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2007年2月 1日 (木)

【FA移籍】小笠原道大はジャイアンツでも本領を発揮できるか?

お陰様で、このブログも今日から二年目に入ります。野球、特に日本のプロ野球を題材に好き勝手に自分の願望、妄想を書いて参りましたらあっという間に一年間が経過した感じです。

これからもこの、ろくでもない すばらしい日本プロ野球界を題材にいろいろと書いていきますので、興味のある方はお時間の許す限りお付き合いの程をよろしくお願い致します。

0103102_1 さて、今日2月1日は日本のプロ野球にとってはキャンプがスタートする日。今シーズンの闘いの初日に相当すると言っても過言でないと思いますが、今年もジャイアンツとファイターズを応援しながら日本のプロ野球を観ていく敗戦処理。にとって最大の注目は小笠原道大。かつてなき危機感に基づいて小笠原獲得に踏み切ったジャイアンツは復活するのか?そして小笠原はジャイアンツでもファイターズ時代同様に活躍できるのか?ジャイアンツの大型補強は今に始まったことではないが、移籍した選手が評判ほど働いていないケースが少なくない。我らが小笠原もそのジンクスにはまってしまうのか?それとも北の大地のファンを感動させたサムライ魂をいかんなく発揮して本人が活躍するとともにジャイアンツを変えてくれるのか?これまでのFA移籍選手のデータを調べ、展望してみた。

小笠原は昨シーズン中に取得したFA権を行使してジャイアンツに移籍した。1993年のオフシーズンに初めて日本でFA制度が実施されてからこのオフで14回目のオフ。これまでジャイアンツがFAで獲得した選手は落合博満、広沢克己、川口和久、河野博文、清原和博、工藤公康、江藤智、前田幸長、野口茂樹、豊田清の10人。これにこのオフ小笠原と門倉健が加わって計12人。もちろんこの人数は十二球団で断トツ。2位のホークスの7人と3位のタイガースの5人を足した人数だから、いかにこの制度を利用しているかがわかる。

ジャイアンツのFA補強のうち、小笠原と同じ野手に絞ると落合、広沢、清原、江藤という顔ぶれになる。どの選手も移籍前のチームで堂々たる成績を残してきた選手であるが、ファイターズの十年間で昨年のパ・リーグMVP、本塁打と打点の二冠王を始めとしてそれ以前にも首位打者二回、最多安打二回という実績を残している小笠原も遜色がない。しかしこれまでの四選手のジャイアンツでの働きぶりを振り返ると、移籍一年目から活躍したのは江藤一人。落合が辛うじて四番の座を一年間死守して優勝に貢献したという印象が強いものの清原、広沢の一年目は期待を大きく裏切った感じだった。広沢はジャイアンツでの五年間、ついにスワローズ時代のような打棒を発揮してくれなかった。清原にしてもジャイアンツにはライオンズ在籍年数と二年しか違わない九年間在籍したが、最初の五年契約最終年の2001年のシーズンを除けば、清原和博らしい成績を逃したとは言い難い。もっといえば、江藤も移籍三年目の2002年からは打撃成績がじり貧で、2005年のオフには豊田をFA獲得した際の人的補償のプロテクトに入らなかった程だ。

ということで、ジャイアンツに限らず、国内でFA移籍した選手の内、捕手を除いた全野手を対象に移籍前後の打撃成績を調べてみた。捕手を除いたのは捕手の場合は打撃成績が主に期待されていたとは思えないからである。

1993年のオフからこのオフまで、捕手を除く野手の国内球団間でのFA移籍は16例ある。彼らの移籍前年、移籍宣言年、移籍初年度の出場試合数、打率、本塁打、打点を列挙した。選手名の後の<数字>は移籍初年度の満年齢を表している。

落合博満 <41>
92D   116   .292  22  71
93D   119   .285  17  65
94G   127   .280  15  68

石嶺和彦 <34>
92BW  130   .267  18  68
93BW  130   .273  24  77
94T    130   .246  17  77

松永浩美 <33>
92BW  118   .298   3  39
93T      80   .294   8  31
94H    116   .314   8  55

駒田徳広 <32>
92G    130   .307  27  64
93G    122   .249   7  39
94YB  130   .284  13  68

金村義明 <32>
93Bu    47   .221   3  18
94Bu     80   .299   8  28
95D       28   .177   1   5

広沢克己 <33>
93S     132   .288  25  94 打点王
94S     130   .271  26  73
95G     131   .240  20  72

石毛宏典 <39>
93L     122   .306  15  53
94L     111   .266  11  46
95H      52   .200   1  11

清原和博 <30>
95L     118   .245  25  64
96L     130   .257  31  84
97G     130   .249  32  95 最多三振

江藤智 <30>
98C     132   .253  28  81
99C     121   .291  27  79
00G     127   .256  32  91

片岡篤史 <33>
00F     135   .290  21  97
01F     106   .254  16  62
02T     120   .228  11  46

金本知憲 <35>
01C     140   .314  25  93
02C     140   .274  29  84
03T      140   .289  19  77

村松有人 <32>
02H       94   .259   0  14
03H     109   .324   6  57
04BW   108   .320   6  51

大村直之 <30>
03Bu    136   .300  16  61
04Bu    120   .303   2  34
05H      133   .270   8  48

稲葉篤紀 <33>
03S       69   .273  11  30
04S      135   .265  18  45
05F      127   .271  15  54

小久保裕紀 <36>
05G     142   .281   34  87
06G       88   .256   19  55
07H     ?

小笠原道大 <34>
05F     133   .282   37  92
06F     135   .313   32 100 MVP、本塁打王、打点王
07G    ?

FA移籍を決意したシーズンだけでなく、その前のシーズンの成績まで記述したのは、FA移籍する選手が、好成績を残したシーズンに権利を行使しているとは限らないからです。もちろん大半の選手はFA権を取得した年に行使していますが、権利を取得する年にピークが過ぎている、または成績が降下する選手が少なくないようです。

出場試合数と打撃三部門の成績がその選手の評価の全てではないことを百も承知の上で移籍の前後の成績を比較すると上記の16選手からこのオフにFA移籍した2選手を除いた14選手で成績が上がったと言えそうなのが松永、駒田、江藤、稲葉のせいぜい4選手で、同等の成績を残したと言えそうなのが落合、清原、村松の3選手といったところでしょうか。両方を合わせても7選手でようやく半数に達する程度です。

清原のジャイアンツ移籍一年目の成績がライオンズでの前年と同等と言われると、異論を挟みたくなる方も出るでしょう。清原の場合は移籍前の数年間、デビュー当時からの「怪物」的な成績が残せなくなっていましたのでセ・リーグ一年目でリーグの最多三振記録を塗り替えるほどの大型扇風機ぶりを発揮した清原の一年目でも主要部門に限定すると、前年並みの成績と言えるのです。同様に考えると、前年より成績が上がったと分類された選手の中でも松永と駒田は移籍前の年がその前年より著しく成績を落としていたから、移籍一年目の成績が上がったように思えるという側面があります。こうしてシビアにみると、移籍一年目に移籍前の年よりも活躍できた選手は14選手中2選手のみとなり、小笠原は(小久保裕紀も同様ですが)極めて高いハードルに挑戦することになります。

しかも小笠原の2006年の成績は自己最高の成績と言える成績です。ちなみにMVPに選ばれた選手がその年のオフにFA移籍した例は他に投手の工藤が1999年にホークスでMVPを受賞し、その年にジャイアンツにFA移籍した例があるだけです。

小笠原が十年間活躍してきたファイターズはジャイアンツファンにはなじみの薄いパ・リーグです。小笠原は昨シーズンパ・リーグで本塁打と打点の二冠王を獲得しましたが、これはアレックス・カブレラや松中信彦といったこの部門のタイトル獲得経験者の成績が伸び悩んだこともあって小笠原にタイトルが転がり込んだという要素がたぶんにあります。パ・リーグに関心の薄いジャイアンツファンが「本塁打と打点の二冠王」というイメージで小笠原を追いすぎると、小笠原という野球選手の価値を見誤ることになるでしょう。

小笠原の本質は中距離打者であり、安打製造機です。プロ十年間での通算打率が.320あり、昨シーズンの.313でも通算打率が下がる選手です。打点が三桁に乗ったのは三度目ですが、昨シーズンはファイターズで森本稀哲、田中賢介という一、二番コンビが定着して十分に発揮したたまものであり、今シーズンに関してはジャイアンツの一、二番コンビがどれだけ働くかにかかるでしょう。その意味ではジャイアンツではイ・スンヨプが昨シーズンに続いて四番を打つことが予想され、小笠原は指定席の三番に座ることが予想されますから、イ・スンヨプとの役割分担を明確にできれば、小笠原がジャイアンツ一年目から小笠原らしい活躍を出来るように思えます。

