初めて女子プロ野球を生観戦
日本女子プロ野球リーグは兵庫スイングスマイリーズと京都アストドリームスの二球団からなるリーグで、今春開幕したばかりの新しいプロリーグだ。二球団しかないため、公式戦の顔合わせは一つしかない。正直、リーグと名乗って興行を行うには最低でも四球団はないと成り立たないのではないかなど、敗戦処理。は個人的には懐疑的に思えた。拠点が関西ということで遠い存在だったが、今回初めての関東遠征ということで百聞は一見に如かず。生観戦した。なお今月の30日には神宮球場でナイトゲームで行われるので今回見逃した方で興味のある方は是非どうぞ。
西武ドームの最寄り駅である西武球場前から西武ドームに向かうと、途中に選手のノボリが掲げられている。入場料は前売り1,000円で当日1,500円。フィールドシート観戦希望者も整理券をもらえば追加料金無しで座れる。売店は全部ではないが営業しており、先日のイースタンのライオンズ対ファイターズ戦よりは受け入れ体制が整えられている。両球団のグッズが発売されている。
目立ったのは選手ごとの経歴を漫画にした小冊子。一冊200円とのことなので川端友紀を購入。
入場口をくぐるとウチワが置かれてあり、「ご希望の方はお一人様一枚お持ち下さい」といわれた。個人的には西武ドームで真夏にデーゲームをするのだから「ご希望の方は」ではなく(自動車の後部座席に乗る人もシートベルトを締めなければならないのと同様に)配布を義務づけるくらいにした方が良いと思う<苦笑>。マジで暑かった。
客席にはそれぞれの球団のレプユニ着用で観戦のファンも少なくなく、それなりに固定ファンをつかんでいるようだ。また、両軍それぞれにマスコットがいる<笑>。
この観戦は前回イースタン観戦で西武ドームを訪れた際に知った時点で決めたが、敢えてリーグのHPなどで情報を収集しなかった。まっさらの状態で観たかったからだ。
試合が始まった。この日は兵庫スイングスマイリーズの主催試合ということで三塁側の京都アストドリームスが先攻。
(写真:兵庫先発の小久保) 一回表、先頭の大倉三佳が四球を選ぶと、二番の中村茜は手堅く送りバント。この打球を捕った投手の小久保志乃が一塁に送球するとベースカバーの二塁手、田中幸夏がストライクの送球を落球してオールセーフ。いきなり草野球でもなかなか観ることの出来ないエラーが出て嫌な予感がしたが、このエラーは序章に過ぎなかった。
無死一、二塁となって三番の三浦伊織も送りバント。打球を処理した小久保は三塁に送球するがこれが悪送球になって二塁走者が生還、さらに無死二、三塁。ここで四番の川端友紀がレフトに犠牲フライで2点目を挙げた(冒頭の写真)。
(写真:京都先発の駒谷)一回裏。兵庫スイングスマイリーズもすぐ反撃。一番の厚ヶ瀬美姫がセンター前安打で出ると、すぐ二盗。二番の田中幸夏が一塁線を破る二塁打で1点を返す。三番の小西美加が四球で歩いて無死一、二塁。ここで四番の川保麻弥がレフトの頭上を超える2点タイムリー二塁打であっという間に逆転。さらに無死二塁から、五番小久保の正面の一塁ゴロを京都の一塁手、梅本由紀が右足に当ててはじくエラー。はじいた打球がセンターの前まで転がる間に二塁走者が生還で4対2と形勢逆転。
正直、一回表裏の攻防、というかミス合戦でたまげた。このイニングだけを観た印象で語らせてもらうと、昨日で幕を閉じた高校野球の全国大会の方が遙かにレベルが高い。過酷な地方予選を勝ち抜いて甲子園まで駒を進めた高校であっても、時にとてつもなくお粗末なミスプレーがあるが、それより酷い。敗戦処理。が入場料を払って観た試合では一番レベルが低いのではないかとすら思えた。
試合はその後、ともに1点ずつを加え、兵庫が5対3で迎えた四回表に京都が碇美穂子と駒谷麻妃が連続で右中間を破る三塁打で1点を返し、大倉のショート後方の飛球がテキサスヒットになる間に駒谷が帰り5対5の同点となるが、四回裏に兵庫が二本の安打と送りバントで一死二、三塁と勝ち越しのチャンスをつくり、三番小西の打席で駒谷が暴投。
