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2010年10月 9日 (土)

ジャイアンツ、クライマックスシリーズに思いっきり不安を残して閉幕

Dsc_0030 勝つか、引き分ければレギュラーシーズンを2位で終えることになり、クライマックスシリーズの1stステージを本拠地・東京ドームで行えるという最終戦だったが、最終回に1点のリードを守れず追いつかれ、延長戦で手痛い一発を食らって逆転サヨナラ負けという最悪の結果に終わった。いつもジャイアンツファンをハラハラさせる守護神は最後までハラハラさせどうしのままだった。

(写真:七回表のピンチにマウンドへ行って山口鉄也に喝を入れる原辰徳監督。奇しくも二週間前と同じようなトップ画像<苦笑>。)

先発の内海哲也が好投するも、六回に一点差に迫られると原辰徳監督は躊躇なく久保裕也を投入。今季お決まりの継投を2位がかかった最終戦でも貫いた形だ。久保がイニングをまたぎ、山口鉄也越智大祐とつないで何とか一点差を保ち、

Dsc_0051 最終回はマーク・クルーンがハラハラドキドキさせながらも抑えるという勝ちパターンが最後に崩れた。

Dsc_0060 (写真:同点打を放った畠山和洋)

それでも同点止まりだったので九回裏に1点でも取ればサヨナラ勝ちだったのだが、一死満塁の絶好のサヨナラ機に長野久義脇谷亮太に一本が出ない。

十回表にクルーンを続投させるも、失策と四球で無死一、二塁としたところで慌てて高木康成をつぎ込むも、一死から伏兵の川本良平に3ランをジャイアンツファンで埋まったライトスタンドまで運ばれた。

今季のジャイアンツの苦戦ぶりを象徴するかのような最終戦だった。

それにしても不思議なシーズンだった。

開幕当初は順調に白星を積み重ねていた。だがそれも中継ぎ陣、リリーフ陣の踏ん張りに支えられる要素が多かった。中でも昨年はほとんどといっていいほど戦力にならなかった久保が先発投手が崩れたあと、リードを保ちながら山口や越智につなぐ役割を完璧にこなした。開幕当初は先発ローテーション入りを目指していた山口も中継ぎに復帰し、リリーフ陣はより強固になったが、誰が先発してもリリーフ陣に頼らざるをペないので、早晩リリーフ陣が崩壊するのではという懸念と背中合わせではあった。

しかし意外にも、崩壊したのは酷使される中継ぎ陣でなく、先発陣だった。連続試合二桁被安打の不名誉な記録を達成してしまうなど、とにかく先発陣が総崩れ。開幕投手を務めて順調に勝ってきた内海も勝てなくなり、ハーラーダービーのトップを争っていた東野峻も夏場から急降下した。

さらに拍車をかけて酷かったのが昨年は投手陣を引っ張ってきた外国人の先発陣。セス・グライシンガーは故障でシーズンの大半を棒に振り、ディッキー・ゴンザレスウィルフィン・オビスポも昨年とは別人だった。こんな頼りない先発陣でも最後まで2位を狙える3位だったのは打線の破壊力と前述の中継ぎ陣の踏ん張りの賜だが、さすがに最後に中継ぎ陣もばてた。

特に深刻なのは、最終回に1点のリードを守れなかったクルーン。

問題なのは制球難ではなく、今季は肝心なところで浴びる一発。

6月19日の東京ドームのドラゴンズ戦。同点の九回表にトニ・ブランコに浴びた超特大の決勝3ランと、7月18日の横浜スタジアムでブレッド・ハーパーに浴びた逆転サヨナラ満塁本塁打が象徴的だ。これまでも制球の不安が常につきまとっていたが、荒れ球が時に幸いし、ストライクゾーンを通過しさえすれば球威で相手を抑え込むことが出来たのだ。だが、それが出来ないということを捕手の阿部慎之助やジャイアンツベンチが気付いてしまったのだ。力勝負に不安があるから、無い物ねだりでコントロールを求めるのだが、そんな切り替えはうまくいかない。それでもこの最終戦までクルーンを抑えから外さなかったのは、ぶれないという点では原監督を評価出来るが、今年はクルーンと心中せずクルーンを途中でマウンドから降ろすことが少なくなくなった。

