球界も「もったいない…」の発想を忘れるな!
いつからこんな習慣が定着してしまったのだろうか?サヨナラ勝ちの試合を祝福するシーンで、ヒーローがチームメートにもみくちゃにされるというこれまでのお約束に、ミネラルウオーターを身体にかけるという儀式が加わった。試合のテレビ中継などでお気付きの方も多いことだろう。サヨナラ勝ちは劇的で、全身で喜びを表現し、ベンチ全員で勝利の感激に浸ろうというのはわかるが、「ちょっとやり過ぎじゃないの!?」と違和感を憶えているのは敗戦処理。だけだろうか…?
世の中には「もったいない」運動が普及しつつあるなかで、時代に逆行するようなパフォーマンス。選手の皆さん、いや選手会の皆さん、一度考え直していただけないものでしょうか?
話は今年の交流戦の時期に遡るが、こんなことがあった。
◆稲葉&稲田にコカ・コーラから感謝状
日本ハム稲葉篤紀外野手(34)と稲田直人内野手(27)が「コーラ」から感謝状を受け取ることが15日、分かった。“感謝”されたのは6月17日中日戦(札幌ドーム)。0-0の9回1死二塁から稲田がプロ初のサヨナラ打を放った際、稲葉がミネラルウオーターではなくコーラをかけて祝福したことだった。16日ソフトバンク戦(札幌ドーム)で「北海道コカ・コーラボトリング社」の角野中原代表取締役社長が直々に2人の元を訪れ、感謝状を贈ることになった。
同日の劇的なシーンを見て、同社製品の「コカ・コーラ」を使用していることから異色の“表敬訪問”が実現することになった。稲葉は「やってみるもんだね」と思わぬ反響にしたり顔。その時にユニホームがベタベタになり「ホント、臭いんですよ!」とクレームをつけていた稲田も「そうらしいですね」とまんざらでもなさそうだ。
ただもう1人、コーラをかけていた人が…。鶴岡さんも、お忘れなく-。
何と、水どころかコーラだそうです<苦笑>。
これは今年のセ・パ交流戦、6月17日に行われた札幌ドームのファイターズ対ドラゴンズ戦で0対0の九回裏にサヨナラ安打を放った稲田直人に対し、ファイターズナインが祝福し、その中で稲葉篤紀が水ではなくコーラをかけていたことを稲田がヒーローインタビューで告白したのを受けて、そのコーラを製造、販売していた北海道コカ・コーラボトリング社が感謝状を贈ることを決めたというものだ。
プロ野球のシーンでこのような大はしゃぎと言えば、真っ先に思いつくのは優勝が決まった時のビールかけでしょう。こちらもシャンパンファイトなどとバージョンアップされることもありますが、もう何十年も前から行われている優勝決定時の恒例行事となっています。
しかし、その優勝時のビールかけですら、過去には社会情勢、即ち野球界以外の諸々の事情で自粛せざるを得なかった例があります。「もったいない」の概念からすれば大量のビールやアルコール飲料を浪費するこの恒例行事でさえも槍玉に挙げるべきなのかもしれませんが、あくまでも「優勝」という、一年の初めの極寒の時期から辛く厳しい練習などに耐え、長い闘いに勝ち抜いたチームだけに許されるご褒美として、(社会情勢などの事情がない限りにおいては)大目に見てあげても良いのではという気がします。
しかし、一試合のサヨナラ勝ちという程度で、ミネラルウオーターやコーラなど、本来は飲むためにあるものを無駄にするような使い方をしてしまうのは如何なものか。勢いだけでやっているのなら、もう一度考えて欲しいなと。
ましてや、当の飲料メーカーが感謝状を出すなどとはいったい何を考えているのか?と呆れるばかりです。
この会社はスポーツ事業への協賛活動は非常に積極的であり、本社では世界的なスポーツイベント、オリンピックでも大きくスポンサード活動をしています。オリンピックに比較するとあまりマスコミに取り上げられないスペシャルオリンピックスにも積極的に関わり、スポーツの文化的な一面に多大な理解を示してくれる、この点に関しては素晴らしい企業だと個人的に思っていたのですが今回の対応にはガッカリです。
一つにはこの試合がNHK総合テレビで地上波で全国中継された試合だったこともあるでしょう。サヨナラ安打を放った稲田はヒーローインタビューでアナウンサーがこの話に振った時に「水じゃなくてコーラなんです」と説明していたシーンを敗戦処理。も目撃した。
もちろん、敗戦処理。がご褒美として認めるという優勝を目指す上で、一試合一試合の意味づけは重要な訳で、敗北寸前からの逆転サヨナラ勝ちなどは特に重要な一勝に位置づけられることが多く、格別な一勝として過剰に大はしゃぎしたくなるのも理解できますが、あくまで優勝しないとビールかけなどの大はしゃぎはご法度と言うことにして、試合のサヨナラ勝ち程度では貴重な資源を無駄遣いするのを自粛するという発想に切り替えられないものでしょうか?
そしてあろうことか、サヨナラ試合でヒーローに水をかけるこのパフォーマンスは敗戦処理。が生観戦した今年5月のイースタン・リーグの試合でも見受けられました。九回裏に逆転サヨナラ勝ちを果たしたシーレックスでしたが逆転サヨナラ安打を放った新沼慎二にシーレックスナインがペットボトルの水?と思われる液体をかけて祝福していたのです。まだまだ一人前とはいえず、球団の扶養家族ともいえるファームの選手にまで浸透しているのであれば、そろそろ歯止めをかけた方がよいのではないでしょうか?
話は遡ること三年前。パ・リーグ二球団の合併表明に端を発した球界再編問題ではいろいろなことが議論されました。現実に経営が成り立たない球団が出てきたことで、球団や機構側の対応の拙さを指摘する声ばかりでなく、選手の年俸が高すぎるのでは?という意見がファンやマスコミの中から出てきました。経営規模に対して人件費がかかりすぎるという一面を槍玉に上げたのでしょう。そんな時にある掲示板でファンの意見として、「野球界全体のコストを見直すために選手に給料を下げろと言うのは、年俸で生活している選手にとって生活の仕方を見直せと言っているのに等しいから、そこまで選手達に求めるのなら我々ファンも、野球界のコスト削減に協力できることをするべきではないのか?」と提唱していた人がいて、具体的には「もしも球場でジェット風船を飛ばすことを止めれば、清掃に関わるコストが削減出来て少しでも経営が楽になるのであればファンとして協力すべきなのではないか?」という意見でした。
これは斬新な見方ですね。その掲示板にも同意する意見や、「ジェット風船とばしは野球観戦の一部となっているからそれを無くしたら観客動員に翳りが生じてコスト削減効果よりも収入減の方が大きくなるのでは?」といった慎重論や「ジェット風船の製造業者が潰れたら誰が面倒を見るのか?」という反対論が出ていました。
無責任な第三者的意見を言わせてもらえば、ジェット風船の製造、販売に携わっている方達が職を失うのも一大事ですが一球団分のプロ野球選手が職を失い、プロ野球自体に魅力がなくなってしまうこととどちらを取るかと言われたら…。
話は飛びましたが、要はあの球界再編騒動の最中には、野球を愛するファンの間では球場の清掃に関するコストにまで真剣に議論が交わされていたということを言いたいのです。それから約三年が経ち、日本のプロ野球界が大きく変革を遂げた訳でもないのに、資源を無駄にする、世の中の動き「もったいない」に逆行するようなことをサヨナラ試合の度に行っていて本当に良いのでしょうか?
プロ野球選手が個人として、あるいは球団として、さらには選手会として様々な形で社会貢献をしているのは知っています。それはそれで非常に尊いことだと思います。しかしその一方で「ものを大切にする」という、様々な社会貢献活動の根底にあるような精神を粗末にしているのが信じられません。
ちなみに「もったいない」運動とは2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境副大臣、ワンガリ・マータイさんが日本の美徳の真髄ともいえる言葉「もったいない」を世界の標準語にしようと考えた運動で、マータイ氏はグリーンベルト運動と呼ばれる植林事業で知られる生粋のエコロジストとして有名ですが、日本語の「もったいない」をそのまま世界的な環境保全運動のキーワードにしています。そしてこれを受けて日本でも地方自治体などがいわゆる3R活動を中心に「もったいない」運動を繰り広げています。
それでなくても、プロ野球の世界では自分の失敗を棚に上げてヘルメットやバットを投げつけたり、道具に八つ当たりをするという、野球以外のスポーツではほとんど有り得ないと思われる蛮行が習慣として横行しています。これらに共通していることは「プロ野球界内の論理」だけで終結しているということです。
時あたかも、日本プロ野球選手会は長年機構側と議論しようにも先に進まない保留権に関して裁判を起こそうという動きをしています。この件に関しては敗戦処理。も当ブログ2007年7月24日付「選手会が野球機構相手に裁判を起こす!?-で感じたこと」で触れましたが、たとえ長い歳月をかけて裁判所のお墨付きをもらったとしても、プロ野球ファンの心をつかまなければ本当の意味での「勝利」を選手会が勝ち取ることは出来ないでしょう。そしてファンの心をつかむためにはミネラルウオーターやコーラを飲まずに人の身体にかけて大はしゃぎするという行為が妥当なものなのかということを今のうちに見直しておいた方がよいと思います。
何故なら三年前の球界再編騒動で選手会がストライキを断行してまでも圧倒多数の世論の支持を得たのは野球ファンのみならず、多くの国民を味方に付けることに成功したからだと敗戦処理。は分析しているのですが再度圧倒多数の世論を味方にするためには上述したように「プロ野球界内の論理」で終結していてはだめで、ましてや世間の常識、目指すものに逆行していては論外だと思うからです。ですが現実には、よりによってファイターズは北海道コカ・コーラボトリングから感謝状までもらいました。どんどんエスカレートするかもしれません。歯止めをかけるなら今しかありません。
トレイ・ヒルマン監督、これからは「シンジラレナ~イ」ではなく「モッタイナ~イ」をキーワードにしては如何!?
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