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2009年3月14日 (土)

長野久義がどんな選手なのか実際に観てきました。

01 三年前のドラフト会議ではファイターズからの指名を断り、昨年のドラフトではマリーンズからの指名を断った、ジャイアンツ志望の強い長野久義という選手がどんな選手なのかと思い、長野が出る試合を観てきました。

 

(写真:第四打席でタイムリーを放った長野久義)

長野は日本大学四年在学中にファイターズから大学生・社会人ドラフト四巡目で指名されていたが「ジャイアンツ志望」を理由に入団を拒否し、社会人野球のHondaに進んだ。そしてドラフトでの指名解禁となった昨年にはマリーンズから二位指名を受けたがこれまた拒否。この長野の姿勢に対してジャイアンツの清武英利球団代表が今秋のドラフト会議での一位指名を明言した。

 

ファイターズにしろマリーンズにしろ、長野のジャイアンツ志望を知りながらドラフトで指名している。ということは交渉権を得て何とか口説き落として入団させて戦力にしたい逸材だと両球団は判断したということになる。この事実から、かなりの能力の選手なのだろうという推測が出来る。しかし敗戦処理。は長野久義という選手のプレーを球場ではもとより、テレビ中継でも一度も観たことはない。どんな選手なのかわからないのである。例えば「野球小僧2月号」(白夜書房)では長野に関して「走攻守三拍子揃った社会人屈指の外野手。減少傾向にある右投右打としても、貴重な存在だ。2回目のドラフト指名を受けたが、巨人への想いが強く、入団を拒否。2009年こそ、夢を叶えることができるか。」と書いている。これを読めば、走攻守三拍子揃ったバランスの良い右打ちの外野手だとわかる。確かにジャイアンツの補強ポイントと合致している。

かつてジャイアンツ志望が強くてドラフトで他球団からの指名を拒否した例というと江川卓元木大介が思い浮かぶ。江川は作新学院高校時代に豪速球投手としてファンの度肝を抜く投球を見せていたし、元木も上宮高校の主砲として高校生離れした本塁打を放つなど、大器の片鱗を見せていた。ふたりとも日本のアマチュア野球界の中で最も幅広く注目を集める高校野球の「甲子園」という場で大活躍して大物ぶりを周知させていたが、長野にはそれがない。高校時代どころか大学、社会人でもそれらに詳しいファンを除けば、その活躍や大器ぶりを広く周知しているとは言い難い。これはもちろん長野の問題ではなく、日本では高校野球の「甲子園」以外に広く一般の野球ファンにアピールする場がないという環境の問題なのである。これは8日に敗戦処理。がわざわざ観に行ったジャイアンツの大田泰示にも当てはまる。大田の場合は昨秋のドラフト会議の前になって「今年のドラフトの目玉」と取り上げられ、事前の予想では一位指名で半数近い複数球団の競合があるのではと予想され、ジャイアンツが交渉権を獲得して入団に至ると、今度は松井秀喜退団以来空き番になっていた「背番号55」を着けたと言うことで話題になり、その結果、それこそ松井秀喜のように「甲子園」で「伝説」を作った訳でもないのにイメージばかりがファンの間で膨らんでいき、1月の新人合同自主トレでは200人にものぼるファンがサインを求めて並ぶなどと言う事態になった。

 

 

前置きが長くなった。

 

 

要はマスコミの評判を疑うという意味ではなく、そんなに凄い選手なら一度生で確かめてみたいと思い、小雨の中、JABA東京スポニチ大会が行われている神宮球場に足を運んだのである。

 

 

事前の日程表では12日の一回戦を勝ち上がったHondaの二戦目は神宮球場で14日の9:00からとなっていたが、昨夜スポーツニッポン新聞社のホームページで確認したら12:00試合開始に変更になっていた。悪天候を予想しての急な変更だそうだ。そして今日現地に行ってみたら13:00試合開始となっていた<苦笑>

 

 

長野が所属するHondaは東芝を破って二回戦に進出した東邦ガスと対戦。敗戦処理。は長野の打席が観やすいよう、一塁側に陣取った。幸いすいていたので一塁側の最前列に陣取った。本当のことを言うと、対戦相手の東邦ガスの元応援団長に大学時代からお世話になっているので長野の打棒を観たいが試合には東邦ガスに…というのもある。対戦が決まってから元応援団長にメールを送ってみたが返信はなかった。今回はチームを追って遠征してこなかったようだ。

 

 

Photo お目当ての長野は「三番・センター」でスタメン出場。センターで出るあたり、単に打つだけの選手でなく「野球小僧」誌の評通りバランスの良い選手なのかもしれないと期待が高まる。

 

試合は後攻めのHondaが一回表に連打と守備ミスなどで東邦ガスにいきなり3点を先制され、劣勢で始まってしまう。一回裏、一死二塁と反撃のチャンスで第一打席が回ってきた長野だが東邦ガスの先発右腕、水田裕の前に平凡な三塁ゴロに倒れた。スイングスピードが速いというのは素人目にもわかったが、完全にタイミングを狂わされていた。相手バッテリーの勝ち。

第二打席は0対3のままで迎えた三回裏一死一塁。ここでも長野は強烈な三塁ゴロを放ち、東邦ガスの三塁手が一瞬弾きかけるがその後の処理が早く併殺打となってしまった。前出の「野球小僧」誌では長野は一塁駆け抜け4秒11という右打者としては好タイムの持ち主のはずだが、この打席ではそれが活かされなかった。というか、このジャッジは一塁塁審のミスジャッジのような感じだった。一塁はセーフだったように思えた。

守備でちょっと気になるシーンがあった。

四回表の守りで東邦ガスの先頭打者が左中間に飛球を放った。Hondaのレフトを守る吉岡聡が早めに自分で捕るというポーズを見せたが、折りからの強風でどんどん打球が前に流れ、結局ポテンヒットとなって打者走者は二塁まで進んだ。吉岡が風に気付いて慌てて前進しても追いつかなかったのだが、この間センターの長野はほとんど動かなかった。吉岡に対して「前!」というようにかけ声をかけているフシも見あたらなかった。これは外野の中心であるセンターを守る選手としてはいただけないプレーだろう。吉岡の方が年上で声をかけにくかったなどということもあるまい。

五回裏、二死から二番の川戸洋平が左中間に二塁打を放ち、チャンスで長野に打順が回った。ここまで三打席、すべて塁上に走者を置いての打席。マウンドにはこの回から登板の二番手の右投手、長坂常幸。いぜんとして0対3と3点を追うHondaにとって中盤で1点でも返しておきたいところだったが長野は空振りの三振。約百人程度の観客席からため息が漏れた。

このあたりからようやく雨がやみ、傘を閉じて観戦出来るようになったが相変わらず寒い。

3点のビハインドに苦しむHondaだが、四回表の途中からリリーフした二番手の右腕、筑川利希也が小気味よいストレート中心の配球でばったばったと三振をとりまくり、味方の反撃を待とうとする姿勢にHondaを応援する人が多い一塁側スタンド光明が見えてきた。

01_2 六回表の先頭打者から七回表の二人目の打者までの五者連続三振はまさに圧巻だった。

筑川の好投にようやく打線も目をさましたか、七回裏に反撃開始。先頭のDHで出ている上岡正慎がこの日二本目の安打で出ると、一死から四球でつないで一番の吉岡につなぐ。吉岡がライト前に弾き返し、ようやく1点を返す。そして続く川戸の二塁ゴロが併殺にならずに走者が一、三塁に残ると第四打席にしてようやく長野がタイムリー(冒頭の写真)。六回から登板している三番手の右投手、谷口友基の投球を捉えるとあっという間に打球は三遊間を抜けていった。谷口は2イニング目にしてアップアップという感じだったが続く四番・三菱ふそう川崎から移籍の「二代目ミスターアマ野球」西郷泰之の左中間のラインドライブの打球を東邦ガスのレフト山田勝司がスライディングキャッチし、辛くもピンチを切り抜けた。さすが東邦ガスの主将!

 

01_3 西郷はかつて三菱自動車川崎の主力選手としてアマチュア選手限定編成としては最後の五輪となった1996年のアトランタ五輪に松中信彦、井口忠仁、福留孝介らとともに日本代表としてプレーし、銀メダル獲得に貢献した。次の2000年のシドニー五輪からプロ選手が参加し始め、その結果昨年の北京五輪まで準決勝ですべて敗退していることを考えると五輪の「銀メダル」を持っている数少ない現役プレーヤーと言える。所属が三菱自動車から三菱ふそう川崎となり、昨年限りで休部になったことでHondaに移籍してきた一部で「二代目ミスターアマ野球」の異名をとる36歳の左の大砲だ。もちろん初代は杉浦正則。

勢いづいたHondaは八回裏にも先頭の多幡雄一が一、二塁間を破って出塁すると続く矢尾が綺麗に送ってこの日二安打の上岡に賭ける。上岡が期待に応えて右中間にタイムリーを放ちついに3対3の同点に追いついた。ここでHondaは勝負を賭け、このタイムリーを含め3安打の上岡に代走を送った。上岡はDHだから守備の必要はないが貴重な得点源をベンチに下げるのだから、代走の堀内久大を何としてもホームに還したいところ。

