熱闘!ファーム日本選手権2010 マリーンズ-タイガース
今年のプロ野球はパとセだけでなく、ファームのイースタンとウエスタンもそれぞれ最後までもつれる優勝争いとなった。 イースタンでは前述のようにジャイアンツに一時期優勝マジックが出たもののなかなかラストスパートが出来ず、最終週になってなおジャイアンツのみならずシーレックス、ゴールデンイーグルス、マリーンズに優勝の可能性があるという展開になり、最後は直接対決でマリーンズがジャイアンツを制して四年ぶりのリーグ優勝を決めた。ジャイアンツとマリーンズは昨年も最終戦まで優勝争いを繰り広げ、勝った方が優勝という最終戦にジャイアンツが勝ってリーグ優勝を決めたいきさつがあった。 一方のウエスタン・リーグは、直接には観ていないがこちらもタイガース以外にバファローズとホークスが終盤まで優勝争いに絡み、最後は先に公式戦を終えて待つ形になったタイガースが優勝した。 敗戦処理。は2003年にイースタン・リーグを制したファイターズの試合を観戦したのを皮切りにその年以降、贔屓球団がイースタンで優勝した年はファーム日本選手権を生観戦しており、今年もそのつもりでチケットを購入したもののマリーンズに優勝をさらわれてしまった<苦笑>。しかし、HARD・OFF ECOスタジアム新潟というスタジアムにまだ足を踏み入れたことがなかったことと、イースタンを制したマリーンズへの敬意をこめて(というかチケット買っちゃったんだから)新潟まで足を運んだのである。 余談だがマリーンズでは既にシーズン途中で外野手の大塚明が現役引退を表明しており、また超ベテランの堀幸一に戦力外通告がなされた。先のイースタン・リーグ優勝の際には高橋慶彦監督だけでなく、ジャイアンツ球場で大塚と堀もマリーンズナインから胴上げされたという。特に堀はまだ現役を続行している身なので今日はマリーンズのユニフォームを着て最後となる堀の雄姿を観ることが出来るかと期待した。またタイガースのファームには長くファイターズのエースとして君臨した金村暁がいるので出場を楽しみにしていたが、こちらも戦力外通告を受けてしまった。ただ昨年のファーム日本選手権にも既にその時点で現役引退を表明していたドラゴンズの井上一樹が出場して代打本塁打を放っていたのでせめて堀くらいは…と思ったが、試合前の選手入場でその姿を観ることが出来なかった。そして大塚は早くもコーチの一人として整列していた。
試合はタイガースが蕭一傑、マリーンズが山室公志郎の先発で開始。 なおこの試合はウエスタンの持ちゲーム扱いとなり、ウエスタン優勝チームのタイガースがDHを使用しないセ・リーグのチームであるためDHなしの試合となり、両先発がラインアップに加わった。実は昨年はイースタンの持ちゲームで、セ・リーグに所属するジャイアンツが優勝して出場したが、イースタンは昨年から全試合でDH制を採用することになったため、DH制で行われた。 試合が動いたのは二回。 タイガースは二死から水田圭介が四球を選ぶと、八番の田上健一が右中間を深々と破る三塁打で先制点。二死から下位打線に四球を与え、投手の前の八番打者が相手だから長打を避けなければならないのに長打を浴びる。今季育成選手から期限ぎりぎりの七月末に支配下登録され一軍入りも果たしたマリーンズ期待の山室だが、大事な試合で不用意のうちに先制点を与えた格好だ。山室はこの後、四回に先頭のタイガース四番、葛城育郎と森田一成に連続四球を与えたところでKO。この大事な試合で制球難をまざまざと見せつけられてはベンチも動かざるを得まい。二番手は山本徹矢。 タイガースは一死後、水田が三遊間を破り、二塁からイクロー、もとい葛城が還り2点目。打球を処理したレフトの竹原直隆からの返球でホームはクロスプレーかと思ったが三塁手の翔太がカット。しかも囮になろうとして(あるいは本当に判断ミスで)三塁を狙った森田を三塁で刺せず、さらに一死一、三塁としてしまい、続く田上の一塁ゴロの間にもう1点。これでタイガースが3対0とした。 蕭は六回に先頭の青松敬鎔に三遊間をゴロで抜きそうな当たりを打たれるが三塁の野原将志がダイビングキャッチして一塁に送球して刺した。ここまで唯一の安打せいの打球をファインプレイに助けられ、蕭はさらに波に乗り、六回、七回と走者を出さず三人で片付けていく。 敗戦処理。も完全試合を生で観たことはない。いよいよかなと思った八回、先頭のマリーンズ四番、細谷圭が放った打球は無情にも三遊間のど真ん中を破った。 完全試合やノーヒットノーランを惜しいところで逃した投手は往々にしてそれが尾を引く投球をすることがあるが、今日の蕭はまさにそんな感じ。あるいはスタミナ切れか、この後一死を取ったものの安打、四球、安打で1点を返されさらに一死満塁というピンチを作ってしまうこととなり、小嶋達也にマウンドを託すことに。しかしこの小嶋が二死満塁からワンバウンドの暴投。そして捕手の岡崎が後逸した投球を見失う間に二塁走者まで生還し4対3となり、試合はわからなくなった。 1点のリードで迎えた最終回。タイガースは抑えにジェンを起用するが一死から神戸拓光と細谷に連打されて一、三塁のピンチに。ここで竹原にライト線に痛打され、ライトの田上がダイビングキャッチを試みるも及ばず同点の二塁打となった。 ここでタイガースはジェンを諦めて若竹竜士をマウンドに。二死後、青松の打席で、その次が八回から登板した橋本健太郎で既に出場予定の野手を使い果たしており、またブルペンで誰も投球練習をしていないのでタイガースは青松を敬遠して満塁策を。しかし若竹は何を難しく考えたのか橋本に対して際どいところに投げてそれがことごとく外れ、結局フルカウントから押し出しの四球。 普通、この流れならこれでマリーンズが逆転するのだが、今日に限ってはそうもいかない。九回裏、一死から代打の野原祐也が四球を選ぶと、柴田講平があわや逆転サヨナラ本塁打という大飛球をライトに放ち、フェンス越えこそならなかったものの同点タイムリー三塁打を放つ。5対5。この後は上本博紀と野原将が連続三振でサヨナラのチャンスを逃す。 延長戦に入る。ファーム日本選手権の規定では延長戦は無制限。これはワクワクする。 横山はこの試合のメンバーでは両軍で唯一の新潟県出身選手だったそうで、試合前に花束をもらっていた。 地元ファンの大声援を受けてマウンドに上がった横山だったが、二死を取ったまでは良かったもののそこから死球、安打、四球で満塁のピンチを招くと平田勝男監督も諦めたか、石川俊介をマウンドに。マウンドから降りる横山にそれでも大拍手が送られる中、二死満塁から石川は初球を角中勝也にぶつけてしまい、マリーンズは再び6対5と勝ち越す。 一点を勝ち越したマリーンズは十回裏のマウンドに六番手の根本朋久を送る。一軍経験もある左腕のリリーバーで何とか逃げ切りを図るが、先頭の途中出場の甲斐雄平がレフトオーバーの二塁打。そして送りバントで一死三塁となると、高橋監督は右の鈴江彬にスイッチ。 【2日・HARD・OFF ECOスタジアム新潟】 M 000 000 032 1 =6 T 010 210 001 0 =5 M)山室、山本、服部、上野、○橋本、根本、S鈴江-青松 T)蕭、小嶋、ジェン、若竹、●横山、石川-岡崎 本塁打)両軍とも無し 本当に壮絶な試合だった。タイガースの蕭による完全試合が観られるかと期待した試合展開から、誰がこの結末を予想しただろうか。本当に野球の勝負は少々の事では諦めてはいけないということをあらためて痛感した。勝ったマリーンズはもちろんのこと、惜敗したタイガースにも惜しみない賛辞と拍手を送りたい。 と感慨にふけりながら冒頭の写真の高橋監督の胴上げや優勝監督インタビュー、ヒーローインタビュー、表彰式という流れを観ていた。 が、タイガースからも蕭と柴田が優秀選手に選ばれているというのに、さっきまで一軍戦並みのトランペット応援をしていたライトスタンドのタイガース応援団ゾーンがもぬけの殻なのである。 もちろんレフトスタンドの一角を異様なまでに黒く染めたマリサポ達は最後まで見守り、時に高橋監督の現役時代のヒッティングマーチをトランペットで演奏したり、引退した大塚に対して「GO!GO!大塚明」コールを連呼したり。 それにしても、熱烈なマリーンズファンを別にすれば、今回のマリーンズ御一行の中で高橋監督の人気は圧倒的だった。 まだ応援するジャイアンツの一軍が試合を残しており、この先日本シリーズ進出を賭けた闘いに臨むがファームはこれでおしまい。今日も新たな戦力外通告の情報が流れ、マリーンズなどはこの試合が行われている間に発表されたそうだ。そういう時期になったということだが、ファームであろうと、一軍であろうと、他の球団がオフになっても真剣勝負の場に身を置けると言うことは幸せなのだ。来年はジャイアンツかファイターズのファームが再びこのステージに進んで欲しい。 最後に表彰選手を。 ◆優秀選手賞 角中勝也 金沢岳 蕭一傑 柴田講平 ◎最優秀選手賞 細谷圭 敗戦処理。にとっても五度目のファーム日本選手権生観戦で初めてイースタンの優勝チームが勝利するという貴重な試合となった。 P.S. 今日のオマケ 村山審判員、君の時代を待っている。君の時代を信じてる! この間、タイガースの蕭は伸びのある球を低めに集めている印象ですいすいと投げており、マリーンズ打線に安打どころか一人の走者も出さない投球を続ける。タイガースが五回裏にも内野ゴロの間に1点を加え、4対0とすると、もはや今日の関心は蕭が完全試合を達成するのではないかの一点に絞られるように思えた。
