ホークスのファームが鎌ヶ谷にやってきた。
2004年の球界再編騒動で大阪近鉄バファローズが消滅し、東北楽天イーグルスが誕生してから、球団の所在地でリーグを東西に分けているファームではイースタンが七球団でウエスタンが五球団という不均衡な状態が続いている。ともに所属球団数が奇数となり、リーグ戦で常にどこか一球団が試合を出来ないのだ。発展途上のファームの選手にとっては試合を積んで腕を上げるのが一番。厄介な問題になっている。
イースタンではジャイアンツ、マリーンズが積極的にこの問題に対処。各球団から育成選手や出場機会に恵まれない選手を集めて混成チーム・フューチャーズをつくり、試合を組めないチームと対戦したり、特に育成選手数が多いジャイアンツとマリーンズの選手を中心とした混成チーム・シリウスを作成して主に社会人野球のチームと練習試合をして実戦経験を積ませたりしている。
また、この不均衡状態になった2005年には一軍がセ・パ交流戦を始めたのに歩調を合わせ、ファームでも開幕戦でいきなりジャイアンツとタイガースがファーム版交流戦という形で対戦するなど年間数試合、イースタンのチームとウエスタンのチームの交流戦をクンできたが、残念ながら尻すぼみ状態なのが実情で、今季は4月に沖縄で行われたジャイアンツとタイガースの二連戦が唯一のファーム交流戦だった。そこで来季は特に奇数問題が深刻なウエスタン・リーグの問題もあるのでイースタンとウエスタンの交流戦を増やそうと事になっているが、そもそもファームを一軍に合わせてセとパにしないで、東西で分けているのは移動などの経費を少なくしようという発想で始めているのだから、交流戦が起死回生の一打になるとは思えないのである。実際、その後の報道ではトーンダウンしているというのもあった。
そんななか、ホークスのファームが鎌ヶ谷に来るという形でイースタンに所属するファイターズとウエスタンに所属するホークスによる練習試合が昨日と今日の二連戦という形で実現した。実はこの練習試合は事前に組まれていたものではなく、シーズンが始まってから決まった。当初は今日(28日)はファイターズはフューチャーズと対戦する予定だったが明日に変更された。
ホークスは左手首痛で一軍登録を外れて久しい松中信彦がこの遠征に帯同。昨日は二安打を放ったそうで、ファイターズを10対9で破った。試合前日にダルビッシュがツイッターで告知した効果もあったのか、夏休み中とはいえ金曜の昼間に817人を集めた。そして土曜日の今日は1,256人のファンがファイターズスタジアムに集まった(観客数はファイターズ公式携帯サイトによる)。
今日はホークスが新垣渚、ファイターズは武田勝、じゃなくて<笑>ブライアン・ウルフの先発。
新垣は一回裏、二死から佐藤賢治、坪井智哉に連打を浴びると、いきなりお約束の暴投で走者を二、三塁に進めるが大平成一を右飛に打ち取って0点で切り抜けるとその後はスイスイ。
ファイターズのウルフはセットアッパーとして期待された新外国人投手だったが結果を残せず、先発転向のためにファームで先発登板を続けており、今日で三試合目の先発。こちらも一回表に先頭の中村晃にセンター前安打を打たれるが二盗失敗で走者がいなくなると落ち着き、続く明石健志、松中信彦を打ち取り、自分のペースに持ち込む。
試合は五回に動く。
ホークスは二死から猪本健太郎、豊福晃司の連打で二、三塁のチャンスを作るが中村がにゴロに倒れる。
その裏のファイターズは先頭の関口雄大がセンター前に運び、その後二死二塁となって中島卓也の遊ゴロを豊福が一塁にワンバウンドの悪送球で関口と入れ替わった村田和哉が生還。左打席からの打球とはいえ、さほど焦るシーンとは思えなかった。せっかくの投手戦に水を差す失策となってしまった。
中島が二塁に残っていて二死二塁。新垣は佐藤に四球。二巡目に坪井の代打で出た鵜久森の初球、新垣がこの試合二度目の暴投。捕手の猪本が処理にもたつく間に二塁から中島が一気に生還(冒頭の写真)。一塁走者の鵜久森もこの間に三塁へ。一つの隙でたたみかけるように得点を重ねる(最近では珍しい)ファイターズらしい点の取り方に、初めて鎌ヶ谷を訪れたホークスファンもため息をついたことだろう。ここで鵜久森が右中間を破る二塁打で佐藤を迎え入れ、ファイターズはこの回3点を奪い、3対0とした。
五回まで無失点だったウルフは六回表、先頭の明石に三遊間を破られると、盗塁と松中のにゴロの間に三塁に進み、四番の小斉祐輔の右犠飛で1点を返されるが後続を断つ。この回でウルフはお役ご免。
◇ウルフのファームでの登板
13日 対スワローズ(戸田) 3回 自責点0
20日 対ジャイアンツ(鎌ヶ谷) 5回 自責点4
28日 対ホークス(鎌ヶ谷) 6回 自責点1
今節のファイターズ一軍は五試合だったが次節は六試合。今日(28日)付けで中村勝の登録を抹消したのでウルフと武田勝を一軍登録するのではないか。
新垣の方は七回まで投げる。失策と冒頭絡みで三失点した五回以外は貫禄の投球という感じだった。自責点0という結果だった。ホークスファンの目に新垣はどう映ったのだろうか?
試合は結局、ウルフの後、木下達生、須永英輝、植村祐介が1イニングずつ投げてそれぞれ無失点に抑えた。打線は新垣が降板した八回裏、二番手の怜王から安打、敵失四球による二死満塁で関口雄大がセンターオーバーの満塁本塁打を放ち、試合を決定づけた。
【28日・ファイターズスタジアム】
H 000 001 000 =1
F 000 030 04× =7
H)●新垣、怜王-猪本、荒川
F)○ウルフ、木下、須永、植村-今成
本塁打)関口満塁(怜王・八回)
ホークスは7失点したが投手の自責点は0だった。
ホークスのエース、斉藤和巳の回復が2012年と見込まれているため、球団が来季の斎藤に育成選手契約を持ちかけたという報道が流れてきた。ファイターズが北海道に移転して初のリーグ優勝、日本一となった2006年。当時のプレーオフ第2ステージ第二戦、八木智哉と投げ合い、0対0の投手戦を展開し、最後に力尽きた斉藤がサヨナラ負けとなってマウンドに跪いたシーンは今も印象に残っている。斉藤は第1ステージでもライオンズの松坂大輔と投げ合って0対1で惜敗しており、敗戦の瞬間、痛恨の無念が全身を覆ったのだろう。
あれから四年。復活をかけてリハビリに励んでいるところだろうが、再発があったりし、球団も背に腹をかえられなくなったのだろう。その同じ日に、その斉藤と共に四本柱とか四天王と呼ばれた新垣が自責点0とはいえ二度も暴投を放っていてよいのだろうか?あとの杉内俊哉、和田毅はホークスのローテーションを引っ張り続けているが入団後も多くの国際舞台を経験した両左腕はメジャー志向が強いとも見られている。
何だかなぁ、という感じだった。
練習試合とはいえ、ファイターズがファンの前で試合に勝ったのは15日の戸田でのスワローズ戦以来。この間、昨日の練習試合を含めると9連敗だった。鎌ヶ谷での白星となると、さらにその一週間前、8日まで遡らなければならない。
ウルフと今成亮太が呼ばれたヒーローインタビューでは滝坪りえインタビュアーの第一声が「皆さ~ん、ご無沙汰していま~す」で大爆笑を誘っていた。
イースタンのチームとウエスタンのチームが対戦するには費用対効果という面で弊害がある。そもそもファームの主催試合を無料試合にしているチームもあり、地方球場で主催試合を組む以外に興行収入を得られないチームもある。そういう球団ではファームは育成上は必要な組織であっても金銭面ではお荷物なのだ。交流戦実施に前向きでない球団があるとしても現状では残念ながらそれは不思議ではない。先述したジャイアンツとタイガースのように球団として利益が上がっている球団が動くか、昨年のようにイースタンに最も近いドラゴンズのファームの本拠地で行うのが精一杯だろう。これからもいろいろと考えなければならないだろう。
個人的には昨日あるいは今日、ファイターズスタジアムに足を運んでくれた、普段ファームの試合に縁がなかった方々が、「またファームの試合を見に来るか」と思ってくれれば幸いだ。
C☆Bはいつもの通りのファンサービスに努めていたし、始球式争奪ジャンケン大会など鎌ヶ谷は自然体でホークスとホークスファンを迎えていた。七回表のホークス攻撃前には「いざゆけ若鷹軍団」が流れた時には少なからず感動した。
C☆Bは東京ドームでは鎌ヶ谷ユニを着させてもらえなかったので、敗戦処理。も実は久々に普段着のC☆Bを観たことになった。
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コメント
トーマス125様、コメントをありがとうございました。
> 公式戦ではなくても久しぶりの勝利は気持ちよかったですね。ファーム広報の第1世にも笑えました。交流戦練習試合をダルビッシュ投手も宣伝するなど、どれだけきてくれるのか不安でしたが土曜日は公式携帯サイトでは1000人を越えていたので、安心しました。
イースタンとウエスタンの珍しい対戦ということで、知る人ぞ知るという感じではありましたが、ダルビッシュが27日の試合のことをtwitterで告知してくれたのも大きかったでしょうね。
> 他球団では2軍戦までは宣伝していない中で、鎌ケ谷にお客さんを呼ぶ努力に何としても行かなくてはと、疲労困憊の体にムチ打っていってきたかいがありました。次の観戦は体調を万全にしていく予定です。
あまり無理をなさらないでくださいね。私もこの土日は二日続けてデーゲームを観戦しましたが、本当にきつかったです。これが仕事だったら途中でネをあげていたでしょう<笑>。
> またいつもの応援団長さんがいなかったけれど、ファン同士の手作りな応援も好きです。
昨日はジャイアンツ球場と横須賀をハシゴしたそうで、今日はジャイアンツ球場でお会いしました。
この週末に鎌ヶ谷に行かなかった理由は「練習試合は対象外」だとのこと<笑>。
今日はライオンズの応援団>とは行動を共にせず、ひっそりと三塁側スタンドで観戦されていましたが、野次る声がよく通るので、第一声>でわかりました。
私はもちろんジャイアンツ側の一塁側で観戦していたのですが、「日ハムの応援の人が来ている」と気付いていた人もいた感じです。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年8月29日 (日) 23時43分
土曜日観戦してきました。
公式戦ではなくても久しぶりの勝利は気持ちよかったですね。ファーム広報の第1世にも笑えました。交流戦練習試合をダルビッシュ投手も宣伝するなど、どれだけきてくれるのか不安でしたが土曜日は公式携帯サイトでは1000人を越えていたので、安心しました。
他球団では2軍戦までは宣伝していない中で、鎌ケ谷にお客さんを呼ぶ努力に何としても行かなくてはと、疲労困憊の体にムチ打っていってきたかいがありました。次の観戦は体調を万全にしていく予定です。
またいつもの応援団長さんがいなかったけれど、ファン同士の手作りな応援も好きです。この日記を通してですが、鎌ケ谷ファイターズについて語れる人がいてとても嬉しいです。敗戦処理。さんの日記をこれからも楽しみにしています。
投稿: トーマス125 | 2010年8月29日 (日) 21時11分
多摩虫様、コメントをありがとうございました。
> 斉藤といい新垣といい、時が経てば立場も大きく変わるものですね。ウルフとカーライルも開幕時からポジションが入れ替わってますし。
鎌ヶ谷の球の声、諸行無常の響き有り…。
そうですね。でも松中がいて、返り咲きとはいえ小久保も健在と、時計が止まっている気もしました。
失礼ながら新垣の暴投には「やっぱり新垣だな」とか「暴投は新垣のバロメーター」などとの声も挙がっていました。
松中と対戦した(二日間の)各投手は超一流打者のオーラのようなものを感じたでしょうし、新垣と対戦した各打者もレベルの違いを思い知ったことでしょうから、ファイターズにとってはいい勉強になった二日間かもしれませんね。
> 今後のファームの運営に関して言いますと、いかに球団が「客を呼ぶための投資」をできるかどうかに懸かっている気がします。まあ、それが一番難しいのでしょうが。
今現在入場無料で試合を行っている球団はサービスで無料にしているというより、お客様から入場料をいただくに相当する施設でないからでしょう。それを例えば来シーズンまでに入場料を取れる施設に改造しろといっても「そんな金出せない!」の一言で終わりでしょう(マリーンズの移転話には期待しましたが)。理想と現実のギャップを感じますね。
> ちなみに、その時間帯の僕は故あって都市対抗のトヨタ戦を観に行ってましたが、王貞治会長も同じ試合を観戦されていたとか。
都市対抗もいいですが、折角だから鎌ヶ谷の方に行って頂きたかった気もしますねえ。まあ、あの暑さじゃ体に悪いでしょうが<苦笑>
ひそかに王会長の出現を期待していました<笑>。
北京五輪の年に、炎天下のジャイアンツ球場で直前合宿練習を行ったのですがミスターが激励に来た時には感動しました。
鎌ヶ谷に「世界の王」… 見たかったですね。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年8月29日 (日) 01時58分
こんばんわ。相変わらず暑い中、観戦お疲れ様です。
斉藤といい新垣といい、時が経てば立場も大きく変わるものですね。ウルフとカーライルも開幕時からポジションが入れ替わってますし。
鎌ヶ谷の球の声、諸行無常の響き有り…。
今後のファームの運営に関して言いますと、いかに球団が「客を呼ぶための投資」をできるかどうかに懸かっている気がします。まあ、それが一番難しいのでしょうが。
ちなみに、その時間帯の僕は故あって都市対抗のトヨタ戦を観に行ってましたが、王貞治会長も同じ試合を観戦されていたとか。
都市対抗もいいですが、折角だから鎌ヶ谷の方に行って頂きたかった気もしますねえ。まあ、あの暑さじゃ体に悪いでしょうが<苦笑>
投稿: 多摩虫 | 2010年8月29日 (日) 00時31分