木村拓也コーチの死を無駄にしないということをもう一度考えてみた。
ジャイアンツの選手達が「タクさんのためにも…」と一致団結して目標に邁進したり、ファンのために東京ドームに献花台を設置したり、そしてその献花台にファンが献花するのも非常に尊いことだと思う。ただ、マスコミは単に木村拓也コーチの現役時代などを振り返り、人となりにも触れて「本当に惜しい人を失った…」で締めくくるだけでよいのかという気がしてきた。特にスポーツマスコミは…。
事件が事件だけに多くの雑誌が木村拓也コーチの急死の件を大なり小なり報じた。敗戦処理。が知り得ただけでも下記の通り。
*週刊現代4月24日号(講談社)巨人のキムタクが37歳で急死するまで
*女性自身4月27日号(光文社)「くも膜下出血」危険度見分けるチェックリスト10-頭痛&吐き気は要注意
*女性セブン4月29日号(小学館)木村拓也コーチ 3人の子を残して逝く無念「くも膜下出血」の恐怖
*週刊女性4月27日号(主婦と生活社)巨人・木村拓也コーチの命を奪った<くも膜下出血>あなたは大丈夫?
*FLASH4月27日号(光文社)木村拓也を追い詰めた「巨人の重圧」-くも膜下出血の恐怖!
*週刊実話4月29日号(日本ジャーナル出版)巨人キムタクコーチ死去 働き盛り30代を突如襲うクモ膜下出血の前兆と予防
他にも亡くなった翌々日に発売されたFRIDAY4月23日号(講談社)が巻末の News Scope に【くも膜下出血】木村拓也コーチ諸刃の剣だった「超努力型人生」と題して速報的に掲載した。
くも膜下出血という病気は年間に日本で14,000人ほどの命を奪う。特に今回37歳という若さの著名人が亡くなられたということで、その病気の恐ろしさについて多くの雑誌が誌面を割いている。実際、本当に恐ろしい病気だと思う。
木村拓也コーチは試合前の練習中にグラウンドで倒れたのだ。これは普通に考えれば業務災害だ。なぜ37歳の現役を辞めたばかりのコーチが、試合前の練習中に突然倒れるような事態に至ったのか?まず球団はそれを解明する義務があるはずだ。入院中、清武英利球団代表らがつきっきりで看病したようだがそんなことは当然のことだ。球団にも所属する選手やコーチ、監督、さらに言えば裏方さんの健康管理をする義務は当然生じるはずだ。木村拓也コーチが亡くなられてからの一部報道によると、「二時間しか寝ていない」とか、木村拓也コーチが多少の体調の異変を漏らしていたという。もしもそれが本当なら、そのことを聞いていた人はなぜノックを止めさせなかったのか?原監督に報告できなかったのか?今言ってもどうにもなるものではないとお考えの方も少なくないかもしれないが、そういう問題ではない。犯人捜しという意味でなく、再発防止という観点もある。
当blogにトラックバックを下さった、ルパート・ジョーンズさんによるにわか日ハムファンのブログの木村拓也コーチ、力尽くを精読いただきたい。短い文章ながら無念さがあふれ出ている。ファンですらここまで考えておられる方がいるというのに、マスコミがただ「惜しい人を亡くした…」で良い訳がない。
なぜ、木村拓也コーチはグラウンドで倒れなくてはならなかったのか?
小林繁コーチの件もある。もうこんなニュースには二度と接したくない。なのに何故、誰もそのことを声を大にして叫ばないのか?
