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2007年7月 2日 (月)

巨人はかつて大きなオロナミンCだった-強くても 強くてもなお 視聴率 高くならざり じっと手を見る

2日、ビデオリサーチからジャイアンツ戦の6月度のテレビ視聴率が発表され、昨年の同月と比べ、0.2ポイントダウンの9.0%だったことが判明した。同社の調査が始まって以来、6月度では過去最低だったという。これで今年に入ってから4月の10.8%、5月の10.2%に続き、3ヶ月連続で同月比で過去最低をマークし続けている。今年のジャイアンツは開幕から順調に白星を積み重ねている。過去二年調子を崩した交流戦も十二球団で二位の高勝率をマーク。今のところは「強い巨人」が帰ってきた感じを抱かせる。しかしそれでも上がらぬ視聴率。これが直ちにプロ野球人気の低迷とまでは敗戦処理。は言い切らないが、少なくともジャイアンツ球団は深刻に受け止めなければならない現実だろう。

もう半月近く前の話であるが、敗戦処理。が通勤途中の都内JR某駅前でオロナミンCが配られていた。見ず知らずの製品ではないので、気軽に受け取って会社に着いた後、一気に飲み干した。オロナミンCといえば、ジャイアンツファンとしては忘れられない、「元気はつらつ・オロナミンC!-オロナミンCは小さな巨人です!!」のコピーとともに代々のジャイアンツの主力選手が出演していたCMが思い出される。

早いものでジャイアンツの選手達がオロナミンCのCMを離れてから六年がたった。テレビCMが新しいシリーズに刷新され、長嶋茂雄監督の一回目の監督在任時から続いた人気シリーズの終焉は当時話題になった。(松井秀喜のみ別アイテムで継続)ジャイアンツの選手が出なくなった新しいCMは2002年3月から始まり、現在では上戸彩が様々なジャンルの旬な人物と競演するシリーズが定着している。

ジャイアンツが最後にリーグ優勝を果たしたのが2002だったからその後の成績低迷、ファン離れとほぼ時期を一にする。大塚製薬のマーケティングは素晴らしいと舌を巻かざるを得ない<苦笑>

もっとも東京ドームのライトスタンド後方にはオロナミンCの大きな広告が今だに掲出されているし、先月の10日にジャイアンツの試合を観に行った時に東京ドームで行われていた柴田勲氏のトークショーでは観客にオロナミンCが配られていたから今でもつながりは深いようだが。

ジャイアンツ戦のテレビ視聴率の低迷は1990年代から既に囁かれていたから、いわゆる「右肩下がり」状態が長く続いていることになるが、今思えばオロナミンCの人気CMが打ち切られた時に本気で危機感を持つべきだったのではないか。

世間一般にテレビ視聴時間が短くなっているというデータもあるらしいが、大量に露出されるテレビCMというものは知らず知らずのうちに視聴者の脳裏に焼き付くものだ。もちろんこれはジャイアンツファンや、プロ野球ファンに限らない。ジャイアンツやプロ野球にさほど興味を持たない人達に知らず知らずの間に「オロナミンCは小さな巨人です」のフレーズが刷り込まれていくのである。これは極めて重要なことだ。こういう日常的な刷り込みが浸透すると、変な例えだが、ジャイアンツファンの男性の恋人が、男性と一緒に東京ドームに野球を観に行くことに抵抗を感じないのである。もちろんこの場合、恋人の女性は基本的に野球に特に関心がない場合を指す。もちろん、一度や二度、彼氏に連れられて東京ドームのライトスタンドに行ったくらいではその女性はジャイアンツファンにはならないだろう。しかし野球にさほど興味を持たない人の生活の一部に野球が入り込んでいく。そうして野球ファン以外の人を無意識にでも巻き込むことで、テレビのチャンネルを野球中継に合わせる人が増えていくのである。それがジャイアンツ戦のテレビ視聴率の仕組みだと敗戦処理。は勝手に分析しているし、その下支えになっているのが大量に露出される清涼飲料水のCMに当たり前のようにジャイアンツの選手達が出ているという現実なのである。

野球、あるいはジャイアンツにさほど関心のない人達に無意識下に浸透させると言うことは極めて重要なのである。最近では少なくなったが、ジャイアンツ戦のテレビ中継がかつて30分から1時間近く延長される等と言うことがまかり通っていたのはジャイアンツ戦中継以後の番組のドラマなり、バラエティなりの視聴者―野球ファンとは限らない―人達に「プロ野球中継なら延長されて自分の好きな番組の放送時間がずれても仕方ない」と認識される(あるいは諦めさせる)からであり、その裏付けがCM出演などによる無意識な意識付なのだ。時代は違うが、漫画「巨人の星」の存在、大橋巨泉による「野球は巨人、司会は巨泉。ウッシッシ」というセリフ、流行語にもなった「巨人、大鵬、卵焼き」というフレーズもそう。あのフレーズがあることにより、巨人というチームが無茶苦茶強いということを誰もが認識するのである。現在そのような誰でも知っているフレーズは残念ながら存在しない。

