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2007年7月24日 (火)

選手会が野球機構相手に裁判を起こす!?-で感じたこと

既に20日のスポーツニュースや21日のスポーツ新聞でご存じの方も多かろうが、日本プロ野球選手会がFA権取得期間の短縮などの構造改革が遅々として進まぬ現実に業を煮やし、裁判に訴えることを示唆した。東京ドームでオールスターゲームが行われる試合前に日本プロ野球選手会は臨時大会を開いて意思統一と発表を行ったのだ。オールスター第一戦の結果を伝える紙面のすぐ横に「裁判」の文字がデカデカと躍ったインパクトは強い。たしかに2004年のストライキ決行後に創設した構造改革協議会が機能していないのは事実だが…。あれから三年。敗戦処理。は当時参加していたインターネットの議論系掲示板で「球界よ、喉元を過ぎても熱さを忘れるな」とのフッターを常時使用していたが、熱さを忘れてしまったのはいったい誰なのか?

東京ドームでオールスターゲームが行われる試合前に日本プロ野球選手会は臨時大会を開いて意思統一と発表を行った。今回選手会側が問題視しているのはFA権の短縮を要望しているにもかかわらず、遅々として進まぬ点。裏金問題に絡んでドラフト制のあり方が見直され、アマチュア選手に入団時に希望が叶う制度が無くなればその見返りにFA権取得を短縮するという動きはあるようだが、現実に動いているのかは定かではない。短縮されるにしても国内移籍のみで、大リーグへの遺跡は従来通りにすべきとの声もある。球団が選手を拘束する権利である、野球協約上の「保留権」の見直しを裁判を通して戦う目論見のようだ。

◆「これまで行ってきた労使交渉では12球団の利害が絡んで進展がない。裁判しか手段はないと判断した」(労働組合・日本プロ野球選手会会長、宮本慎也)

テレビのニュースや新聞報道でこの件を知ったファンのほとんどは内容よりもまず「裁判」とか「訴訟」という言葉に衝撃を受けたのではないか?

それはそうだろう。何故なら「裁判」に訴えると言うことは野球界の外の力に解決を求めることになるからだ。2004年の球界再編騒動では日本プロ野球史上初のストライキという事態に至った。「プロ野球選手会は労働組合である」「合併強行ならストライキも辞さず」-当時の騒動の中で一人歩きしたこれらのフレーズもかなり衝撃的だった。何しろ当時よりさらに約二十年前に正式に労働組合として東京都から認可されているにもかかわらず、一部の球団幹部の中には「プロ野球選手の集まりが労働組合の訳ないだろう!」と無知をさらけ出していた者もいたほどで、かなりの衝撃だったが、それでも選手会と機構側という、あくまで野球界の内側での争いにとどまり、お互いに不本意な点もあったろうが決着をみた。それが今度は「裁判」である。

根来泰周コミッショナー代行が「裁判を起こす権利はある訳だから」とのコメントを残していたが、まさにその通りで間違いなく権利はある。しかしその行使にはたから観ているファンが違和感を覚えるのは想像に難くない。

三年前の球界再編騒動の時にはあまりに性急に球団合併を取り決め、なおかつ球団数が減っても新規参入を受け付ける姿勢を見せぬ機構側に対して敢然と選手会が立ち上がり、そしてその姿勢に感銘を受け、自分たちの愛する日本のプロ野球が衰退していくのはたまらないと立ち上がったプロ野球ファンが署名運動などの形で明確に拒否反応を示し、機構側VS選手会+ファンという図式が成り立ち、最後には機構側も折れざるを得なくなったが、今回も同じような図式になるだろうか?

三年前の球界再編騒動であれだけ多くの野球ファン、いやさほど野球に興味のない層をも巻き込んで世論が盛り上がったのは、過去に何度か味わった身売りや球団移転の悲しみ、苦しみといったレベルではなく、ひとつの球団が吸収合併されるという、選手には雇用の問題が直面し、ファンも応援する球団の拠り所が亡くなるという死活問題なのである。しかもそうしたファン心理も何も考えず「パ・リーグでもう一組の合併話が進んでいる」との風説を流布して煽る輩までいた。

しかし今回はFA制度の改革、「保留権」の見直しである。確かに重要な問題であることには変わりない。どのような形に落ち着くかで将来の日本プロ野球界のあり方が大きく左右される問題であることは確かだ。かつて大リーグの選手会がストを起こした時には「金持ち同士のケンカ」と世論を白けさせたこともあると言うが、その二の舞になりかねないように思う。

三年前には古田敦也会長率いる選手会を「正義の味方」かのように崇めていた世論を今回も同じように引きつけられるか。現実に↓のように極めて第三者的で、冷静な論客も論陣を張っている。

()とむプロ野球研究所~球界の危機はいまだ続いている内7月7日付育成選手に降格されかけた日本人選手と、いきなりクビになった外国人選手の差。

( http://blog.goo.ne.jp/eaglesflyfree/e/bc05ab6c498d549c2fc3e692cb05ff6a )

ファンは「選手会の言うことだから支持する」から「選手会が言っていることが正しいと思えば支持する」に変わっているだろう。その空気を読み誤れば選手会は自滅する。

ここまでおつきあい下さった方の中には「敗戦処理。は選手会の主張(FA権取得短縮)に賛成なのか反対なのか自分の意見を全く述べていない」と思っている方もあるだろう。敢えてここまで表明していないのだ。議論の対象である、例えばFA権取得期間の短縮というテーマに関する是非論がどこかに置き去りにされ、裁判に持ち込むという方法論が妥当かどうかという議論にすげ替えられていくことを最も懸念しているからだ。もしも敗戦処理。が野球機構側の人間で、選手会の動きを阻止しなければならない立場だったとしたら、マスコミやジャーナリズムを巧く味方に付け、FA制度の是非などから話題をそらし、裁判制度に持ち込もうとする選手会の姿勢を非難する方向に導いてファンが選手会を支援しないように誘導するだろう。

選手会にしてもそうだ。

「FA権取得期間を短縮しないのはけしからん!」という主張でいくのか、

「三年前にスタートした構造改革協議会が機能していないじゃないか?話が違うぞ」という主張で行くのか、これを誤ると、得られる者も得られなくなるだろう。前者はヘタをすればただのワガママに映るが、後者なら機構の落ち度を追求している点で共感を得られる。

選手会の石渡進介弁護士は「歴史的、世界的に交渉で保留権撤廃を勝ち取った例がない。訴訟は避けられない」とコメントした。野球でいえば、比較されるのはアメリカの大リーグだろうが、あちらは訴訟大国で、こちらはもうすぐ裁判員制度が実現するとはいえ、「裁判」とか「訴訟」というと引いてしまう国民性があることは否定できない。長い歳月を費やして「勝訴」を得たにしても、ファンが誰も拍手しないなんてことでは意味がない。もちろん選手会として戦う以上、「ストはやりませんが、徹底的に戦います。」「我々の主張は間違っていないが、裁判にはかけません」と最初から言う馬鹿はいまい。「伝家の宝刀」としてちらつかせるのは必要だ。

しかし野球の世界で「伝家の宝刀」と例えられる投手の決め球フォークボールが、落ちなければホームランボールになるし、落ちすぎるとワイルドピッチになるのと同じように「伝家の宝刀」が諸刃の剣になることを忘れないで欲しい。

さて、最後になったが選手会が求めるFA権の短縮について。

FA制度単独で考えず、逆指名などの制度をなくすことに絡めて考えて、ドラフトでの過剰競争をなくし、裏金が飛び交うような悪習を去らせたとして、選手には希望する球団に入団できる確率が下がるというデメリットがあるから、FA権取得までの期間短縮は避けられない措置と考えている。選手会が提唱している年数だけでなく、年齢を考慮した資格取得というのも検討の余地があろう。

また国内移籍と大リーグへの移籍に差をつけるべしとの主張には耳を傾けたいがグローバルスタンダードが求められる風潮になじまない。どうしてもというならポスティングの廃止が先決と観る。途方も付かない臨時収入の魅力を金満でない球団は捨てられるのか?正直、具体的にどのくらい短縮するのがベストかは結論出ていないが、個人的には国内移籍のみ一年短縮、ポスティング廃止を主張したいところだ。

ただこうした流れの中で、FA権取得が緩やかになり、権利を行使できる選手が増えるとなると、一部の実力選手が恩恵を受けるケースが増えるが、今よりも弱肉強食の形が強くなり、そうでない選手が割を食うことになろう。年俸の減額制限も緩和せざるを得なくなり、年俸が高いベテランが簡単に解雇されるケースが今より増えるだろう。一軍で活躍できぬまま退団していく選手も、今までより短い年数で退団を余儀なくさせられるであろう。労働組合である日本プロ野球選手会がそうしたデメリットも踏まえた上で裁判にかけてまでメリットを得ようとするのであれば、それは一般的な労働組合のあり方である、すべての組合員がともに権利を勝ち取って分かち合うというモデルとは明らかに一線を画するが、そこまでの覚悟があるのならそれはそれで従来型のモデルと異なっても敗戦処理。は支持したいと思う。

何故ならばそもそもプロ野球の選手は全員が揃って幸せになると云うことは現実的には無理だからである。チームが優勝しても、一律に給料が上がる訳ではない。中には解雇される者もいる。誰かがスポットライトを浴びれば誰かが陽の当たらない側に回るという基本的に競争社会である。チームとチームの競争以前にチームの中での競争がある。そういう背景を無視して労働組合という携帯だからといって一般的なモデルと比較しても無理であり、最低保障制度の引き上げなどの交渉は行うにせよ、競争に勝った者がより多くの栄誉を得るという形での条件闘争になるのは必然的だからである。根本的に終身雇用を前提とした雇用形態の労働組合とは異なってしかるべしと考える。

FA権取得期間の問題は複雑な要素が絡み合い、進展が遅いのも頷ける点はある。只、速度が遅いのと、止まっていて前に進まないのとは大きな隔たりがある。機構側は(戦略上難しいだろうが)経過を明かせないのが辛いところで、選手会やファンからみて、何もしていないで時間だけ過ぎているように想起させているのがヘタクソだと思う。ファンも議論に加われるよう、選手会の言ったもん勝ちのような事態にならないよう、戦略が求められるだろう。

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コメント

こんばんは。

まず。
「保留権の撤廃」
実際そこまで目指してはいないと思いますが、もしそうなった場合には、
「現在のところは、少数の成功した外国人選手に限られる移籍(今季イーグルスからファイターズに移籍したグリン投手のような事例)」
が、
「一億円内外の契約金を貰って今年入団したルーキー(田中、金刃、岸、大引、吉川選手等々)にも今オフ移籍の自由が与えられる」
わけですから、これはもう、日本プロ野球の破滅でしょう。

次に。
「どうして裁判なのか?」
こちらの点は、本来ならば
「FA権取得期間の短縮=労働条件?の改善」
ですから、裁判よりもむしろストライキに馴染む案件であるはずです。
しかし、敗戦処理。さんもご指摘のように、
「球団合併は、所属している選手が困る以上に、その球団を応援しているファンが困る」
そう定義することが可能だったのが、
「FA権取得期間の短縮は、選手が利益を享受するほどには、(多くの)ファンにとってはメリットがない」
そのように受け取られてしまう可能性が大なわけで、であるならば、
「ファンを味方につけられない、スト」
よりは、
「ファンからは見えない(関係がない)ところでの、裁判」
選手会としてこちらを選ぶ方が勝算アリ、ということなのではないでしょうか?

肖像権の問題がこっそりと?裁判で争われているのもこれと似たようなことなのではないかと思いますし、「裁判」という言葉にビビって(まぁ、ないとは思いますが)球団側が折れても、選手会としての目的は果たせるわけですから。

投稿: Eagles fly free | 2007年8月 4日 (土) 18時03分

Eagles fly free 様、コメントをありがとうございました。

お返事が遅くなり、申し訳ありません。

今回の件と三年前の件の最大の相違は、三年前の合併騒動の時に比べると、ファンから観れば死活問題とは必ずしも思えないのではという点だと思います。

であるような問題提議にもかかわらずいきなり「裁判」などという話題が一人歩きしたら、選手会の主張はその内容以前の段階でファンから拒否反応を示されかねない要素を孕んでいると個人的には思っています。

一つ気になったのがスポーツニッポンが「保留権の撤廃」などとかなり先走った仮定で裁判になった場合の展望を書いていたこと。他紙では「FA権取得期間の短縮」という具体的な目標が掲げられているのに同紙は飛躍した争点で論評していました。選手会はそこまで狙っているのでしょうか?

個人的にはFA権取得期間の短縮の是非を争うレベルなら、裁判云々でなく、球界内部の話し合いで決着をつけるべしと考えますが、その土俵にもなかなか上がれないので強硬手段も辞さずという強い意思表示で「裁判…」と強調したのではと邪推しています。

投稿: 敗戦処理。 | 2007年8月 1日 (水) 23時46分

おはようございます。

とりあえずは冷静な文章に留まっている記事の引用及び、大して冷静でも無い記事(笑)にTB頂き、誠にありがとうございます。

それはさておき。
個人的には、
「裁判?権利なんだから、訴えればいいんじゃない?」
そう思っていたのですが、仰る通り、一般的なインパクトを考えると決して悠長に構えられる問題ではありませんね。


それぐらいは、当然計算しているはずですよね…(-.ー;)ぼそっ@選手会

投稿: Eagles fly free | 2007年7月25日 (水) 04時58分

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