何なんだ、このトレードは?-ジャイアンツとファイターズで今年もトレードが成立
ファイターズはここ数年積極的にトレードをしているし、ジャイアンツも以前のようなFAでの大物の一本釣りばかりでなく、適材適所の発想でトレードを推進しているように思えるので、別にこの両球団の間でトレードが成立しても驚くことではないが、日本シリーズの最中に決まるとは驚いた。機構への手続きが済めば秋季練習に加われるし、来季への闘いが既に始まっていると考えれば、早い時期に決まるのは望ましいことだ。だがそれにしても、との感じだ。
ウィルフィン・オビスポは、正直、早晩戦力外通告を受けるだろうと思っていた。昨シーズンの6勝から一転、今季は一軍と二軍を往復する低迷。セス・グライシンガーがほぼ一年間一軍にいなかったにもかかわらず、空いた外国人枠を自分のものに出来ず一軍で先発ローテーションに定着出来なかった。育成選手からのスタートで立場的には外国人選手といっても一軍が保証されている訳ではなく、年俸2,000万円の投手なのだから、今季同様の立場でジャイアンツに残ることも考えられるがジャイアンツは「次なるオビスポ」を探すだけのことと敗戦処理。は思っていた。外国人助っ人と位置づけると今季の成績は失格だが、育成選手出身の伸びしろのある選手と考えれば、低年俸で再契約という形になる選手。
ただそれはジャイアンツという球団だからなせる契約形態で、ファイターズでは「安上がりな外国人助っ人」という扱いなのだろう。昨年ファイターズにいたルイス・ヒメネスのような位置づけか。既にバディ・カーライルを解雇しているのでブライアン・ウルフ、ボビー・ケッペルとの三人体制と計算されるのだろう(加えて、さすがに野手の外国人を獲得予定らしいが)。うまくはまれば貴重な先発ローテーション投手になりそうな気はするが、今季程度の成績だったら一年でお払い箱になるだろう。
一方の須永英輝も、戦力外通告の顔ぶれに入っていても不思議でなかった、早くも七年目を終えた存在だ。イースタンで10勝を挙げて最多勝利に輝いたルーキーイヤーがピークだったのではと一部で囁かれているが、そのルーキーイヤーの締めくくりのファーム日本選手権で九回一死まで相手のドラゴンズ打線を無失点に抑えていながら最終回につかまってチームともども白星を逃してしまい、運を失ったともいわれる。今回の移籍でその試合でバッテリーを組んだ實松一成と六年ぶりにチームメートになり、来季はともに崖っぷちでのシーズンとなり、火事場の馬鹿力が発揮されればいいのだが。
ただ冒頭の画像のように今季途中から左腕をスリークオーター的に下げてからだいぶ制球が安定し、短いイニングの中継ぎがようやく板に付いてきた感がある。夏場に一軍に上がった際は目立った結果を挙げられなかったが、ジャイアンツがその当たりに可能性を見出したのかもしれない。
ジャイアンツはこのオフ、川口和久を新たにコーチングスタッフに加えた。川口もどちらかといえば荒れ球の投手。同じサウスポーとあって須永には格好のコーチなのかもしれないが、いくら投手総合コーチといっても須永が一軍にいなければ指導の機会も限られよう。
先発投手陣の崩壊がV逸の要因とも言われるジャイアンツが先発型のオビスポを放出して先発型なのかリリーフ向きなのか七年経ってもはっきりしない須永を獲得したのは山口鉄也以外にめぼしい結果が出ない左のリリーフ陣の補強なのかもしれないが、高木康成がシーズン終盤に頭角を現した事を考えると須永には狭き門といえよう。ドラフトの時に強く志望していたジャイアンツ入りが七年越しで叶ったのだから何とかものにして欲しいが…。
そしてファイターズファンにとって衝撃だった紺田敏正のトレードだが、昨オフに準レギュラー的存在だった稲田直人が放出された経緯を踏まえれば、紺田や飯山裕志クラスでも相手次第でトレードに応じると敗戦処理。は感じていたので個人的にはそれほどの衝撃ではない。むしろ外野手は個性派揃いのジャイアンツがわざわざ右投げ左打ちの外野手をトレードで獲得したことの方が意外だった。
考えられることは鈴木尚広のFA流出を見越して実戦経験豊富で走れて守れる外野手を求めていたというくらいだ。同じファイターズ出身の工藤隆人ともろにキャラがかぶるし、アレックス・ラミレス、松本哲也、長野久義、高橋由伸、亀井義行、谷佳知、矢野謙次といて、ファームにも期待の橋本到を始め、隠善智也、加治前竜一、一塁兼用の田中大二郎がいるのである。三十歳代に突入した外野手をわざわざ獲得した意図が理解出来ない。
ファイターズとしては昨年の稲田同様、伸びしろが少ないと見たのか。稲田も紺田も三十歳の大台に乗ったシーズン後にトレードされた形だ。外野に転向した陽岱鋼が一年間一軍に定着し、村田和哉も成長が見込めるとあれば、トレード推進型のチームがトレード要員としても不思議ではない。
オビスポも須永も、求められた移籍先でチャンスをつかめる可能性は高いと思う。もちろん容易ではないが旧球団に残るよりはチャンスがあると思う。ただともに来季がラストチャンスだと思うが…。逆に紺田はかえって激戦区というか、茨の道を歩むことになりかねないと思う。ファイターズでなら、紺田と前出の飯山はチームを支えるスーパーサブ的な存在として一軍28人枠に指定席があったようなものだが、ジャイアンツではそうはいかない。紺田の守備力はジャイアンツでもAランクだが、それが正当に評価される球団とは思えないからである。
そして紺田の加入(と鈴木の残留宣言)で存在意義が薄れてきたのが工藤隆人だ。
MICHEALとともに二岡智宏、林昌範とのトレードでジャイアンツ入りした工藤だが、当初ジャイアンツが工藤に期待していたであろう位置には松本が定着してしまった。まだオフは長い。工藤に思わぬ転機が訪れることがあっても不思議でない。
昨年の今頃は日本シリーズで相まみえたジャイアンツとファイターズ。その編成方針は180°異なる両チーム間に頻繁にトレードが成立するのも不思議な感じがするが、ともに優勝を逃したこのオフ、まだまだ活発な動きがあるように思えるがどうだろうか…。
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