Bs平野恵一命がけファインプレーの評価-バファローズ球団におけるバランス感覚
昨年5月6日のマリーンズ対バファローズ戦の守備でフェンス際のファウルフライにダイビングキャッチを試みて胸部などを骨折し、約四ヶ月半戦列を離れたバファローズの平野恵一の四度目の契約更改交渉が19日に行われ、それまでの提示より100万円の上積みを勝ち取り、200万円ダウンの4600万円(推定)で更改された。話題になった中村紀洋の契約交渉では中村が左手首痛を押して出場して成績不振だったのが交渉扱いされなかったのが争点だったそうだが、平野の方は四度目の交渉で上積み獲得に成功。中村と平野の差はいったい何なのか?代理人の腕の差なのか<笑>?前川勝彦の処遇も含め、本当に不思議な球団だ。
平野恵は一昨年の2005年に二塁手として115試合に出場。それまでの便利屋的な起用法から、完全に二塁のポジションに固定された形だった。しかし2006年は前述した通り5月6日の対マリーンズ戦で今江敏晃の放った一塁側内野席ギリギリのファウルフライに果敢にダイビングキャッチを試み、捕球したもののフェンスに身体を強打。胸部などを骨折し、約四ヶ月半もの間戦列を離れた。一軍復帰はシーズン最後の二試合という時期だった。
中村の交渉時にバファローズ球団ではプレー中のケガでも公傷と認めないという話があったことから、平野恵の交渉が難航しているのもむべなるかなと思っていた。しかし2006年の出場数が前年の118試合(二塁以外での出場を含む)から33試合に激減したにもかかわらず推定年俸4800万円から300万円程度の減額提示だったということはあの「命がけファインプレー」は既に評価されていたことになる。
【平野恵一の最近三年間の成績】
2004年 124試合 打率.279(リーグ25位)、6本塁打、39打点
2005年 118試合 打率.285(リーグ15位)、3本塁打、33打点
2006年 33試合 打率.235 2本塁打、6打点
平野側は公傷を主張してダウンは無しでの現状維持を求めていたようで、球団側は考慮はするがダウンは避けられないという査定だったのだろう。
因みに中村は12日に行われた球団との最終交渉の後でチームメートの平野恵の力にもなれなかったことを悔やんでいた。
「(昨年フェンスに激突し、今なお契約保留中の)平野恵一にも力になれなかったと謝りたい。どこまで頑張れるかと思って頑張ってきたけど、自分1人ではどうにもできなかった。やっぱり選手は弱いですね」
(1月13日付日刊スポーツより。カッコ内も記事のまま)
しかし、そもそも球団は中村の左手首痛と平野恵の骨折を全く別の基準で査定していたのだろう。今にして思えば中村のこの発言は平野恵に便乗してファンの同情を買おうかとの真意を邪推させる。敗戦処理。的には中村が平野に謝るべきなのは、主砲として満足な打撃ができず、4月の時点で既に二度の完封をマークするなど素晴らしい投球をした平野佳寿が年間を通して7勝11敗という成績に終わったことでもわかるように新人投手の奮闘に援護できなかったことの方だろう<苦笑>。
閑話休題。ところで以前から疑問に思っていたのだが、平野恵一の「命がけファインプレー」は本当に公傷扱いする必要のあるプレーだったのだろうか。
スポーツニュースであのシーンを観たから、筆舌に尽くしがたいプレーであることは理解しているつもりだが、結局はファウルフライなのである。2対0でリードした三回裏の二死一塁という場面で、四ヶ月戦列を離れるリスクのあるプレーを本当にすべきだったのかという事だ。
ファウルフライ-それもスタンドギリギリで、捕れなくても投手にダメージの少ない打球だ。この時の打者が二番の今江で、今江を出塁させると福浦和也、サブロー、マット・フランコというクリーンアップにつながる場面だから未然に防ぎたいというのは解る。しかしそのためのアウト一つと、四ヶ月の欠場、チームにとって痛いのはどちらかと言うことだ。手首の痛みと闘って無理して出場を続けた中村がブレーキとなった部分はそのまま査定され、必ずしも無理をする必要がないと思われるシーンでの無茶には配慮する。バファローズという球団のバランス感覚に違和感を憶えるのは敗戦処理。だけだろうか。
バランスといえば、引き逃げと無免許運転で起訴された前川に対する対応にも首を傾げざるを得ない点があった。
事件に関する詳細は割愛するが、バファローズ球団は18日、前川克彦(登録名は勝彦)被告を解雇、自由契約にすることを発表した。(翌19日、自由契約選手として公示された。)
雑賀忠夫球団社長は、
「車の事故に対して社会的な風潮が厳しい中で、こういう事件を起こしたことに対し、球団として処分を下すことを決めました。熟考を重ねた末の決断でした」
(20日付日刊スポーツより)
と会見で説明した。しかしそこまで熟考したのなら、「社会人として更生するのに、手を差し伸べる用意はあります。今すぐは無理としても、本人が十分に反省した上で望んだ場合や社会の情勢が許した場合ですが、我々は門戸を開けておくということ。(球団に復帰させる)期間については、今は申し上げられません」(同社長。20日付日刊スポーツより。カッコ内も記事のまま)との温情を示すことは、この段階で発言すべきだったのかという点だ。
たしかに所属先として、社会的常識のかけらもない事件を起こして解雇した後も更生を支援し、復帰の道を閉ざさないという考え方も解らないことはないが社長自身「車の事故に関して社会的な風潮が厳しい中」と感じているのであれば、たとえ会見の席上で報道陣から追究されたとあっても、この時点で温情を示すのは妥当とは思えない。時あたかも、この会見の前日の17日にはタレントの風見しんご の10歳の娘さんが交通事故に遭われて幼い命を失ったばかりだ。そしてそのほんの一週間ほど前の11日にはモーニング娘。のリーダー、吉沢ひとみ の16歳の弟さんも交通事故で亡くなられている。本当に「社会的な風潮」を意識しているとは思いがたい。いかに想定外の事件発生とはいえ、事件発生直後の対応ではない。冷静に処分その他を議論する期間はあったはずだ。
前川への対応、平野恵と中村に対する対応の差、そもそも中村(あるいは谷佳知を含めて)と清原和博への待遇の差と、この球団のバランス感覚には首を傾げざるを得ない点が多い。少なくとも前川の件だけでも、現実に被害者が存在するということを強く意識して対応しないと、前川だけでなく、球団自体、ひいては野球界全体の社会的常識も問われるのである。
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