おめでとう！小笠原道大が2000本安打達成

5日、ジャイアンツの小笠原道大が通算2000本安打を達成した。2000本安打達成は日本プロ野球史上38人目。ガッツ、本当におめでとう！

（写真：小笠原の2000本安打達成を１面と最終面で報じる６日付スポーツ報知。ちなみにジャイアンツはこの試合に敗れた<笑>。）

2000本安打達成自体は日本プロ野球史上38人目だが、出場1736試合目での2000本安打達成は歴代４位のスピード記録。今季の打撃不振がなければ、３位の張本勲の1733試合目を抜いていた可能性もあった。また現役バリバリの選手と、晩年の成績を含んだＯＢを比較するのはナンセンスであるが、現時点での小笠原の通算打率.315は2000本安打達成者では.31918の若松勉、.31915の張本勲に次ぐ高打率。

ま、小笠原が38人いる2000本安打達成者の中でも群を抜く好打者であることを示すデータは探せばいくらでも出てくるだろうが、敗戦処理。が小笠原道大という男に惚れ抜いているのはもちろん打者としてのレベルの高さもあるが、ファイターズで頭角を現した頃から変わらぬ野球に対する真摯な姿勢があるからだ。もちろんこちらもサイドストーリーとして既に多くは語られている。

拙blog5月4日付 まさか！あの實松が藤川球児からサヨナラヒットを打つとは… でも触れたが、出来ることなら2000本安打達成を敗戦処理。の目の前で実現して欲しかった。結果は皆さんご承知の通り、「あと2本」の状態から「あと1本」に近づける1999本目の安打こそ放ったものの残る二打席で三振、一塁ゴロに倒れ、記録達成は持ち越しになった。だが、安打を放った打席を含め、小笠原はすべてフルスイングで臨んでいた。それでこそ小笠原だ。

時と場合によっては投球に対する迷いが反映された中途半端なスイングから思わぬ副産物で安打が発生することもままあるが、そうした可能性を初めから期待しないような、寸分の迷いのないフルスイングを、「あと１本安打を打てば解決する」という場面でも貫く。それでこそ小笠原なのだ。タイミングを外された投球に軽くバットを出して、ショートの頭の上を越えていくような安打で通算2000本安打を達成しても、それはそれでよいのかもしれないが、敗戦処理。は心の底から喜べなかっただろう。敗戦処理。の目の前で放たれた1999本目の安打にしろ、2000本目の安打にしろ、いかにも小笠原らしいフルスイングから放たれた火の出るような当たりだった。

余談だが記念の2000本目の安打は、この日のジャイアンツ球場での生観戦を終えた敗戦処理。が自宅に戻ろうとする途中だったので最寄り駅の某有名家電量販店のテレビで観た。ここだけの話だが、勝手にチャンネルをＢＳ日テレに替えた<笑>。

ただ、金字塔を達成したからといって安心してばかりはいられない。

2000本安打達成目前で足踏みをした感じの小笠原だが、それ以前に今シーズンは初めて見る程の絶不調ぶりだ。金字塔達成でプレッシャーから解放されてこれで徐々にいつもの小笠原に戻る…であればいいのだが、どうも楽観視出来ないような気がする。今回開幕時点で「あと11本」の状態だったから、それ自体が達成へのプレッシャーだったのではないかという声もあるようだが、常日頃個人記録よりチームの勝利を優先して物事を考えている小笠原が開幕ダッシュの時期に考えることではないだろう。そして、実際に記録達成の翌日に当たる今日6日のドラゴンズ戦も4打数0安打だった。

○原辰徳監督が負荷軽減と考えた三塁手から一塁手への転向。

○震災、節電対応による日程変更と調整方法の変化

○「近未来打線」対応で、調整期間にいつもの三番ではない打順で調整した

○阿部慎之助の故障離脱で回ってきた主将の負担

小笠原の不振の理由をいろいろと推測する報道、ネットでの意見などがあるようだ。中には限界説までも…。

節目の記録も達成し、原監督は小笠原をスタメンから外す日が近づいているかもしれない。

技術面に疎い敗戦処理。には専門的な原因はわからない。が、拙blog4月28日付 立ち上がれ小笠原 で書いたことの繰り返しになるが、小笠原は今の絶不調を早晩倍にして返してくれると敗戦処理。は信じている。根拠はあるのか？と聞かれたら、それは小笠原だからと言うしかない。

2000本安打達成時に記念の花束を渡したタイガースの新井貴浩は小笠原に3000本安打を目標にと告げたらしい。冒頭の6日付スポーツ報知では宮本慎也が小笠原に2500本安打までいけるだろうとコメントしている。もちろん敗戦処理。も2000本安打という数字は単なる区切りで、さらにさらに先を目指して欲しいと思っている。

むしろ小笠原にはある意味スポーツ報知には絶対載らないような、日刊スポーツ6日付の清原和博のコメントを現実にして欲しいと思っている。

「２０００本打った後は、最後まで巨人のユニホームを着るという、オレにも落合さんにも張本さんにもできなかったことを成し遂げ、ＦＡ選手の光になってほしい」

(5月6日付日刊スポーツより)

振り返ると、ＦＡ移籍でジャイアンツ入りした選手の晩年は寂しい結末を迎えている。

落合博満　ＦＡ移籍三年後、同じポジションの清原獲得で宙に浮く形になり、落合本人の希望で自由契約。

広沢克己　ＦＡ移籍時の五年契約を全うするも、本来の姿にはほど遠く自由契約。

清原和博　故障がちだった晩年は五年契約の四年目で戦力外に近い扱いを受けるなど不遇に。

江藤智　豊田清をＦＡで獲得した際に人的補償でライオンズへ。

張本はトレードでジャイアンツに来たので事情は異なるが、王貞治とのＯＨ砲として移籍一年目の1976年から三年間は猛威を振るったが、1979年に故障などもあり成績が急降下すると、ちょうどチーム自体がＶ９戦士の生き残りから若手に世代交代の時期に入っていたこともあり、戦力外に近い形でオリオンズに放出された。形はトレードだったが、とても不均衡な相手とのトレードであった。

そしてＦＡ移籍組では投手も移籍前の形に近い成績を残せたのは工藤公康くらいで、その工藤ですら門倉健をＦＡ獲得した際に人的補償でベイスターズに流出している。江藤といい工藤といい、人的補償で流出したということはプロテクトされなかった訳で、かつては三顧の礼で迎えたもののその時点ではチームに残す優先度が極めて低かったことを示す。寂しい結末だ。

小笠原はＦＡ移籍時に交わした2007年から2010年までの四年契約を申し分ない成績で全うし、新たに2012年までの二年契約を結んでいる。ジャイアンツが補強の一環としてＦＡという手段を今後も利用する可能性がある以上、過去のＦＡ選手同様契約期間途中でのいざこざはないだろうが、2012年終了時にどうなるかはわからない。3000本安打はともかく2500本安打や現役続行を目指すなら当然2013年以降が必要だ。ジャイアンツと小笠原道大はその時まで蜜月関係を築けるのか、それとも先輩選手達のような無念の形になるのか…？敗戦処理。的にはどんな形であろうと、現役選手として小笠原道大がプレーを続ける以上は今のプレースタイルを貫いてもらうことが優先で、結果としてそれがジャイアンツのユニフォームでなくても止むなしと考えるが、出来れば清原のいう「ＦＡ選手の光」になって欲しい！