東邦ガスも(遅すぎたくらいだが)さすがに谷口に見切りをつけ、四番手の甲斐政孝を投入。Hondaは次打者の初球に早速エンドランを試みるがファウル。すると二球目以降、特に動きはなかった。絶好調のキーマンを下げてまで使う代走だけに足を使った攻めを観たかったところだがこの回は二死一、二塁まで攻めたてるが同点止まり。

東邦ガスの継投に対してHondaは二番手の筑川に心中する感じ。筑川も期待に応え、九回表も三者凡退。四回途中からの登板で打者17人から9三振。失策っぽい内野安打の走者を一人許しただけという快刀乱麻。Honda打線の反撃の影に筑川の好投は見逃せない。

九回裏。一死から長野の五打席目。一発出ればサヨナラと言うことで期待がかかるが、力んだのか一塁フライ。二死となって延長戦かという空気が流れ始めたところで西郷が右足に死球。サヨナラの走者が出た。長打警戒で東邦ガスの外野陣の守備が深くなるなか、多幡の振り抜いた打球は左中間のスタンドまでそのまま飛び込み、延長戦突入目前でHondaがサヨナラ勝ちとなった。

01_4

もともとは長野だけを目当てで観戦した試合で試合開始前からの雨がなかなかやまないから「いっそのことコールドで…」などとよこしまな考えが浮かぶほどの悪天候であったが、雨がやんでからの熱戦ぶりは見応えがあった。

14日・神宮球場】

邦 300 000 000 =3

H 000 000 212X =5

邦)水田、長坂、谷口、●甲斐-鶴岡

H)大田、○筑川-佐伯

本塁打)多幡2ラン(甲斐・9回)=サヨナラ

 

 

長野のスイングスピードの速さと打球の速さは、そういうものを期待してみた分にはそう思えるものだった。もちろんたった一試合観ただけで何がわかるかというのもある。だが、ドラフトで話題の選手というほどの、他の選手を「その他大勢」と括らせてしまうほどの別格感は感じさせなかった。あくまでもHondaというチームのプレーヤーの一人という感じだった。

ともあれ、Hondaは勝ち上がったのだから、さらに高いステップに臨むこととなり好投手との対戦も増えるだろう。スポニチ大会では昨年もドラフト候補として早くから注目されていた田澤純一が大活躍して最高殊勲選手に選ばれている。この大会は一般の野球ファンには馴染みが薄いかもしれないが夏の都市対抗、秋の日本選手権と並ぶ三大大会と位置づける向きもある伝統のある大会だ。

Photo_2 この日もネット裏一回最後列には所憲佐、織田淳哉らジャイアンツのスカウト陣の姿があった。彼らに今日の長野のプレーはどう映ったのだろうか。長野にとって大会はまだ続く。腕を磨いて自信を持って秋にドラフトを迎えられるよう、さらにがんばってもらいたいものである。

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コメント

Eagles fly free 様、コメントをありがとうございました。

あの試合を観戦されていたのですか。悪天候の中、お疲れ様でした。

私よりはるかに多く、生「長野」をご覧になっている Eagles fly free さんだけに説得力がありますね。

4.38秒ですか。

逆に言うと、東邦ガス内野陣もかなりのハイレベルということになるのかもしれませんね。

長野がセンターを守っていたのはHondaによる、ジャイアンツへのサービスだったのかもしれませんね。

この翌日には長野は豪快な一発を放ったとのこと。

長野と言い、大田泰示といい、敗戦処理。が期待して観に行くと、なかなかその片鱗を見せてくれません。

緊張するのでしょうか?

今度の週末には中田翔と大田泰示を見比べられる機会があります。天候に恵まれますように、今から行いを良くしようと思っています。

投稿: 敗戦処理。 | 2009年3月22日 (日) 23時58分

敗戦処理。さん、こんばんは。
詳細なレポート、何度も頷きながら拝読させて頂きました。

私もこの試合(ホンダの試合は四試合)、実際に観ていましたが、殊長野選手については、ご指摘のフライ処理しかり、相変わらず打席での「ラインから離れる距離=50~60cm=だけ」タイロン・ウッズ似といい、甚だ失望することが多く、非常に残念でした。


で終わってしまっては救いようが無いので、一点。

> 第二打席は0対3のままで迎えた三回裏一死一塁。ここでも長野は強烈な三塁ゴロを放ち、東邦ガスの三塁手が一瞬弾きかけるがその後の処理が早く併殺打となってしまった。
---
手元の計測では、4.38秒でした。

