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2006年12月 9日 (土)

週刊ベースボール、Cultural Review では紹介されない衝撃の告発本「Gファイル 長嶋茂雄と黒衣の参謀」

10月に発売された「Gファイル 長嶋茂雄と黒衣の参謀」(武田賴政著・文藝春秋刊)が話題になっている。1994年から1997年までの四年間、ジャイアンツの長嶋茂雄監督の黒衣の参謀として諜報機関もどきの情報収集力で二度の優勝や抵抗勢力の妨害の阻止に貢献した河田弘道氏の活躍と挫折について書かれたものだ。今から約十年前の出来事とはいえ、実名を挙げての告発ぶりはリアルそのもの。それこそ石原真理子の「ふぞろいな秘密」(双葉社刊)ではないがジャイアンツファンには衝撃の一冊だ。野球をテーマにした書物などを紹介する週刊ベースボール(ベースボール・マガジン社刊)のCultural Review では何故か取り上げられない<苦笑>この告発本に書かれていることの大半が事実であるならば、今もジャイアンツは十年前と比べて進歩していないのだろうと容易に推測出来る。

河田弘道なる人物は、日本体育大学を卒業後、海を渡ってオレゴン大学に進み、アメリカの大学スポーツの合理的なマネージメント手法に引かれ、その後ブリカム・ヤング大学に転学して修士課程修了後に動向の器械体操選手を指導するようになり、やがて同校の他のスポーツチームの運営も任されるようになり、アメリカンフットボール部の日本遠征をコーディネートしたり、逆に日本から早稲田大学野球部の米国遠征を受け入れたりするなど日米間のスポーツの橋渡し役をやるようになり、その活躍を堤義明氏に認められ、同氏の「特命」を専門に行うようになる。そして堤氏の元を離れた後、それまでにつちかった米国の超一流アスリートたちとの交流を活かして民放テレビ局のスポーツ番組の制作に携わるようになっていたところ、浪人中の長嶋茂雄と出逢い、長嶋のジャイアンツ監督復帰に際し長嶋直々にフロント入りを要請されるが長嶋監督復帰一年目のシーズンを検討期間とした後、フロント入り。「編成本部付アドバイザー兼監督補佐」という肩書きで長嶋監督をはじめとする数人の球団幹部と、当時読売新聞社社長だった渡邉恒雄とその側近のみが存在を知る本当の黒衣としてチーム再建のために情報収集に尽力した。

その調査対象は自チームの選手達のコンディションの把握やライバル球団の状況にとどまらず、長嶋監督の復帰を快く思わない、主にV9メンバーを主体にした、今ならさしずめ抵抗勢力と括られそうな守旧派達の巻き返し運動の把握にも及ぶ。

長嶋監督の、時に「勘ピューター」と揶揄された気まぐれな投手起用が何故なされたか、要するに誰が長嶋監督の味方で誰が敵だったかも一目瞭然。終生のライバルといわれる野村克也との闘いぶり、特に長嶋一茂の去就に関しては河田氏が亜希子夫人からも信頼を得ていたことがわかる。長嶋家のプライベートな部分にまで本書は踏み込んでいる。長嶋監督が199610月に行われた衆院選で応援演説に駆り出されそうになった話での亜希子夫人や佐倉の実家の猛反対ぶりに関してはかなり生々しい。

もちろんフロントマンとしての本業についてもふれられ、「何でも欲しがるチョーさん」と揶揄された長嶋監督が当時ホークスでFA件を獲得した秋山幸二の獲得を希望すれば、河田氏は水面下で秋山の情報を収集、本人がジャイアンツでのプレーを望んでいると知るや、FA宣言させようと暗躍するが、その動きを球界きっての寝業師と賞賛された根本陸夫氏に察知されてガードされて失敗に終わる話なども出てくる。

これらがほぼすべて実名で書かれているから衝撃なのだ。当時からリアルタイムでジャイアンツファン、あるいはアンチ・ジャイアンツファンであれば、誰しもが「さもありなん」と頷ける箇所が多い。もちろん一方のサイドからの見方のみが記されている訳だから、鵜呑みは危険だが。その意味で冒頭に書いたように話題の近著、石原真理子による「ふぞろいな秘密」のように、もっとメディアで取り扱われても不思議でないはずなのだが、週刊ベースボールのCultural Reviewでも、発売開始して8週を経た今も取り上げられず、週刊現代が数週にわたって本書の内容の一部を取り上げたくらいだ。しかも週刊現代では長嶋監督の采配や管理能力をあげつらう部分ばかりを強調し、本書でえぐっているジャイアンツの暗部に関してはほとんど触れていない。

ちなみに敗戦処理。も「ふぞろいの林檎たち」シリーズのファンであるが、石原真理子がタレントの誰と寝ようが特に興味はない。それよりも「ふぞろいの林檎たち」の続編が製作されない事情を正確に書いて欲しかったのに何故にこれに関しては実名告発どころかイニシャルすらないのか!と声を大にして言いたい。

