工藤公康のプロテクト漏れ-ベイスターズ入りに関して
ジャイアンツがベイスターズの門倉健をFAで獲得したことに対する補償でベイスターズは9日、ジャイアンツのプロテクト枠から漏れた工藤公康を獲得した。過去に二度のFA移籍を経験した43歳の超ベテラン工藤が、新人と外国人と移籍組を除く28人のプロテクトリストから漏れたのはある意味敗戦処理。にとって衝撃的。気が付けばこのオフ、ジャイアンツは小久保裕紀、桑田真澄、工藤公康と現役を終えた後も指導者として期待できた選手を三人も手放すことになったのである。
原辰徳監督は実力至上主義を掲げているから、これまで功労のあった者でも力が衰えたら戦力外にしたり、プロテクト時に優先順位が落ちると言うことなのかもしれないが、何かもう少しベテラン選手の処遇に関しては考え直した方がよいような気がする。そう思うのは敗戦処理。だけだろうか。
まず最初に、敗戦処理。はFA移籍に関する補償に関して重大な勘違いをしていたことを、訂正せねばならない。
2006年12月7日付け小笠原道大FA移籍でなぜファイターズはジャイアンツに人的補償を求めないのか?で、
まず始めにFA移籍に伴う補償の仕組みを整理しておこう。FA補償に関しては野球協約第205条で定められているが要約すると、
FA宣言した選手が日本の他球団に移籍した場合、元の所属球団は移籍先の球団に対し、次のどちらかの補償を求めることが出来る。
1.FA移籍した選手の移籍直前のシーズンの年俸金額と、さらにその金額の20%の額。(元の年俸の1.2倍の金額。)
2.FA移籍した選手の移籍直前のシーズンの年俸金額と、移籍先球団の選手1名。ただしこの場合、移籍先の球団がプロテクトした28名を上限とした選手と外国人選手を除いた選手の中からの任意の1名となる。
と記述したがこれは誤りで、
1.FA移籍した選手の移籍直前のシーズンの年俸の80%の金額と、さらにその金額の50%の額。(元の年俸の1.2倍の金額。)
2.FA移籍した選手の移籍直前のシーズンの年俸の80%の金額と、移籍先球団の選手1名。ただしこの場合、移籍先の球団がプロテクトした28名を上限とした選手と外国人選手を除いた選手の中からの任意の1名となる。
金額の比率に誤りがありました。これは完全に敗戦処理。の思いこみによる勘違いなので、この場を借りてお詫びして訂正させていただきます。
申し訳ありませんでした。
なおこれは初めてのFA行使選手に対する規定であり、2度以上のFA行使選手の場合は「旧年俸の40%の金額とさらにその金額の50%の額(元の年俸の0.6倍の金額)または旧年俸の40%の金額プラス選手1名」となることを付記しておく。
そうなると、人的補償にするか、金銭のみの補償にするかの境目はこの時の発言で想定した旧年俸の20%と、プロテクト外の選手の比較ではなく、旧年俸の40%の金額と、プロテクト外の選手との比較になる。
元発言ではファイターズからジャイアンツにFA移籍した小笠原道大の例を示したが、これを門倉に当てはめると、2006年の門倉の推定年俸7500万円の40%、3000万円相当以上の選手がプロテクトから漏れていたら人的補償を求めた方が得ということになる。工藤は推定年俸2億3000万円からの1億円を超える減俸呈示に更改を保留していたが、ベイスターズが工藤獲得に踏み切るのは理にかなっていると言えよう。
この点で小笠原移籍で補償を求めるファイターズの高田繁GMが、「1億5000万円クラスの選手がプロテクトから漏れないから…」といって金銭のみの補償を求める方針を明らかにしたのも頷ける。
そろそろ本題に入ろう。
ところで敗戦処理。を含むジャイアンツファンにとってショックなのはまず工藤がプロテクトから漏れたことだろう。
けんか別れとまでは言わないが、スマートな形での退団とは思えない桑田の退団。キャプテンを務めた小久保のFA流出(ただし古巣への復帰)と、どうも功績のある選手の退団の仕方がしっくりこないものである。一年前には同じプロテクト漏れで江藤智を手放したし、その年には清原和博もファンには納得しづらい戦力外通告であった。三年前には川相昌弘も…。
それだけに「またか」との思いが強いのだろう。
実は敗戦処理。は独断で選ぶ28人のプロテクトリストをつくってみた。9日付けのスポーツニッポンによると新人、移籍組、外国人選手以外に28人をプロテクトするということで、敗戦処理。なりに考えたのが別掲の敗戦処理。が選んだ28人のプロテクト名簿である。
工藤、前田幸長、小坂誠、木村拓也あたりがボーダーラインなのである。豊田清、野口茂樹は2006年にFAで入団した際に2007年までの複数年契約を結んでいるのでプロテクトせざるを得ない。(それがなくても敗戦処理。だったら豊田はリストに入れるが。)二年目になる2006年の新人もなるべく残したい。いろいろと考えた結果、工藤、前田、小坂はリストに入れたが木佐貫洋、木村拓也、斉藤宜之、川中基嗣、實松一成といった面々を外さざるを得なかった。
ジャイアンツの清武英利球団代表の「苦しい決断」という言葉がよく分かる気がした。
ただ昨年工藤が不本意な成績に終わったのは開幕直後はそこそこの調子だったのに中五日で回転させてからペースが狂ったのが原因だと敗戦処理。は見ている。2006年6月27日付巨人を壊しているのは誰だ?で書いたことの繰り返しになるが、工藤を組み入れた先発ローテーションで中五日で回すなどというのはベテランへの配慮のかけらもない証拠だ。先発投手の登板間隔を短くした外国人監督であるカープのまーティー・ブラウン監督でさえ、昨年シーズン中に39歳になった佐々岡真司の登板間隔には配慮していた。
超ベテランの工藤にとっては、工藤に対してよりリスペクトしてくれる球団に移籍した方が選手生命の上では幸せなのではないかと敗戦処理。は思っている。おそらくジャイアンツよりも、ベイスターズの方が工藤を必要としているのであろう。
また渡邉恒雄会長が将来指導者として戻ってきて欲しい旨をコメントしていたが、川相がそのままドラゴンズのコーチになったように一度手放した選手が簡単に戻ってくると思うのは安直だと指摘しておきたい。
ベイスターズは工藤に優勝経験や、現役投手としての生きた手本との期待を持っているだろう。工藤は43歳にしてなお、大リーグ挑戦を語る男だけに、ベイスターズが流出防止として工藤にコーチ兼任を持ちかけるかもしれない。
ベイスターズが最後に優勝したのが1998年。当時の優勝メンバーはエース三浦大輔を初め、川村丈夫、石井琢朗、佐伯貴弘、鈴木尚典とまだ残っているがライオンズ、ホークス、ジャイアンツと三球団でチームの優勝に貢献してきた工藤の存在はやはり格別なのであろう。
そして2002年を最後に優勝から遠ざかっているジャイアンツの投手陣では(ジャイアンツでの)日本シリーズ登板経験者は上原浩治、高橋尚成、前田の三人だけになってしまったということにジャイアンツのフロントの何人が気づいているのだろうか。
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