雄星が4日にKスタで先発するらしい。
当blogで既に観戦記を書いたように敗戦処理。は先月29日には鎌ヶ谷でファイターズ対シーレックス戦を、今月1日にはジャイアンツ球場でジャイアンツ対ゴールデンイーグルス戦を生観戦した。どちらも贔屓チームがらみの試合で、当blogを読んで下さっている方なら別に普通のことだとお思いだろう。
しかしどちらの日も、雄星が登板するようならばそちらに切り替えようと思っていた。29日ならライオンズの相手はジャイアンツ、1日ならファイターズと贔屓チームの試合を観ながら雄星も観られるから。
で、29日に雄星が投げないであろうことは早い時点で予測できたので29日には鎌ヶ谷へ。しかし1日に西武第二球場で行われる対ファイターズ戦に雄星が投げるのか否か、わからなかったので最近始めたツイッターで情報を求めた( @haisenshori )。すると以前からお世話になっているNさんから情報が寄せられた。雄星の次回登板は4日のイースタン、ゴールデンイーグルス戦。ファームの試合ながらゴールデンイーグルスの一軍の本拠地で行われ、それはイコール雄星にとっては地元凱旋登板になる。
◇雄星が予定変更してみちのくで投げるワケ 目先より将来の得か
(2010年4月28日(水)17時0分配信 夕刊フジ)
http://news.nifty.com/cs/sports/baseballdetail/fuji-zak20100428002/1.htm
なるほどそういう事情が…。でもこの情報って…?
(写真:雄星の登板が見送られた市営大宮球場。2002年5月撮影)
まずライオンズのファームのホームグラウンドである西武第二球場は基本的に入場無料のグラウンド。要は入場料を取るに値する施設の体をなしていないのだ。3月の教育リーグの試合のいくつかが西武第二球場から西武ドームに変更されたのは雄星登板でファンが殺到することが予想されるからと言うより、天候が不順だったため確実に試合を行えるドームに変更したのが真相だったらしいがいずれにせよ、西武第二球場では雄星で「商売」は出来ない。
29日の市営大宮球場は有料でしかもライオンズの主催試合。雄星で「商売」が出来る。一方4日の対ゴールデンイーグルス戦はいずれ一軍で投げるようになれば投げる機会もあるだろう球場で投げるのは雄星にとってプラスにはなるだろうが、当然ゴールデンイーグルスの主催試合だから、興行収入はすべてゴールデンイーグルスのものとなり、ライオンズにとってはオイシクない。それでもその試合に雄星を投げさせるのは引用記事にもあるように、
「もうボチボチ体力的にも精神的にも、しんどいころだから。お母ちゃんのおっぱいでも吸って元気になってくれれば。リフレッシュするためにも、向こうで1回ほうればいいんですよ」
という球団の親心と、
さらに、Kスタで投げさせたい理由は、同球場の球速表示にある。設置されているスピードガンの角度によるものか、特に左投手のスピード表示が、他球場よりも速く出るというのが、選手、関係者の間では通説となっているのだ。
普段は140キロ前後の投手でもKスタでは148キロを記録することも珍しくない。「じゃあ雄星なら150キロ出るんじゃないか」と小野コーチ。甲子園でマークした最速155キロの触れ込みで入団した雄星だが、今や130キロ中盤しか出ない。これは「甲子園のスピードガンの表示は速すぎる。西武のが一番まとも」(球団関係者)という裏事情もあるが、Kスタで140キロ台を連発すれば、自信を取り戻す可能性もある。
スピードガン表示が速ければ速いほどうれしいのは、プロもアマも同じ。
というこの球場特有の特徴を雄星に有利に利用したいという腹のようだ。
同じ球を投げても他の球場より早い表示が出るというのは、本人に錯覚をもたらし、トータルで考えれば本人に逆効果なのではないか?と敗戦処理。は考えるがどうなのだろうか?