そうした活躍、いや暗躍によってジャイアンツは1994年、1996年にリーグ優勝を果たし、長嶋茂雄を頂点とする体制も盤石かと思えたが渡邉恒雄氏がオーナーに就任した1997年、チーム低迷に乗じた抵抗勢力の巻き返しの元、河田氏らは失脚する。マスコミが「グレッグ河田」なる謎の人物の存在を書き始めたのもこの時期で、敗戦処理。も「そういう人物がいるのだな」程度の認識だった。この時は河田氏の尽力で招聘したアマチュア球界のキーマン石山健一氏を中心とする早稲田閥の排除ともいわれ、当時逆指名を得ようとしていた慶應義塾大の高橋由伸への配慮とも報じられた。

グラウンドで闘うスタープレーヤー達の影で、あまりにも脆弱で、まるで永田町の論理かと呆れるばかりの謀略がうごめき、足を引っ張り合う構造。十年前のジャイアンツの実態の一部がこんなものだったのかという驚きと同時に近年の低迷を考えると、おそらく当時からほとんど進化していないことも容易に想像がつく。

本書は雑誌「プレジデント」(プレジデント社刊)に連載された原稿をベースに大幅に加筆されたものであり、同連載を読んでいた敗戦処理。としてはさほどの衝撃ではないが、(もちろんプレジデント誌の連載に初めて接した時にはぶったまげたが)本書で初めて河田氏やGファイルの存在を知った読者には衝撃を受けた者も少なくないようで、AmazoneのHP上での本書のカスタマーレビュー欄には象徴的なレビューが並んでいる。

ただ残念なのは、本書を読んだ読者であれば、ジャイアンツに河田弘道氏なる存在が極秘で存在するのであれば、他球団にもこのような存在がいても不思議でない(昨年話題になったマリーンズのボビー・バレンタイン監督の采配に影響を及ぼしているデータ・アナリストの存在とか。)ということに一歩踏み込んで欲しいということだ。

もちろん敗戦処理。がそうした他球団の黒衣の存在を知っているということではない。

そしてもう一つ残念なことは週刊ベースボールのCultural Reviewで取り上げられないこと。十年前のジャイアンツで清原和博へのFA獲得に際して長嶋監督自身によるタンバリングと思われる行為について何の不思議もなく言及されていたり、その長嶋監督直々の相手打者への死球の指示があったり、野村克也監督時代のスワローズに対し、断定こそしていないもののスパイ行為をしていたと確信しているよう亜記述があったり、告発本としてかなりシリアスな内容だからなのか。

ちなみに本書が発売された1013日以降に発行された週刊ベースボールは1030日号から今週発行された1218日号まで8冊を数える。Cultural Review欄は1回に2つの作品を取り上げるのでこの間16点。その内訳は書籍が4点、映画のDVDが3点、音楽が4点でゲームが1点。残る4点は自社で発売しているトレーディングカードだ。文化を標榜しながら自社商品の宣伝を2週に1回の割合で登場させているのも凄いが(ベースボール・マガジン社は自社媒体でトレカを宣伝する前に説明責任を果たすべき一件があるだろう<苦笑>!)、本の内容に関しては読者一人一人が自分の頭で考えて判断すればよいだけのことなので、次号にもCultural Review欄でとりあげてほしいところだ。

もっとも、Cultural Review欄で取り上げられないという点において、本書に書かれている内容にはいわゆるタブーに踏み込んだ領域が満載なのではないかという雰囲気を醸し出しているという側面もある。

いずれにしても、日本のプロ野球におけるフロントの役割とか、親会社と球団の関係にこれから新たに興味を持つような方にも、告発本としてでなくオススメ出来る一冊だと敗戦処理。は一応推薦しておく。

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コメント

係長3号様、コメントをありがとうございました。

幅広いコレクションですね。

「Gファイル…」の方ですが、これからお読みになるということでブログで書いたこと以外にはここではふれませんが、週刊現代が取り上げたような「長嶋茂雄の実像」を暴くという見方よりも、巨人軍の組織風土を垣間見るとか、近年のジャイアンツが何故故障者に泣かされ続けるのかなどのヒントとしても読み進められると思います。

それにしても年季の入ったコレクションですね。

私はその分野は疎いのですが、子供の頃に購入したカルビーのスナックの野球カードは、ミスターのものを含め、大切に保存しています。


またブログの方にも遊びにいらして下さい。

投稿: 敗戦処理。 | 2007年1月26日 (金) 00時56分

初めまして、係長3号です。
以前から興味があった本だったので、今度、読んでみたいと思います。当サイトをお暇な時にでも、ご覧になってみてくださいね!

読売巨人軍:長嶋茂雄のコレクション
http://www17.ocn.ne.jp/~giants3/

投稿: 係長3号 | 2007年1月24日 (水) 15時38分

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