ファイターズ吉井理人コーチの引退セレモニーをマリーンズが企画。
マリーンズ球団が、昨シーズン限りでマリーンズから戦力外通告を受けて現役を引退した吉井理人の引退セレモニーを行うことを3日、発表した。吉井は昨シーズンの戦力外通告後、当初は現役続行を希望していたがファイターズから一軍投手コーチ就任の要請を受け、現役引退に踏み切り、コーチに就任した。マリーンズの本拠地、千葉マリンスタジアムでのファイターズとのオープン戦が行われる11日にセレモニーが行われ、吉井コーチは始球式を務める。
大リーグ、メッツ時代にも吉井と監督とコーチの間柄だったマリーンズ、ボビー・バレンタイン監督の発案で実現の運びとなった。バレンタイン監督は吉井が投球する際、打席に入るという。 マリーンズは今年のオープン戦では別途、黒木知宏元投手の引退セレモニーも予定している。13年間マリーンズ一筋だった黒木と異なり、昨シーズンの途中にバファローズから移籍してきてマリーンズでは4試合に登板して0勝3敗、防御率13.14と散々だった吉井に対し、(しかも引退して自軍に残ったのではなくライバル球団のコーチになったというのに)引退セレモニーをするとはマリーンズらしいといえば、マリーンズらしい演出ではないか。 マリーンズよ、ありがとう!
吉井コーチは箕島高校から1984年に旧バファローズに入団。1995年のシーズン目前に西村龍次とのトレードでスワローズに移籍。FA権を取得した1997年のシーズン後に長嶋ジャイアンツなどの誘いを蹴って大リーグ入りしたが、その時の球団がバレンタイン監督が率いるニューヨーク・メッツ。大リーグではその後ロッキーズとオリオールズに所属し、2004年に旧ブルーウェーブに入団し、日本球界復帰。一度はこのシーズン限りで戦力外通告を受けるも、監督に復帰した仰木彬監督に直訴してテスト入団。そして昨シーズン途中、平下晃司との交換トレードでマリーンズ入りした。プロ生活24年間、波瀾万丈の人生だったと言えよう。
吉井コーチは今回のセレモニー実現に関して
「このような機会をつくっていただけて感謝します。近鉄がなくなった今日、ロッテは自分の中で古巣と思っています。マウンドに上がる日を楽しみにしています」
とコメントした。(日刊スポーツ3月3日付紙面より)
たしかに、吉井が最初に入団し、最も長く所属したのは11年間所属した旧バファローズ。残念ながら現在は存在しない球団だ。しかし、旧バファローズは旧ブルーウェーブと合併したのだから、形を変えて存続しているという見方も成り立つが、当の吉井本人が「近鉄がなくなった」という表現をしている。旧バファローズを引き継いだとも言える現バファローズが引退セレモニーを企画しても良いはずだが、そう一筋縄に行かないところが難しい。
そもそも昨シーズン途中の吉井のトレードは、先発投手として結果が芳しくなかった吉井を中継ぎに転向させようとしたテリー・コリンズ監督の起用方針に吉井が反対してトレード志願したのがきっかけと言われている。いわば監督の方針に反旗を翻したのだ。
また、現バファローズで実質的に編成面を仕切っている中村勝広球団本部長は、2004年にGMとして吉井に戦力外通告をした張本人。GMという編成面での最高責任者が下した決断に対し、監督に復帰した仰木監督がテストを受けさせて入団を決めてしまい、しかも復帰した吉井が翌シーズンで活躍してしまったため、中村GMの観る眼の無さが露呈してしまったという経緯がある。監督、GM双方に覚えの悪い選手がその球団から引退セレモニーをしてもらえるとは到底思えない。
そこに、短い期間とはいえ、現役生活の最後にユニフォームに袖を通した球団が引退セレモニーをしてくれるという。吉井と吉井のファンにとっては素晴らしい話だ。
ただしかし、マリーンズも過去には吉井と同様に、現役最終年だけ所属した選手の引退セレモニーをせず、その選手を長く応援していたファンをがっかりさせた前科があるのである。
526試合連続でリリーフ登板(その間先発登板無し)という日本最高記録の持ち主である橋本武広が、2003年のシーズン途中にタイガースから移籍してきたが、成績が振るわず同年限りで現役を引退することになった。その年、マリーンズでは選手として表に出てくる数字では橋本より劣ると言わざるを得ない、何人かの生え抜きの引退する選手に対しシーズン終盤にセレモニーを実施した。敗戦処理。自身、マリーンズのファンでも橋本のファンでもないが、寂しく感じて声なき声を挙げたものだ。
今回のマリーンズが行う吉井コーチの引退セレモニーを機に、各球団はたとえその球団では貢献度が少なくても、球界全体に対しては大きな功績を残した選手がユニフォームを脱ぐことになった場合はその労に報いる機会を確保すべきという視点を持つようにして欲しいものだ。
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