しかし、この記事をわざわざ当blogで取り上げるのはそんなことではない。この部分にはまったのだ。
大宮球場は西武が準フランチャイズとし、一昨年に球団名を埼玉西武にしてからは、1軍も年に3試合は開催。08年のクライマックスシリーズも1試合行うなど、開催に力を入れている。
「商売」が出来るというだけでなく、営業戦略上重要に位置づけている大宮球場開催試合での登板を外してでも仙台で、ということを強調しての文章だと思われるが、この記事はとんでもない事実誤認をしている。
ここで書かれている大宮球場とは、実は29日に試合が行われた大宮球場のことではない。
記事にある、ライオンズが埼玉西武となってから一昨年のクライマックスシリーズ第2ステージ第1戦を行うなど一軍戦も行っているのは「埼玉県営大宮球場」で29日にイースタンのライオンズ対ジャイアンツ戦が行われたのは「さいたま市営大宮球場」で全く別の球場なのだ。敗戦処理。はさいたま市営大宮球場なら観戦経験がある。
しょせんは夕刊フジだと言ってしまえばそれまでだが、ご丁寧に塚沢健太郎との署名入りの記事でこれである。イースタン・リーグにあまり関心のないファンであれば気付かないで読んでしまうおそれのある文章だ。こわいこわい。
もしもこの記事を読んで「雄星は投げないみたいだけど、大宮に行ってみるか」と誤って県営大宮球場に行く人がいたら夕刊フジは責任を取れるのか?幸いこの二つの球場はそんなには離れていない。歩いても行けない距離ではないらしいが。
ところでスピードガンの球速表示が速い球場に投げさせて投手の自信を回復させるというのはどうなのか?
東京ドームで特大の本塁打を放った打者が「ここは飛距離の出る球場だから…」と謙遜することがあるように本人が自覚していれば問題は少ないのだろうが。そして東京ドームの本塁打の出易さという話題ほど、ゴールデンイーグルスの本拠地のスピードガン表示の数値が下駄を履かせた数値であるという話がファンに浸透しているかどうかで翌日のスポーツ紙の「雄星出た!自己最速の○○km」という記事の与える影響度が異なる。
話は飛ぶが、球場のスピードガン表示というと、今も印象深い観戦がある。
野茂英雄や与田剛がルーキーとして大活躍した年だから1990年の話なのだが、その年の秋に行われた日米野球を敗戦処理。は東京ドームで生観戦した。普段のジャイアンツやファイターズの試合なら企業が接待用に購入しているだろう一塁側ベンチのすぐ上の前から数列目という間近な席で敗戦処理。は観戦していた。
日本選抜チームがリードして迎えた最終回、与田剛がマウンドに上がった。最近不倫問題が報じられたNHKの「サンデースポーツ」のキャスターだ。当然ファンの関心は与田の快速球が大リーグ選抜の猛者達にどこまで通用するかと言うこと。で、与田の一球一球にファンの視線が注がれる。特等席で観戦しているのだから、与田の快速球をじっくりと観たい。そして与田が投げるストレートに「うわ、速ぇ」と唸らされる訳だ。しかし、せっかくそれこそ目と鼻の先で与田の快速球を体感できているのに敗戦処理。の周囲の席のファンの一部に明らかにリアクションがおかしい人がいた。
何球か投げているうちに気付いたのだが、その人達は自分が目で見た与田の快速球に驚き、ため息をついているのではなく、一瞬間を置いてスコアボードの大型ビジョンに表示されるスピードガンの計測値に驚いているのだ。おそらくはスタンドの中でも最もバッテリーに近い場所で観戦していながら、与田の快速球の凄さを投球そのもので実感できず、計測された数値に感動するというのは、何かもったいない様な気がした。
スピードガンで150kmと計測されるから与田の球は速く感じられるのではなく、与田の投げる球が速いから150kmと計測されるのだ。そしてその球をスタンドの中で最も近く感じられる席に座っていながらスピードガンの数字ばかりを気にしているファン。そういう席に座ると言うことが、敗戦処理。同様に普段の公式戦では手が出ないのならなおさら、こういうチャンスで与田の快速球を堪能できる機会なのに、投球そのものに感動するのではなく、数値に感動する人たち。
それから約二十年。「マネーボール」以降、選手の指標となるいろいろなデータが提供されるようになった。確かにファンにとっても便利なデータの数々かもしれないが、プロ野球選手の投げる、打つ、走るといった、普通の人には到底真似できないハイレベルな技を目の前で観ることが出来る時に細かいデータによる予備知識は時に邪魔になる。この時の観戦で敗戦処理。は痛感した。
話が横道にそれたが、4日に雄星が投げるとしても敗戦処理。はさすがに仙台までは行かない(鎌ヶ谷に行く予定)。早いうちに生で観たいという気持ちは29日の観戦で筒香嘉智を観てさらに強くなったが…。
筆者注.
イースタン・リーグに予告先発制度はありません。当エントリーは4日に雄星が先発(あるいは登板)するということが公式に発表された訳ではないという前提で書いています。引用した夕刊フジの記事も取材に基づいての記事だと思われますが…。
P.S.
今日のオマケ
敗戦処理。が市営大宮球場で生観戦した2002年5月のスワローズ対ジャイアンツ戦のスコアボード。
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