辻発彦が舞った! 井上一樹も舞った!!-ドラゴンズがファーム日本一に!!
9月23日に東京ドームでジャイアンツの優勝の瞬間を生で見届け、続いて27日にはジャイアンツ球場でジャイアンツのファームが優勝する瞬間をやはり生で見届けた敗戦処理。としてはファーム日本選手権でジャイアンツが14年ぶりに日本一に輝く瞬間も見届けたい。舞台が、ジャイアンツのファームが最後に日本一に輝いた時と同じ富山市民球場、通称富山アルペンスタジアムとあればなおさらだ。しかし結果は既に書いた通り。相手がドラゴンズとあって、一軍の仇を二軍で討たれた感じだ。
二日前の時点では降雨確率が70%とあってやばいかなと思ったが、好天に恵まれた。時折暑いとも感じられたが、まずは絶好の野球日和といって差し支えあるまい。
試合前のセレモニーの中で、アオダモの植樹式が行われた。地方球場で大きな試合を行う際には恒例となった感じだ。富山市長をはさみ、ドラゴンズからは赤坂和幸が、ジャイアンツからは仲澤広基が選手を代表して登場。両軍のマスコットも花を添えた。
おおっ、まだジャイアンツファンにもその存在が浸透しているとは言い難い背番号1105のイトコがあのドアラと、マスコットとして初の野球殿堂入りも期待されるあのドアラ様と同じ舞台に…!!
ジャイアンツの一軍が今日は東京ドームで本拠地最終戦を行うため、ジャビットファミリー五人衆がファームの集大成の大舞台に参上出来ないという事情もあるのだろうが、よくぞここまでたどり着いたものだ。あとは来年までに何か芸を身につけよう。
先発はジャイアンツが久保裕也でドラゴンズが伊藤準規。
久保は夏場からは一軍で先発ローテーションを担っている投手。ドラゴンズとの直接対決で好投した実績もある。伊藤に関しては、というか伊藤に限らずドラゴンズのファームの選手に関してははっきり言って疎い。正直に言ってウエスタン・リーグまで眼が行き届かない。岐阜城北高校出身でドラフト2位でドラゴンズに入団したルーキーで、ウエスタン・リーグ公式戦にも5試合しか登板していない。
ジャイアンツが一回に先制のチャンスをつかむ。
一番の橋本到がライト線に運ぶ二塁打を放ち、続く中井大介が四球で無死一、二塁と最高の形でクリーンアップを迎える。しかし三番の大田泰示が空振りの三振。
四番の田中大二郎は浅いセンターフライ。五番のイ・スンヨプが四球で二死満塁となるが六番の小田嶋正邦が三振でチャンスを逃してしまう。
ドラゴンズも三回表に一死から一、二番コンビの中川裕貴、柳田殖生の連打で一、二塁としてクリーンアップにつなげる先制機を得るが三番の野本圭が三塁ファウルフライ。四番の新井良太が三振で無得点。
余談だがタイガースの新井貴浩の実弟であるドラゴンズの新井はチャンスに力んでオーバースイングになる感じがお兄さんの不調の時のスイングにそっくりに感じた。
こんな感じで久保、伊藤ともども好投し、0対0のまま試合は中盤に。
ドアラやジャビットイトコもグラウンド整備に参加した後の六回表、一死から野本がセンター前にクリーンヒット。ドラゴンズ四本目の安打だが初めてのクリーンヒット。野本は四番新井の打席で二盗。これが捕手の加藤健の悪送球を誘い、一気に三塁へ。
そして新井が四球で一死一、三塁のチャンスで五番のイ・ビョンギュを迎える。
久保はイ・ビョンギュを詰まらせて二塁ゴロに仕留めるが中間守備の二塁手藤村大介がバックホームも併殺狙いも出来ず打者走者を刺すだけでその間に先制点が入る。ついに均衡が破れ、0対1。
投手戦で一方に得点が入ると得てして相手にも得点が入り出すと言う傾向がままあるが、1点をもらった伊藤が明らかにおかしくなった。
