
そうでしたか。
よく考えてみますとローテ投手ということですし、ピンポイントで登板する試合に当たるというのはなかなか難しいですよね。


> ところで本題に戻りますが、姜建銘を先発型の投手に育てようという方針があるのであれば、登録即は敗戦処理でも構いませんが、さほど効果的とは思えない中五日、中四日のローテーションの合間に先発させて欲しいと個人的には思っています。
>
> しかしながら現実にはまだそこまでの力はなく、単にアリアスとディロンの登録を抹消して一軍の外国人枠に「空き」が出来たから、前回6月の時と比べてどのくらい成長したかな?とテストする程度の感覚で登録したような気がしてきました。
>
> もしもそうであるのなら、テストも大事かもしれませんが、真田や野間口の代役候補を登録して欲しいものです。それをしないものだから、今日19日の試合では0対3の九回表に豊田投入などということになってしまうのですね。
---
個人的にも敗戦処理。さんの見立てが真相のような気がします。
本文でもご指摘の通り、私も今のところ首脳陣が二軍のいい素材を活かし切れているとは言い難いと思っています。


> 豊田も小久保も見切り発車なのですかね?
---
小久保選手についてはスタメンで起用されていますので、そうでもないようですね。
ただ、15日に再登録された豊田投手については
・17、20日のセーブがつく9回に高橋尚投手が登板したこと
・15、19日のセーブがつかない(大差でリード、または敗戦処理の)9回に豊田投手が登板したこと
を勘案しますと
「(見切り発車というよりは)首脳陣が信頼していない」
ような気がします。
個人的に豊田投手は、
「クローザー以外での登板はありえない(それぐらいの「格」がある)投手」
であり、
「クローザーとして使わないのならばそもそも一軍にあげるべきでない」
と思うのですが、この点、敗戦処理。さんのお考えは(以前豊田投手についてかかれていた記事を拝読しますに同意して頂けるような気がするのですが)如何でしょうか。

投稿: Eagles fly free | 2006年8月21日 (月) 23時53分

再びのコメント、ありがとうございました。

>姜建銘投手は6月に一度上がって来た時にたまたま見る機会があったのですが、実はその時の投球フォーム、直球と変化球との違いが丸わかりだったのです。
結局登板はその一イニング?だけで再びファームに落ちてしまい、(私は彼の二軍でのピッチングを見たことがないため)あのフォームが恒常的なものなのかどうかはわからずじまいでした。
ただ二軍ではローテで回っているとのことですので、あのフォーム(=滅多打ちを食らう可能性が極めて高い致命的なクセ)が恒常的であるとは流石に考え難く、この点ファームの観戦経験も豊富な敗戦処理。さんの印象をお聞かせ願えればと思います。

恥ずかしながら、全く気付きませんでした。

実は、それほど豊富ではないファーム観戦で、姜建銘登板の場面に遭遇出来ていません。

* 遭遇していてもまず見抜けないと思いますが。

18日、文字通り敗戦処理で二度目の一軍マウンドに上がった姜建銘ですが、敗戦処理。は東京ドームの三塁側スタンドで生観戦しました。生で姜建銘を観るのは3月のWBCアジアラウンドのチャイニーズタイペイと中国の一戦以来です。

ちなみに18日の対ドラゴンズ戦ではジャイアンツにとってはWBCアジアラウンドに出場した三選手が初めて公式戦に揃い踏みした試合ということになります。

ところで本題に戻りますが、姜建銘を先発型の投手に育てようという方針があるのであれば、登録即は敗戦処理でも構いませんが、さほど効果的とは思えない中五日、中四日のローテーションの合間に先発させて欲しいと個人的には思っています。

しかしながら現実にはまだそこまでの力はなく、単にアリアスとディロンの登録を抹消して一軍の外国人枠に「空き」が出来たから、前回6月の時と比べてどのくらい成長したかな?とテストする程度の感覚で登録したような気がしてきました。

もしもそうであるのなら、テストも大事かもしれませんが、真田や野間口の代役候補を登録して欲しいものです。それをしないものだから、今日19日の試合では0対3の九回表に豊田投入などということになってしまうのですね。

豊田も小久保も見切り発車なのですかね?

投稿: 敗戦処理。 | 2006年8月19日 (土) 22時00分

こんにちは。

> 代わりに上がってきた姜建銘は、ファームでは先発ローテの一角。ここで真田的なきようをするのなら、ファームでの経験、学習は何だったの?ということになってしまいます。
---
私も敗戦処理。さんの危惧が現実になってしまいそうな予感がしています。
ファンの方にそう思われないような用兵が、首脳陣には期待されるところだと思うのですが…

ところで。
姜建銘投手は6月に一度上がって来た時にたまたま見る機会があったのですが、実はその時の投球フォーム、直球と変化球との違いが丸わかりだったのです。
結局登板はその一イニング?だけで再びファームに落ちてしまい、(私は彼の二軍でのピッチングを見たことがないため)あのフォームが恒常的なものなのかどうかはわからずじまいでした。
ただ二軍ではローテで回っているとのことですので、あのフォーム(=滅多打ちを食らう可能性が極めて高い致命的なクセ)が恒常的であるとは流石に考え難く、この点ファームの観戦経験も豊富な敗戦処理。さんの印象をお聞かせ願えればと思います。


> 理想的には、ファイターズの橋本義隆とか、マリーンズの成瀬善久のように一軍に先発投手の空きが出来た時にファームで先発で実績を挙げた人を上げるという様にして欲しいと想います。
---
内海投手、パウエル投手、上原投手という一試合三点で収めることが出来、且つ完投能力もある投手が三人も居る(12球団を見渡してもこれはかなり恵まれている)わけですから、敗戦処理。さんが理想とされているこちらの方法も、本来ならば(=先発6人制にすれば)無理なく&今すぐ実施できるはずだと思います。
しかし現状では、そういう起用法がなされているとは(西村投手以外)とても言い難いですね。

投手起用について尾花コーチの進言があまり採用されていないのでは?と思ってしまうのは、私だけでしょうか。

投稿: Eagles fly free | 2006年8月18日 (金) 18時15分

コメントをありがとうございました。

真田、翌日もはっきりしないリリーフぶりで、何と二軍落ちです。

原監督なりの期待感なのだなとは想いますが、うーん…。

代わりに上がってきた姜建銘は、ファームでは先発ローテの一角。ここで真田的なきようをするのなら、ファームでの経験、学習は何だったの?ということになってしまいます。

理想的には、ファイターズの橋本義隆とか、マリーンズの成瀬善久のように一軍に先発投手の空きが出来た時にファームで先発で実績を挙げた人を上げるという様にして欲しいと想います。

話は戻って、真田には一回り逞しくなって一軍に戻ってくることを期待します。

投稿: 敗戦処理。 | 2006年8月18日 (金) 01時57分

こんばんは。
TBありがとうございました。

> 「シコースキーも解雇しました。非常にタフな投手で、監督として使い勝手がいい投手です。しかし、好不調の波も激しく、僅差でリードしている試合などに投げさせるのは不安もあります。あえてシコースキーが投げるポジションを若手に奪ってもらいたいのです。」
>
> だったらなおさら真田裕貴でしょう!
---
原監督の文言を精査しますと
「与えたい」
ではなく
「奪ってもらいたい」
とありますので、
「大差で勝っているにもかかわらず四死球で一死一、二塁としてしまった時点で真田投手は失格」
なのかもしれません。

ただ。
確かにこのような考え方も無くはないと思うものの、敗戦処理。さんが仰っているように私も
「懲罰的交代が目立つ原采配」
には常々疑問を持っています。
やはり若手を育てるにはある程度のミスに目を瞑ることも必要ですし、この点(投手ではご指摘の真田、野間口両選手、野手では亀井選手などの起用法において)原采配には我慢という要素が足りないように感じます。

個人的に一プロ野球ファンとしては原監督の手による巨人再建が望ましいと考えているのですが、(負けが込んだ際のチームのまとめ方なども含め)まだまだ道程は険しそうですね。

投稿: Eagles fly free | 2006年8月17日 (木) 21時47分

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受信: 2006年8月17日 (木) 21時43分

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