もっと頑張れマスターズリーグ
もっとも、江夏監督は打者一人で、池永監督は打者三人で降板してしまったが。
正月の2日にマスターズリーグ観戦をするのがすっかり恒例になった。選手による振る舞い酒、牛嶋木遣会、石川顕アナの過剰なおしゃべり…。それらは恒例と言うより、マンネリに感じられてきた。ただ今年は、顔合わせがこの数年続いた東京ドリームスと札幌アンビシャスの対戦から、福岡ドンタクズに変わった。これは見逃せない。それに当blogの昨年11月10日付 マスターズリーグはだいじょうぶなのか? でも触れたようにマスターズリーグ自体が存続の危機にあり、今年を逃すと来年があるのかという問題もあるので今年も1月2日に東京ドームに足を運んだのだ。もちろん昨年11月16日に同じ東京ドームでアジアシリーズ決勝戦を生観戦して以来、1ヶ月半も生観戦から遠ざかっていて野球に飢えているというのが第一かもしれない。
開門時の混雑を避けて22番ゲートをくぐると、恒例の振る舞い酒は終了していたようだ。今年も尾崎行雄が日本酒を振る舞っていたのだろうか。
しかしその横でこの日の対戦には関係のない札幌アンビシャスの藤城和明がファンにせっせとサインをしていた。藤城は昨年の1月2日のカードで「君が代」を独唱した。敏いとうとハッピー&ブルーに所属していた実績を買われてのものだろうが、今年も「君が代」独唱のために駆けつけたのかなと思ったら違った。今年「君が代」を歌ったのは福岡ドンタクズの投手、三浦政基だった。
今シーズンからマスターズリーグ議長の座を土橋正幸前東京監督に譲った大沢親分が、マスターズリーグ最高顧問として例年通り「あっぱれ!」と「喝!」をまじえた年頭の挨拶をした後に三浦が「君が代」を歌った。余談だが三浦は1974年に日拓ホームから日本ハムが球団を買収して「日本ハムファイターズ」になって最初の公式戦に先発した投手でその試合の勝利投手になった投手だ。即ち日本ハムファイターズにとって最初の勝利投手なのだ。
そして始球式。マスターズリーグをよく取り上げる「サンデーモーニング」(TBS系)絡みの人選かと思いきや、自由民主党の細田博之幹事長が登場。
たしかに、自民党はマスターズリーグをずっと応援しており、毎年、東京ドームに入るとマスターズリーグ用の自民党の機関誌が配られる。このところ毎年、党の顔として挨拶している人物が変わっているのがミソだが<苦笑>。
そしていよいよ、冒頭に記したように江夏豊、池永正明両監督の先発で試合開始。
一回表、江夏が対戦するドンタクズの先頭打者は、「一番・遊撃」でスタメンの、今シーズンからドンタクズに加わった あぶさん。もちろんCGではなく、作者の水島新司だ。草野球歴四十年、長年にわたる野球漫画における野球界への貢献で、原則、元NPB選手で構成されるマスターズリーグに初めて未経験者が入団した。
水島新司は今年70歳になるとは思えぬスイングで、ショートゴロに倒れたものの一塁までの全力疾走に草野球のプロを感じさせた。そして江夏は斉藤明夫にマウンドを譲り、水島新司も守備につかず一回裏から、今季ジャイアンツの二軍内野守備走塁コーチに就任した勝呂壽統がショートの位置に入った。
ちなみに、斉藤にお年玉代わりの背面投げを期待したが、1回と2/3イニングを投げたもののお披露目無しだった。
ドンタクズはこの回に藤本博史の2ランで2点先制。しかしその裏に、ドリームスは池永を攻め、味方の失策を挟み屋鋪要と本西厚博に連打を浴びすぐに1点を返し、池永は一死も取れず降板。東尾修にマウンドを託したが、初芝清のあわや本塁打というレフトオーバーの二塁打で逆転、さらに伊東勤に連打を浴び、安部理の併殺打の間にもう1点追加され2対4とされた。
その後は双方点の取り合い。
5対4から、五回裏にドリームスが、この回で4イニング目になる山内和宏を攻めて本西のタイムリーと初芝の併殺打の間にもう1点を加えて7対4とし、六回表に村田兆治がマウンドに上がり、この日一番の盛り上がりを見せた。
だが、村田の速球は走らない。投球練習の一球目のストレートにスタンドからどよめきが起きたがスコアボードの表示は131km。今年60歳になる男が130km台のボールを放ること自体が凄いのだが、村田にしては物足りない。案の定先頭の出口雄大、吉永幸一郎の短長打に自らの暴投で簡単に2点を返されてしまった。「ミスターマスターズリーグ」も八年目。さすがに…。
ドンタクズ打線ではまだ39歳なのでマスターズリーグのルールで四回以降の出場に限られる吉永幸一郎の打撃が印象に残った。いや打撃以上にその体型。亀山努かと思ったほどだ。四回表に代打で登場し、そのまま一塁に入って3打数3安打。それもきれいにライトとセンターとレフトに打ち分けた。特に圧巻だったのが村田との対決。