その裏、先頭の中井にストレートの四球。大田の鈍い三遊間のゴロは飛んだコースがよく内野安打かと思ったがショートのトマス・デラ・ロサの好守で二塁フォースアウトになったが田中に四球。イ・スンヨプには足に死球とにわかに制球を乱し、一死満塁。ドラゴンズは小田嶋に対してサイドスローの鈴木義広を投入。ジャイアンツも「サイドスローには左打者」と隠善智也を代打に起用して勝負を賭けるがボール球を振らされて三振。
続く加治前竜一も投ゴロで絶好のチャンスを逃した。
0対1、内野ゴロの間の1失点が重く響く。
何となく盛り上がりに欠けたまま終盤に入り、八回表、続投の久保から柳田が死球。二死二塁となってドラゴンズベンチが動く。イ・ビョンギュに代えて既に現役引退を表明している井上一樹を代打に。ドラゴンズファンのボルテージは最高に。しかしここであってはならないことが起きる。二塁走者の柳田が久保からの牽制で刺されチェンジ。井上の打席は幻に。
となるところだったが井上はDHで出ているイ・ビョンギュの代打だったため退く必要が無く、九回表の先頭打者として再び打席へ。振り切った打球は冒頭の写真の様に打った瞬間にわかるライトオーバーの本塁打となった。最後の力を振り絞ってのベテランの一発と言うよりも、ジャイアンツにとっては致命的な追加点。0対2となった。
* こういうシチュエーションでも代打本塁打と呼ぶのだろうか…?
ジャイアンツがイースタン・リーグ優勝を決めた先月27日の対マリーンズ戦では同じく現役引退を決めている小宮山悟を情け容赦なく打ち込み、勝敗を決定づける2点を奪っていた。まさかこの場面で井上に武士の情けと言うこともあるまい。二十年戦士の経験に負けたというしかあるまい。
またも余談だが、今回のファーム日本選手権の出場メンバーにはドラゴンズでは山本昌も含まれていた。実は山本昌は今季のウエスタン・リーグではチームでは山井大介らの7勝に次ぐ2位タイの6勝を挙げており、投球回数はチーム最多の102回に達していた。それゆえに敗戦処理。はこの対戦カードが決まった時点では先発を山本昌か、短期決戦に強い山井の先発と予想していたくらいだ。
2点リードで最終回を迎えたドラゴンズは、ウエスタンで13セーブを挙げている抑えの切り札、金剛弘樹を投入。
ジャイアンツも走者を一人出せば本塁打で同点という点差だけに期待したいところだが死球の後、欠場したイ・スンヨプの代役の山本和作と隠善の代打の仲澤広基が簡単に倒れ二死。昨年、プロ初打席差四ら本塁打の金字塔を達成した加治前の粘りに期待したが敗戦処理。も負けを覚悟した。
次打者加藤の代わりにスタンバイしているのが實松一成<苦笑>。
加治前も平凡なレフトフライに倒れ、ドラゴンズが2対0で完封勝ち。
【3日・富山市営球場】
D 000 001 001 =2
G 000 000 000 =0
D)○伊藤、鈴木、岩田、S金剛-小田
G)●久保-加藤
本塁打)井上ソロ(久保・9回)
マウンド付近にドラゴンズナインの輪が出来、辻発彦監督の胴上げが行われ、次いで井上一樹の胴上げが行われた。
(写真上:ファーム日本選手権を制し、ナインから胴上げされる辻発彦監督。写真下:辻監督に続いて、今シーズン限りで現役を引退する井上もナインから胴上げされる。)
続いて優勝監督インタビューで辻監督がお立ち台に上がり、ヒーローインタビューで六回のピンチを凌いだ鈴木と九回に本塁打を放った井上がお立ち台に上がった。
そして表彰式。
勝利チーム賞の賞金100万円は辻監督に。敗れた岡崎郁監督には50万円が贈られる。
辻発彦と岡崎郁
