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2007年4月10日 (火)

裏金問題-倫理行動宣言の後と前を分けるべきか否か?

4日の調査委員会の中間発表では2005年の倫理行動宣言以前のライオンズ球団のスカウト活動における裏金の総額、総件数などが明らかにされた。これに関して当の池井優調査委員長や根来泰周コミッショナー代行が倫理行動宣言以前に行われた裏金などの行為が発覚しても不問に付す可能性を示唆している。たしかに2004年の一場靖弘(当時明治大学)栄養費問題を機に定められた倫理行動宣言以後にライオンズ球団が不正なスカウト活動をしていたのが問題視された訳だから同宣言を境にするのはわかるような気もするが…。

スカウト活動における裏金疑惑はかなり以前から噂レベルでは根強く語られていたから、調べればいろいろと出てくるだろう。

一場問題では最初にジャイアンツの件が発覚したが多くの野球ファンはその時に「やっぱりそういうことがあるのか?」と思ったことだろうし、「これが初めてじゃないだろう」とも思っただろう。そして先般の調査委員会による中間発表でライオンズ球団に関する過去の行為の実態が数値として明らかになった。倫理行動宣言以前に関して処分すべきか否かという議論はあるだろうが大前提として最終報告では可能な限り実名で明確にしてもらいたい。

プロ側は2005年の倫理行動宣言を一つのターニングポイントを境とするという理屈があるだろうが、アマ側にはそれ以前から日本学生野球憲章など明文で禁じている訳だから、どこまで遡及するかという程度の問題はあるにせよ、名前の挙がったアマ選手、関係者に関しては事実であれば「有罪」になる訳だ。

倫理行動宣言以前の裏金などをこの際不問に付そうという意見では主にスポーツ新聞などの論調に観られるが、過去においては選手を囲い込むというか、本人だけでなく家族、指導者などを抱き込んで自球団に有力な選手を引っ張ってくることこそがスカウトの腕だという風潮があった訳で、それを今さら否定して当時のスカウトや球団フロントに処分を科したり、選手にも処分を科すのは如何なものかというのが一般的なようだ。

しかし敗戦処理。として同調できないのは過去においてはそういう行為もスカウトの腕だったということに関して、確かにそういう時代の風潮だったのだろうがドラフト制度における「戦力の均衡化」、「契約金などの高騰化の防止」という基本理念にまるっきり逆行していた一連の行為をあたかもスカウトの腕だとか、球団の企業努力の範囲などと評価するのはどうしても認めたくない。今のような倫理行動宣言が無く、明文による禁止規定が無いからと言って、それを正当化する意見には賛成できない。何故なら現実に、ドラフト制度がありながらその趣旨に逸脱したスカウト活動によって選手の入団が決定され、それによって歪んでしまったバランスによって公式戦の戦いが実際に行われてファンが喜んだり哀しんだりしたという事実があるのだ。

しかしそうは言っても、現実には遡れば遡るほど「証拠」が薄くなるだろうし、現実に処分を下そうにも「証拠不充分」の件が続出するだろう。過去の事例に対して処罰を下すのは非現実的だと思う。

例えばこれまで事あるごとに取り沙汰された、ジャイアンツの高橋由伸が慶應義塾大学時代にジャイアンツを「逆指名」した際の経緯に関して元スワローズのスカウト部長だった片岡宏雄氏などは週刊誌で実名を挙げて「ジャイアンツが高橋の父親の借金の肩代わりをしたからジャイアンツを逆指名した」などと告発しているが、これは「栄養費」ではなく一応はれっきとした「不動産売買」である。これだけを以て学生野球憲章違反を問う訳には行くまい。

また熊本工業の三年生だった伊東勤が年齢制限で高野連の規定で試合に出場できないとわかると、ライオンズが「練習生」という形で契約し、所沢高校の定時制に転向させてドラフト会議での指名を経て入団したのも、当時においては「練習生」というのは制度で認められていた訳だし、ドラフトで他球団も指名可能だったのにライオンズ以外は指名しなかった訳だからそれだけでは違法性はない。要するにどのような手口が黒で、どのような手口が白なのかの線引きも極めて困難である。

そもそも刑罰は過去に不遡及との原則もある。

また契約金の標準額を超える部分を「裏金」と認定すると標準を定めていること自体が独占禁止法に抵触しかねない。「だから標準額なのだ」という言い訳を用意しているのだろうが、そうであれば超えたことを取り締まれない。

さらに難しいのは、ライオンズの場合は倫理行動宣言の後に不正なスカウト活動をしたから過去に遡って調べられて、過去の事例まで明らかになりつつあるのだが、他球団は少なくとも倫理行動宣言以降には一切不正な活動をしていないのであれば過去に遡っての調査には協力する筋合いはないとしてシラを切れることである。4日に発表された数値を観れば、まさか十二球団の中でライオンズだけがやっていたと信じるファンは少ないだろう。やっていない球団もあるだろうが、やっている球団もあるとか、多かれ少なかれ逸脱した行為はあっただろうとファンは疑念に持つだろうと言うことだ。

可能であれば球団単位ではなく機構直轄の第三者機関を設置して全球団のスカウト活動を調べて欲しいところだ。理想的には現役選手の中で最も古い選手が対象となった1981年秋のドラフト当時まで遡って調べて欲しいところだ。

変な比喩になるが、現在地球規模の問題と化している「環境保護」の件にせよ、「環境保護」云々が叫ばれるまで「環境保護」に無頓着に環境を破壊してきたから「環境保護」を意識せざるを得なくなった訳で、だからといって過去の「環境破壊」を処罰できるかというとそういう訳にはいかず、仮にそうしたとしても破壊された環境が元に戻る訳ではない。それと同じような気がするのである。

ただ、取り締まれないにしても、全てを白日の下に晒すまではやって欲しいというのはある。誰が悪いとか言うのでなく、ドラフト制度の精神に反し、裏で莫大なマネーが動くことになり、その結果が現在の日本プロ野球界に及ぼしている影響は甚大なものであろうことは容易に想像できる。

敗戦処理。の意見としては(興味本位も込めて)全貌究明希望。その場合アマチュア側の関係者だけが処分されてプロ側は不問になるという、はっきり言うと収賄だけが咎められて贈賄が沙汰無しというアンバランスな結果になることも考えられる。しかしそうなればさすがに、アマチュア側が処分されたケースに関してだけでもプロ側の関係者が自発的に処分を受けるということになるだろう。過去の事例に関しての落としどころとして、いかがなものだろうか。

今にして思えば、一場問題の際、あくまで発覚した三球団(ジャイアンツ、ベイスターズ、タイガース)固有の問題とし、当該球団の自主的な調査による発表、処分のみで幕引きしたのはいつか今回の様なことが起きた時のために過去を不問にしようという合意があったのかもしれない。想定外に過去のことをほじくられたのは、この調査委員会が球団主導ではなく、球団の親会社の主導だったから…と言うのは穿ちすぎだろうか…。

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