2008年春、MLB開幕戦が三度日本で開催される!
18日に行われた十二球団代表者会議で、来年2008年にMLB開幕戦を東京で開催することが容認された。実現すれば2000年、2004年に続き、三回目になるが、今朝(19日)のスポーツニッポンによると日本で開幕戦を行うチームの一方は松坂大輔、岡島秀樹が所属するボストン・レッドソックスに決まっているようだ。両投手にとっては凱旋試合となり、マスコミやファンに注目の一戦になること間違いなし。ただ、前回ニューヨーク・ヤンキースとタンパベイ・デビルレイズによる開幕戦が行われた時には日程がパ・リーグ公式戦と重なったことで物議を醸した。果たして今回は?
(写真:2004年のMLB開幕戦に先駆けて行われた巨人対ヤンキース戦で本塁打を放ったヤンキースの松井秀喜)
スポーツニッポンの報道は微妙だ。十二球団代表者会議に出席した在阪球団幹部による「在京パ球団からもそんなに反対はなかった」とのコメントを載せる一方で松坂の古巣、ライオンズの本音?も合わせて掲載している。
◆レ軍の開幕戦開催について、松坂の古巣である西武・依田常務は「松坂うんぬんではなく…。その時期はパ・リーグは開幕している。影響が出るのでは、という話は(会議の席上で)した」と複雑な表情。同常務は「何とかならないか、というのは西武だけでなく、パ・リーグとして話が出ていた」とした。
また、同紙の編集委員、小林敏晴氏はコラム「記者の目」で、マリーンズの瀬戸山隆三球団社長兼代表の「パは“好ましくない”、セは“やむを得ず”という状況」とのコメントを紹介し、パ・リーグが来季は北京五輪対応で例年よりさらに一週間開幕を早める方針があることもあり、集客面でダメージを受けることを危惧している。ちなみに2000年のニューヨーク・メッツとシカゴ・カブスの開幕戦の際には両リーグの開幕戦が同じ週の開催で、その直前に組まれたため、両リーグのオープン戦と、メッツ、カブスが日本のチームと組む親善試合が重なった程度だったが、2004年ではパ・リーグの開幕第二戦の日に東京ドームで巨人対ヤンキース戦を含む二試合が組まれ、大リーグ開幕戦も火曜と水曜ということでパ・リーグ公式戦と重なった。大リーグ開幕戦の主催者の一つに巨人の親会社、読売新聞社が名を連ねていたことから余計に「パ・リーグ軽視」との批判が挙がり、同年に合併騒動に端を発した球界再編騒動が持ち上がったことから「読売によるパ・リーグつぶし」との見方も出たほどだった。
【参考】過去に日本で行われた大リーグ開幕戦と日本プロ野球の日程。
2000年 メッツ×カブス
3/27(月) 西武×メッツ、巨人×カブス 他NPBオープン戦1
3/28(火) 西武×カブス、巨人×メッツ NPBオープン戦なし
3/29(水) カブス×メッツ NPBオープン戦なし
3/30(木) メッツ×カブス NPBオープン戦なし
3/31(金) NPBセ・リーグ開幕戦
4/1(土) NPBパ・リーグ開幕戦
2003年 マリナーズ×アスレチックス 実際は開催されず
3/22(土) 西武×マリナーズ、巨人×アスレチックス
3/23(日) 福岡ダイエー×アスレチックス、巨人×マリナーズ
※3/22、23ともNPBオープン戦5試合
3/24(月)
3/25(火) アスレチックス×マリナーズ
3/26(水) アスレチックス×マリナーズ
※3/25、26ともNPBオープン戦なし
3/27(木)
3/28(金) NPBセ・パ両リーグ開幕戦
2004年 ヤンキース×デビルレイズ
3/27(土) NPBパ・リーグ開幕戦、セ・オープン戦3試合
3/28(日) 阪神×デビルレイズ、巨人×ヤンキース
※パ・リーグ公式戦3試合、セ・オープン戦2試合
3/29(月) 阪神×ヤンキース、巨人×デビルレイズ
※NPBパ・公式戦3試合。セ・オープン戦なし
3/30(火) ヤンキース×デビルレイズ
3/31(水) ヤンキース×デビルレイズ
※3/30、31ともパ・公式戦3試合。セ・オープン戦なし
4/1(木)
4/2(金) NPBセ・リーグ開幕戦
「パの在京球団」といえばライオンズとマリーンズ。
ライオンズは松坂の強い大リーグ移籍願望に応える形で、ポスティングシステムによる移籍手続きを取り、エースを失う対価として移籍金約60億円を得たが、今度はその松坂人気を見込んだ興行により集客にダメージを受けるというのは、敗戦処理。としてはライオンズに対しては同情する気は起きない。自業自得というか、身から出たさびというか…。
マリーンズは今月、レッドソックス球団と2010年までの戦略提携を結んだばかり。「週刊実話8月2日号」(日本ジャーナル出版刊)によると、レッドソックス側はこの時結んだ提携内容の一つ「コーチや選手を派遣する人事交流」をタテに2009年まで契約が結ばれているボビー・バレンタイン監督を来季の監督に引っこ抜く構想だそうで<爆笑>!、実現すれば松坂、岡島の凱旋試合どころではなくなる。ちなみにバレンタイン監督は2000年の日本開催開幕戦の際のメッツの監督。二試合で一勝一敗だったがその一勝がベニー・アグバヤニのサヨナラ満塁本塁打によるものだったことはあまりにも有名。