タイムだけみれば凄いというほどではないのですが、ご指摘のように強烈に引っ張ってから(且つ、かなり一塁ベースからは離れた位置から)スタートしていることを勘案すると、やはり「ある意味凄い」タイムである、個人的にはそう感じました。

ちなみに。
(人によってストップウォッチを押すタイミングはそれぞれ違い、他人のデータと直でタイムを比べるのはあまり意味がないため)昨年の手元のデータ(サンプル四桁)でいうと、夏の都市対抗で3.98秒という記録がありまして、右打者でこれほどのタイムを叩きだせる選手は、日本のプロアマ全てを含めてもおそらく二桁は居ないはずだと思います。


引き続き私も彼の今後を追っていきたいと思いますが、今度は是非
「野球選手としての、素晴らしい活躍」
こちらを、期待したいところですね。

投稿: Eagles fly free | 2009年3月22日 (日) 22時23分

にしたく様、コメントをありがとうございました。

> 昨日放送されたCX「サキヨミ」にVTR出演、二年前の世界選手権に出場し、キューバの豪腕・チャップマンと対戦した選手として貴重な証言をしていました。

そうだったのですか。それは見逃しました。

オリンピックやWBCに比べるとマスコミやファンの関心度が桁違いに低いですが、学生野球を含めたアマチュア野球界は国際大会をけっこう頻繁に開いていますからプロのドラフトにかかるくらいの選手は多かれ少なかれ国際大会の舞台を経験しているようですが、チャップマン投手と対戦しているとは貴重ですね。

キューバベンチがチャップマンを早めに降板させたのが日本代表チームにとって好都合だったのか、制球難に始まり、三回には連打も浴び始めていたのでベンチが限界と判断したのかわかりませんが、いずれにせよ豪速球の猛威に振り回されずに済み、日本代表が快勝出来たのは何よりですね。

長緯さん宛のコメントでも書きましたが、もう一回くらい長野を生で観たいですね。前評判通り、本当に三拍子揃った右の外野手であるならばジャイアンツとしては何が何でも欲しい選手ですからね。

投稿: 敗戦処理。 | 2009年3月16日 (月) 21時55分

長緯様、コメントをありがとうございました。

> 長野については自分も知識が乏しいのですが、彼のプロ入りに関するいろいろな姿勢に対し机上のみで賛否を論じて舞い上がっている他のブログに比べ、実際に足を運ばれた敗戦処理。さんのレポートはほんとうに濃い内容と思い感嘆しました。

自分もたった一試合観ただけに過ぎないので決めつけは危険ですが、長野だけを目当てに観に行ったにもかかわらず、いざ試合に入ると出場している選手の中の一人という感じに埋没してしまうかのように思えました。

かつて阿部慎之助、鳥谷敬、八木智哉などをドラフト候補ということで彼らだけを目当てに球場に足を運んだことがありますが、ちょっと…。

あとは欲を言えば、プレーにもうひとつスピード感が感じられなかったのが残念ですね。

ジャイアンツの外野陣の高齢化を考えると、25歳の長野であっても魅力的な存在ということになります。残念ながらスポニチ大会は準決勝で敗退してしまったようですが、今後の精進を期待します。そして都市対抗に出場するようなら、また観たいですね。

投稿: 敗戦処理。 | 2009年3月16日 (月) 21時47分

我々ファンの期待の大きさが逆に不安となる長野選手。
昨日放送されたCX「サキヨミ」にVTR出演、二年前の世界選手権に出場し、キューバの豪腕・チャップマンと対戦した選手として貴重な証言をしていました。
来季こそ、その貴重な経験をジャイアンツのユニフォームで発揮してほしいものです。

投稿: にしたく | 2009年3月16日 (月) 11時46分

雨と風の中、観戦お疲れさまでした。長野については自分も知識が乏しいのですが、彼のプロ入りに関するいろいろな姿勢に対し机上のみで賛否を論じて舞い上がっている他のブログに比べ、実際に足を運ばれた敗戦処理。さんのレポートはほんとうに濃い内容と思い感嘆しました。

この試合、新聞のスコアを見て、長野は9回のサヨナラに繋がる活躍をしたのかなと思ったのですが、そうではなかったのですね。
自分もジャイアンツのファンですから、正直に申すと「ジャイアンツに入りたい」という彼の気持には好意を持っています。
将来プロの主軸になる選手はアマチュア時代からなにか違う雰囲気がある、とは昔からよく言われることですが、そう言ったものが今後の大会で感じられるようになればいいのですが。

投稿: 長緯 | 2009年3月15日 (日) 17時52分

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