喜んでいいのか…?侍ジャパン四番打者・稲葉篤紀
この土、日、WBC野球日本代表候補が初めて実戦を行った。原辰徳代表監督のお膝元、ジャイアンツとの練習試合に10対0、13対1と連勝。九人のスターティングメンバーを一~三番、四~六番、七~九番で役割を変える原監督構想の打線の四番にはファイターズの稲葉篤紀が座った。本番でも稲葉が四番を務めるようであれば、ファイターズファンの敗戦処理。としては光栄と喜ぶべきなのであろうが、本当に喜んでいいのか…?
21日に行われたジャイアンツとの練習試合のスターティングラインアップは以下の通り。
(左)青木宣親
(遊)中島裕之
(右)イチロー
(指)稲葉篤紀
(三)村田修一
(一)小笠原道大
(中)福留孝介
(捕)城島健司
(二)岩村明憲
(投)和田毅
青字は左打者。投手は除く。
22日には捕手が阿部慎之助に、先発が涌井秀章だった以外は変わらず。稲葉は二試合連続で四番を務めた。
日本代表(候補)の四番、稲葉は初戦の第一打席にジャイアンツの先発・東野峻から先制スリーランを放って結果を出した。
原監督の構想は一~三番打者が出塁役で、四~六番がつないで還す役。七~九番には意外性を期待するというオーダー。原監督はジャイアンツの入団時の監督だった故藤田元司元監督の影響を受けていると言われているが原監督がルーキーだった頃、ジャイアンツは当時二番打者タイプと思われていた篠塚利夫を三番に抜擢し、一~三番に従来の一、二番的な機能を求め、三~五番ではなく四~六番にクリーンアップ的な役割を求めていた。篠塚は安打製造機として頭角を現し、結果的に三番打者が定位置になったが、原監督の今回の構想に自身の入団時の恩師の構想がよぎったのではないかと敗戦処理。は想像している。
そして練習試合とはいえ、その四番打者に稲葉が指名された。
稲葉は単に結果を残す好打者というだけでなく、常に全力でプレーするのが持ち味で、なおかつあれだけのベテランになっても、殊勲打を放った後のイニングで守りにつく際に「稲葉コール」を受けると、帽子を取って最敬礼する誠実な人柄も垣間見せる。敗戦処理。は「実るほど頭を垂れる稲葉かな」と呼んでいるが、ファンとして誇りの持てる野球人である。
その稲葉が、今日発表された大阪遠征での28人にも残り、昨年の北京五輪に続いて日本代表チームに選ばれることが濃厚であるというのはファイターズファンである敗戦処理。には喜ばしい話のはずなのに「喜んでいいのか…」というのがこの二日間の率直な思いだ。
昨シーズンの稲葉は貧打にあえぐファイターズ打線において66試合で四番に座った。二位の高橋信二の47試合を抑えてチームで最も多くの試合で四番に座った。スタメン四番の試合で11本塁打を放ち、.328をマークしたがこれは三番でスタメン出場した56試合の9本塁打、.268を上回り、貧打戦の中で孤軍奮闘した感じであった。(2月22日付日刊スポーツより)
だが、本来の梨田昌孝監督の構想では稲葉は三番打者。フェルナンド・セギノールの抜けた後の四番打者には新外国人のターメル・スレッジが座るはずであったが、スレッジは開幕から8試合四番を務めただけで高橋に四番の座を奪われ、その高橋が24試合続けて四番を務めた後、稲葉が四番に定着した。つまりファイターズにおいて稲葉の四番起用は苦肉の策だったのである。
その稲葉が十二球団や大リーグでプレーする日本人選手を含めた中から選ばれる日本代表で四番打者に座るとしたら、それはそれで光栄なことなのであろうが、他にいないのか?という疑問の方が敗戦処理。には比重が大きいのである。
そもそも今回の日本代表候補には典型的な四番打者タイプが少ない。33人の代表候補の中で野手は18人いたが、その中で四番打者タイプと言えるのは栗原健太、村田修一、松中信彦の三人だけ。北京五輪で四番を務めた新井貴浩は体調不充分を理由に本人が代表入りを固辞していたし、前回のWBCで四番を張っていた松中と昨年カープで144試合すべてで四番を張った栗原が今日の33人→28人の絞り込みで外れ、村田一人が残った形だ。
これはおそらく、過去のプロが参加した五輪やWBCで一発攻勢が出来なかったことから原監督が学んだことでもあろう。NPBの使用球より飛ばないといわれる国際大会の球の元で行われる短期決戦ではホームランバッターを並べるよりつなぎを重視したラインアップの方が機能するであろうと原監督が考えているのではと敗戦処理。は推測する。
しかし、しかしである。それでも稲葉なのかというのが敗戦処理。の疑問。対ジャイアンツ練習試合のスターティングメンバーから選ぶのならば村田修一か小笠原道大が四番に座った方が打線に落ち着きが生まれると思う。また個人的にはアテネ五輪で四番を務めた城島健司こそ最適任だと思っていたのだが日本を離れて三年を経過し、アテネ五輪の時ほど日本投手陣と呼吸が合っているとは思えないので捕手業の負荷がアテネ五輪の時の比ではないと推測でき、残念ではあるが四番はないだろう。
WBC二連覇を目指す侍ジャパン打線がファイターズの様に稲葉が孤軍奮闘する打線になるなんてことはさすがにないだろうが、稲葉が六、七番当たりでベテランの味を発揮する役回りの打線が組めてこそ、真の日本代表ドリームチームだと思うのだが、どうだろうか。
ところで、先週からのサンマリンスタジアム宮崎での日本代表候補の合宿練習には連日四万人ともいわれるファンが詰めかけたそうだ。土日の練習試合はまだしも、平日の練習にそれだけのファンが集まるというのは期待の大きさを感じさせる。敗戦処理。も見物した昨夏の北京五輪直前の野球日本代表のジャイアンツ球場での合宿練習初日はオールスターゲーム翌日の土曜日で約1,800人といわれた。4,000人収容の球場での1,800人でも多く感じたのに平日の四万人とは恐れ入った。
実は敗戦処理。が見物した北京五輪直前の合宿練習でネット裏の最前列に陣取った十人弱の二十歳前後と思われる男女のグループは、それぞれが自分の贔屓チームから出ている選手にだけにキャーキャーと騒ぎ、他のチームの選手には「普段と背番号が違うからわかんない」とまるで興味を示さないような輩だった。要するに無料でお目当ての贔屓選手を間近で観るチャンスだから開門より遙かに前から並び、最高の場所をジャックして騒いでいるだけという感じで周囲のファンから完全に浮いていた。それでいて練習の合間に売店で日本代表グッズを購入し、代表チームのファンのような顔をして振る舞っていたのであった。
NPBのホームグラウンドのある東京(正確に言えばジャイアンツ球場は神奈川県だが。)と、常時選手が滞在するのは一年でこの時期だけという宮崎県やその近隣のファン層では事情が異なろうが、練習時に外野席を観るとライトスタンドばかりにファンが集まりレフトスタンドががらがらという風景を見ると、要はスーパースター・イチローを観たいというのが第一義の人が少なくないのではと勘ぐりたくなってしまう。
守備練習で亀井義行がナイスキャッチ&レーザービーム返球をしているのだから、もっと拍手してあげてね<苦笑>。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント