大田泰示は二度目の一軍経験で変わったか?
大田の交流戦終盤の一軍入りは唐突だという印象を持たざるを得なかった。二年目でだいぶプロの水にも慣れ、本塁打のペースも上がっていたので早晩一軍に上がるだろうとは思っていたが、二日間試合をして、その後四日間インターバルがあるあのタイミングで。 交流戦では予告先発制度はないが、ローテーション的に和田、杉内の先発は容易に予想できたから、「杉内と和田か。よし、ちょっと泰示を試すか」なんて感じで原監督が思いつき、もといひらめいたのではないか。と敗戦処理。は勘ぐった。 もちろん、いくら二年目で進歩しているとはいえ、いきなり和田、杉内相手に快打出来るはずはなく、それでも本人は何とかしようともがくから、自分の打撃など見せられやしない。そのあげくが原監督曰く「打撃フォームがおかしい。指導がおかしいのではないか?」 これは岡崎郁二軍監督を始めとしたファーム首脳陣からの強いプッシュがあっての一軍入りならともかく、原監督主導で将来の主砲の成長の度合いを観たくて抜擢したのであれば原監督が口にするコメントではないように思う。 ただ気になるのはファームで大田を指導しているはずの打撃コーチに今年から岸川勝也に加え、荒井幸雄が加わったこと。荒井打撃コーチは昨年まで二年間、ファイターズのファームでやはり打撃コーチをしていた。その二年間とはずばり中田翔の二年間である。 二軍降格後、最初の試合でいきなり一発を放つなど昨日(25日)まで4試合で2本塁打を放つ一方で昨日の打線全体で20安打を放ち、17点を挙げて今季初めてゴールデンイーグルスに勝った試合では本塁打の1安打のみ(6打数)と、今ひとつ調子がよいのか悪いのかわからない大田にこの試合も注目してみた。 ゴールデンイーグルスの9勝1敗で迎えた第11回戦。球団発足当時からのホームグラウンド、山形蔵王タカミヤホテルズスタジアムに加え、昨年からW本拠地制の楽天イーグルス利府球場に次いで使用頻度の多い、天童市スポーツセンター野球場での三連戦の二戦目だ。先発はジャイアンツが深田拓也。ゴールデンイーグルスが辛島航と両サウスポー。 試合が動いたのは三回表。ジャイアンツは円谷英俊の安打と、仲澤広基の三ゴロ敵失をきっかけに二死二、三塁から大田がジャストミートした打球は高~い放物線を描いて左中間スタンドまで届いた(冒頭の写真)。大田の二試合連続本塁打でジャイアンツが3点を先制。 四回表にもジャイアンツは加治前竜一の二塁打から二死三塁となって仲澤が渋く二遊間を破る安打で4対0とリード。 昨夜に続く快勝モードかと思った直後の四回裏、ゴールデンイーグルス打線が深田に襲いかかった。先頭のトッド・リンデンが二遊間を破って出塁。 昨シーズン途中にゴールデンイーグルスに入団し、終盤のクライマックスシリーズ進出確定に大きな戦力となったが野村克也監督の起用法に不満を持ち、ついに暴言を吐いてチーム内で出場停止処分となった。選手による首脳陣批判、それも監督批判は最大のタブーであるが、何故か監督批判をしたリンデンの方がチームに残留し、批判された野村監督の方が解任された。これは長い日本プロ野球の歴史でも希有なケースであろう。あの有名な江本孟紀のケースはすぐに江本退団という事態に発展したし、プレーオフ出場停止という処分が科されたファイターズの金村暁のケースも残留はしたものの翌年不成績に終わると明らかに格下の選手とトレードされたのだった。 もっともリンデンのケースはクライマックスシリーズ第二ステージが進出が決まると、出場選手登録抹消期限を待って再登録された。球団史上初の日本シリーズ進出が現実味を帯び、戦力になる選手を休ませている場合ではないとの判断だろう。言葉としては適切ではないかもしれないがリンデンはゴネ得だった。 この後、深田はいい当たりのライナーが味方内野手の正面を突く幸運が二度続き二死までこぎ着けるが銀次に安打を浴びた後、丈夫に右中間、楠城祐介に左中間を破られる連続二塁打であっという間に4対3と一点差まで迫られた。 