やめないでパ・リーグ東西対抗!-秋晴れの草薙に「白いボールのファンタジー」が響く。
1981年に第1回が行われて以来、今年の第19回で幕を閉じることになったパ・リーグ東西対抗。特に、1988年の第3回大会以来17回連続して開催地となっている静岡草薙球場にとっては秋の風物とも言える恒例のイベントだ。球団合併騒動などに揺れた2004年に開催が出来なくなり、昨年二年ぶりに復活したばかりでの今年限りでの中止決定。最後のパ・リーグ東西対抗を敗戦処理。も観戦してきました。
もはやパ・リーグの秋の風物といっても過言でない東西対抗。毎年11月始めのこの時期に、パ・リーグの主力選手が静岡に結集してチームを東西に分けて対抗戦を行う。どことなく、6球団合同のファン感謝イベントという趣にあふれ、外野席では各球団の応援団が呉越同舟で応援合戦を繰り広げる。試合後に行われる6球団、いや旧バファローズを含む7球団の応援団による応援歌パフォーマンス合戦は試合より盛り上がる<?>ともいわれ、一時間以上もかけて順次各球団の応援団のリーダーらによるパフォーマンスが繰り広げられる。
試合前の開会セレモニーで、パ・リーグの小池唯夫会長から挨拶が始まると、今年限りでの打ち切りに反対する外野席の応援団から一斉にブーイングの嵐。ファンの間にいかにこのイベントが定着しているかを示しているが、よくよく考えれば東西対抗の中止は、11月は意義のある試合を優先させたいといい、この東西対抗や親善試合色の濃い日米野球の開催に協力しない旨を表明したプロ野球選手会の意向であり、パ・リーグの会長だけを責めるのは筋違いなのだ。
労組日本プロ野球選手会の宮本慎也会長は選手会の総意として、日米野球に協力するのは今年限りでそれも5試合まで。11月はアジアシリーズなど真剣勝負の国際試合に限定すべきとし、来年に予定されている日韓野球にも北京五輪の予選と重なるから協力しないと主張しているのだ。つまり、今日静岡草薙でグラウンド狭しと駆けめぐったパ・リーグの選手達も本心ではこの東西対抗を辞めたがっているということだ。
敗戦処理。個人的には親善試合の日米野球こそ今回限りにし、パ・リーグ6球団合同のファン感謝フェスティバル的な趣のある東西対抗こそ残してもらいたいと思っているのだが、読売新聞社と毎日新聞社が二年に一度、交互に主催してオイシイ思いをするイベントをみすみす手放したくなく、かといって選手会の要望をすべて無視する訳にはいかず、とりあえず東西対抗の中止に踏み切ったといったところではないか。今年の日米野球の試合数は選手会の要望通りに5試合にとどまったが、日本シリーズとアジアシリーズに挟まれた期間に開催するとなると、どのみち5試合が精一杯であり、主催者のお膝元のジャイアンツがMLBの時差ボケ解消と興行数(試合数)の確保のために1試合練習試合を組む。またパ・リーグの会長は毎日新聞社の出身だ。もちろんこの背景の推理は敗戦処理。の邪推だが、的はずれなものではないだろう。
試合は幸いにも好天に恵まれた。今回は四年ぶりに日米野球との同時開催のため、ゴールデンイーグルスの野村克也監督はもちろん不在。小笠原道大、福浦和也、大村直之ら「野村ジャパン」の面々は昼夜掛け持ちとなる。一方でアジアシリーズに向けての調整を優先して小笠原を除き日米野球を辞退しているファイターズ勢はダルビッシュ有、八木智哉、田中賢介、金子誠、森本稀哲、稲葉篤紀が小笠原とともに参加。ダルビッシュはオール・イーストの先発を任された。
