ファイターズが水上善雄ファーム監督を解任
2008年 33勝61敗2分 勝率.351 第7位
2009年 49勝55敗4分 勝率.471 第5位
水上監督がファームを率いた二年間の成績だ。昨年は度重なる故障者の影響で控えの野手がいないとか、捕手が二塁を守ったり、投手が代打に出る有り様であった。もちろん故障者続出も広い意味で指揮官の責任ということになるのかもしれないが。そして今年は二年目を迎えた中田翔がポジションを三塁から一塁に移し、打撃に比重を置くことが出来たためか打撃開眼、三冠王も狙える打棒を発揮したがその中田が一軍入りして不在となると途端に得点力が落ちるというチーム力の弱さを露呈し、夏場からどんどん順位を下げていった。一軍のインフルエンザ渦で選手をどんどん送り出すも落ちてくるのは病人ばかりで選手層が薄くなる不運もあった。
ファームに求められるのは選手の育成だけではない。
たしかに最大の目的は一軍でチームに貢献できる選手の育成だろう。では一軍でチームに貢献するとはどういうことか?チームの勝利に貢献できる選手を育てるということだ。となれば、ファームも試合においては勝利というものに基本的には忠実にこだわっていくべきなのだ。勝利という最大の目的を掲げ、それに対して個々の選手が何をすべきか、何が出来なければならないか、その前提が崩れては育成は意味を為さない。
さらにそれに加え、初めてプロの門をくぐった新人選手達に社会人として、あるいはプロの野球人としての心構えなどを指導することもファームに求められている。当然その中にはファンへの応対の仕方なども含まれる。それらのどこからどこまでがファームの監督の責任なのかという範囲の問題はあろうが、今回ファイターズ球団は水上善雄監督に対して解任という判断を下した。
この二年間といえば、中田翔の存在を避けては通れまい。
超高校級スラッガーとして大きな期待を受けた中田は野球以前の生活態度などの問題で壁にぶち当たった。先輩のダルビッシュ有も入団一年目にキャンプ期間中の喫煙が発覚して謹慎処分を受けたりしたもののその後大エースとして君臨するようになった経緯からファンの中には中田のやんちゃぶりに好意的な温かい目で見る向きも少なくないようだが、球団はそうは見ないようだ。
個人的には今の日本プロ野球界でホームランバッターの育成には時間がかかるものだと思っている。
松井秀喜や清原和博は例外で、日本人でチームの四番を張る強打者のほとんどは大学、社会人で揉まれてきた選手。金属バットの呪縛から解かれることと、国際舞台を踏むこと。その中でも長距離砲としての存在感を示し続けた選手がプロに入っても長距離打者の道を歩む。一般的には投手受難の時代といわれて久しいが、敗戦処理。は和製大砲受難の時代でもあると思っている。中田翔も大田泰示も真に花開く時期はまだ先だろう。
ファームに求められるのは一軍でチームに貢献できる選手の育成。
鎌ヶ谷水上ファイターズの最大の成果は糸井嘉男の台頭だろう。
糸井が投手から外野手に転向したのは前々任の岡本哲司元監督の時期の2006年シーズン半ばだが、福良淳一監督の時期を経て水上監督になって完全に一軍へと卒業した。そして今季はこの糸井に続けとばかりに陽仲壽をシーズン途中から外野に転向させ、試合に使い続ける。陽の外野転向プランは一軍の故障者との兼ね合いで未完成なまま一軍で登用され、結果的にチームの足を引っ張ってしまうことになったが、内野手時代のスローイングの拙さがいっこうに改善されなかったことを考えると、外野での大化けにかけるしかないのかもしれない。その成果は水上監督の次の人の成果となる。
中田よりも三年先輩の鵜久森淳志も今季は本塁打数を20本の大台に乗せた。好不調の波が激しく、ポンポンと安打や長打が出る時は頼もしいが、そうでない時はチャンスに外野フライの一本も打てずファンをがっかりさせる。中田の入団で自分の進むべき方向性を迷っているのではないかと感じさせる和製大砲候補を水上監督は今季再び使い続けた。そもそも鵜久森の可能性に期待し、最初に辛抱強く使い始めたのは前々任の岡本元監督に遡る。
そう考えると、二軍監督とは因果な商売だ。
敗戦処理。はベースボール・マガジン社の週刊ベースボール誌の携帯のサイトを愛読している。編集部員が日替わりで担当しているコラムがあり、あるとき、水上監督を取材した編集部員の感想が書かれていた。その編集部員は水上監督の第一印象を「こわもて」と表現していた。「こわもてというイメージだったが、実際に取材をしてみると温厚な方だった」と言う書き方をしていた。
水上監督がこわもて?
水上監督の現役時代はオリオンズの人気内野手。一軍に出始めの頃はまだ身体がプロ野球選手にしては華奢で、目がギョロギョロしていたのでチームメートからビー玉というニックネームをつけられていた。今でいうイケメンで、はっきり言って不人気球団であったオリオンズにおいてアイドル的なキャラであった。たしか1981年の正月だったと思うが、歌自慢のプロ野球選手がのどを競い合うオフの番組があった。当時はまだ演歌系の歌が多く歌われる傾向にあったが、水上は当時社会を席巻していた田原俊彦の「ハッとして!Good」を振り付け入りで熱唱してスタジオの客の度肝を抜いていた。そして新学期になって敗戦処理。のクラスではいきなり水上がアイドルになっていた<笑>。そんなジャニーズ系の選手が時を経て記者に「こわもて」と感じられるようになる。四半世紀のギャップがあるとはいえ、監督とはそれほど因果な商売なのだろう。
もちろん当時の水上は単なるアイドルではなかった。あの広岡達朗監督が天狗になりかけていた石毛宏典の目を覚めさせるために水上の守備練習を見学させたというエピソードもあるほどだ。
水上監督とは敗戦処理。もファーム交流会などで何度か会話をさせていただいたことがある。また鎌ヶ谷でのファンとの接し方を観ていると本当に紳士的な方だ。最近でも9月23日の鎌ヶ谷最終戦の試合前。練習の合間にスタジアムから勇翔寮に移動する間にサインを求めたファンや常連のファンに水上監督の方から歩み寄るシーンを目撃した。ひょっとしたらその時点で既に内示を受けていたのかもしれない。プロ野球イースタンリーグメールマガジンでもそれに近いシーンについて書かれている。ファイターズが掲げる地域密着のコンセプトを監督自ら体現しており、年齢的にも長期政権になると思ったのだが。
白井一幸、岡本哲司、福良淳一、水上善雄
近年のファイターズの二軍監督は内部昇格が続いている。その路線からすると小林繁投手コーチの昇格が有力と敗戦処理。は想像しているが、本人が引き受けるかという問題もある。
近い将来、中田、陽、鵜久森が札幌ドームを駆け回る時代が来た時、水上善雄が再評価される時がきっと来るだろう。もちろん達成間近の
今季の一軍のリーグ優勝にも「水上効果」が大きく影響を及ぼしていることは紛れもない事実なのだが。
P.S.
「水上二軍監督と来季の契約を結ばず」の報道にも驚いたがこの記事にも驚かされた。
◆合流 日本ハムのジェイソン・ボッツ内野手(29)が今日3日のロッテ戦(札幌ドーム)から1軍に合流する。
(10月3日付日刊スポーツ)
水上監督への恩返しの意味も込めて、残り試合で狂い咲きして欲しいものだ。
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