ゴールデンイーグルス、渡辺直人金銭トレードの波紋について
ゴールデンイーグルスの内野手、渡辺直人がベイスターズに金銭トレードされることが発表され、波紋を呼んでいる。星野仙一新監督を迎え、積極的な補強を展開しているゴールデンイーグルスだが、流出やむなしと思われた岩隈久志のポスティング移籍が破談に終わり、来季への戦力が整ったかと思った矢先の金銭トレード。岩隈のポスティング移籍で見込んだアスレチックスからのトレードマネーがフイになり、松井稼頭央、岩村明憲の補強で余剰戦力になり得る選手を金銭トレードで放出して少しでもお金に換える。このわかりやすい構図に、ファンが戸惑うばかりか、チームメートからも困惑の声が挙がっているようだ。
(写真:来季、8年ぶりに日本球界に復帰する松井稼頭央。1999年4月撮影)
岩隈久志のポスティング移籍不成立は、入札で交渉権を獲得したオークランド・アスレチックスがライバル球団に獲得されるのを避けるために入札額は他球団に負けない額を提示しておいて、いざ交渉権を得たら岩隈サイドが承服しえない低い契約条件で交渉し、破談に終わってもライバル球団に交渉権が移る訳ではないので、最初から妨害工作だったなどとの憶測が飛んでいるが、ポスティング移籍不成立が思わぬところに波及した様だ。
岩隈のアスレチックスへのポスティング移籍が成立していれば、岩隈とアスレチックスとの契約内容にかかわらずゴールデンイーグルスには入札金の約15億円が入ってくる。球団創立7年目を迎える来季に向けてこれまでにない積極補強を続けている背景にこの岩隈特需を見込んでいたとしたら、球団としては大誤算だ。そこで、一気に15億とはいかないまでも、余剰戦力を整理してお金に換えようとしたのではないかというのが、渡辺の金銭トレードの真相ではないかと憶測されている。
松井稼頭央が日本でプレーしていた時には遊撃手として不動のレギュラー。ライオンズでの1994年から2003年までの10年間で遊撃手のポジションでベストナイン7回、ゴールデングラブを4回獲得している。一方渡辺は2007年に入団し、一年目から規定打席に到達するなどレギュラーポジションをつかみ、今季こそ規定打席に21打席不足したが、チーム最多の111試合に遊撃手としていることを考えれば完全なレギュラーだが、確かに松井にライオンズ時代のような活躍をされたら、同じポジションとして太刀打ち出来まい。
しかも悪いことに同じ内野の他のポジションを見渡しても、三塁にはこれまたメジャー帰りの岩村明憲を獲得しているし、二塁には高須洋介を筆頭に内村賢介の進境も著しい。何しろ草野大輔が外野兼任に回ったほどだ。
だから、見返りに選手でなくお金が入ってくる金銭トレードを選んだのだろうという見方が広まり、その前提で「こんなトレードがあるか?」というのが動揺するファンの言い分。そしてあろうことか、10日に契約更改交渉に臨んだ鉄平、草野、嶋基宏がトレードに言及した。鉄平などは球団に説明を求めたという。
個人的に言わせてもらえば、大物選手の獲得に成功したから、それまで功労のあった選手でも飼い殺しにするくらいなら放出するというスタンスには確かに共感出来ないが、同僚選手達のあの言動に対しては「明日は我が身」という言葉を贈りたいし、感傷に浸り続けるファンにはそれならば松井獲得の時点で反対の意思表示をするべきだと言いたい。しかしそれより何よりも、来季のゴールデンイーグルスにとって渡辺が余剰戦力になるということを今の時点で決めつける球団に敗戦処理。は疑問を感じる。
松井も来季は36歳になる。内野守備の中でも最も守備で負荷が多いといわれる遊撃手として常時ベストコンディションで試合に出られるのかという疑問が残る。しかもアメリカに移籍した時点で、同じ内野でもやや負荷が軽い二塁へ移されている。普通に考えれば、松井が一年間フル出場出来ないことも考慮すべきで、その場合に極力遜色のない控え選手の存在が不可欠と思うはずだ。四年間レギュラーを張った渡辺には屈辱かもしれないが、一年間のペナントレースを戦う上で、必ず必要な選手のはずだ。
ちなみに松井は1975年10月生まれ。松井と同学年以上でNPB十二球団の現役選手で遊撃手として活躍したことがあるのは金子誠、井端弘和、井口資仁、今岡誠、宮本慎也、石井琢朗といるが今も遊撃手として活躍しているのは金子誠くらい。他の選手は何らかの理由で他のポジションに回っているのが実情だ。その金子誠にしても今季は故障に泣かされ、遊撃手としての出場はチーム最多とはいえ77試合にとどまり、昨年の136試合と比べれば激減。
ベテランの内野手には年々きつくなるポジションだが、内野手と名が付けば誰でも代替えがきくというポジションではないのが遊撃手の難しいところ。だからこそ渡辺は容易に(人的見返りのない)金銭トレードで放出すべき選手でないと考えるのが普通だと思うのだが。ちなみに今季のゴールデンイーグルスで渡辺以外に遊撃手として出場したのは内村が31試合、西村弥が21試合、桝田慎太郎が3試合で他には今季限りで現役引退の小坂誠が2試合。高須も草野も今季どころか昨年も遊撃手としては出場していない。
今回のトレードの関して米田純球団代表は「横浜がどうしても欲しいといってきた」、「うちにいるよりも横浜に行った方が」的なコメントを残しているようだが、他球団に思いを馳せるほど自チームに余裕があるとは思えない。昨年、野村克也監督の下で初めてのAクラス入りを果たしたものの今季は一転して最下位に低迷し、監督も変え、チームも変えたい気持ちはわかるが、渡辺放出の経緯がこれまで書いてきた、憶測されるとおりであるなら、来シーズン、思わぬところから躓くかもしれない。
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