ありがとう、トレイ・ヒルマン監督-総括するのはまだ早いけれど。
観客を約1時間45分待たせて開始した今日(30日)のマリーンズ対ファイターズ戦は、やはり鎌ヶ谷オールスターズでは天下の渡辺俊介を攻略できる術もなく、先発の武田勝のいたいけな好投があったからこそ引き締まった試合になりましたが7イニングを無失点の武田勝を引き継いだ金森敬之が八回に同点にされ、九回裏にサヨナラ負けを食らいました。
敗戦そのものは仕方ないなという感じでしたが、試合終了後に、今季限りでの退任が決まっているトレイ・ヒルマン監督が敵将のボビー・バレンタイン監督のエスコートで場内を一周。双方の応援団がお互いの敵将にエールを送る、ホロリとするシーンがありました。
(写真:ライトスタンドに挨拶した後、レフトスタンドのファイターズファンに声援を受けて感謝の意を表明するヒルマン監督〈左〉。右はバレンタイン監督)
ヒルマン監督は昨日(29日)の試合後の優勝監督インタビューで、ファイターズファンのみならず対戦相手のマリーンズファンにも敬意を払い、感謝の意を示していたが、それが単なる社交辞令でなかったことを証明した。
サヨナラ負けという残念な終わり方をした対マリーンズ最終戦だったが、落胆したファイターズナインがベンチに退くのを尻目に突然グラウンドに姿を現し、一塁側からバレンタイン監督も登場して一塁方向から二人で場内を歩き始めた。マリーンズファンの聖地、ライトスタンドの方に歩み寄り、マリーンズファンに感謝の意を表すると、ライトスタンドから一斉にヒルマン・コールがわき起こった。
(写真:ライトスタンドのマリーンズファンに感謝の意を示すヒルマン監督〈右端〉と、エスコートするバレンタイン監督)
マリーンズファンらしい、紳士的な対応だ。二人はやがてセンターから、ファイターズファンの待つレフトスタンドへ。今度はファイターズファンからボビー・コールでお返しだ。
バレンタイン監督は今シーズンで辞める訳ではないので、この返し方はちょっと違うのではないかという気もしたが<苦笑>、ヒルマン監督の挨拶をエスコートしてくれたバレンタイン監督への感謝の気持ちという風に理解しておく。いずれにしても、いいシーンだった。
率直に言うと、ヒルマン監督の采配には今でも疑問に感じている点が少なくない。
先発投手の替え時など、好投してすんなり武田久へつなげる時はまだいいが、中盤でここを凌げばという場面であっさりと変えてしまう。押本健彦や江尻慎太郎がその場面を凌いで継投が成功したように思えるが、そういう時は往々にして武田久の投入時期が早くなり、イニングまたぎのケースが増えてしまう。
野手の起用にしても、とにかく守りに入るのが早い。リードしたら追加点を奪うことよりも、いかにしてそのリードを守るかに腐心し、守備優先のシフトに変える。その結果リードは常に最小限でリリーフ陣は常に細心の注意を払わなければならないいっぱいいっぱいの極限下の登板になる。
そしてそれらとは対照的に不振を極める外国人助っ人を辛抱強く使い続ける。エリック・アルモンテ、ブラッド・トーマス、アンディ・グリーン、ミッチ・ジョーンズ…。獲ってくる方も獲ってくる方だが使う方も使う方だ<苦笑>。
しかしこれらの項目に共通することは一貫性だ。別の言葉を使えば「頑なさ」。ヒルマン采配は2006年のシーズンから送りバントを多用したので融通性がある様に思えるが、一貫性があるというか、スタイルに執着するのが最大の特徴かもしれない。バントの多様も、自分の信じたスタイルだからこそ採用したという点で、広義の一貫性なのである。一貫性のあるリーダーに部下はついて行きやすい。