クライマックスシリーズに臨むに当たり、不安さを露呈するばかりの最終戦だった。

ジャイアンツのクライマックスシリーズは最大九試合。

セ・リーグがパのプレーオフ制度に追従する形でクライマックスシリーズを導入した時、「ジャイアンツを日本シリーズに進出させるための制度」と揶揄された。当時のジャイアンツが球団創立史上初の二年連続Bクラスに低迷していたこともあり、3位でも日本シリーズに進出出来るかもしれないこの制度は当時のジャイアンツには起死回生の制度になるかもだった。それが証拠に詳細を詰める時に清武英利球団代表は優勝チームへのアドバンテージ付与に猛烈に反対した。アドバンテージを付けることは一試合減ることを意味し、収入源が減るという理由だった。もちろん口が裂けても3位で滑り込んでも日本シリーズに出られる可能性を減らさないためとは言わない。

だが、皮肉なことにクライマックスシリーズ元年の2007年、ジャイアンツはリーグ優勝を成し遂げてクライマックスシリーズに出場。アドバンテージ無しで闘ってドラゴンズに三タテをくらい、リーグ優勝を果たしながら日本シリーズ進出を逃すという珍事態になった。

これではいかんと、すぐにクライマックスシリーズの制度を変更。レギュラーシーズン優勝チームに第2ステージで無条件に一勝のアドバンテージを付与することを提案するが、それだけだと前年の主張と矛盾する。そこで清武代表は第2ステージを三勝勝ち抜きから四勝勝ち抜きに改め、試合の機会を多くすることで前年の発言と矛盾しない形でアドバンテージを付与する制度に改変させた。そしてその後二年間、ジャイアンツはリーグ優勝を続け、日本シリーズにも難なく出場している。

球団代表とはここまでやって初めて球団を代表する人物と言えるのかもしれない<>。そして今年初めてクライマックスシリーズのそもそもの性質である敗者復活戦という恩恵をジャイアンツが受けることになる。アドバンテージもなく、すべてがロードゲーム。最大九試合と言っても、中五日をベースにファイナルステージ初戦に先発した投手が中四日で最終戦に投げられれば先発投手は五人で回せる。基本的には良い投手から順番に先発させないと、ファーストステージで姿を消すことにもなりかねないので出し惜しみをせずにタイガース戦から、計算出来る順に先発投手を並べるしかあるまい。

 

Dsc_0092 シーズン最終戦ということで試合後にスピーチした原監督は「クライマックスシリーズでは暴れてきます」と力強く語った。

 

原監督はあと一週間でチームを立て直すことが出来るのだろうか?

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コメント

多摩虫様、コメントをありがとうございました。

> それにしても、結局ホークスはアドバンテージさえも活かせませんでしたね。実戦勘不足と過去のトラウマからか、野手陣がバットを振り切れぬままに終わってしまった印象です。このチームがCSを勝ち抜ける日は、果たして来るのでしょうか…

何かCS期間中のチーム打率としてはワーストだったとか。あれだけの役者が揃っていて…。

技術的なことはわかりませんが、松中のアウトカウントを間違えたとしか思えない走塁

* あれは帰塁出来ずにアウトというより、三塁走者を追い越してしまったのではないか…?

や、打球を本塁打と決めつけて全力疾走を怠った小久保とか、チームを引っ張るべきベテランのあるまじき行為にがっかりしました。

小久保は昨年のジャイアンツとファイターズの日本シリーズ第四戦の日本テレビの中継にゲスト解説として出演し、ファイターズの稲葉のどんな試合展開でも全力疾走や守備でのバックアップを怠らない姿勢に共感し、ミーティングでホークスナインに自分たちも見習おうと提案したと言うようなことを言っていたのですが。

そしてパ・リーグの2004年からのプレーオフを含め、レギュラーシーズン1位のチームが日本シリーズ進出を逃したのがこれで四回目で、2007年のジャイアンツを除くとあとはいずれもホークス。過去二回(2004年、2005年)は相手に5ゲーム差以上つけていれば1勝のアドバンテージという制度でしたが、わずかに足らず。逆に無条件にアドバンテージがついた2006年はファイターズが1位だったため、アドバンテージの付いたファイターズに2連敗してあっさり終わりという結果でした。しかも当時の制度で、2004年と2005年はプレーオフの勝者がリーグ優勝という定義だったため、ホークスは優勝もしていないことになってしまいました。


多摩虫さんや山内孝徳解説者が指摘するような継投の人選と内容はセのジャイアンツやタイガースにも同様に首をかしげる点はあります。「短期決戦の魔物」としか言いようがないのでしょうか?

