本当にこれでいいの?-来季ポストシーズンゲームにアドバンテージなし!
21日に行われた12球団代表会議で来季から導入されるポストシーズンゲーム(クライマックス・シリーズ)では両リーグともレギュラーシーズン優勝チームへのアドバンテージを導入しない方針を決めた。パの数球団はパ・リーグが今季のプレーオフで導入した、シーズン1位チームに無条件で1勝を付与する方式を提案したがセ・リーグのチームを中心にアドバンテージ無用論が多く、アドバンテージ無しという決定に至った。そして興行権は第1、第2ステージとも上位球団がすべて持つことになった。交流戦の試合数削減に続き、またもパ側が折れた形になったが、この制度を三年間活用したパ・リーグ側の意見をもっと採用しても良かったのではないか?
来季から両リーグで導入されるクライマックス・シリーズの原型はパ・リーグで最近三年間採用しているプレーオフ制度。セ・リーグとの人気、露出格差に悩むパ・リーグが少しでもリーグを盛り上げようと(そしてホークスの一人勝ち体質を何とかしようと)考えた上での案だとも言われているが、長丁場のレギュラーシーズンを勝ち抜いたチームへの配慮をどうするか、などファンの間でもいろいろと意見が分かれる、矛盾した制度であることは周知の事実。当初はセ・リーグ側もパ・リーグ独自の予告先発制度や「マンデーパ・リーグ」などパ・リーグ独自の不人気打開策と軽く考えていたようだが、セ・リーグで優勝チームが決まり、消化試合で緊張感が薄れる時期に短期決戦の緊張感ある試合を一方のリーグで行っているのは日本シリーズに向けての調整面も含め、セ・リーグにとっては不都合な制度であることにようやく気づいたのかもしれない。現実にこの三年間、日本シリーズはすべてパ・リーグ優勝チームが制している。
そこでセ・リーグとしてはこの矛盾した制度を超える、新たな優勝決定方式を考え出すのかと思いきや、パ・リーグで定着したプレーオフ制度をそのまんまセ・リーグでも採用することにした。これは画期的なことである。おそらくセ・リーグ側としては前述した予告先発や「マンデーパ・リーグ」などパ・リーグが次々と採用する新方式を単なる悪あがきと高をくくっていたのではないか。かつての二シーズン制は十年で頓挫したし、「マンデーパ・リーグ」も今年から廃止された。このプレーオフ制度にしてもどうせ…、というのはあったろう。
ところが交流戦の導入により人気チーム相手の主催試合の一部をパ・リーグに明け渡す形になってセ・リーグ各球団は興行収入で打撃を受けた。交流戦に関しては来季から試合数を削減し、一部を取り返すことに成功したが、頼みのジャイアンツ戦でもかつてのような巨額の放映権収入は見込めない。それではどうやって興行収入を増やすかと考えたのだが斬新なアイディアは浮かばなかったようでパ・リーグと同じプレーオフを採用するしかなかったようだ。セ・リーグがパ・リーグのアイディアに追従する。これは画期的と言って差し支えなかろう。
この結果セ・リーグも、パ・リーグと同様に長丁場のレギュラーシーズンを勝ち抜いたチームへの配慮をどうするかという矛盾に突き当たることになった。パ・リーグではプレーオフ導入に際して当初、レギュラーシーズン1位チームが2位チームまたは第2ステージ進出チームに対してレギュラーシーズンで5ゲーム差以上をつけていれば第2ステージで1勝のアドバンテージを与えるという形で配慮したが最初二年間、レギュラーシーズン1位のホークスが2位に5ゲーム差をつけることが出来ず、しかも二年連続で敗退したため今シーズンはレギュラーシーズン1位チームに無条件で1勝のアドバンテージを付与する形に改められた。
アドバンテージの内容にはいろいろな案があるかもしれないが、アドバンテージを設定することに関してはファン心理としても反対派は少ないのではないだろうか。特に今シーズンのパ・リーグにおいて「レギュラーシーズン1位チームに無条件でアドバンテージ1勝」というのは上位争いをしているチームにとっては魅力だったに違いない。レギュラーシーズンで最後の最後までファイターズとライオンズとホークスが激しい1位争いを繰り広げたのも、このアドバンテージがモチベーションを高めていたという背景があったことは容易に想像できる。
ところがセ・リーグ所属チームを中心にした今回の多数派は、このアドバンテージ採用を否定した。報道によるとその主な理由の一つは、アドバンテージによって1勝が与えられることによる試合数の減少。つまり今年のパ・リーグプレーオフ第二ステージのように二試合で終わってしまってはもったいないということだ。あっさりと終わっては不都合というのなら昨年のホークスのように最終回に4点差を挽回して延長でひっくり返せば良いだけの話で<笑>、それをアドバンテージ無用論の拠り所にしているのは発想が貧弱と言わざるを得ない。
プレーオフ制度がクライマックスシリーズと名を変えようと、試合制度が同じでアドバンテージの有無が異なるだけなら、来季のクライマックスシリーズは単なる三球団のトーナメントに過ぎないのである。
そしてここまで読んで下さった方はもうお気付き、あるいは思い出して下さっているかもしれませんが来季のセ・リーグおよびパ・リーグの優勝チームはあくまでも各リーグのレギュラーシーズン1位のチームを認定するのであって、クライマックスシリーズは日本シリーズというイベントへの出場権を得るための登竜門に過ぎず、その日本シリーズもその先のアジアシリーズの出場チームを決める選考大会に過ぎないのである。
多数案に妥協した少数派のパ・リーグ球団も含め、ポストシーズンゲームを盛り上げて野球人気をもう一度盛り返そうという意図だというのは充分に理解できる。春夏の高校野球が盛り上がるのはトーナメントという試合方式が影響しているのは間違いないし、厳密にはトーナメントではないがオリンピックや今春のWBCのような短期決戦にも同様の緊迫感が得られるから、プロ野球でも最後にトーナメントに近い形でのクライマックスを迎えるイベントを取り込もうという発想も理解できないことはない。しかし、長年にわたってプロ野球ファンに親しまれて定着してきた日本シリーズという行事の尊厳を軽視し、あるいは形骸化することは絶対に避けるべきであると敗戦処理。は思う。今シーズンまでのパ・リーグのプレーオフにもその要素がない訳ではないが、アドバンテージの採用で辛うじて日本シリーズの尊厳を損ねずに済んでいると敗戦処理。は考えている。
敗戦処理。が長く応援し続けているファイターズが今シーズン、熾烈な上位争いで最後にライオンズやホークスを上回って24年ぶりにレギュラーシーズン1位となり、プレーオフも勝ち抜いて25年ぶりのリーグ優勝を果たした。そして日本シリーズでセ・リーグ優勝チームのドラゴンズを破って44年ぶりに日本一に輝いた。さらに二代目のアジアチャンピオンの座も勝ち取った。近い将来、2006年のシーズンを振り返った時に、ファイターズファンとして「2006年に優勝しておいてよかった。もう一年遅れていたら…」なんていう感慨にふけるような事態にはなってほしくないものである。しかし現状では来年のことなど全く想像できないが、従来通りの方式の今シーズン優勝できて本当に良かったと思う。
SHINJO、ガッツ、そしてみんな、本当に今年優勝してくれてありがとう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント