駒大苫小牧・田中はマリーンズ、鷲宮・増渕はライオンズ、愛工大名電・堂上はタイガースが交渉権獲得!!-ドラフトでくじ運が強いチームは?
ハンカチ王子こと早実の斎藤佑樹投手が11日、記者会見を開き、プロ志望届けを提出せず進学希望であることを表明した。これにより、今月25日に行われる今年の高校生ドラフトでは駒大苫小牧の田中将大投手、鷲宮の増渕竜義投手らに1巡目の指名が集中するものと観られる。ドラフト会議の醍醐味は何といってもくじ引き抽選。敗戦処理。流のデータ集計で、くじ運の強いチーム、弱いチームを分析するとともに、1巡目指名で重複するであろう選手の交渉権を獲得する球団を予想してみました。
くじ運に左右される抽選に強いチーム、弱いチームはどこなのか、第1回のドラフト会議から昨年の分離ドラフトまですべての回を対象に調べてみました。
まず、その計算の仕方ですが、例えばあるチームが競争率2倍の抽選に4回挑戦するとしています。競争率2倍の抽選で当選する確率は50%ですが、これを期待値に換算すると0.5となります。そして競争率2倍の抽選に4回挑戦する訳ですから、期待値の合計は0.5×4=2となります。4回の挑戦で2回当選するというのが、確率上の期待値です。
で、このチームが実際には4回の抽選で3回当選したとします。この結果の3という数値は、確率上の期待値である2を上回ります。上回るということは、多少なりともくじ運が強いということが言えます。
そしてここではこの球団の抽選の強さを、実際に当選した回数から、期待値の数値を引いた数で表します。この球団の場合、3-2=1で抽選の強さは1になります。これをくじ運指数と呼ぶことにします。この球団のくじ運指数は1となります。
ちなみに期待値と同じように、4回の抽選で2回の当選だったチームは2-2=0となります。期待値と同じ結果のチームの数値は0となり、数値が正数であればくじ運が強い。また数値が負の数であればくじ運が弱いということになります。
これを過去のドラフト会議、1965年の第1回から集計します。交渉権確定までのシステムに変遷はありますが、抽選になったケースをすべて対象としています。競争率は2倍の抽選から、最大で8倍の抽選まで実際に行われていますが、球団ごとに倍率ごとのくじ運指数を出し、各倍率ごとのくじ運指数の合計がその球団のくじ運指数となります。
念のために書き加えますが、これはあくまでくじ運の強さを数値化するためのシミュレーションですから、くじ引きによって交渉権を獲得した選手が活躍したか否か、さらにいえば入団したか否かは一切問いません。
十二球団くじ運指数一覧
順位 球団 指数 2倍 3倍 4倍 5倍 6倍 7倍 8倍
1位 YS 2.96 10-9 7-6 1-4 1-1 0-1 0-1 0-2
2位 G 2.66 6-4 2-4 4-4 0-1 0-0 0-1 0-0
3位 M 1.49 7-8 2-3 2-1 0-1 0-0 0-1 1-1
4位 L 1.13 8-4 1-7 1-2 0-0 1-1 0-0 0-1
5位 YB 1.04 8-5 4-6 0-4 0-0 0-0 0-0 0-1
6位 GE 0.50 1-0 0-0 0-0 0-0 0-0 0-0 0-0
7位 F 0.16 8-5 4-6 0-5 0-1 0-1 0-1 0-2
8位 T -0.53 6-7 1-5 2-3 0-1 1-1 0-0 0-2
9位 C -1.19 7-12 6-5 0-2 0-2 0-0 0-0 0-1
10位 H -1.83 9-11 1-4 2-4 0-1 0-2 0-0 0-1
11位 Bs -2.18 10-10 0-6 1-2 0-0 0-1 0-1 0-1
12位 D -2.38 6-7 1-5 0-5 1-0 0-1 0-1 0-1
【参考】
旧Bu -1.81 7-11 3-7 0-3 0-0 0-2 1-0 1-1
YS=スワローズ、G=ジャイアンツ、M=マリーンズ、L=ライオンズ YB=ベイスターズ、GE=ゴールデンイーグルス、F=ファイターズ、T=タイガース、C=カープ、H=ホークス、Bs=現在のバファローズ、D=ドラゴンズ、旧Bu=旧バファローズ
倍率ごとの、当選回数-落選回数を表しています。くじ運指数=倍率ごとの、当選回数-(当選回数+落選回数)/倍率 の合計値。
