原辰徳監督が山口鉄也の先発転向をあらためて明言
2008年が67試合に登板で11勝2敗34HP、防御率2.32。今季は73試合で9勝1敗44HP、防御率1.27とセットアッパーとして大活躍の山口を原監督は先発に回すという。山口はこれまで公式戦で先発したことはない。
山口は越智大祐とともに、主に七、八回に訪れるピンチを封じ込み、最終回に投げる守護神、マーク・クルーンにつなぐ役割を担ってきた。近年の日本プロ野球では最終回に投げる守護神の安定感だけでなく、その前に投げるセットアッパーの力が重要視されている。岡田彰布監督時代のタイガースがJFKというスタイルで勝利の方程式を確立していたが、その一角の久保田智之が先発に転向した今季は残った藤川球児、ジェフ・ウィリアムスとも本来の調子ではなかった。山口の配置転換はたとえ山口が先発ローテーション投手として一本立ちしたとしても、諸刃の剣であると思える。斎藤雅樹投手コーチによると山口の抜けた穴はベテランの藤田宗一、今季ファームで山口的な役割を全うして終盤には一軍入りを果たした金刃憲人、バファローズから移籍の高木康成らで競わせるという。この話を聞く限り、ライバル球団の真弓監督が歓迎するのはよくわかる。
ではジャイアンツの先発陣はどうか。ジャイアンツの日本人投手で今季ただ一人二桁勝利を挙げた高橋尚成がFA宣言して抜ける。ファイターズからFA宣言した藤井秀悟を獲得した。高橋尚と藤井ならどっこいどっこいという感じ<苦笑>だが、セス・グライシンガー、ディッキー・ゴンザレス、内海哲也、東野峻に藤井を加えても五人(一軍の外国人枠四人のうち投手は三人までだから、ウィルフィン・オビスポを入れるとグライシンガー、ゴンザレス、クルーンの中から一人を外さなければならない)。万全な六人体制を組むならもう一人欲しいところだ。山口をうってつけの人材と考えるのは頷ける。
しかし、山口が先発に回るプラスと、山口がリリーフ陣から抜けるマイナスを秤にかけると、今の時点では山口がリリーフ陣から抜けるマイナスの方が大きいと考えるのが普通だろう。例えば、越智の代わりなら一時的なら豊田清で補える。しかし今季、山口と山口以外の左のリリーフ投手の差は明らかで、山口以外に左のリリーフ投手が一軍にいない時期もあった。山口のこの二年間の登板試合数は前述の通りだが、越智の登板数は2008年が68試合で今季が66試合と二年とも山口を下回る。山口には代わりがいないから山口の方が越智より登板数が多いのだ。
ところが、敗戦処理。はこれらのデータを踏まえた上で、山口の先発転向を推奨したい。
何故なら山口に今の役割を担わせ続ければ早晩登板過多でつぶれるのが目に見えているからだ。原監督には五連覇構想があるというが、選手の犠牲の下での偉業では意味がない。特定のリリーフ投手の酷使に支えられての優勝が何年も続いても、それが栄光とは呼べない。少なくとも敗戦処理。は認めない。
現役時代に「ミスター完投」の異名を取った斎藤雅樹投手コーチはリリーフ陣から山口が抜けるリスクを考えて先発投手陣のノルマを6イニングではなく7イニング以上に設定するという。今季は6イニングをノルマにしていながら、六回の途中で継投に走らざるを得ないケースが多々見られ、越智と山口の負荷が一層大きくなった。
山口の先発転向で今度は越智が登板過多になる危険は充分にある。前述の豊田は来季の開幕時は39歳。今季並みの投球が出来るか疑問がある。しかしそこは三年ぶりにNPB復帰となる小林雅英や野間口貴彦、木村正太、久保裕也、福田聡志らでまかなうしかないだろう。
原監督の山口先発転向の真意がどこにあるにせよ、山口が先発に回ることによって犠牲になることを防げるのであれば、その方が来シーズンの順位よりよほど大切だと敗戦処理。は考える。原監督よ、「やっぱり山口が後ろにいないと」などと途中で方針変換しないでね。
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