桑田真澄&金村曉、子供じゃないんだから…!
桑田真澄の球団HPでの退団決意表明に驚いていたら、今度はファイターズのエース、金村曉が24日のマリーンズ戦で勝利投手の権利を得る目前で降板させられたことに激怒して報道陣相手にトレイ・ヒルマン監督を批判。公式戦1位通過をかけて闘い、その先のプレーオフに向けて一致団結しなければならない時期に完全に水を差す状態になってしまった。
桑田にしろ金村にしろ、チームを支えてきた主力投手。そのプライドを踏みにじられたという気持ちもわからないでもないが、二人とも子供じゃないんだから!
まずは金村。問題の金村発言を引用する。
「絶対に許さない。外国人の監督だから、個人の記録なんてどうでもいいと思っているんじゃないの。顔も見たくない。プレーオフも出番がないんじゃないですか。」(24日付スポーツニッポン紙面より)
試合終了後、球場の駐車場に向かう途中に報道陣に不満をぶちまけたという。金村のセリフが上の記事でほぼ正確であるならば、金村の不満は今日の降板でふってわいたものではないと推測出来る。
金村は前回登板でも、同じマリーンズ戦だったが五回を投げきってチームが3対2と1点リードしていて勝利投手の権利を得たものの、六回表に先頭打者に安打を打たれたところで降板。この回に逆転され、勝利投手のチャンスを逃した。この時の投手交代も敗戦処理。には中途半端に映った。
しかし、しかしである。今がどういう時期か、誰が考えてもわかることだろう。監督や担当コーチに直訴するでもなく、いきなり報道陣に不満をぶちまけるなどとはどう考えても理解出来ない。
ところで金村がこだわったと観られる五年連続二桁勝利という記録だが、実は現役の投手が現在継続中の連続二桁勝利としては最長の記録なのである。
金村は2002年から2005年まで四年連続して二桁勝利を記録しているが、これは現在継続中の記録としては最長であり、2001年から、あるいはそれより前から昨年、2005年まで二桁勝利を続けている投手はいない。金村以外に2002年から連続二桁勝利を続けている投手は清水直行と石川雅規の二人だけしかいない。そして石川は今シーズンも二桁勝利を挙げて五年連続二桁勝利(しかも入団以来)となったが、24日に金村と投げ合った清水は現在8勝で足踏みをしており、事実上五年連続二桁勝利は絶望的だ。
上原浩治、松坂大輔、川上憲伸、西口文也、黒田博樹、井川慶…といった、名だたる各球団のエース投手もこの四年間の間に、勝ち星が一桁で終わっているシーズンがあるのである。それほどに、安定した成績を複数年続けるということは難しく、金村がそのことにこだわりを持っていたとしても不思議ではない。
ただでさえ今シーズンの金村は、オフシーズンに右肘を手術したこともあって本来ならスローペースの調整で万全を期したいところであったがチームが初めて札幌ドームで開幕戦を行うということもあって、無理に開幕に合わせたという経緯がある。そして春先は手探り状態が続く中でホークス戦でフリオ・ズレータの暴行に遭い負傷。それ以降精彩を欠くシーズンとなり、八月には不調による二軍落ちも経験した。フラストレーションがたまる要素はいくらでもあったことは想像に難くない。
しかし、しかしである。今がどういう時期か、わかるでしょう?子供じゃないんだから!
ファイターズ球団は今日25日、金村に対して罰金200万円と、プレーオフ終了までの出場停止処分を科した。そして出場選手登録を抹消した。日本シリーズに出場することになった場合の措置はあらためて検討するという。プレーオフが最大7試合あることを考えれば、シーズン9勝を挙げている投手を欠くのは大きな痛手だが、チームの規律を考えれば、当然の制裁措置であろう。
ただ、惜しまれるのはもしも金村の不満が敗戦処理。の推測通り今に始まったことでないのであれば、この土壇場で爆発する前に、何らかの手だてを打てなかったのかということだ。
金村発言の中に「外国人の監督だから」という言葉が出てくる。ヒルマン監督に加え、マイク・ブラウン投手コーチも外国人。たしかに意思の疎通が取りにくいということもあろう。しかし一軍には他に佐藤義則コーチもいるのだから、金村も佐藤コーチを通してヒルマン采配の真意を問うなりのプロセスが可能だったのではないか?
