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2009年12月 4日 (金)

育成選手初の1億円プレーヤー誕生の陰で自由獲得枠入団の木佐貫洋がトレードに!

01 ほんの二日前にジャイアンツの山口鉄也が来季の契約を更改し、育成選手出身として初の1億円プレーヤー誕生と大きく報じられたが、その二日後の今日4日、育成選手とは対局の位置にある、かつての自由獲得枠でジャイアンツに入団した木佐貫洋のトレードが発表された。「トレード=放出=都落ち」という旧式な概念を敗戦処理。は否定する立場ではあるが、あまりにもコントラストが大きい。

(写真:今季のイースタン・リーグ最終戦、勝った方が優勝というマリーンズ戦にリリーフで登板した木佐貫。20099月撮影)

 

ジャイアンツとバファローズの間に1対1の交換トレードが成立した。本格派の先発投手を求めるバファローズが木佐貫洋を指名し、左のリリーフ要員に人材を欠くジャイアンツが高木康成を指名した。両球団とも不足している部門を補うことになるトレードだ。今年のような起用を続けていたら山口鉄也は早晩つぶれてしまう。高木には何としても山口に続く左のリリーバーとして一本立ちしてほしい。

冒頭に記したとおり敗戦処理。にとってトレードは必ずしも放出、都落ちというイメージではない。今回でいえば、木佐貫はジャイアンツ球団内での評価が低いから放出されたのかもしれないが、バファローズが必要としたからトレードが成立したのだ。後述するがジャイアンツには木佐貫以外にも実力はあるはずなのにファームでくすぶっている投手が何人かいる。そうした投手はジャイアンツからすれば、トレード要員となるのも惜しくない存在かもしれないが、他球団が魅力を感じなければトレードは実現しないのだ。彼らはジャイアンツが出さなかったのではなく、今回でいえばバファローズから欲しがられなかったのかもしれないと危機感を持つべきである。

木佐貫には今回の移籍を、決まったことなのだから前向きにチャンスだととらえてほしい。敗戦処理。がこのトレードで引っかかる点はタイトルの通り育成選手出身で初の1億円プレーヤーが誕生する一方で自由獲得枠で入団した選手がトレードになるという現実である。

敗戦処理。は当blog1130日付 四番打者集めの次はクローザー集め!? でこんなことを書いた。

余談だがマスコミやジャイアンツファンは育成選手出身の山口のこの二年間の活躍に近年のジャイアンツの育成の成果を絶賛しがちだが、育成選手出身の山口が「勝利の方程式」の一角を担う一方で自由獲得枠や希望枠で入団した野間口、金刃が敗戦処理の域を脱していないことにも目を向けるべきだ。アマチュア界のトップ素材を獲得しても有効な戦力に出来ない球団を「育成がうまい」と評価して良いのか、一度考えた上で評価すべきだろう。

木佐貫も残念ながら有効な戦力とは言い切れない。

木佐貫は2003年に自由獲得枠で入団して10勝を挙げて新人王に輝いた投手だがその後は2007年に12勝を挙げた以外ぱっとせず、今季は一軍での登板は1試合のみで、専らイースタン・リーグで登板。最多勝に輝き、リーグ最多の奪三振を記録していた。

自由獲得枠、希望枠、逆指名。現在のドラフト制度では廃止されたがドラフト候補の一部の選手の方から希望球団を意思表示でき、相思相愛ならくじ引きなどによらずに獲得できる制度。ジャイアンツは最大限にこれらの制度を利用してきたと言える。長嶋茂雄監督時代には毎年のようにアマチュア球界有数の即戦力選手をこの制度によって獲得してきた。仁志敏久、入来祐作、高橋由伸、上原浩治、二岡智宏、高橋尚成、阿部慎之助。FA補強と合わせ、野手のレギュラーがほぼ固めた。しかし原辰徳監督就任の頃から様子が変わってきた。2001年のシーズン限りで長嶋監督が退任し、原監督が一回目の監督の座に着いたが、それからのジャイアンツのドラフトでの上位二名(交渉権を得た選手)を調べてみた。