一回裏、マウンドに上がったダルビッシュは野手がフライを見づらいのか、捕手の藤井彰人、内野の金子、今江敏晃の相次ぐ目測を誤るプレーで凡フライがすべて安打となる不運で、あれよあれよという間に3点を奪われる。特に柴原洋が放ったショート後方の飛球ではショートの金子とレフトの森本が激突。金子はどこか痛めたようで、引き続き守備には付いたものの二回表の打席で代打を送られた。アジアシリーズを控え、故障者が出ては困るところだが…。
森本と激突してうずくまる金子を心配そうに見守るヒルマン監督(この日はオール・イーストのコーチ)。負傷したのがヒチョリでなかったのが救いと感じてしまうのは敗戦処理。だけだろうか。
二回表、渦中の人物、小笠原が誰よりも大きな拍手に迎えられて打席へ。オール・ウエストの先発・寺原隼人のストレートを豪快に引っ張り、ライトスタンドへ反撃ののろしの一発を叩き込んだ。日米野球、FA、アジアシリーズとまだまだハードスケジュールが続く小笠原。
シーズンと変わらぬフルスイングでライトスタンドに一発を放った小笠原。
オール・イースト側のレフトスタンドには「生涯FIGHTERS」の横断幕が掲げられたが、奇しくもこの日、小笠原は報道陣を前にFA権行使の意思を初めて公式に披露した。
それにしても、今年はWBCのメンバーに選ばれ、2月の壮行試合から、今週末のアジアシリーズまで、日本プロ野球界で誰よりも長く真剣勝負の場に身を起き続ける男、小笠原道大、選手会の意向もあって今年限りとなる東西対抗でも、シーズンと変わらない豪快な一発を放つのだから、この男のプロ根性は半端じゃない。こんな素晴らしいプロ野球選手が自分の贔屓球団で十年間プレーし続けてくれたことにまずは感謝しなければならないが、いくらその結果勝ち取った権利とはいえ、紳士たれという球団に行って髭を剃った姿や、今年日本シリーズで激闘を繰り広げた相手の一員になる姿なんて、どうしても観たくない。報道では7日にもFA宣言に関する記者会見を開くということだが、もう一度考え直してもらえないものだろうか。
その後イーストが四回表に塀内久雄のタイムリーで同点に追いつくと、五回表には二番手の和田毅の代わりばなを森本が右中間の本塁打でついに勝ち越す。SHINJO無き後のお祭り男を継承する男だけに、こういう試合では存在感を示しておきたいところだが、この次の打席ではSHINJOの応援歌で声援を受けた。和田は絶不調だったようで、この後も連打をくらい、稲葉のタイムリーで1点を加えられ、とどめは今江の3ランでこの回だけで5失点。
さすがにアジアシリーズを控え調整中のファイターズ勢は金子を除いて一味違う。小笠原、森本に続き、稲葉も七回表に川越英隆からソロ本塁打を放つ。ちなみに稲葉は試合前に行われた本塁打競争でも小笠原、山崎武司、中島博之を抑えトップだった。さすがは常に全力プレーを身上とする男。投手陣でもダルビッシュは初回こそバックに足を引っ張られて3失点だったがその後2イニングを無難に抑え、八木も1イニングを無失点に抑えた。途中出場の田中賢介は特に目立った活躍がなかったが。
結局和田が投げた五回表の5点が明暗を分けた形となり、オール・イーストが9対4で逃げ切った。松中信彦、和田一浩といった中心打者を欠くオール・ウエストはスタメンの時点で見劣りしている感があったが、その通りの結果となった。
【5日・静岡草薙球場】
E 010 250 100 =9
W 300 000 001 =4
E)ダルビッシュ、○福盛、八木、加藤、小野-藤井
W)寺原、●和田、吉井、川越、涌井、小野寺-日高、炭谷
本塁打)小笠原1号(寺原・1回)、森本1号(和田・5回)、今江1号3ラン(和田・5回)、稲葉1号(川越・7回)、柴原1号(小野・9回)