深田について何度も同じことを書くのはさすがに飽きたので、「第二の…」はもう書くまい。観る目がなかったのだ。 一点差に迫られたジャイアンツはすぐさま五回表に、二番手のルーキー土屋朋弘に対し、二死から加治前と加藤健の安打で一、三塁とすると円谷が二遊間を破るタイムリー。 そうなるとリードを拡げられたゴールデンイーグルスのその裏の反撃も気になるところだが、五回裏は深田が三人に抑えた。出来の良いイニングと、そうでないイニングの差が大きい深田の傾向はこの日も改善されなかった。深田は五回を投げ終えて降板した。 六回裏、ジャイアンツの二番手は土本恭平。 ジャイアンツは七、八回を上野が抑え、最終回は先日二度目の支配下選手登録がなされたレビ・ロメロが抑えて8対4で逃げ切った。 【26日・天童市スポーツセンター野球場】 G 003 120 020 =8 モ 000 301 000 =4 G)○深田、土本、藤田、上野、ロメロ-加藤、星 モ)●辛島、土屋、松崎、鎌田、石川-伊志嶺 本塁打)大田16号3ラン(辛島・3回)、隠善2号2ラン(鎌田・八回) 終わってみると快勝のようなスコアだが、前回のカードまでジャイアンツが9戦9敗していたことがわかるようなジャイアンツの拙攻ぶりが随所に観られた。 大田が先制3ランを放った三回表にしても大田の前の隠善の打席で一死二、三塁となっており、隠善で先制していなければならない場面。隠善は素人目にも力みまくった打ち方で浅いセンターフライ。 四回表の仲澤のタイムリーの前にも一死三塁で円谷が初球を打って三塁ファウルフライ。 五回表の2点追加の前も先頭の田中大二郎がレフト前のポテンヒットで出た直後に矢野謙次の遊ゴロで併殺。 七回表も田中安打、矢野四球で無死一、二塁としながら加治前の送りバントが捕手への小飛球となり、二塁走者が帰塁出来ず併殺。 八回表の隠善2ランの前も、先頭の仲澤が安打で出た無死一塁から藤村は何の策もなく三球三振。昨日のジャイアンツ打線は20安打17点と打ちまくったようだが今日もそこまで行かないにしても、もっともっと点を取れてゴールデンイーグルスの反撃を気にしないですむ展開に持ち込めたかもしれないのだ。 得点シーン以外にも拙攻のオンパレードだった弊害が三時間半を超す試合時間という形で露呈した。最寄り駅の天童を通る新幹線は少なく、在来のJR奥羽本線も本数が少ないので日帰り遠征の敗戦処理。にはやきもきさせる展開であった<苦笑>。 さて大田だが、いわゆる勝利打点に相当する先制本塁打を放ったのだからこの試合のヒーローであることには変わりないのだろうが、本塁打の後がいけない。前述したように次のイニングの追加点機のライトフライ凡退の後も、六回表、八回表の打席に連続三振と、一本出て満足してしまったかのような打撃だった。 現在週刊現代(講談社刊)で現在連載中の「プロ野球二軍監督」の第七回、発売中の7月3日号では中田翔とファイターズの水上善雄前二軍監督にインタビューしており、中田が印象深い言葉を残している。 「(前略)1打席目で、バットに当たったら飛んでいくじゃないですか。それでホームランになると、すぐに気が抜けるというか、2打席目はもういいやって感じになっちゃって。しょうもない球を引っかけてゴロにしたり、三振したり、そういうことがすごく多かった」 これは中田が入団一年目の未熟さを振り返ったものだ。 今日がたまたまかもしれないが、大田の見事な本塁打の後の三打席を観た限りでは中田の言葉が大田にオーバーラップする。個人的には今季、バファローズでブレークしたT-岡田、そして中田、大田の順にブレークしてくれればいいと気長に構えているのだがジャイアンツファンの中には「松井秀喜の背番号55を受け継いだ男」に多大な、というかすぐにでも大活躍して欲しいような期待をしているファン層も少なくないだろう。