もうひとつは金村が、ファイターズの投手陣の中でリーダー的存在であるということ。ひょっとしたらこの不満が金村個人の不満ではなく、投手陣全般の不満の代弁であるということも懸念されるのである。一般論として野手出身の監督が投手心理というものを理解出来ず、そのせいで軋轢が生じることは少なからずあるという。それに加えてコミュニケーションを取りづらい外国人の首脳陣という要素がプラスされればそれに拍車がかかることは容易に想像出来る。敗戦処理。個人の印象でも、ヒルマン監督の継投には首をかしげる点が少なくない。このところは結果が良となるケースが多いので、巧く投手陣を掌握しているのかなと漠然と思っていたが。
「アマチュアはチームの和が出来て勝つが、プロは勝つことによってチームに和ができる」といった人がいた。たしかにその通りなのだろう。しかし、プロの集団であれば前提としての「和」が必要ないのかというと、そうとは思えない。アマであろうとプロであろうと、コミュニケーションの欠如があれば人間に感情がある以上、それは不平不満と化し、勝負の結果を左右することにつながろう。時代が変わろうと、通すべき筋を通さなければ、人と人の間に軋轢が生じることは変わりはないはずだ。原辰徳監督や担当コーチ、フロントらに事前に一言の報告もなく、球団HPという公の媒体を自分の退団表明の場とした桑田も同じだ。なぜ面と向かって、大事なことを話し合えないのか?
桑田と金村。この二人に共通して感じることは、不満のぶつけ方に、筋が通っていないことだ。桑田にしたって、9月24日のイースタン・リーグに登板予定だということは、何日か前からマスコミ報道で敗戦処理。だって知っていた。ファンに発表する前にコミュニケーションをはかる時間がなかったとは思えない。
それにしても、今朝の日刊スポーツの一面を観て、ジャイアンツ球場の人の入りに驚いた。同紙によると3,495人プラス外にあふれた人が2,000人!敗戦処理。自身、それまでの最多観客動員記録を更新した今年5月3日の対マリーンズ戦(観衆2,906人。翌4日に2,964人にさらに更新される。)を生観戦したが、昨日の試合はあんなものではなかったようだ。
松坂大輔のルーキーイヤーに、まだ四月だったと思うが松坂が予告先発のマリンスタジアムに異例の大観衆が詰めかけた。試合は松坂と投げ合った黒木知宏が1対0で完封勝ち。黒木の凄さもさることながら一歩も譲らなかった松坂に末恐ろしいものを感じたが、それ以上に印象的だったのがヒーローインタビューでの黒木のセリフ。一通りの一問一答が終わり、最後にスタンドのファンの皆さんに一言とマイクを振られた黒木は「明日も来て下さ~い!」と絶叫した。たぶん、昨日のジャイアンツのファームの関係者も同じような思いだったろう。
金村とファイターズの話に戻ろう。この時期、どこの球団にも、もちろんライオンズやホークスにも火種になりそうな不満の持ち主はいるだろう。選手は個々のパフォーマンスを挙げることによってチームの目標に貢献しようとするが、監督はチームの目標に到達するために個々の選手を働かせようとする。そこに終盤戦では選手の思惑と監督の思惑が合致しないケースが出てくる。しかしそれでも目の前の試合に最善を尽くし、勝利をつかみ取るのが真の闘う集団なのだろう。その意味ではファイターズはまだ真に闘う集団になっていないのかもしれない。今までに経験したことがないプレッシャーの中で起きたアクシデントなのかもしれない。
しかしまだあと二試合ある。ファイターズは膿をさらけだしたことで、逆に残り試合に力を爆発させて欲しい。ここまで盛り上がってきたパ・リーグがこれでトーンダウンしてしまうようでは如何にも寂しい。
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