【参考資料】「プロ野球ドラフト全史2003年最新改訂版」ベースボール・マガジン社刊ほか
この結果、最もくじ運が強いチームはスワローズということになりました。
特に1980年代、荒木大輔(1982年1位、2倍)、高野光(1983年1位、4倍)、池山隆寛(1983年2位、3倍)、広沢克己(1984年1位、3倍)、伊東昭光(1985年1位、3倍)を獲得出来たくじ運の強さは当時話題になったものでした。
あまりにくじ運が強すぎて長島一茂(1987年1位、2倍)まで交渉権を獲得してしまったのは痛し痒しでしたが<苦笑>。
スワローズに次ぐくじ運の強さを見せたのがジャイアンツ。
このチームは原辰徳(1980年1位、4倍)、松井秀喜(1992年1位、4倍)とチーム構成の核を為す、ここ一番での勝負強さが特筆されます。
3位はマリーンズ。
何といってもドラフト会議史上二度しかない最大の8倍の競争率を勝ち抜いて小池秀郎を1990年に交渉権を獲得したが、入団を拒否されてしまった。しかし指数が高かったのは他にも2~4倍の競争率に高い確率で勝利しているのが原因。これにより八木沢荘六(1966年1位、3倍)、西村徳文(1981年5位、3倍)、園川一美(1985年2位、4倍)らの交渉権を引き当て、その後の戦力化につなげている。
清原和博(1985年1位、6倍)、松坂大輔(1998年1位、3倍)を果敢に指名して引き当てたライオンズが4位。もっともこのチームはくじ運よりも、故根本陸夫さんがスカウティングをしていた頃の寝業師ぶりでドラフト戦略を勝ち抜いてきたチームという印象が強い。これは根本さんが後に所属したホークスにも当てはまる。ホークスのくじ運指数は10位と低いが、地元九州出身選手を中心とした、くじ運に頼らぬ逆指名、自由獲得枠でのドラフト戦略が現在のパ・リーグでの地位を固める結果につながっているのはいうまでもない。
逆にくじ運が弱いワーストワンはドラゴンズ。森繁和(1978年1位、4倍→ライオンズ)、清原和博(1985年1位、6倍→ライオンズ)、小池秀郎(1990年1位、8倍→オリオンズ)、松井秀喜(1992年1位、4倍→ジャイアンツ)、福留孝介(1995年1位、7倍→旧バファローズ)らに果敢にチャレンジして玉砕したのが響いた形だ。それでも後に福留を逆指名で獲得出来たり、福留を外してあらためて交渉権を得たのが荒木雅博だったりと、転んでもただでは起きないしたたかさを見せている。
高倍率が予想される有力選手を果敢に指名するという点では指数7位のファイターズも捨てがたい。木田勇(1979年1位、3倍)の交渉権を獲得し、難航が予想された入団交渉では「契約金代わりに土地をくれ」と要望され話題になったものの当時の大沢啓二監督や、所属していた日本鋼管の先輩であるエース高橋直樹らを交渉人に投入する粘り強さで口説き落としたのに味を占めたのか(?)、果敢にその年のドラフトの目玉を指名し続けた。
(筆者注.木田勇には当時闘病中の家族がいたため、地元横浜の球団への入団を希望しており、前年には交渉権を得たカープへの入団を拒否していた。)
原辰徳(1980年1位、4倍→ジャイアンツ)
小野和義(1983年1位、3倍→旧バファローズ)
広沢克己(1984年1位、3倍→スワローズ)
清原和博(1985年1位、6倍→ライオンズ)
近藤真一(1986年1位、5倍→ドラゴンズ)
野茂英雄(1989年1位、8倍→旧バファローズ)
小池秀郎(1990年1位、8倍→オリオンズ)
福留孝介(1995年1位、7倍→旧バファローズ)
松坂大輔(1998年1位、3倍→旧ライオンズ)
ファイターズファンとしてはこの勇気を讃えたいが、一方で交渉権を得たところで入団してくれていたか疑問な選手も少なくなく、話題性重視での指名とも思えるものもあり、どこまでこのチームに戦略なるものが存在するのか疑問に思えた年もあった。
ただ小野の外れ1位が白井一幸だったり、広沢の外れ1位が河野博文、清原の外れ1位が広瀬哲朗、近藤の外れ1位が西崎幸広である点を見逃してはなるまい。抽選で外した際の戦略がはっきりしているのがこのチームの特徴。今年の高校生ドラフトでは駒大苫小牧の田中への指名重複は避けられそうもないが、果たしてどうなるか?