投稿: 敗戦処理。 | 2010年10月20日 (水) 20時43分

HARA88様、コメントをありがとうございました。

> まさかパリーグのファイナルステージが最終戦までもつれるとは思いませんでした。

CSにアドバンテージが付いてからでは初めてですね。

実は私は2007年、2008年とジャイアンツが出場する第2ステージの最終戦のチケットを購入しましたが、どちらも幻となってしまい、払い戻しになりました。

* 今日から日本シリーズのチケットの先行予約受付なので第七戦を狙いに行きます。

> 22年前のロッテオリオンズ対近鉄ファローズのダブルヘッダーが「10.19」で今年のパリーグCSファイナルステージも「10.19」という事にふと気付きました。しかも、いずれもマリーンズが絡んでいるのが不気味に思えてなりません。

22年前の1988年以来のパ・リーグの決戦の10・19ということでいろいろと話題になり、@higeito さんに至ってはあの時と同じように既に公になっていた球団の身売り以外に新たな身売りが明らかになるのではないかと心配されていましたが、幸いなことに身売りもなく、また大リーグへの人身売買が懸念されていた日本のエースもその予定がないことを表明してくれました。

残念ながら、試合結果的には「平成の『10・19』」とか「21世紀の『10・19』」と語り継がれることはなさそうですね。

次はジャイアンツが劇的に勝ち抜いてくれればと思っていますが、何で今日は東野なのでしょうか?内海はそんなに調子が悪いのか?だとしても藤井じゃダメなのか?

ここから先は結果オーライでは進めないですよね。

投稿: 敗戦処理。 | 2010年10月20日 (水) 20時24分

にしたく様、コメントをありがとうございました。

> 6回から信頼できるリリーフ陣を自信満々に繰り出せるのはうらやましいですが、シーズン中にほとんど無かったこういうことがプレーオフで起こっちゃうのは、野球というスポーツの難しさを現していますが、それにしても・・・

> 短期決戦の怖さなのでしょうね。

ジャイアンツにしても、タイガース戦の二戦目の継投はかなり不可解でした。

多摩虫さん宛のコメントでも触れましたが、意表を突いた先発の朝井が一回に二失点するとすぐ交代。王手をかけられたタイガースがやるならまだしも、王手をかけたジャイアンツが何をばたばたしているのかと案じていましたが、代わったグライシンガー、MICHEAL、高木も失点を重ね、六回で2対6。この時点で第三戦を意識した戦い方にシフトすることも考えられましたが残っているリリーフ陣が勝ち試合用の投手ばかりというちぐはぐさ。タイガースの拙守やリリーフ陣の不調で大逆転したので結果オーライでしたが…。

もっとも、采配の?な点を選手がカバーするのもジャイアンツの勝ちパターンの一つですから、それも有りかなとは思いますが、落合監督率いるドラゴンズ相手にそれが通用するか、と思っていたら東野を中三日で先発させて立ち上がりに四失点。柳の下にドジョウが何匹もいてくれればいいのですが…

> 明日は杉内和田を惜しげもなく使うでしょうが、終盤の不安は一晩では消えませんよね。

そうなりましたが、成瀬に完全お手上げ状態だったので、和田投入も実りませんでしたね。

しかしそこまでやるのであれば和田が2イニング凌いだ後、ファルケンボーグでなくていきなり摂津でしょう。

投稿: 敗戦処理。 | 2010年10月20日 (水) 20時10分

多摩虫さんのコメントにさらに付け加えると、解説者の山内孝徳さんはRKB(TBS系の福岡局)で解説するとホークスが負けるというジンクスがあるんですよ。
土曜日にはRKBラジオで朝の生ワイド“ジャンケン番組”でパーソナリティを務めるなど、トークはおもしろいのですが・・・

投稿: にしたく | 2010年10月20日 (水) 09時26分

返信ありがとうございます。ちょっと昨日のコメントの補足を。

僕の方は昨日の試合をTOKYO MXでほぼ最初から最後まで観ていましたが、解説の山内孝徳さんはファルケンボーグ(余談ですが、日テレのアナが「ファンケルボーグ」と言い間違えてたのには笑いました)が出てきた時点で既に不安を口にし始めていましたね。いわく「今日まで出てこなかったのは調子が悪いから。出さない展開にすればホークスは勝てると思ってた」とか。それでいて久々の登板でいきなり2イニング行かせたもんだから、見事に捕まりましたね。やはり短期決戦の難しさを痛感します。

* などと言っていたら、今日もファルケンボーグが炎上! 山内さん恐るべし。


それにしても、結局ホークスはアドバンテージさえも活かせませんでしたね。実戦勘不足と過去のトラウマからか、野手陣がバットを振り切れぬままに終わってしまった印象です。このチームがCSを勝ち抜ける日は、果たして来るのでしょうか…

投稿: 多摩虫 | 2010年10月19日 (火) 20時52分

まさかパリーグのファイナルステージが最終戦までもつれるとは思いませんでした。

ホークスにとってホームゲーム開催で1勝のアドバンテージがありながら3位のマリーンズ相手に3勝3敗ですからホークスは精神的に不利じゃないかと感じました。


22年前のロッテオリオンズ対近鉄ファローズのダブルヘッダーが「10.19」で今年のパリーグCSファイナルステージも「10.19」という事にふと気付きました。しかも、いずれもマリーンズが絡んでいるのが不気味に思えてなりません。

投稿: HARA88 | 2010年10月19日 (火) 06時49分

TNC(福岡のフジテレビ系列)でホークス戦観ていましたが、きょうの展開はアンチの僕が観てもかわいそうな展開でした。
解説の高木豊さんと池田親興さんをもってしてもフォローできない“逃げ”の継投。
6回から信頼できるリリーフ陣を自信満々に繰り出せるのはうらやましいですが、シーズン中にほとんど無かったこういうことがプレーオフで起こっちゃうのは、野球というスポーツの難しさを現していますが、それにしても・・・
明日は杉内和田を惜しげもなく使うでしょうが、終盤の不安は一晩では消えませんよね。

投稿: にしたく | 2010年10月19日 (火) 01時16分

多摩虫様、コメントをありがとうございました。

> しかしながら、僕が考えさせられたのはパ・リーグの方、それも今日の試合ですね。
観ましたか? あの展開。
大隣が絶好調でありながら、彼のシーズン中の不安定さと強力リリーフ陣を考慮に入れてファルケンボーグを前倒しして投入したホークス。しかし、その判断が見事に裏目に…。

大隣とSBMを秤にかければ、継投に走るのは当然でしょうが、シーズン中のように甲藤や森福を間に挟まなかったのがアヤのような気がしますね。ま、いずれにしても、短期決戦は何が起きるかわからないですね。

> 秋山監督の采配が必ずしも間違っていたとは言えませんが、これもまた「JFK症候群」に陥った一例なのかも知れませんね。無論、ジャイアンツにとっても他人事ではありませんが。


甲子園の二戦目も、藤川球児を攻略して万々歳、のはずなのですが、ウチもクルーンで見慣れた光景なので、藤川に対しては気の毒な感じがしました。

勝負事で生半可な同情は相手に失礼ですが、九回になおも続投し、切れかかっている気持ちに必死にブレーキをかけながら、納得のいかない投球をしつつも、何とか追加点をあげなかった藤川投手は立派だったと思います。

まさかとは思いますが、タイガースファンにおかれては藤川球児を戦犯呼ばわりすることは慎んでもらいたい。

また、「JFK症候群」という点では好投久保を替えたことに批判が集中しているようです。


第一戦で展開上やむを得なかったのかもしれませんが久保田に2イニング、30球も投げさせた事を考えると、第二戦に4点のリードがあるといっても、久保田と藤川球児で3イニングを託すというのは第三戦を考えても避けるべきだったかなと思いました。もちろんジャイアンツファンとして見ている訳ですから、久保降板の時点で「ひょっとしたら…」とは思いましたが、むしろ六回を終えた時点でジャイアンツの残る投手の顔ぶれが久保、越智、内海、山口、クルーンだったので、2対6で出す投手がいないという事態に危機感を募っていました。先に一勝しているジャイアンツは極論すれば第三戦に賭ける事も可能なはずですが、どの投手も温存したい投手です。


今だから言えますが、原監督が三年間一度も手を打たなかった、守護神の敗戦処理登板が実現したかもしれません。

投稿: 敗戦処理。 | 2010年10月19日 (火) 00時42分

ご無沙汰です。

ジャイアンツが敵地でありながら地の利を生かしての連勝。痛快な展開でしたね。ナゴヤでの健闘を祈ります。

しかしながら、僕が考えさせられたのはパ・リーグの方、それも今日の試合ですね。
観ましたか? あの展開。
大隣が絶好調でありながら、彼のシーズン中の不安定さと強力リリーフ陣を考慮に入れてファルケンボーグを前倒しして投入したホークス。しかし、その判断が見事に裏目に…。
秋山監督の采配が必ずしも間違っていたとは言えませんが、これもまた「JFK症候群」に陥った一例なのかも知れませんね。無論、ジャイアンツにとっても他人事ではありませんが。

投稿: 多摩虫 | 2010年10月18日 (月) 22時12分

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