ダルもマー君も1イニングのみ…これでいいのかオールスターゲーム!?
今年のオールスターゲームが例年より一試合多く三試合行われたのは東日本大震災に対する復興支援の一環だと思っている人が少なくないようだが、正確にはそうではない。
元々、例年通りの二試合で計画されていたのだが、NPBの慢性的な財政難の打開策として、機構が主催し、機構の収入源となるオールスターゲームを一試合増やすこととなり、選手会とも合意し、元から予定されていたナゴヤドームとQVCマリンフィールドに加えて東京ドームでの開催を追加した。その後に東日本大震災が起こり、復興支援の一環として、被災地である仙台の日本製紙クリネックススタジアム宮城での開催に変更された。東京ドームの方が収容人員が多いことから、東京ドームで開催して義援金として寄付した方が復興に役立つという意見もあったようだが、被災地で開催することにこそ意義があるという意見が大勢を占めたようで、元から開催予定のナゴヤドームとQVCマリンフィールドを生かし、東京ドームに代えて日本製紙クリネックススタジアム宮城に変更されたのだ。
その意味では(復興支援を一年で終わらせて良いのか?という議論はここでは置くとして)来季も機構側は来季も三試合開催にこだわる可能性もあるが、冒頭に書いたように選手会やファンから三試合では多いという声が出る可能性は少なくないと思う。
アメリカ大リーグのオールスターゲームは毎年、年に一試合のみ。球場は持ち回りになり、単純計算で30年に一度の開催ということで地元は一層盛り上がるし、そうでなくても年に一度の試合ということでステータスは自ずと高まる。それゆえ日本のファンやマスコミ、あるいは選手会からも試合数が多いという声は聞かれ、かつては毎年三試合行われていたものが、夏季五輪の開催される年だけ三試合で他の年は二試合になったりし、2002年からは二試合というのが定着した。
個人的には試合数を減らすことが価値を高めるという考え方は好きではない。希少性を高めれば価値が上がるというのは内容のレベルアップを放棄した発想になりかねないからだ。そんなに希少性を高めたいのならば、選出される選手数を減らして希少価値を高めれば良いと思うのだが、公式戦の折り返し時期に行われるオールスターゲームでの出場を負荷と考える本音が見え隠れし、選手会はそういう発想を持たない。
個人的に問題だと思うのは試合数の多い少ないではなく、公式戦との日程調整だと思う。
昨日(24日)のオールスターゲーム第三戦。地元にゆかりの深い由規と田中将大が先発し、日本のエースとも言われるダルビッシュ有も投げ、話題の斎藤佑樹も登板した。他にも多くの地元にゆかりのある選手が優先的に起用され、盛り上がった試合内容となった。
しかし、スタジアムで観戦していた人も、テレビで観戦した人も、お目当ての田中とダルビッシュが相次いで1イニングだけで降板した事には物足りなさを感じただろう。田中とダルビッシュは四日前に東京ドームで投げ合っていた。ともに完投し、田中は112球、ダルビッシュは114球を投じての中三日。お互いに相手を意識しながら投げた面もあろうから、投球数の数値以上の疲労が残っても不思議ではない。そして疲労回復や今後の登板への影響を考えると、昨日(24日)の登板は1イニングの登板が精一杯だったのではないか。ちなみにダルビッシュのオールスター後の登板は最初のカードの対バファローズ戦ではなく、次カードのホークス戦と言われている。ホークス戦の初戦に先発するとしても中四日だ。ちなみに三番手で登板したホークスの和田毅も同じ四日前に先発して前述の二人より多い131球を投じている。田中、ダルビッシュ、和田…パ・リーグを代表する投手が三人とも1イニングで降板。それはそれで豪華リレーに写るが、1イニングしか投げさせられなかったのが実態だろう。
「pitchers_of_2011allstargame.xls」をダウンロード セ・リーグで選出された先発投手はパに比べると余裕をもってオールスターゲームに臨んだ感じがするが、オールセントラルを率いた落合博満監督による第一戦のリリーバーによる一人1イニング継投も、裏を返せば日程対策かもしれない。 オールスターゲーム直前の公式戦の登板スケジュールをにらみながら第一戦の投手起用を考えるより、1イニングならいつでも投げられるリリーバーに投げてもらえば怨みっこ無しにもなる。推測だが、変わり者<?>落合監督の本領発揮とも思える第一戦の投手起用の背景にはこのような背景があると思う。
余談だが現状のNPBでは好投手がパ・リーグに偏っている印象があるが、特に図抜けた存在を神7といい、ダルビッシュ、岩隈久志、田中、和田、杉内俊哉、涌井秀章、成瀬善久によって構成される。今回この中から板野…じゃなかった岩隈が故障で離脱した他、涌井と成瀬もオールスターゲームには選ばれなかったが、選ばれた四人のうち、杉内が公式戦の登板から中五日と比較的好コンディションで登板出来たのを除き、三人が窮屈な登板となってしまった。もっとも、公式戦最終登板から中六日と万全なコンディションだったはずの武田勝が大炎上してしまうのだから、野球は何が起こるかわからない。
もう一つ今回はオールスターゲームの翌日に一試合ではあるが公式戦が組まれてしまった。昨日までAKB48が使用していた西武ドームでライオンズ対マリーンズ戦が行われている。東日本大震災に伴う日程変更のひずみだが、オールスターゲーム最終戦の翌日に公式戦が組まれたのは敗戦処理。には記憶がない。オール・パシフィックを率いた秋山幸二監督は昨日の第三戦にライオンズとマリーンズの選手をスタメンに入れなかった。捕手は地元のヒーロー嶋基宏がフル出場したが、地元への配慮というだけでなく銀仁朗と里崎智也を休ませるという配慮の一石二鳥になっていたのだろう。
今年の場合はレアケースだからやむを得ないとして、来季以降、三試合だろうと、二試合だろうと、前後の公式戦との間隔を拡げるわけにはいかないだろうか…?
敗戦処理。がプロ野球に興味を持ち始めた頃のオールスターゲームは三試合制だった。木曜日まで公式戦を行い、金曜日にフレッシュオールスター(当時の名称はジュニアオールスター)を行い、土曜、日曜、火曜で三試合。公式戦再開は金曜日だった。公式戦から中一日でオールスターゲーム第一戦というのは今と同じだが、後ろに余裕があった。今年は極端な例だとしても、近年は前も後ろもぎっちぎちだ。
「海の日」を含む三連休を避け、その直後の金、土曜に開催するのが近年のオールスターゲーム。金曜日の第一戦をドーム球場での開催にし、第二戦は一日ずれても日曜という設定で、子供たちが夏休みに入る最初の週末になる事が多い。それだけに前後もかき入れ時で、試合のない日を設けたくないという事情はわかる。だが、現状のままではオールスターゲームでファンを感動させることは難しくなっていくと思う。
オールスターゲームを貴重な財源として三試合行いたいのならそれでもいい。直前の公式戦を水曜で打ち切り、オールスターゲームは土曜、日曜、火曜とし、内一試合はNPB十二球団の本拠地以外の地方球場開催を含むこととし、公式戦の再開は金曜日からにする。そのくらいのゆとりを持たないと、オールスターゲームの名にふさわしい好勝負、名シーンはなかなか見られないだろう。日程が緩くなる分は交流戦の日程見直しでカバー出来るだろう(交流戦の日程見直しに関しては時期をあらためて別エントリーを立てる予定)。
オールスターゲームの季節になると振り返られる、江夏豊の九人連続奪三振が再現される可能性は極めて低い。先発投手が上限の3イニングを投げることすら珍しいのだから…。
※7月26日一部加筆。
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コメント
長緯様、コメントをありがとうございました。
> #マリンか仙台の試合が雨天中止だったらどうなったんでしょうか?
今年に関しては最初から予備日なし。23日のQVCが雨天中止になったら24日への順延なしと決まっていたようです。
> ただ、試合数が3試合と多いのは悪くないと思います。MLBは1試合だから良い、という意見は良く耳にしますが、
「なんでも鑑定団」に出てくるお宝グッズじゃあるまいし、(試合数が少ないから)希少価値が高まるという考え方はやめてもらいたいと思います。
日本はアメリカに比べて球団数も少なくて面積も小さいですが、開催場所を離すなどして少しでも多くのファンに生で観てもらうという発想がないのが残念です。
例えば今年、震災が起きる前の時点ではナゴヤ、QVC、そして収入増のための東京ドームでの三試合の予定でしたが、関東で二試合行うくらいなら東京ドームでなく福岡ドームか札幌ドームでという発想になって欲しいです。
> 私も常々交流戦の日程に関しては疑問を感じています。野球通の方のご意見を期待しています。
だいたいの意見は固まっていますので機会を見て披露したいと思います。無駄に試合のない日が多すぎますよね。
投稿: 敗戦処理。 | 2011年7月27日 (水) 23時20分
今年のオールスターはあわただしかったですね。確かに球宴翌日の公式戦は、以前では考えられなかったと思います。
#マリンか仙台の試合が雨天中止だったらどうなったんでしょうか?
ただ、試合数が3試合と多いのは悪くないと思います。MLBは1試合だから良い、という意見は良く耳にしますが、球団数が多いためスター選手が多い球団は出場選手が限られますし、選手も試合中にどんどん交代するので、日本のファンは普段から試合をチェックするよほどのメジャー通でないと面白いとは感じないと思います。
>交流戦の日程見直しに関して
私も常々交流戦の日程に関しては疑問を感じています。野球通の方のご意見を期待しています。
投稿: 長緯 | 2011年7月27日 (水) 21時45分