そして、斎藤投手の進学表明を受けて、翌12日のスポーツニッポンでは十二球団の1巡目の指名予想を掲載している。
マリーンズ 田中将大 投手 右投右打 駒大苫小牧
ホークス 大嶺祐太 投手 右投左打 八重山商工
ライオンズ 増渕竜義 投手 右投右打 鷲宮
バファローズ 田中将大 投手 右投右打 駒大苫小牧
ファイターズ 田中将大 投手 右投右打 駒大苫小牧
ゴールデンイーグルス 田中将大 投手 右投右打 駒大苫小牧
タイガース 堂上直倫 遊撃手 右投右打 愛工大名電
ドラゴンズ 堂上直倫 遊撃手 右投右打 愛工大名電
ベイスターズ 田中将大 投手 右投右打 駒大苫小牧
スワローズ 増渕竜義 投手 右投右打 鷲宮
ジャイアンツ 田中将大 投手 右投右打 駒大苫小牧
カープ 前田健太 投手 右投右打 PL学園
仮にこの通りだとすると、駒大苫小牧の田中に6球団、鷲宮の増渕と愛工大名電の堂上にそれぞれ各2球団が重複。無抽選で交渉権を得られるのがホークスが狙う八重山商工の大嶺と、カープが狙うPL学園の前田。
上記のくじ運指数から、指名が重複する選手の行方を占うと…、
田中指名の6球団の中ではジャイアンツが最もくじ運指数が高い。(十二球団中2位)。増渕指名のライオンズとスワローズでは、くじ運指数1位のスワローズがくじ運勝ち。堂上指名のタイガースとドラゴンズではタイガースの方がくじ運指数が高い。田中はジャイアンツ、増渕はスワローズ、堂上はタイガースが交渉権を獲得する。これまでの実績通りならこうなるはず。
しかし、別の味方をしてみよう。指名が重複する選手の、倍率ごとの当該球団のくじ運指数で比較した方が、よりリアリティがあるだろう。
まず駒大苫小牧の田中。倍率は6倍となるが、6倍の抽選自体が、過去に岡田彰布、清原和博の二人しか行われていない。今回指名が予想される6球団はこの両選手の交渉権を得ていない。そこで6球団の、倍率6倍以上の実績を調べた。
マリーンズ 0.61
バファローズ -0.43
ファイターズ -0.56
ゴールデンイーグルス 0.00 (注.実績無し)
ベイスターズ -0.13
ジャイアンツ -0.14
指名予想の6球団の中ではマリーンズが最もくじ運指数が高い。
鷲宮の増渕、愛工大名電の堂上に関しては指名予想の球団の2倍の抽選でのくじ運指数を調べてみた。
増渕
スワローズ 0.50
ライオンズ 2.00
堂上
タイガース -0.50
ドラゴンズ -0.50
増渕に関しては2倍ならスワローズよりライオンズの方がくじ運指数が高く、堂上に関しては全く同じ。となると、トータルでくじ運指数が高いタイガースが有利か。
そう考えると、田中はマリーンズ、増渕はライオンズ、堂上はタイガースとなる。
ちなみにジャイアンツは伝統的に高倍率を避ける傾向があり、一部報道では田中から堂上に切り替えるのではと書かれている。堂上にタイガース、ドラゴンズの他にジャイアンツも参戦して3倍になった場合の指数は、
タイガース -0.67
ドラゴンズ -1.00
ジャイアンツ 0.00
ジャイアンツが堂上への切り替えを検討しているのも理解出来る。
最後に、確率の分野には大数の法則があると言うことを付け加えておく。くじ運など、実力に左右されない確率というものは、数を重ねれば重ねるほど、確率上の期待値に近い結果が出るという。かみくだいていえば、くじ運指数の確率上の期待値はあくまでプラスマイナス0.ということは、これまでの実績(くじ運指数)が高いチームが、最もくじを当てる期待が高いのではなく、これまでくじ運が低かったチームが、順番としてはくじを当てる期待が高いというのだ。スポニチの指名予想での抽選だと、田中はファイターズ、増渕はスワローズ、堂上はドラゴンズとなる。 ファイターズファンの敗戦処理。としてはこの理論を推したい。
果たしてどうなるか、25日が楽しみですね。
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コメント
コメントをありがとうございました。
ジャイアンツ、田中から堂上に乗り換えるようですね。
個人的には高校生で、将来ジャイアンツのクリーンアップを担えるような逸材がいるのであれば、投手より野手を果敢に取りに行って欲しいと想っています。
>さて中日ドラフトは堂上くんだけど。阪神と巨人が邪魔するらしいがね。「中日外れたらトヨタ自動車社会人に行く」と本人は言うらしい。とうちゃん中日投手、かあちゃん下呂出身の17歳(誕生日9/23)夢のように中日ドラゴンズに行けますように。
何でもどの球団でもOKとの表明をしたようで。
>中日は清原、松井をはずしていたんですね。知らなかった。もし清原中日だったらどうだったかな。潰されていたような気がする。年齢近い山崎がいたしね。
(中)松井秀
(一)清原
(左)山崎
という夢のようなクリーンアップが完成していたかも。
>日ハムはちゃんと田中クン頑張ってね。日ハム若手投手王国の時代。須永から田中まで
ありがとうございます。
特に須永まで王国に入れて下さって。
須永聞いてるか!まだ忘れていない人もいるのだぞ!!
投稿: 敗戦処理。 | 2006年9月18日 (月) 00時52分
思わずドラフト架空会議を読んでしまいました(笑)
中日は清原、松井をはずしていたんですね。知らなかった。もし清原中日だったらどうだったかな。潰されていたような気がする。年齢近い山崎がいたしね。
さて中日ドラフトは堂上くんだけど。阪神と巨人が邪魔するらしいがね。「中日外れたらトヨタ自動車社会人に行く」と本人は言うらしい。とうちゃん中日投手、かあちゃん下呂出身の17歳(誕生日9/23)夢のように中日ドラゴンズに行けますように。
日ハムはちゃんと田中クン頑張ってね。日ハム若手投手王国の時代。須永から田中まで
投稿: sadakun_d | 2006年9月15日 (金) 21時35分