MVPは決勝本塁打の森本かと思われたが、同じく本塁打を放ち、それを含めて3安打3打点の今江だった。今江の表彰に小池会長が登場して再びブーイングを浴びていたが、前述したようにいささか筋違いであるというように思う敗戦処理。は少数派なのだろうか。
そして試合後、表彰式見物もそこそこに敗戦処理。は三塁側内野席を後にし、センターバックスクリーン後方の外野席入口付近に向かう。パ・リーグ東西対抗もう一つの名物、7球団の応援団による応援合戦を堪能するためだ。
敗戦処理。がセンターの外野席入口付近の広場に到着した頃には既に最初のチーム、ホークスの応援パフォーマンスが佳境に入っていた。現役主力選手は一通り終えたのか、「ダイエー」、「南海」時代の選手、門田博光、高柳秀樹、香川伸行、藤本博史らの応援歌で盛り上がっていた。続いてこういう場では何故か悪者扱いされるライオンズが応援パフォーマンスを繰り広げた後、我らがファイターズの番。
オレンジの法被を羽織った闘将会のリーダーがステージに上がり、まずは日本一の御礼を述べると、各球団のファンから「おめでとう!」の声が。これがあるからこのイベントは楽しいのだが、長く自慢話が続いたので他球団のファンから「調子に乗るな、ファイターズ!」のシュプレヒコールを浴びてしまう。リーダーはそれでも満更でもないようで、「勝てばいいのです!」と開き直って爆笑を買っていた。まずはプレーオフ、日本シリーズで一気に認知度を上げた稲葉ジャンプから入って稲葉の応援歌を歌った後、今季の主力、一番から九番までの応援歌を一通り歌い(ちなみに七番はマシーアス<笑>)、ついで三年間の感謝を込めてSHINJOの応援歌をもう一度。さらにお約束の幸雄ジャンプ、タイガース時代から引き継いでいる坪井智哉のテーマ、さらに片岡篤史、広瀬哲朗、大島康徳とOBと続けた。
ファイターズの次はマリーンズ。愛甲猛、西村徳文、マックス、五十嵐章人、垣内哲也、古川慎一…と、何とも選曲がすごい。やはり、こういうパフォーマンス合戦になるとこのチームにはどこもかなわない!
その後バファローズ、ゴールデンイーグルスと続いてトリは今年も旧バファローズ。故仰木彬元監督を偲び、感謝のフレーズを随所に交え、「仰木マジック」で優勝した1989年のスタメン主力選手のテーマを歌うなどして盛り上がった。最後の最後はパ・リーグ連盟歌「白いボールのファンタジー」を大合唱。草薙球場への感謝のコールも行い、小池会長の悪口も忘れない。
繰り返しになるが、パ・リーグ東西対抗の中止、何とか考え直してもらえないだろうか。もちろん選手会や機構側がいうように11月を真剣勝負の国際試合に充てるという発想には大賛成だが、何もオール・オア・ナッシングにする必要はなく、ファンの間に定着した東西対抗を何とか、多少形を変えてでも続けてもらえないものだろうか、秋晴れの静岡草薙球場の外野席入口前で「白いボールのファンタジー」を歌っていて特に強く感じた。
「白いボールのファンタジー」は2004年の球界再編騒動のさなか、パ・リーグの試合の合間に応援団が歌い出したのを皮切りに火がつき、同年初のCD化がなされた。その後球場でもよく流されているが、意外に知られていないのが、昔のレコードでいうB面に相当する二曲目のインストルメンタルバージョンで、一番と二番の間奏に、パ・リーグのファンには懐かしい「エキサイティングリーグ・パ!」のテーマの音が使われているのだ。球場関係者は誰も気が付いていないのか、それともほとんどの本拠地が当時と変わっており、誰もこの隠し味の意味に気が付いていないのか?どちらにしても、寂しい話だ。
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