木村拓也コーチが亡くなられた当日の試合に勝利したジャイアンツはその日のウイニングボールをご遺族に捧げるという。また、あのようなことにならなければ38回目の誕生日となった4月15日のウイニングボールも追悼試合でのセレモニーでご遺族に捧げられるそうだ。そうした行為は尊いものであり、否定をする気はないが、それだけではないだろう。
スポーツ報知は何かとジャイアンツナインのプレーを「キムタクコーチに…」と関連づける。スポーツ報知の日本一のコラム王と称する尾谷和也編集委員の「巨匠 尾谷」では「84を永久欠番に」とまで書いてある。ごていねいに背番号4が永久欠番になっている黒沢俊夫元選手まで引き合いに出して…。ほとんどはファンレベルの悲しさの度合いを文章に変えたものと大差なく、よくこれで社会の木鐸を語れるなと感じざるを得ない。
小林繁コーチが亡くなられた際に、「江川問題」を引き合いに出しておきながら、本質的には球団が起こした問題であるにもかかわらず、江川卓が起こした問題であるかのようにすり替え、江川本人がキャスターを務める番組で自ら小林繁さんのことを振り返ったことを大きく報じたスポーツ報知。どう考えても「江川問題」のシナリオに関わっていたとは考えにくい当時の長嶋茂雄監督の「小林に悪いことをした…」というコメントまで掲載しておきながら球団の責任には一切触れない。人が亡くなっているという一大事にいくら系列メディアだからといい、違和感を覚えざるを得ない。
そのようなメディアに木村拓也コーチの健康管理責任の所在を報じよ、ましてや球団に追及せよと言っても無理なことは百も承知だが、「84を永久欠番に」などと書かれると、他に書くべきことがあるだろうと憤りを感じてしまう。
せめて、清武代表くらいは…と考えたが、残念ながら週刊ベースボール4月26日号(ベースボール・マガジン社)の同代表による「野球は幸せか!」を読んでも木村拓也コーチの人となりばかりに触れられており、球団の監督責任について言及していない。
ファイターズの場合、小林繁コーチは球団の目が届きにくいオフシーズンでの急変であり、さすがに管理責任云々は非現実的であろう。惜しむらくは亡くなられる前日に親会社関係の行事で上京していたのに、というのはあるが…。
どこの球団も選手、コーチ、監督、裏方さんの健康管理には留意されているのであろうが、現実に四ヶ月の間で二人、小瀬浩之選手も含めれば三人の野球人が命を失っているのだ。今までの管理手法と異なることが求められて当然だ。
弔い合戦で一致団結してプラスアルファの力が出る戦いより、誰も悲しい、辛い思いをしない戦いの方が良いに決まっている。
繰り返しになるが、もうこんな悲報は聞きたくない。再発防止のために何をすべきか、鋭意検討されていると信じたい。それこそが木村拓也コーチの死を無駄にしないということだと思うから。
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コメント
ごくらくトンボ様、コメントをありがとうございました。
> なんだか球団側の弁護士のような言い分になってしまいました。
ただ、コーチという職にいると、現役選手でもなく、かといって球団の正社員でもないという微妙な立場ゆえ、健康診断をどの程度受けていたのかという点は気になります。
私は門外漢ゆえ、球団の過失責任を問えるものでもありませんし、またそれが本旨ではありません。
ただ、帰省中に体調が急変した小林繁さんの場合と異なり、まさに仕事中に倒れたのであり、ファンである我々はまだしも、管理する側である球団側には「木村拓也コーチは素晴らしい人だった」ばかりではなく、他にアピールすることがあるのでは無かろうかということ。
それはもちろん再発防止です。
木村拓也さんが素晴らしい選手であった云々は本来ならもっともっと現役引退の時に語り尽くして欲しかったです。日本テレビ、報知といった系列媒体がさかんにその繰り返しに終始しているすがたを見るに付け、病気の怖さを特集してくれた女性週刊誌の方がよほどニュートラルに見えました。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年5月10日 (月) 01時43分
敗戦処理。さん、こんばんは。
わたしも木村コーチより少し年上という年回りゆえ、他人事ではないという感覚を持っていました。今更ながらではありますが、コメントさせていただきます。
医療関係者の端くれとして言わせてもらうと、クモ膜下出血を事前に予防するのは簡単ではありません。出血しやすい箇所を事前に発見するためには、一般的な人間ドックよりさらに特殊な脳ドックを受ける必要があります。もちろん、費用も人間ドックにさらに数万円上乗せされるため、安くはありません。
また、(外傷によらない)クモ膜下出血による頭痛は突然起こるのが普通で、事前に頭痛を訴えていたからと言って、その時点で出血が起こっているわけではありません。
そういう意味で、今回の木村コーチの急死は不幸な事故という可能性が高いと思います。
もちろん、木村コーチご本人が体の不調を訴えていたなら、早目に医療機関を受診させるなどの手を打つべきだったでしょう。ただ、どの程度本人が訴えていたのかがよくわからないため、球団に過失があるのかの認定は簡単ではないと思います。
なんだか球団側の弁護士のような言い分になってしまいました。
ただ、コーチという職にいると、現役選手でもなく、かといって球団の正社員でもないという微妙な立場ゆえ、健康診断をどの程度受けていたのかという点は気になります。
いずれにせよ、二度と同じことは繰り返してほしくないという点では、わたしと敗戦処理。さんは意見が一致しています。何気なく暮らしていると、自分や身の回りの人たちは生きているのが当たり前と感じてしまいますが、いつ病気になってもおかしくないのだという心構えがまず大事だと思います。
長文、失礼しました。
投稿: ごくらくトンボ | 2010年5月10日 (月) 00時43分