* 「江川、ピーマン、北の湖」「楽天、曙、ハルウララ」というのは別。

オロナミンCに戻そう。人気長寿CMだった「オロナミンCは小さな巨人です」は2002年に終わった。そして皮肉なことに、現在好評継続中の上戸彩のシリーズの第1弾での競演相手はファイターズに入団した当時のSHINJOだった。さすがにジャイアンツの主力選手シリーズからすぐにSHINJOに乗り換えたのではなかったが、かつてのジャイアンツの牙城に非ジャイアンツながらその存在は全国区であるSHINJOだったというのは今にして見れば非常に示唆的だ。

そして個人的に何より苦々しいのは、あれほどの歴史のある人気長寿シリーズを打ち切ってまでリニューアルした新CMが「21世紀の裕次郎を探せ!」キャンペーンの協賛だったことである。名前を書くことすら苦々しいが、徳重聡、せっかくの大役を担ったのに、その後サッパリじゃないか<苦笑>

ビデオリサーチのテレビ視聴率は通常関東地区の地上波テレビ放送のデータである。実際には近年ではCSやBSデジタル放送での中継にシフトしており、それらで観戦している視聴者がカウントされていないのであれば、厳密な意味でテレビでジャイアンツ戦を観戦している人が減っているとは言いきれないのである。

例えば敗戦処理。はジャイアンツ戦のテレビ中継で日本テレビとNHKのBS(あるいはデジタルハイビジョン)とで双方で中継している時は原則完全中継のNHKにチャンネルを合わせる。またTBS、テレビ朝日、テレビ東京の系列局が中継する試合の場合はそれぞれの局の系列のBSデジタル局で同時中継していることがほとんどだから、BSデジタルの方にチャンネルを合わせる。試合の途中から中継を始めて、最後まで放送しないかもしれない放送より、原則最後まで放送する方を選ぶのは自然なことだと思う。敗戦処理。以外にもこういう発想の人は少なくないのではないか。ただし、これをする人が増えれば増えるほど、ビデオリサーチが調べるジャイアンツ戦の視聴率は下がり続けることになる。しかしそもそも、ベランダに追加のアンテナを付けたり、別料金を払って契約しないと観ることが出来ないなんてジャイアンツのあるべき姿ではないはずだ。

そうはいっても、東京ドームで行われるジャイアンツ戦のチケットが数年前に比べてはるかに容易に入手出来るようになったから、実際にジャイアンツの試合を観たいという人は減っていることは事実だろう。それが一部で言われるように、次から次へと他球団の主力選手を引っこ抜いてくる形でチーム成績が上がっても、ファンが素直に喜んでいないからだとは敗戦処理。は決めつけないが、多分にそういう要素はあるのだろう。

ひねくれた中学生だった敗戦処理。はCMを観ながら「『オロナミンCが小さな巨人』なら巨人の選手は『大きなオロナミンC』か?」とテレビに突っ込んでいたものだが、新しいシーズンになると「今年は誰がCMに加わるのかな?」と注目したものだった。

それを思い出すと、たとえ今年、小笠原道大、谷佳知、イ・スンヨプらが笑顔で「オロナミンCは小さな巨人です」と叫んでも共感出来ないものなぁ<苦笑>

P.S.
蛇足だがライオンズは渡辺美里のドームコンサートが終わったときに…

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コメント

長緯様、いつもありがとうございます。

> いつまでも古いスタイルで、言い換えれば読売という企業の論理でジャイアンツの人気を回復しようと思っても、時代は確実に変化しているのだから、そこを読み取らないと、ジャイアンツ自体が衰退の一途を辿っていくのは確実でしょう。

確かにそうですね。

敗戦処理。が挙げたような、かつてのジャイアンツ-大袈裟に言えば社会現象とも思えた事例というか、時代の再現を求める発想自体が旧いのかもしれませんね。

このオフに滝鼻卓雄オーナー自らがトップセールスで各テレビ局に主催試合の中継を買ってもらおうと奔走したそうです。オーナーはジャイアンツがビジターになる試合を中継する局の上層部とも話をし、「地上波で巨人戦が生放送されることの重要性」を説いて回ったそうです。

BS、CSの普及は著しいものがあるといっても、現実にはまだ地上波の影響力にはかなわないそうです。

奇をてらわず、本流を追いかけるオーナーの姿勢は評価出来ると思いますが、球場に足を運んだファンにまたすぐに次も来ようという気にさせるようなサービスとか、そういう点で遅れているような気がしてなりません。

投稿: 敗戦処理。 | 2007年7月 6日 (金) 00時16分

ジャイアンツの人気低下の件については、いろいろ書きたいことがあるのですが、長くなるので手短に。

テレビ中継の視聴率や観客動員(水増しはあったにせよ)の推移を見ても、テレビ中継で試合を見せる、そして中継を見たファンが興味を持って球場に詰めかける、そしてジャイアンツの選手を覚えてファンになっていく・・・といった図式がはっきり作られたのは、V9時代ではなくて、70年代後半から80年代、90年代いっぱいにかけてであったと思います。

ところが、2000年ころからこの傾向が怪しくなり、近年は人気低下に歯止めが利かなくなった感があります。

単純な疑問ですが、ジャイアンツ球団としては、人気低下について、リサーチとか、ファン側の立場にたった調査は行っているのでしょうか?

いつまでも古いスタイルで、言い換えれば読売という企業の論理でジャイアンツの人気を回復しようと思っても、時代は確実に変化しているのだから、そこを読み取らないと、ジャイアンツ自体が衰退の一途を辿っていくのは確実でしょう。

投稿: 長緯 | 2007年7月 4日 (水) 19時56分

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