ジャイアンツのV9時代以降では最強と言われるライオンズ黄金時代の攻守の要だった辻発彦。ジャイアンツファンにとっては悪夢のような、1987年の日本シリーズ第六戦の辻の好走塁が今も記憶に残ってトラウマになっているファンも少なくないのではないか。そしてその三年後、同じ顔合わせの日本シリーズでジャイアンツが0勝4敗と完膚無きまでにやられた時、主力選手の一人だった岡崎郁が呟いた一言-「野球観が変わった…」
自称「球界の盟主」がその威厳をずたずたに引き裂かれた昭和の末期、そして平成新時代の二度にわたる日本シリーズの対決。今年でリーグ三連覇を果たしたジャイアンツはV9時代の強さが比喩として用いられるほどだが、その根拠は坂本勇人をはじめとする生え抜きの若手の相次ぐ台頭。そしてその基盤を築いてきたのが二軍ヘッドコーチ、二軍監督として従事する岡崎郁というのも偶然ではないと思う。
一方でその後も長くAクラスを続け、何年かに一度コンスタントにリーグ制覇をするもののあの黄金時代のような安定期を作れず、今季も昨年の日本一とは裏腹にクライマックスシリーズ進出すら絶望というライオンズは辻発彦を筆頭にあの時代の主力選手の大半が他球団に流出している。これも偶然ではあるまい。しかも辻は請われてやってきたドラゴンズのファームを就任三年間で二度の日本一に導いている。
せっかくの土曜日なのに、平日の出勤よりも早起きを強いられて、ジャイアンツの、いや日本プロ野球の父とも称せられた正力松太郎氏の故郷である富山まで馳せ参じ、今季のイースタン観戦の集大成を締めくくろうとした敗戦処理。だったが残念ながらジャイアンツは敗れた。実は敗戦処理。がファーム日本選手権を生観戦するのはこれで四回目だがすべてイースタン・リーグ優勝チーム(ファイターズ二回、ジャイアンツ二回)が敗れている。ドラゴンズの胴上げを三回、タイガースの胴上げを一回観させられている。
優秀選手 井上一樹
優秀選手 伊藤準規
優秀選手 久保裕也
再び試合を振り返ろう。
ジャイアンツに限って考えれば、昨年の一軍の「メーク・レジェンド」を彷彿とさせる猛烈な追い上げでの逆転優勝に貢献したメンバーがことごとくその後一軍に上がってしまい、今日の大舞台にベストメンバーが揃わなかったことが結局は敗因なのかもしれない。
終盤に抑えに回ってチームのリードを守りきった金刃憲人と金刃昇格後に代役を務めた野間口貴彦、ファームでは格違いを見せつけたM.中村、復活ののろしを上げつつあった矢野謙次も。
辻監督は優勝監督インタビューで相手の先発が久保だから3点取られたら負けと考えていたと語っていた。しかしジャイアンツ打線は3点どころか1点も取れなかった。一回裏の橋本と三回裏の中井の安打だけでそれ以降はノーヒットという有様だった。大田は4の0で3つの三振を喫した。リーグ戦での敗戦処理。生観戦での相性の悪さがそのままこの試合で出た感じだった。大田の打席での拍手が打席ごとに小さくなり、結果を見てため息が出ていくのがスタンドで観ていてわかった。
その大田を岡崎監督はクリーンアップに使い続けた。田中の四番も固定したし、中井もファームでは常に中心的存在。若手主体の打順編成は今日のように揃って抑えられるというリスクも併せ持つのは致し方ないだろう。クリーンアップが沈黙している時に起死回生の一打を放ってくれた現役時代の岡崎のような存在をファームチームに求めるのは酷だろう。何しろ年俸6億円ももらっていながらファームに完全に溶け込んでいる選手がいるくらいだから…。
とにもかくにも、敗戦処理。の今季のファーム観戦はこれで終わった。
多くの感動と、将来への希望を見せてくれた若き戦士達よ、ありがとう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント