いつかこうなる日が来るとは覚悟していたが…ジャイアンツが山口鉄也の登録を抹消
近年のジャイアンツの投手陣は山口の存在なしには語ることが出来ない。
2006年に育成選手からスタートした山口は翌2007年に支配下選手登録を勝ち取り、同年早くも一軍で32試合に登板するが、ブレークは2008年。ベイスターズから移籍したマーク・クルーンをクローザーに配したこの年、山口はクルーンの前を投げるセットアッパーに抜擢され、67試合に登板して11勝2敗2S、34HPを挙げて防御率2.32という活躍でセ・リーグの新人王も獲得した。同じくこの年ブレークした越智大祐(68試合3勝3敗13HP、防御率2.40)とともに左右のセットアッパーとして投手陣を支えた。そして2009年、2010年とこの形は続いた。
この間クローザーはクルーンが務めていたが、クルーンの制球難は周知の事実。クルーンの出番を最終回1イニング、頭からに限定するために越智と山口の負荷は大きくなった。先発投手陣が特に不安定だった昨年は久保裕也も大車輪の働きとなった。
リードしている試合の最終回1イニング登板を基本とするクローザーに比べ、時にイニングまたぎはあるは、同点や若干のビハインドの展開でも投げなければならないのがセットアッパー。三年間の酷使を経て、越智は既に開幕から二軍落ちし、イースタン・リーグでも本来の投球が出来ていない模様だし、山口もついに…。
ただジャイアンツの首脳陣も手をこまねいていたわけではないと思う。
原辰徳監督は昨年のシーズン前、山口の先発転向構想をぶち上げた。原監督は山口に先発投手として15勝レベルの力があると評していた。山口以外に左のリリーフ投手で接戦に起用出来る投手が見当たらない状況で山口を先発に転向させることはリスクが大きいと思われたが、山口の投手寿命を考えれば賛成と、敗戦処理。も拙blog2009年12月30日付 原辰徳監督が山口鉄也の先発転向をあらためて明言 で明言した。同エントリーで書いた、
何故なら山口に今の役割を担わせ続ければ早晩登板過多でつぶれるのが目に見えているからだ。原監督には五連覇構想があるというが、選手の犠牲の下での偉業では意味がない。特定のリリーフ投手の酷使に支えられての優勝が何年も続いても、それが栄光とは呼べない。少なくとも敗戦処理。は認めない。
という想いはその後も、今も変わりないからだ。
実際昨年の山口は先発投手としてスタートした。二度目の先発で八回の途中まで投げて先発初勝利を挙げたが、実はこの時クルーンが故障をしており、この登板の前日、原監督自らが山口にリリーフ再転向を命じていた。クルーン不在で背に腹を代えられないと感じた指揮官は自らの決断をあっさりと翻し、山口をリリーバーに戻した。越智とともに臨時のクローザーをこなし、クルーン復帰後は本職のセットアッパーをこなした。
今季も、当初はチームの構想では新外国人のアルバラデホがクルーンに代わるクローザーと期待され、山口に関しては例年通りのセットアッパーという構想だったようだが、キャンプ、オープン戦、試合形式の合同練習などでアルバラデホが結果を残せず山口に白羽の矢が立ったわけだ。
ただ見方を変えれば、前述のようにリードしている展開限定で最終回1イニング限定と制約されるクローザーの方が(精神的なプレッシャーなどは別とすれば)セットアッパーよりは酷使されない。ジャイアンツでいえば過去三年間、クルーンの登板数や投球イニング数が越智や山口のそれを超えたことがない。他球団でも同様だ。山口の投手寿命を考えれば、クローザー転向もベストとは言えないかもしれないがベターな選択だと思った。
ところが山口の金属疲労は敗戦処理。が思い描く以上に深刻だったようだ。
このエントリーを書いている時点で、山口の抹消の理由を敗戦処理。は把握していない。故障ではないと願いたい。前述したように15日の対カープ戦、19日の対タイガース戦の結果が示すような不調であれば、あるいは時間が解決するかもしれない。
ただ、敗戦処理。もそうだが、ジャイアンツファンはひょっとしたら大いなる勘違いをしているのかもしれない。
山口がセットアッパーを任されるのは実質的には今季が初めてだ。今までクルーンの離脱の際などに短期のクローザーを務めてきた経験があるにせよ、今回は開幕直前の転向ということもあり、山口には未知のゾーンだ。「山口がクローザーをやるのなら安心だ」というイメージを持っているジャイアンツファンは多いかもしれないが、あくまで山口には未知のゾーンへの挑戦なのだ。「山口なら抑えて当たり前」と勝手にクローザー山口の姿を誇張してはいなかったか…。
最後に山口のいない当面の事を考えてみよう。
今日(23日付け)の公示では山口が抹消されただけで、登録された選手はいない。ジャイアンツが次に試合を行うのは26日からだから、その時に登録されるのだろう。ただその26日からは六連戦だ。これまで先発を務めた外国人投手をそのたびに抹消して入れ替えているので今現在ジャイアンツの一軍に先発要員の投手は三人しか登録されていない。六連戦でも外国人の先発投手をその都度入れ替え得るのかもしれないが、いずれにせよリリーフ陣も強化しなければならない。20日、21日とタイガース相手に連勝したが、その際に見せた八回に久保、最終回にレビ・ロメロという継投を暫定版「勝利の方程式」として続けるのか?その久保にしても昨年、球団新記録となる79試合に登板した疲労の蓄積が不安視されているのだ。
節電対策で東京ドームが使えず、ホームとビジターを入れ替えようにもナゴヤドームでAKB48の前田敦子のソロデビューイベントが予定されているためままならず22日からの三日間はジャイアンツは試合が組まれていないが、26日以降、「山口がいないリリーフ陣」という現実とジャイアンツファンは胃をキリキリさせながら向き合わなければならないのだ。
覚悟を決めて応援しよう。
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コメント
長緯様、コメントをありがとうございました。
> 終盤までリードしても、救援投手の失態で星を落とす試合は、敗戦の中でも一番がっかりする展開です。山口が離脱した実情では、ジャイアンツファンとしてはそういった試合も当面時々あることを受け入れなければならない寛大さが必要ですかね。
過去三年間、抑えはクルーンでしたが、継投のキーマンは山口でしたからね。山口が抑えに回ると、今までなら山口が出てくる場面で他の投手が出てくることになるから山口が出る前に引っ繰り返されるケースが増えることは覚悟していましたが、山口そのものがリタイヤとなると本当に痛いですね。
で、なおかつ先発投手陣が安定していない。今現在一軍には先発要員が三人しかいません。外国人を登録して先発して、投げ終えたら抹消して入れ替えるというやりくりも、きっちり中六日なりの登板間隔で投げられないという問題があります。今週から三週間六連戦が続くのでどうするつもりなのかなと心配です。
今日(26日)で4勝4敗1引き分けですが、投手起用が楽になる交流戦突入まで5割を保てればと思っているのですが…。
投稿: 敗戦処理。 | 2011年4月27日 (水) 00時31分
終盤までリードしても、救援投手の失態で星を落とす試合は、敗戦の中でも一番がっかりする展開です。山口が離脱した実情では、ジャイアンツファンとしてはそういった試合も当面時々あることを受け入れなければならない寛大さが必要ですかね。
投稿: 長緯 | 2011年4月26日 (火) 10時42分