今季途中から挑戦中の一塁守備では、リンデンの一塁側スタンドとの境のフェンス際に上がったファウルフライを追って目測を誤ったのか転倒するシーンがあったが、 ところで敗戦処理。は明日27日、一軍のジャイアンツ対ベイスターズ戦を生観戦予定。今日も勝って三連勝のジャイアンツだが明日はローテーションの谷間。今日の天童の先発が中六日の黄志龍でなかった時点で明日の一軍は黄志龍の先発かと思ったが黄志龍を一軍登録するにはクルーン、ディッキー・ゴンザレス、ウィルフィン・オビスポの三人の外国人投手の中から誰かを抹消しなければならない。クルーンとゴンザレスはともに25日のベイスターズ戦で復活をアピールし、オビスポも今日二番手で好投したそうだ。ファーム落ちしている投手では福田聡志が22日に先発して勝利投手になっているが明日だと中四日。野間口貴彦は登板間隔は充分だが直近の先発となった17日のファイターズ戦では先発で三回途中でKO、自責点5だった。伏兵として9日のシーレックス戦に先発で6イニング無失点、16日のファイターズ戦に再び先発で5イニング無失点の二年目の笠原将生がいるが、こういう投手にいきなり先発として抜擢する芸風は無いだろうから予想が困難だ。 一軍投手では星野真澄があるかなとも思っていたが今日の最終回に投げたという。 今日オビスポが3イニング投げたから、明日と次カードの最初は投げられない。点差が開いていたことと、黄志龍との入れ替えを視野に入れてのロングリリーフだったのではと考え、明日は一軍で黄志龍が先発するのではと敗戦処理。は予想する。そもそも黄志龍は今回の天童遠征に来ていないらしい。もちろんオビスポも降格というのではなく、次なるローテーションの谷間に向けてファームで先発テストをした後、先発要員としての復帰を目指す。こんなストーリーではないかと。実は黄志龍をファームでも観ていないので生で早く観たいという期待感を持ってではあるが。 最後になるが、今日のゴールデンイーグルス戦でスタメンでは「二番・中堅」で橋本到の名がコールされたが一回表の先頭の藤村が打席に入った時点でネクストバッターズサークルに隠善が登場し、そのまま代打に起用された。橋本は守備にもつかず打席にも入らず交代。何かあったのだろうか…? しかしこの回、なおも二死満塁と攻めたものの前の打席で本塁打を放った大田が平凡なライトフライに倒れ、一気にとどめを刺すには至らなかった。
リンデンは試合前のスタメン発表で「三番、指名打者、リンデン」とコールされるとスタンドから笑いが起きていたが、打席ではさすがに拍手が大きい。
さらに一、三塁とするのだがこの時さほど大きく一塁をオーバーランしたとは思えぬ円谷を刺そうとしたゴールデンイーグルス守備陣の返球が乱れ、三塁に進んでいた加藤まで生還。この回2点を加え、6対3とリードを拡げた。失点の直後に追加点を取るとは試合の流れからすると理想的な点の加え方だ。
開幕一軍入りを果たしたが二度目の登板が、前の回に同点に追いつかれて迎えた九回裏というどうみても不相応な修羅場であったが案の定ターメル・スレッジにサヨナラ本塁打を喫した。越智大介、豊田清と投げた後でマーク・クルーンを出す場面では無いがまだブルペンに小林雅英がいる段階での大抜擢だったがベイスターズの中軸打線を抑えろと言うのは酷だったようだ。その後二軍落ちしてからはなかなか一軍から声がかからない。今日も先頭の中島俊哉にライト前に綺麗に運ばれると続く銀次のセーフティ。・バントを落ち着いて処理してアウトをとったものの丈夫、楠城に連打されあっという間に1点を失った。伊志嶺忠を打ち取って二死になったところで左の横川史学を迎えるとベンチは土本を見限り、左の藤田宗一にスイッチ。藤田が横川を三振に仕留め、この回1点止まり。6対4と迫られたものの何となく落ち着いた感じになった。
八回表、ジャイアンツはゴールデンイーグルスの四番手、先日渡邉恒樹とのトレードでスワローズから来たばかりの鎌田祐哉から隠善智也がライトスタンドに2ランを叩き込み、8対4とリードを拡げ、勝負あったという感じに。
移籍成立前にはファームで抑えを任されていたナベツネこと渡邉がスワローズですぐに一軍に上がったのと対照的に鎌田は二軍スタート。しかしこの被弾は前回の移籍後初登板での2イニング自責点4という結果に続きゴールデンイーグルスファンと首脳陣にはイメージが悪いのではないか。
リードしたら最終回はロメロというのはジャイアンツのファームの勝ちパターンだが、「背番号41」のロメロを観るのは敗戦処理。も初めて。クルーンの故障が長引くようならいきなりの一軍入りもあるかと思ったが25日のベイスターズ戦でクルーンが無事に復帰したのでロメロの昇格はまだ先の話であろう。
この守備を含めて今の大田に多大な期待は禁物だというのが敗戦処理。の印象だ。
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コメント
にしたく様、コメントをありがとうございました。
> で、そのヤフードームのホークス戦(日曜日のほう)を観に行ったにしたくです。
レフトスタンドの席(全席指定)が取れず、立ち見で観ました。
他の球場の立ち見の雰囲気は分かりませんが、ヤフードームの場合、手すりもあるし空間も意外と広いし、応援するにはもってこいの場所でした。
そうですか。来年こそはホークス対ジャイアンツ戦を観に行きたいものです。
> さて、大田。
なにか、ホームラン狙いのフォームのようでした。
チャンスで凡退も、レフトスタンドからは「次は頼むばい」という優しい声。
スイングが大きいからそう見えるのかもしれないのですが、小細工したところで通じるものとも思えず、今の大田ならあれはあれで仕方ないのかなとも思えました。
> ところで、原監督の発言が気になりました。コーチの教えが悪い、という主旨の発言。
岡崎のことか岸川のことか分かりませんが、今季終了後の人事に影響が出るかもしれませんね。
エントリーでも触れましたが中田翔を指導した荒井幸雄コーチかもしれませんよ。
荒井コーチは昨シーズン限りでファイターズの二軍打撃コーチを解任されました。
「ミスターファイターズ」田中幸雄復帰に伴う人事と言われていますが本当に能力があれば他のポストを与えられていると思います。
ジャイアンツが招聘した理由は、育成で成果を挙げているチームのノウハウを取り入れたいからとかいう理由でしたね。
小笠原やラミレスが健在なうちにしっかり鍛えておいてほしいです。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年6月30日 (水) 00時27分
で、そのヤフードームのホークス戦(日曜日のほう)を観に行ったにしたくです。
レフトスタンドの席(全席指定)が取れず、立ち見で観ました。
他の球場の立ち見の雰囲気は分かりませんが、ヤフードームの場合、手すりもあるし空間も意外と広いし、応援するにはもってこいの場所でした。
ジャイアンツファンに仕立て上げた妹とホークスファン友人と3人で行ったので、試合終了後の花火、サプライズの藤井フミヤまで堪能してきました。
試合は追い上げむなしく、プリンスの併殺で試合が終わってしまいました。
さて、大田。
なにか、ホームラン狙いのフォームのようでした。
チャンスで凡退も、レフトスタンドからは「次は頼むばい」という優しい声。
しかしそれもライトスタンドの大歓声に掻き消され、今度はエラー。
チームの調子が良ければ一軍に残して、周りのスター選手からいろいろ学べるのでしょうがね。
高卒ですから、来年がカギでしょう。待っています。
ところで、原監督の発言が気になりました。コーチの教えが悪い、という主旨の発言。
岡崎のことか岸川のことか分かりませんが、今季終了後の人事に影響が出るかもしれませんね。
投稿: にしたく | 2010年6月29日 (火) 12時28分