こう考えていくと、ジャイアンツ移籍一年目の小笠原の前に立ちはだかるのは、移籍前年にピークと思われる成績を残してしまったため、比較対象となるハードルが高いというプレッシャーでしょう。

昨年ジャイアンツに移籍したパ・リーグを代表するストッパーだった豊田清は開幕から順調にストッパーとしてセーブを挙げていましたが、交流戦のゴールデンイーグルス戦で逆転サヨナラ本塁打を浴びて初めてリリーフに失敗した時に、今までのリリーフ成功がすべて否定されるかのような強迫観念におそわれたと後述していました。その後、原監督の起用法の一貫性の無さや、故障などに悩まされ、シーズン終盤に復帰したものの代わりのストッパーである高橋尚成につなぐセットアッパーに降格させられました。

小笠原はこういうチームに移籍したと言うことをどこまで理解しているのでしょうか。

小関順二氏が週刊現代(講談社刊)に連載している「野球よ、止まれ!」で小笠原が特集されましたが(2007年1月20日号)、その中にこんな一節があります。

「ミスター・フルスイング」とはマスコミの付けた異名である。ファンはそんなものを望んでいない。とくに巨人ファンは本塁打より、確実なタイムリー打や犠牲フライを望んでいる。そこを読み違えた清原和博の挫折を、小笠原は他山の石とするべきである。

清原のことはともかく、小笠原とフルスイングは敗戦処理。に言わせればセットである。「亀田とKOはセットや!」と公言していた亀田弘毅がファン・ランダエタとの再戦では明らかにKO狙いではなかったような変貌ぶりを見せてかえって評価を上げたようだが、小笠原とフルスイングはセットである。ヒゲもセットだったという声もあるだろうが、それをそり落とした上であのフルスイングのない小笠原であっては、それは小笠原ではない。そしてここが一番大事なところだが、小笠原という打者は昨シーズン以外の、優勝争いに殆ど絡まなかったファイターズにおいて決して確実なタイムリー打や犠牲フライを望む場面で自己満足にスイングするような選手ではない。小関氏はストップウオッチを押すタイミングばかりに気を取られ、もっと肝心なものを見落としているのではないか。

かつてFAでジャイアンツに移籍し、活躍した部類に含まれるであろう落合はジャイアンツ移籍後も徹底して「オレ流」を貫いた。先月30日のスポーツ報知によると小笠原は今年もファイターズ時代と同等な調整方法でシーズンに臨むつもりだという。2月中はあのフルスイングは封印し、時間をかけて自分のパフォーマンスが出来るコンディションを整えていくつもりのようだ。いいぞガッツ!

原辰徳監督は今月11日には早くも紅白戦を開催、レギュラークラスにも万全の状態で出場できるよう声をかけているそうだが、そんなものに気を取られる必要はない。その時点での調整の進捗に応じたスイングをすればよい。そしてジャイアンツの今年のオープン戦初戦は古巣ファイターズ戦。しかも札幌ドームで対戦することになり、ここでも顔見せは必要であろう。そして心ない一部のファンから、昨年のイ・スンヨプのようにブーイングを浴びるかもしれないが涼しい顔をして三振していればいい。要するに小笠原が納得する調整をして3月30日の公式戦開幕をベストで迎えられるようにすれば良いのだ。

原監督が「いい選手でなく、強い選手が欲しい」というようなことを言っていた。「強い」という抽象的な表現に原監督らしさがうかがえるが、今のジャイアンツに必要なのは敗戦処理。的にはいい選手であって、強い個性の持ち主である。打撃三部門のすべてに好成績を残せるフルスイングを、単なる大振りとしか理解しない解説者によるバッシングはこれからも続くだろう。特に小笠原にはスロースターターといった印象もあるので、今シーズンジャイアンツが開幕から好スタートを切れなかった時に格好のターゲットとなりかねない。しかし、そんな連中には負けず、小笠原には自らの好成績のみならず、サムライ魂をジャイアンツに注入して欲しいのである。

小笠原よ、あなたが変わるのではなく、あなたがジャイアンツを変えて欲しいのだ。

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