優勝決定後の各マスコミがしつこいほどに「小笠原とSHINJOの抜けた穴を…」というなか、彼らの抜けた穴を攻撃力を補填するのではなく、武器である投手力、守備力の強化で補おうとする発想。球団がろくな補強をしてくれないからと言ってしまえばそれまでだが<苦笑>、ヒルマン監督は今シーズンも自分が信じた手法を貫き通した。本当に立派の一言に尽きる。
そして昨日の優勝監督インタビューでヒルマン監督がもう一つ感謝の意を示したのが、いい選手を送り込んでくれるファームの存在。
これまた社交辞令で無いことを証明するかのように前エントリーでも触れたような鎌ヶ谷オールスターズによるラインアップ。
もちろん実状は悪天候でケガをされたらかなわんという本年と激戦を制したV戦士達への休養(および首位打者争いをしている稲葉篤紀への配慮)、二日酔いでのデーゲームはしんどいといったところだろう。たしかに今日はスタンドに入ったらアルコール臭かった。(ウソです。)
DHで一番打者を務めた森本稀哲以外、8人のスタメン野手の今季の本塁打は0。通算でも昨年3本塁打を放った鶴岡慎也だけというオーダー。高口隆行に至ってはプロ入り初出場だ。
しかも四番が工藤隆人。せめて小谷野栄一を入れろよと思ったファイターズファンも少なくないだろう。
その工藤が二回表には「四番」初打席でチーム初安打を放ち、六回表の先制期には昨夜に続いてまたまた敬遠策を採られた。昨夜から二試合で計三回の敬遠策。マリーンズには日本球界随一のデータアナリストがいるといわれているが、工藤はよほど物凄い打者とインプットいるのか、それとも飯山裕志や陽仲壽がよほどなめられているのか…。
ただ工藤には、不相応な四番打者としてはともかく、本職の守備で最後の今江敏晃のハーフライナーの打球をダイビングして後ろに逸らした点は苦言を呈したい。悪天候は充分理解できるが、あの場面で最優先に考えなければならないのは後ろに抜かれないこと。あれでは「バッティングはまずまずだが、守りは紺田(敏正)が上」と言われても仕方あるまい。
プロ入り初出場の高口は八木と創価大学で同学年で同期入団。昨年からファームでは二塁のポジションをがっちりつかんでいる。二塁の守備はなかなかに堅実だが、現状では打撃があまりに線が細い。今日もプロ入り初安打を期待したが、格の違いを思い知らされたことだろう。
初出場なのに本職の二塁の他に一塁まで守って緊張の連続だったろうが、一塁を守っていた七回裏、二死一塁からホセ・オーティズの二塁後方、センター前の飛球をセカンド、ショート、センターの三人で追いかけてポテンヒットになった時、二塁ベースががら空きになった。滞空時間の長さを考えると打者走者に二塁を狙われてもおかしくない打球だったが打者走者にその意思がなく、二死一、三塁になった。本職の一塁手なら罰金もののプレーか。
先制点のきっかけとなる二塁打を放った川島慶三には「牽制で刺されるなよ!」とファイターズファンからも容赦ないヤジが。そう、皆失敗をしながら成長する。失敗する機会すら与えられない選手もいることを考えると、川島にはもう一皮むけて欲しい。
さすがに鎌ヶ谷オールスターズでは渡辺俊介攻略は出来なかったが、森本にしろ田中賢介にしろ、ほんの数年前までは今日の頼りない連中と同じ土俵にいたのだ。今日のメンバーや、さらにその後ろに控える予備軍たちの競争がさらにファイターズを押し上げていく。今日の試合を観ていてその思いを強くした。
いささか強引かもしれないが、本当ならまったりと楽しむつもりだった優勝決定翌日ならではの消化試合にヒルマン監督のメッセージを感じた。
バレンタイン監督が再来日したように、ヒルマン監督にもお子さんが独立されてからでいいから再び日本で指揮をとってもらいたい。
ありがとう、トレイ・ヒルマン監督!!
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