2001年 1巡目 真田裕貴 2巡目 鴨志田貴司

2002年 自由獲得枠 木佐貫洋、久保裕也

2003年 自由獲得枠 内海哲也 2巡目 西村健太朗

2004年 自由獲得枠 野間口貴彦、三木均

2005年 高校生1巡目 辻内崇伸 大・社希望枠 福田聡志

2006年 高校生1巡目 坂本勇人 大・社希望枠 金刃憲人

2007年 高校生1巡目 藤村大介 大・社1巡目 村田透

2008年 1位 大田泰示 2位 宮本武文

2009年 1位 長野久義 2位 鬼屋敷正人

今秋と昨秋のドラフト指名者にまだ評価を下すのは早いが、2007年までの自由獲得枠、希望枠などの大学または社会人出身の即戦力と期待された上位指名選手(2007年のドラフトでは希望枠は廃止)は内海哲也を除き、チーム内で戦力として一本立ちしたとは思えない。

冒頭の写真は木佐貫がイースタン・リーグ優勝のかかったシーズン最終戦、勝った方がリーグ優勝というマリーンズ戦に登板したときのもの。結果的にジャイアンツのユニフォームを着て最後の登板となった。この試合にジャイアンツは勝ち、木佐貫も勝利投手に輝いたのだがこの試合のジャイアンツの継投は先発が福田聡志で二番手に木佐貫、三番手はM.中村、四番手が野間口貴彦だった。ファームの優勝がかかった試合に一軍から招集されたわけではない。全員二軍落ちしていただけの話だ。そして一週間後のファーム日本選手権に先発したのは久保裕也だった。

思えば、木佐貫の一年前のドラフトで一位指名された真田裕貴がトレードとなったのが昨年のシーズン中だった。それから考えると木佐貫がこのタイミングでトレードというのは残念ながら順当なのかもしれない。そして木佐貫以降の、ここで名前が挙がった選手たちは長くジャイアンツの一員としてプレーを続けたいのであれば、目を覚まさないと手遅れになるかもしれないことを自覚すべきであろう。

ジャイアンツファンは日本一奪回や、リーグ三連覇、育成選手出身者の活躍や坂本勇人、亀井義行といった若手の台頭でジャイアンツを手放しで喜ぶだけでなく、こういう側面も併せ持つことを踏まえた上でこれからのジャイアンツを叱咤激励してはどうだろうか?

ただし他球団のファンやアンチ派はこの傾向を笑うことなかれ。ジャイアンツは逆指名、自由獲得枠、希望枠といった自球団が有利に働く可能性のある制度に頼らなくても他球団を凌駕できる選手を揃えられることになったとも言えるのだから。

【参考文献】「プロ野球ドラフト全史2009最新版」(ベースボール・マガジン社刊)

 

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コメント

にしたく様、コメントをありがとうございました。

> ホークスについて聞かれると、「日本シリーズで対戦したい」と120点満点の応答。
マウンド上での姿同様、めちゃくちゃマジメだという印象を持ちました。
えてしてスポーツの世界では、マジメだからいいとは限らないわけで、マジメさが裏目に出たここ数年だったのかなと思いました。

本当に真面目な人間だそうです。

なおかつ論理的だそうで、引退後には良い指導者になれるだろうと、担当記者達には評判が高いそうです。そしてジャイアンツ球場に通うファンにも真面目で好感度が高い選手のようです。

原監督は一人前と見なした選手相手にはその選手のプライドを尊重した起用法など配慮するようですが、そうでない選手に対しては一つのミスに対してすぐ懲罰のように二軍落ちなどの制裁を科すような傾向があるように思えます。

木佐貫はそのボーダーライン上にいたような感じがします。

> そういえばオリックスには鴨志田も行ってませんでしたかね。

谷とのトレードで移籍した鴨志田と内野手の長田がまだいます。鴨志田はたまに一軍で投げている話を聞きますが敗戦処理の域を脱していないようです。「篠塚二世」とか「松井(稼頭央)二世」と言われた長田がいっこうにブレークしないのが残念です。

T-岡田などという、何ともセンスのない登録名に改名した「浪花のゴジラ」にばかり注目が集まりますが、長田もさすがにそろそろヤバイでしょうね。今季で戦力外担ってしまうのではと思いましたが、木元とか、まだ先に戦力外になる先輩がいたので救われたようです。

来年のジャイアンツ球場では福田、久保、野間口らに「木佐貫みたいになるぞ!」とかヤジが飛びそうですね。

投稿: 敗戦処理。 | 2009年12月 5日 (土) 22時51分

長緯様、コメントをありがとうございました。

> 彼が調子を落としたのは、なんとなくですが2005年に堀内監督が短期間に救援で酷使したのが遠因である気がします。ともあれバファローズでの活躍を願わずにはいられません。

そんなこともありましたね。

木佐貫が抑えに回される前から、当時の@niftyの掲示板で木佐貫の抑え転向を訴えていた身としては、それをこなせる人物だと思っていましたが、実際の現場ではかなり付け焼き刃な配置転換だったようです。

2007年に12勝を挙げ、今度こそ安定した成績をと期待した翌2008年の序盤に連続フルイニング出場記録を続ける金本に死球を与え、危険球退場となったことがありました。

ルール上、退場処分は致し方ないにせよ、翌日に木佐貫の登録を抹消したのが木佐貫にとって打撃だったように思いました。

もちろん、一つ間違えれば相手打者の選手生命を脅かしかねない様な投球を投げてしまったのですから制裁は必要でしょうが、それはその試合の退場処分だけで充分。球団として(立ち直りに日数を要すると判断したのでしょうが)登録抹消という追加処分を科したことが、にしたく さんも言及されているように真面目すぎるくらいの木佐貫の投球の幅に影響したように思います。

また今季、開幕前には六人目の先発投手として期待されながら、調整を兼ねて登板したイースタンの開幕戦で肩だか肘だかを痛めてしまい、戦列を離れたのも大きかったと思います。

結果的にそのために一軍も開幕して最初の六連戦から先発投手を中四日で回さざるを得ず、ぎくしゃくした先発ローテーションになってしまいましたし、木佐貫も一軍昇格が遠回しになってしまいました。

チャンスというのは何度もある訳では無いということですね。

バファローズ投手陣は2008年に2位浮上の立役者となった先発陣が今年は揃って不調でした。皆、捲土重来を期しているとは思いますが木佐貫にもそこに割り込むチャンスは充分にあると思います。

ファイターズ戦以外で好投してアピールして欲しいです。

* さすがにウエスタン・リーグの試合まで観に行けませんので。

投稿: 敗戦処理。 | 2009年12月 5日 (土) 22時39分

木佐貫投手といえば今年、オープン戦で福岡へ来た際にFBS(日テレ系の福岡局)の「めんたいワイド」という夕方の地方情報番組に出演していました。
九州出身のプロ野球選手ということで福岡の番組に登場した木佐貫投手は、翌日に迫ったホークスとのオープン戦のことや、少女漫画「ベルサイユの薔薇」が大好きだという話を繰り広げていました。ホークスについて聞かれると、「日本シリーズで対戦したい」と120点満点の応答。
マウンド上での姿同様、めちゃくちゃマジメだという印象を持ちました。
えてしてスポーツの世界では、マジメだからいいとは限らないわけで、マジメさが裏目に出たここ数年だったのかなと思いました。
 
そういえばオリックスには鴨志田も行ってませんでしたかね。
新天地で気持ちも新たに、交流戦での対決を楽しみにしています。

投稿: にしたく | 2009年12月 5日 (土) 21時13分

あのイースタン優勝決定戦が、ジャイアンツの木佐貫最後になったのですか・・・。感慨深いものがあります。
彼が調子を落としたのは、なんとなくですが2005年に堀内監督が短期間に救援で酷使したのが遠因である気がします。ともあれバファローズでの活躍を願わずにはいられません。

投稿: 長緯 | 2009年12月 5日 (土) 10時51分

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