勝ち越し点が入る。小西が四球で歩くと、川保の一塁ベンチぎりぎりのファウルフライを梅本がファインプレーするがその間に三塁走者がタッチアップしてホームイン。7対5と再びリードを2点とした。
両軍とも五回から二番手投手にスイッチし、五回表裏、六回表とスコアボードに0が並び少しは試合が落ち着くかなと思った矢先の六回裏、既に3打点を上げている四番川保のタイムリーなどで2点を追加して9対5とすると、七、八回もつるべ打ちが続き、14対6と大差で兵庫スイングスマイリーズが圧勝した。兵庫は1引き分けを挟んで4連勝だそうだ。
【22日・西武ドーム】
京都 210 200 100 =6
兵庫 401 202 32× =14
京)●駒谷、荒井、河本、山元-碇
兵)小久保、○小西、田中碧、小西-川保
本塁打)両軍とも無し
試合終了後、プロの興行なので、ヒーローインタビューが行われる。いや、女性なのでシンデレラインタビューというそうだ。
兵庫の四番打者として三安打六打点の川保と、二番打者で三安打二打点の田中幸がインタビューを受けた。
スポンサーも付いており、両選手には梨が送られたが、これまたスポンサー絡みのゆうパックで大切な人に賞品を送らなければならないらしい。ちゃんと期日通りに届けばよいが<苦笑>。
シンデレラインタビューが終わると、選手達はスタンドに姿を現し、スタンドのゴミを回収する。
観客は各自のゴミを近くに来た選手に渡せばよいのだ。これはこの試合だけでなく、全試合で行っているらしい。また手の空いた選手はスタンドで気さくにファンにサインを書いたり、写真撮影に応じている。
(写真:ファンにサインを書く京都の川端友紀) せっかくなので敗戦処理。も川端友紀選手からいただいた。先述したように30日には神宮球場で試合があるので、お兄さんと同じ神宮球場のショートを守ることになりそうだ。
女性だから男性に比べ非力ということもあるのだろう。本塁打は出なかった。守る方もそれを見越して外野手の定位置が浅い。それゆえに一、二塁間を痛烈に抜ける打球が、ライトからの送球で打者走者が一塁到達前にアウトになるライトゴロが2度もあった。
エラーは勝った兵庫が3個で京都が2個と計5個。また決勝点が先述の暴投と、ミスのオンパレード。兵庫が7回企図した盗塁は全て成功で、神戸が企図した1個の盗塁も成功だったから合計8個の盗塁企図が全て成功に終わったのも盗塁の積極性を素直に誉めるだけでよいのかと首をかしげざるを得ない。 ただ、バントシフトや、外野に打球が飛んだ時の連係プレーでの人の動きなどを観ていると、さすがにプロだけに流れるような動きにはなっている。送球が正確に戻ってこなかったり、中継に時間がかかるのが玉に瑕だが。この辺は京都なら阪急ブレーブス黄金時代の二番打者だった大熊忠義が監督で、兵庫の方はホークスで選手とコーチ歴のある川越透が監督として指導しているだけのことはある。(他に投手コーチとして京都には平安高校からビッグマウス、もといブルーウェーブに入団した川口知哉が、兵庫には松村豊司)。ちなみに日本女子プロ野球機構のスーパーバイザーは元祖甲子園のアイドル太田幸司で、最高顧問は橋本聖子参議院議員。 まだ、すべて始まったばかりである。 今日の試合を生観戦しただけの印象では、これが関西が拠点でなく頻繁に関東近郊で開催されているとしても、何度も足を運ぼうとは思わない。もちろん毎試合こんな乱戦では無いのだろうが。 強いていえば、発展途上のリーグの成長を共に見守っていきたいという感覚があるくらいか。来季、また関東近辺で試合があれば、どのくらい変わっているかを観に行きたいとは思う。なんとか話題性でなく、試合内容で観客を魅了出来るレベルになって欲しいと思う。 試合内容、技術レベルは残念ながら敗戦処理。が勝手にイメージしていたレベルに及ばなかったが、いつかあっと驚くレベルになって欲しいと思うし、スポンサーを含む関係者には長い目で、かつ厳しく見守って欲しいものである。 8月23日追記
両先発投手の写真を追加すると共に、文章の順序を一部入れ替えました。
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コメント
にしたく様、コメントをありがとうございました。
> 予定はないようですが、福岡に女子プロ野球がやって来たら是非観に行きたいと思っていましたが、
現状二チームしかないので、来季もそうであるなら、地元以外の試合を増やすしかないと思います。来季は福岡などにも進出しそうですが。
> そうですか、期待外れでしたか。
ええ。
ただ、女子野球のW杯で日本代表が世界一に輝いたというニュースが入ってきました。
昨日の観戦が必ずしも日本の女子野球のげんじょうでは無いのかもしれません。希望を持ちたいです。
> となると、少なくともむこう2・3年くらいを見据えた戦略で、女子プロ野球発展を目指してほしいです。
当然戦略を立てているとは思いますが、問題は資金面でしょうね。スポンサーがいつまで面倒を見続けてくれるか。
何とか軌道にのってほしいものですが。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年8月23日 (月) 23時16分
生観戦お疲れさまでした。
予定はないようですが、福岡に女子プロ野球がやって来たら是非観に行きたいと思っていましたが、そうですか、期待外れでしたか。
ケーブルテレビでの録画中継は1時間に短縮されているし、「週刊ベースボール」の連載も不定期。
自分達の力で魅力ある組織に成長することは当たり前の選択肢なのでしょうが、話題が先行してでも実力をそこから付けていけば、必ずファンはついてくれます。
例えとして正しいかわかりませんが、今やモーニング娘。をも忘れ去られるほどの国民的アイドルグループとなったAKB48というのは2005年、秋葉原の小さな劇場から旗揚げし、観客ゼロという悪夢を乗り越えて、紅白出場、そして国民的アイドルグループにのしあがってきた。
となると、少なくともむこう2・3年くらいを見据えた戦略で、女子プロ野球発展を目指してほしいです。
今年は予定がつまっているようですが、ぜひ来年には福岡で(遠いので遠征費とかアレですが)、一度生で観てから評価したいです。
投稿: にしたく | 2010年8月23日 (月) 09時50分
長緯様、コメントをありがとうございました。
> この試合の動画を公式サイトで見たのですが、敗戦処理。さんのおっしゃるように、残念ながら、金と時間を使って足を運び「すごいプレーを見る」といったレベルではないのかと今のところは感じてしまいました。
あ、公式サイトで観ることができたのですか。
先に観ておけばよかったですね<苦笑>。
ただ、冒頭の写真で紹介した川端や、兵庫の厚ヶ瀬美姫の両選手はかなり身体能力が高く、一番センスのある選手をショートにおいているのだなと納得しました。
時間はかかると思いますが、しっかりしたリーグになって欲しいです。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年8月23日 (月) 00時59分
暑い中おつかれさまでした。
自分は女子のプロスポーツを実際にみたのはプロゴルフ(と女子プロレス・・・)ぐらいしかないのですが、「プロスポーツ」というのはお金をもらってプレーするのですから、観戦する一般人が出来ない「すごいプレー」が見られなければ、成り立たないものと思います。
この試合の動画を公式サイトで見たのですが、敗戦処理。さんのおっしゃるように、残念ながら、金と時間を使って足を運び「すごいプレーを見る」といったレベルではないのかと今のところは感じてしまいました。
しかしながら、予備知識を極力抑えて、実際にプレーを確かめに行かれた敗戦処理。さんの野球に対する愛情は素晴らしいです。そういった方の期待こたえるリーグになれるかどうか、当面気に掛けてたいと思いました。
投稿: 長緯 | 2010年8月22日 (日) 20時22分