災い転じて…最後の花道?
ジャイアンツ一筋で16年間プレーした選手だから阿部の負傷がなくても優勝決定後であれば花道を用意されたかもしれないが、最終戦のチケットを取っておいてよかったとつくづく感じた試合だった。
先発はエイドリアン・バーンサイドだったが、バーンサイドを登録するためにマーク・クルーンを抹消した。抹消するなら昨日登板したセス・グライシンガーの方かと思った。どう考えても今日はグライシンガーに登板機会は無さそうだからだ。
いずれにせよバーンサイドにテスト登板をさせられたのも、リーグ優勝決定済みだからだろう。優勝が未確定だったらそもそも今日は上原浩治が先発していただろうが、外国人枠の関係でバーンサイドの代わりにグライシンガー、クルーン、イ・スンヨプ、アレックス・ラミレスのうちの誰かを登録抹消しなければならないし、このタイミングで抹消するとクライマックスシリーズの第一ステージから出場しなければならない事態になった時に再登録が間に合わないという事態が発生するからだ。
二日酔いの選手が多いのか、ここはジャイアンツ球場かと錯覚しそうなスタメンの顔ぶれで、消化試合らしく淡々と進んでいった。
バーンサイドが5イニングを投げて無失点と好投した。
これでクライマックスシリーズ第二ステージの六連戦でグライシンガーとバーンサイドを登録を入れ替えて二人とも先発させて六人で回すローテーションの確立に期待が持てる。
* 個人的にはグライシンガーに中四日で二回投げてもらいたいくらいだが…。
しかし、二日酔い打線もスワローズの先発、川島亮を攻略出来ず0対0。スワローズが六回裏にジャイアンツの二番手の久保裕也を攻めて2点を先制した。
しかし、直後の七回表。先頭のラミレスがベイスターズの村田修一に並ぶセ・リーグ本塁打王争いトップタイの45号ソロをレフトスタンドに打ち込む。
(写真:ラミレスが七回表に村田に並ぶ45号を放つ)
さすがに目的意識が高い選手は違う。
それにしても今年の敗戦処理。はラミレスと相性が良かった。45本塁打の二割弱に当たる8本を生で観戦している。東京ドーム公式戦を観戦した5試合すべてに本塁打を放ってくれ、一試合2本塁打もあったので計6本。他に神宮で2本打ってくれた。10試合の観戦で8本塁打だからかなり確率が高い。
そして昨夜のビールかけでただ一人ビールを浴びなかった坂本勇人が同点タイムリー。あげくにビールかけに参加していないはずのスワローズ二番手松岡健一が脇谷亮太の投ゴロをお手玉するタイムリーエラーでジャイアンツが一気に勝ち越した。
村田善則の出番はその裏にやってきた。表の攻撃でスタメンマスクの加藤健に代打、高橋由伸を送ったため村田善がマスクをかぶったのだ。マウンドには今季ファームで苦労をともにした林昌範。この林が、バッテリーを組む相手が今日で現役最後の試合という自覚が全くないのか、走者を置いてワンバウンドを連発。1イニングに二度も暴投を記録。何とか無失点に切り抜けたがクライマックスシリーズで使えるかは疑問だ。
そして3対2のままで迎えた九回表。二死無走者で村田善則、現役最後の打席が回ってきた。
村田善はネクストバッターズサークルの時点から袖で顔を何度もぬぐっていた。
シャッターチャンスを狙う敗戦処理。の手もつい震えてしまった。そしてこの日一、二を争う大歓声で迎えられた。
村田善はヘルメットを取って一礼してから打席に入り、かつてのチームメート、木田優夫からレフトフライを打ち上げて現役最後の打席を終えた。
ジャイアンツの攻撃終了ということもあって、戻ってくる村田善に高橋由伸が花束を贈呈。直後に原監督にも労われた。
最終回は山口鉄也、鶴岡一成のバッテリーで1点差を守りにかかったが、この時ラミレスを退けて守備を固めた。普段の試合なら順当だが、今日に限っては仮に同点にされて延長戦になったら十回表にラミレスに打席が回ってくることを考えたら残してあげてもよかったのではないか?