(写真:暴投に加え、捕手が球を見失う間に二塁走者の青松まで生還)
橋本は一度もバットを振らずに勝ち越し点をゲットした。マリーンズ、土壇場にしてこの試合初めて5対4と逆転。
タイガースは十回表のマウンドに地元新潟県新潟市出身の横山龍之介を送る。
この重要な場面で育成選手に託さなければならないとはマリーンズもついに球が切れたかと思ったが案の定四球で一死一、三塁と同点どころか逆転サヨナラのピンチに。しかしここで水田が一塁後方のファウルフライに倒れる。三塁走者はタッチアップを自重したがバックホームがダイレクトにされたのを見てサヨナラの走者に当たる一塁走者の岡崎が二塁を陥れようと走るが青松からの二塁送球でタッチアウト。この瞬間にマリーンズが2010年のファーム日本選手権の覇者となった。
関西方面からの出張応援で帰阪する時間の縛りがあったのかもしれないが、試合に負けたら「はい、サヨナラ」というスタンスに興ざめした。
たしかにカープでの現役時代、全国区と言えたのは山本浩二と衣笠祥雄以外では高橋慶彦くらいだった。芸能人との交際が噂され、週刊誌などの俎上に乗っていたこともあるが、知名度が一桁違う感じがした。
敗戦処理。がNPBの審判員の中で最も好きな審判員・村山太朗審判員。ついにこの大舞台で球審を務めるまでに。シーレックスファンのブロガーであるKさんによると、この試合のMVPだとか。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
HARA88様、コメントをありがとうございました。
> 2日の日に新潟へ行くかどうかギリギリまで迷ったのですが東京ドームにしました。おかげで三重殺が見れましたけどね(苦笑)
新潟で一緒に観戦出来るかと楽しみにしていたのですが、三重殺は貴重でしたね。
> CS導入後、ドラゴンズは初めてファイナルステージから戦いますがおそらくドラゴンズファンから見たら「第2ステージにジャイアンツ来るな!」って思っている人が多いんじゃないですか?
その辺は私にはわかりませんが、対戦は決まってあとはどちらの球場で行うかだけですから、もう先発ローテーションとかはどちらも決めているのではないでしょうか?
投稿: 敗戦処理。 | 2010年10月 5日 (火) 00時41分
新潟での観戦お疲れ様でした。
2日の日に新潟へ行くかどうかギリギリまで迷ったのですが東京ドームにしました。おかげで三重殺が見れましたけどね(苦笑)
新潟は来年行きますが仮にベイスターズが新潟に移転することになったらちょっと複雑です。
CS導入後、ドラゴンズは初めてファイナルステージから戦いますがおそらくドラゴンズファンから見たら「第2ステージにジャイアンツ来るな!」って思っている人が多いんじゃないですか?
投稿: HARA88 | 2010年10月 4日 (月) 08時21分
多摩虫様、コメントをありがとうございました。
> それにしても凄い展開でしたね。途中経過を見たときには「こりゃ駄目か」と思ったものですが、まさに頂上決戦にふさわしい試合でした。生観戦できたのが羨ましいです。
行った甲斐がありました。お互いの執念でしょうね。
あらためて「諦めてはいけない」を痛感しました。
> しかし改めて高橋監督の胴上げを見ると、先日のコメントを蒸し返したくなりますねえ。僕はカープファンでもないのに、この1年間で現監督に殺意を覚えるまでになってしまいましたよ……とほほ。
カープはOBを監督にし続けていますから、大野コーチともども有力候補だと思いますよ。マリーンズが手放すかどうかは別として…
> 話は変わってファイターズ。戦力外通告だけでなく、主力がごっそりと抜けそうな気配までしてきましたねえ。来年の開幕戦では、どんなメンバーになっていることやら…
今年はオフシーズンが長くなると思いましたが、目が離せませんね。
投稿: 敗戦処理。 | 2010年10月 3日 (日) 22時13分
観戦と深夜に及ぶ更新、お疲れ様でした。
それにしても凄い展開でしたね。途中経過を見たときには「こりゃ駄目か」と思ったものですが、まさに頂上決戦にふさわしい試合でした。生観戦できたのが羨ましいです。
しかし改めて高橋監督の胴上げを見ると、先日のコメントを蒸し返したくなりますねえ。僕はカープファンでもないのに、この1年間で現監督に殺意を覚えるまでになってしまいましたよ……とほほ。
話は変わってファイターズ。戦力外通告だけでなく、主力がごっそりと抜けそうな気配までしてきましたねえ。来年の開幕戦では、どんなメンバーになっていることやら…
投稿: 多摩虫 | 2010年10月 3日 (日) 02時10分