日本プロ野球の人気低迷の一因に、実力のあるスター選手の大リーグへの流出があることは間違いない。1997年にスワローズ球団からメッツにFA移籍した吉井理人に始まって、木田優夫、佐々木主浩、新庄剛志、小宮山悟、松井秀喜、高津臣吾、藪恵壹、城島健司、そして今シーズン前の岡島まで毎年日本球団から大リーグへのFA移籍がとぎれなく続き、イチロー、石井一久、松坂大輔、井川慶、岩村明憲といった選手はFA権取得前にポスティングシステムで夢を叶えた。これだけ流出すれば、人気に影響するのは当然だ。そういう意味ではMLB組織は日本球界にとって脅威の存在であることは間違いないのに、その脅威の存在が我が家で興行をするのを容認せざるを得ない状況というのは如何なものなのかという思いがある。
日本に住む日本の野球ファンにとっては海を渡らずに松坂や岡島だけでなく、大リーグのプレーヤー達のプレー、それも掛け値なしの真剣勝負を観ることの出来る格好の機会であるが、NPBにとって、市場を荒らされると言っても過言でないこの興行にはどのようなメリットがあるのか?特に一方のリーグだけとはいえ、公式戦とバッティングするのは如何なものか?上記の参考資料の通り、MLB来日チーム相手にオープン戦を組んだチームに興行収入のメリットがある程度と、興行の主催者に名を連ねればまた読売新聞社が利益を得るということくらいなのではないか?
しかし、読売新聞社だけを悪者にするのは筋違いだ。
前述したように、前回2004年の日本開幕戦では読売新聞社が主催に名を連ねている。二年に一度の日米野球に選手を派遣したがらないヤンキース球団が選手どころか球団まるごと日本に来たのはジャイアンツ、読売新聞社の尽力が大きかったそうだ。二年に一回の日米野球を、毎日新聞社と交互に主催してきたノウハウもあろう。そしてそれよりもなにより、社団法人日本野球機構も主催者に名を連ねているのである。NPBもれっきとした主催者であり、ということはこの期間の国内試合の客足や視聴率に影響が及ぼうと、この興行が成功すれば主催者としての特典にありつける立場なのだ。
18日に行われたオーナー会議では大リーグ中継に多くの時間を割くNHKに対してもっと日本のプロ野球を扱ってくれるように申し出ることで合意したそうだが、その一方で、自分たちはテレビ画面どころか生で観ることの出来る機会を提供し、主催者としての利益を得ようとしている<苦笑>。
ただ、(日本の野球界にとって)そこにいわゆる「全体最適」の発想があるかどうかは過去の例を見ると甚だ疑わしいといわざるを得ない。
かくいう敗戦処理。自体、2004年の時にはパ・リーグ公式戦二日目の日曜夜に行われた巨人対ヤンキース戦を東京ドームで生観戦した。
通常日本で行われる日米野球の類ではいわゆる日本流の鳴り物応援は禁止されるが、この時はジャイアンツのオープン戦扱いということで鳴り物がいつも通りだったのだが、静かなはずのヤンキースの攻撃で、松井の打席のみ巨人ファンで埋まったライトスタンドを中心に「ホームラン、マ・ツ・イ!」という巨人時代の定番のコールが流れ、その中で松井が第一打席で本塁打を放つという異様な盛り上がりを見せた試合を満喫した。第二打席ではトランペット演奏でヒッティングマーチも奏でられた。マウンドの高橋尚成はさぞやりにくかったことだろうが。
こういう輩がいるからNPBも主催者に名を連ねて、市場を荒らしに来る連中の興行に手を貸すのであろう<苦笑>。敗戦処理。は2000年には日本初のMLB同士の対戦、公式戦を生観戦した。マイク・ピアッツアの右打席からライトスタンドに突き刺さるような本塁打に唖然とした記憶は今も生々しい。また幻となった2003年の時には巨人対マリナーズ戦のチケットを購入してあった。この時は開催そのものが中止になったため、スポンサーのam/pmジャパンから期間中開場で売る予定であったろうグッズ類が段ボールで送られてきたのが印象的だった。(もちろんこれとは別にチケット代も返金された)
球界構造改革の一環として、ドラフト制度にメスが入れば、その余波でFA制にもメスが入る。一説では国内他球団への移籍とMLB移籍で資格に差をつけるという案が有力だという。ポスティングシステムは経営状態が芳しくない球団にとって、MLBへの移籍を一年でも早めたい選手がいれば渡りに船の制度だから存続するという意見が強いそうだが、昨シーズン終了後にポスティングシステムで主力選手を流出した球団が今シーズンここまで軒並み苦戦しているのは単なる偶然か?そんなこんなの状況で、我が国のプロ野球の興行が行われているまさにその時に、脅威の存在であるMLB開幕戦という興行を打たせて良いのか?こういう問題こそ、いつものようにかけすぎるほどの時間をかけて議論すべきではないのか?
MLB開幕戦が行われる期間だけ、ライオンズやマリーンズがビジターで遠征に出ればすむなどという問題でないということに気づくべきだ。少なくとも商売敵との認識で考えるべきであろう。
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