ヤンキース井川がウエーバーに!!-で今後の日本選手ポスティングの相場に影響あり!?
今日(12日)の日刊スポーツの見出しは衝撃的だった。「大損覚悟ヤンキース 井川放出」と大々的に文字が躍り、このオフにポスティングシステムで日本のタイガースから井川慶を獲得したニューヨーク・ヤンキースがその井川を一年目のシーズン途中の今、ウエーバーにかけているのだという。井川に対する入札金は30億円と言われ、今の時点で放出となればどう考えてもヤンキースは大損。移籍が決まればヤンキースが井川との間で結んだ2011年までの契約は移籍先の球団が負担することになり、ヤンキースはこれ以上の負担をしなくて済むというメリットがあるが日本のタイガース球団に払った30億円の移籍料は戻ってこない。ことは井川本人の問題だけでなくスカウティング部門の責任問題に発展するのも必至だろうが、その影響はそこまでにはとどまらない?
日刊スポーツの記事によると、本来は非公開で行われるウエーバー手続きを全米ネット局FOXがホームページでスクープし、スポーツ専門局ESPNなどが続いたようだが、既に7月末でトレード期限を終えている大リーグ。ヤンキースは井川をウエーバー公示にかけ、ヤンキースと同じリーグのアメリカン・リーグに井川獲得の意思表示はなく、ナショナル・リーグでも下位球団からは同様でサンディエゴ・パドレスが交渉権を得ている状況だという。実はトレード期間にこの両球団の間で井川のトレードが検討されたそうだが、その時は交換要員で折り合いがつかなかったそうだ。ただその後パドレスのローテーション事情に変更が生じたためパドレスが2011年までの契約を引き継ぐ可能性があるとのこと。同紙によると五分五分だそうだが。
今シーズンが始まる前のオフ、日本プロ野球からポスティングシステムで大リーグ入りしたのは井川の他に松坂大輔、岩村明憲と計3人。中でも衝撃的だったのは松坂を落札したボストン・レッドソックスの入札金額が日本円にして60億円だったということ。
ポスティングの場合、落札球団と落札金額は公開されるが他球団の入札金額はおろか、落札球団以外の入札球団名も公開されない仕組みになっている。それでも松坂のポスティングの際にはヤンキースも入札に参加したことは間違いないと見られている。むしろヤンキースこそが松坂獲得の本命と当初は目されていたほどだった。
松坂の落札金は松坂の投手としての能力に加え、日本からの放映権収入、グッズ類の販売収入や今も流されているテレビCM出演のギャランティーなど様々な「ジャパン・マネー」を含む展開でトータルに考えれば回収可能な金額だそうだ。
そしてその松坂を取り損ねたヤンキースの新たなターゲットが井川だった訳だが「ジャパン・マネー」という点では既に所属している松井秀喜の日本での所属球団ジャイアンツとともに東西の人気球団であるタイガースに所属していることから、松井に続いて井川を獲得することで日本の二大人気球団(それも残りの十球団を圧倒するファンの数を誇る)の主力選手を獲得することで日本市場の囲い込みにさらに拍車がかかるという読みもあったそうだ。そのような背景もあり、松坂獲得失敗の二の舞を何としても避ける意味でついたお値段が30億円だったそうだ。
かけた金額の大きさを考えれば、可能な限り井川に活躍してもらうことによって投資した金額の回収を目論むのが普通だと思うのだが、ヤンキース球団は早々と諦め、ウエーバーで井川の引取先を探している。大リーグのシステムでは例えばパドレスなりが井川を獲得すれば、ヤンキースが井川との間で結んだ2011年までの契約(年平均4億8000万円)は移籍先球団が引き継ぐことになるそうで、ヤンキースはさらなる費用の発生を防げることになるが当然ながら日本のタイガース球団に払った30億円は戻ってこない。
このことは普通に考えれば、井川獲得の責任者の責任問題に発展することが想像できるが、敗戦処理。の興味はヤンキース球団の人事問題ではなく、今後のポスティング動向。
一選手のトレードマネーにしては高額すぎるほどの高額が動いた今オフのポスティング市場。市場の競争原理を考えれば、今シーズン終了後に日本プロ野球界から有力選手がポスティングにかけられるようなことがあれば、選手の実力とは無関係に市場原理で想定外の高額が飛び交う事態も予想できたが、これに歯止めがかけられるのではないか?
敗戦処理。は個人的にはポスティングシステムそのものに反対の立場だが、一面では資金難の球団にとって一か八かの大型金銭トレードのチャンスがめぐってくる制度と言える。少なくとも松坂と井川のケースでは赤字球団の年間の赤字額くらいが動いているのだ。
日本選手の評価の相場、獲得後に付帯的に見込める「ジャパン・マネー」に対するお値段も変わってくるのではないかということだ。
資金難の球団で大リーグ志向の強い選手を抱える球団にとっては歓迎できない話だが、そうなるとポスティングシステムそのものを見直し、あくまでFA権取得後の選択肢の一つという位置づけにし、その代わりFA移籍の際には日本球団並みに補填金を払ってもらう制度の確立にシフトすることも将来的に考えられる。そしてドラフト時に希望球団に入れる「希望枠」「逆指名制度」の廃止の見返りとしてFA権取得までの期間を一年間短縮…と敗戦処理。の妄想は膨らんでいく<笑>。
余談だが今シーズン前のオフに松坂、井川、岩村をポスティングで手放したライオンズ、タイガース、スワローズは今のところ昨シーズンより成績を落としている。そりゃそうだ。チームの看板選手が抜けたのだから。三球団には大リーグ球団からの多大な移籍金をくれぐれも有効に活用して欲しい。日本球界の宝とも言えるスター選手を売り飛ばした以上、その見返りに得た大金の使い途は自ずと限られるはずだ。
それにしても、ヤンキースだからこそ大金を投じた選手をあっさりと諦められるという見方もあるだろうが、信じがたい決断力である。松坂のポスティング移籍に関連して「60億を投資できるMLBのからくり」という本が刊行されたが「30億を平気でドブに捨てられるヤンキースのからくり」という本が刊行される日が来るのでしょうか?
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