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2006年10月19日 (木)

ホークスは本当に「3年契約・総額10億円」も出してまで小久保を獲得するのか?-ダイエーは遠くなりにけり

17日、ジャイアンツの小久保裕紀がこのオフにFA権を行使する旨を表明した。FA宣言の解禁は日本シリーズ終了の翌日だが、宣言すれば古巣のホークスが獲得に動き、ジャイアンツも慰留する見込み。16日付日刊スポーツによると、ホークスが小久保に提示する条件は「3年契約、総額で10億円」だそうだ。かつて当時の球団社長の球団私物化に対する反発が元で、また年俸抑制もあって小久保をタダでジャイアンツに放出した球団が、経営母体が変わったことで破格の好条件でチームリーダーに復帰を画策する。まさに「ダイエーは遠くなりにけり」だが、本当にそこまでの額を払うだけの価値があるの?

そしてこの獲得劇が、莫大な資金力を持つといわれるソフトバンクグループによるマネーゲームの始まりだとしたら、いずれそれは球団間での過当競争となるような事例を頻発させ、資金面で付いてこられない球団、親会社は撤退を余儀なくされ、再び2004年の悪夢-球界再編騒動を巻き起こす第一歩となるのか?

ジャイアンツファンである敗戦処理。としてはもちろん戦力として、チームのリーダーとして、小久保には来季もジャイアンツでプレーして欲しいと願っている。ジャイアンツファンとしての視点で小久保のFA宣言をどう捉えているかは、アット・ニフティのベースボールフォーラム内の読売ジャイアンツ掲示板の小久保に「3年10億」以上の好条件を出せるのか?で述べましたので、ホークス球団の動きに関して思うところを述べてみたいと思います。

小久保がFA宣言行使を表明したということは、ホークス移籍を視野に入れていることは明らか。それは上記で表現した「マネーゲーム」-よりよい待遇を求めてというものではおそらくなく、不本意な形で退団に至った古巣への愛着、そして何よりも小久保が尊敬しているホークス王貞治監督のために一肌脱ぎたいというのが真相であろう。

それならば契約額はさしたる問題では無いような気もするが、他球団から選手を獲得するのに恥ずかしくない金額を提示するということなのだろう。そうであるならば、ジャイアンツが出す条件以上でなければならない。17日のスポーツ報知によると、ジャイアンツが提示する条件は「2年契約、総額7億円」だそうだ。小久保の今季の推定年俸は3億円と言われているが、これだけでもかなりの好条件と言えよう。小久保は今35歳だ。ホークスが提示する3年契約の三年目には38歳になる。ちなみに小久保と同額以上、今季推定年俸が3億円以上の日本人選手を列挙すると、

松中信彦、小笠原道大、上原浩治、今岡誠、松坂大輔、高橋由伸、岩瀬仁紀、西口文也、SHINJO

であり、SHINJOが小久保と同学年である他は、全員小久保より年下で、年齢的にまだまだ下降期の選手はいない。

ちなみに指の故障などに泣かされた今季の小久保の成績は88試合の出場にとどまり、19本塁打、55打点(打率は.256)というものだったが、これを来季の公式戦144試合に換算すると、31本塁打、90打点となる。これは昨年の小久保の成績-142試合、34本塁打、87打点とほぼ遜色ない。故障がなければ一年前の成績と同等のものは残せると言う見方も成り立つかもしれないが、来季で36歳になるということを考えると、この成績を維持出来れば万々歳とも思える。

親会社がソフトバンクになってからのホークスは、昨年のオフにはドラフトの希望枠で獲得した松田宣浩らの育成含みで、昨年から今季までの二年契約×5億2000万円(推定)といわれたトニー・バティスタを契約期間一年を残して解雇した。つまり5億2000万円をドブに捨てたのと同じだった。結局バティスタの抜けた三塁のポジションは固定出来ず、そこに三塁を守る小久保に3年間で10億円プラスジャイアンツへの補償金3億6000万円(あるいは3億円プラス人的補償)もの費用をかける。これははっきりといって、チーム方針に脈絡がないことのあらわれである。企業会計が企業グループの連結決算で評価される時代に、子会社がこんな無計画な金の使い方をしたら、普通なら親会社から介入があり、子会社の責任者は飛ばされても不思議ではあるまい。

野球界という興行の世界においては特定の球団による突出した資金力のかけ方が、行き着く先には2004年の悪夢-ついて行けない球団の脱落を呼び、第二の合併騒動、球界再編騒動の再現を起こしかねない。

また、資金力ばかりに依存して戦略を欠くと、長期的にはジャイアンツの二の舞になる、「仏つくって魂入れず」のようなチームになってしまうおそれもある。バティスタ解雇と小久保獲得の矛盾という問題もいずれは語られるであろうし、松中への長期契約も本当に適切なのか、誰もチェック出来ない。「ダイエー」時代に根本陸夫氏が健在だった頃には現場とフロントは一体ではあったが明確に線引きされていたというが、今のホークスは監督がGMと副社長を兼務している。

十二球団の中の一つとしてのホークスが補強で強くなろうと、逆に思惑が外れて弱くなろうと、それはホークス球団の自己責任だが、今回の小久保への破格とも思える条件提示に象徴されるような金に糸目を付けない動きをし始めると他球団を巻き沿いにして財政を逼迫させるおそれがない訳ではないので、ひとまず警鐘を鳴らしておきたい。

それにしても、このチームをはたから見ていると、松中をチームリーダーとして団結する形で何の問題も無いように思えるのだが、そうではないということなのだろうか?

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