センターのスタンドに配した学生アルバイトから球種のサインを読み取ると<冗>、村田のストレートをジャストミート。見事センターオーバーの二塁打。一見リラックスしているかのような構えからの鋭いスイングは現役時代のままだ。
吉永はその次の打席でも石毛博史相手に同点のタイムリーを放った。試合は7対7と盛り上がる。
八回裏。ドリームスが勝ち越しのチャンスを作る。
若田部健一を攻めて、鈴木健と垣内哲也が連打で無死一、二塁。一点を争う終盤に三十歳代のサポートプレーヤーが二人続くのは怖い。面白いのは垣内の打席。右中間のスタンドで主にマリーンズの選手に応援歌を歌う応援団がいて、彼らは「かきうちて~つ~や~」と名前を連呼するだけのマリーンズ時代の応援歌を熱唱し、センターバックスクリーン左に陣取った両軍の選手を応援していた応援団はライオンズ時代に清原和博のテーマを引き継いだ垣内のテーマを歌い、右に左に走っていた。村岡耕一がバントで走者を進めようとしたが、二塁走者の弱冠38歳の鈴木健が遅ぇー!三塁フォースアウト。
その後二死二、三塁となって元少年隊の中野佐資の一打はセンターオーバーの勝ち越し…と思ったら途中からセンターに入っていた市場孝之が背走また背走。完全にホーム側に背中を向けていたので頭を超されたのかと思ったが、何とか追いついてスライディングキャッチ。元佐渡ヶ嶽部屋の力士とは思えぬ身の軽さを見せて大拍手を受けていた。吉永とは好対照。
結局、試合はマスターズリーグの規定で1イニングしかない延長戦に突入。
十回表、ドリームスは阿波野秀幸を投入。しかし先頭の木下富雄の三塁線を襲うゴロが人工芝とアンツーカーの境目に当たったのかバウンドが変わりレフト線に抜けて二塁打。一死から坊西浩嗣が右中間にタイムリーを放ち、ついに8対7と勝ち越した。
そして十回裏。3イニングを投げた若田部に代えて池永監督が送り込んだのはサウスポーの永射保。
そう、ファイターズファンなら名前を聞いただけで頭痛がしそうな、あの永射だ。
うわっ、投げ方も同じだ。変わってねぇ。
しかしドリームス打線は右打者が並ぶ。先頭の垣内はショートゴロに倒れたが勝呂が一塁に悪送球。いきなり同点の走者が二塁に進んだ。続く村岡は三塁前に綺麗なバント。今度は決まって一死三塁と思ったら、アウトに思えた一塁がセーフの判定。一塁塁審はセ・リーグ審判員時代「和製ボブ・デービッドソン」と言われた<!?>あの平光清だ。一塁を守っていた若菜嘉晴が必死に抗議するも、もちろん覆らない。実は平光塁審は六回表にカズ山本のライトのフェンス直撃かと思われる打球をファウルと疑惑の判定をしており、スタンドの年配のファンから「平光じゃなぁ…」と呆れられていた。
これで無死一、三塁。ドリームスは同点のみならず逆転も狙える状況になり、途中出場の佐藤洋が放った打球はライトの頭上を越え、一気に逆転の走者までホームイン。
延長十回裏、ドリームスが9対8と大逆転勝利を飾った。
(写真:サヨナラのホームを踏む村岡<上>。サヨナラ打を放った佐藤洋を祝福するドリームスナイン<下>)
【2日・東京ドーム】
福 211 002 100 1=8
東 401 020 000 2×=9
福)池永正明、東尾修、山内和宏、三浦政基、若田部健一、●永射保-達川光男、坊西浩嗣
東)江夏豊、斉藤明夫、若生智男、川尻哲郎、河野博文、山田武史、村田兆治、石毛博史、五月女豊、○阿波野秀幸-伊東勤、大宮龍男
本塁打)藤本博史1号2ラン(斉藤・1回)
試合は二転三転で盛り上がり、新年早々楽しませてもらった気分だ。しかしこの日購入したマスターズリーグの選手名鑑には日程表が載っておらず、以前として半分近くの試合日程が決まっていない。石川顕アナによる場内実況でもドリームスが何勝何敗だとか、今どこが首位だとか、そういった情報は一切無し。選手個々の、誰それが何試合連続安打継続中とか言う説明は最新のものだったようだが後半戦の詳細が決まっていないようで優勝争いなどには触れられなかった。
不況によるスポンサー収入の減少が響いているようだ。常にこの試合のような緊迫したシーソーゲームという訳にもいくまい。恒例の1月2日開催も、前述したようにマンネリ感が否めない点もある。ましてや目玉の村田兆治に翳りが出ているようでは…。その村田には古巣マリーンズからボビー・バレンタイン監督の後任候補に挙がっているとも噂されている。もしそうなると、マスターズリーグで登板出来なくなる。五人の監督を一新し、議長も交代した。人心一新は「このままでは…」という危機感の表れかもしれないが、まだまだ…。
厳しいとは思うが、もっと頑張れマスターズリーグ、と言うしかない。
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