スワローズも粘りを見せ、青木宣親の前に一死で得点圏に同点の走者を出したが青木は三振。最後に代打宮本慎也という見せ場を作ったが、マスクをかぶった鶴岡が牽制で二塁走者を刺してゲームセット。ジャイアンツは最終戦を飾った。
昨日の試合後、スコアボードのハイビジョン画面でタイガース敗北の瞬間を映し、ジャイアンツナインとジャイアンツファンに歓喜の瞬間を提供した件と言い、今日も試合中でありながら引退する選手に花束を渡すことを快諾したスワローズと神宮球場の懐の深さにはジャイアンツファンとして頭を下げねばなるまい。
それにしても、昨日はもっと凄かったのだろうが、今日、敗戦処理。が観戦した一塁側内野A指定席にジャイアンツファンが多かったのなんの!それはそれで大変心強いのだが、個人的には何だかファイターズが東京ドームを本拠地にしていた時代を思い出し、複雑な心境になってしまった。敗戦処理。は一応相手チームのホームグラウンドで、一塁側で観戦する時には応援しているチームのファンだとわかるような出で立ちでは臨まないようにしている。今日の神宮のようにビジターのファンの方が多いケースもあるが、相手のホームグラウンドの聖域にて観戦する以上それなりのたしなみを踏まえるという考えがあるからだ。もちろん人それぞれの価値観があるだろうから、他人にまで強要するつもりはないが。
今日は雨には遭わなかったが、さすがに寒かった。
昨年もファイターズがリーグ優勝を決めた翌日の試合を観戦して、退団が決まっていたトレイ・ヒルマン監督がボビー・バレンタイン監督にエスコートされて試合後に場内を一周するという粋な演出が行われていたが、今日の村田善も、あのままジャイアンツ球場での打席が現役最後の打席で終わっていたのとは雲泥の差だろう。本当に良かった。
13ゲーム差を引っ繰り返しての逆転優勝はたしかにドラマチックだが、シーズン半ばにして首位から13ゲームも離される失態を防げていれば、こうした引退セレモニーを本拠地である東京ドームでの試合でやってあげられたのにと不満に思うのは敗戦処理。だけであろうか?
P.S.
今日のオマケ
試合後、球場外で売られていたジャイアンツ優勝記念の小冊子。前日の優勝胴上げやビールかけの写真も掲載された速報版。
この時点ではまだ神宮球場周辺のみの限定販売のお宝だ!!報知新聞ではなく、スワローズに出資しているフジサンケイグループの出版!!
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コメント
長緯様、コメントをありがとうございました。
> 村田善則のこのシーンだけでも、すばらしい最終戦だったと思います。自分も涙が出ました。
工藤公康がジャイアンツに移籍してきた時に村田善が工藤とバッテリーを組むことで試合に出ながら成長していくという感じで村田真一との世代交代がなされていくのかなと思いましたが、次の年に阿部慎之助が入ってきたのが運の尽きでしたね。
* しかもホークスから吉永が移籍してきた<泪>。
> こういったいい意味で地味なベテラン選手が下でチームを支えていることもファンとして忘れてはならないと思います。
そういうお考え、素晴らしいと思います。
> 最終打席の相手の投手が木田優夫というのもめぐりあわせを感じました。
画伯の方は大丈夫なのですかね。12日の試合ではメンバーに入っていませんでしたが…。
投稿: 敗戦処理。 | 2008年10月15日 (水) 00時17分
もうナイター観戦には寒い季節ですね。本当におつかれさまです。
村田善則のこのシーンだけでも、すばらしい最終戦だったと思います。自分も涙が出ました。自分は昨夜で燃え尽き症候群だったのですが、観戦された敗戦処理。さんがうらやましいです。
数年前から2軍の試合でブルペン捕手をやったりする村田選手をよく見ましたが、こういったいい意味で地味なベテラン選手が下でチームを支えていることもファンとして忘れてはならないと思います。
最終打席の相手の投手が木田優夫というのもめぐりあわせを感じました。
投稿: 長緯 | 2008年10月12日 (日) 01時34分