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2011年7月16日 (土)

長野久義がもうすぐ遭遇する「巨人の四番」という聖域の壁…

Cdsc_0213 アレックス・ラミレスが右足甲に死球を受けた影響で14日のタイガース戦からスタメンを外れているが、二年目の長野久義が代役で四番を務めている。思わぬ形で巨人軍第75代四番打者となった長野だが、初めて四番に座った14日のタイガース戦で早速タイムリーを放って勝利に貢献し、今日のスワローズ戦でも四番打者として初の本塁打を放つと、追加点のタイムリーも放ち、ここまで三試合は四番打者として上々のスタート。

だが、かつて原辰徳「聖域」とも表現した「巨人の四番」。もしもラミレスの復帰が遅れ、長野の四番出場が長く続くようであれば、その聖域故のプレッシャーに悩まされるかもしれない。

(写真:巨人軍第75代四番打者、長野久義のジャイアンツ初打席。2009年のファンフェスタでタレント相手のエキシビションマッチに代打で出場したときのもの。因みに相手投手は亀梨和也)

かつてジャイアンツの四番打者を務めていた清原和博「日本で第○○代…と数えられるのは総理大臣と、大相撲の横綱と『巨人の四番打者』だけや。俺はその一つを任されていることに誇りを持っている」と言っていた。確かにジャイアンツでは「巨人の四番」を聖域視しており、球団が発行する公式ガイド「G OF THE YEAR 2011(読売巨人軍発行。昨年までの「MEDIA GUIDE)にも歴代四番打者という項目がある。おそらくジャイアンツ以外に新しい四番打者が誕生するごとに第○○代と称したり、球団の公式ガイド類に記載している球団は少なくとも日本にはないだろう。

日本のプロ野球チームで最も長い歴史を誇り、1965年から1973年までの9年連続日本一、いわゆるV9を始めとする他球団を圧倒する回数を誇る優勝の歴史と積み重ねが、その打線の象徴ともいえる四番打者を聖域化したのだろう。ジャイアンツの歴史を振り返っても投手力主体で優勝したシーズンよりも打線が引っ張って優勝した年の方が多いように思われる。

その典型と言えるのが前述のV9で、打線を引っ張ったON砲-長嶋茂雄と王貞治が本人達の意思とは無関係に「巨人の四番」を特別視する風潮を盤石なものにしたと敗戦処理。は思っている。

それを「聖域」と称した原辰徳こそが皮肉にもその「聖域」化の最大の被害者だったかもしれない。長野同様、入団二年目から「巨人の四番」を担うようになった原は以後、ON砲、特に長嶋茂雄に比べここ一番での場面で勝負強さで劣ると見なされ、選手としては立派な成績を残しながら「巨人の四番」としては低い評価を受け続けた。

この話をすると、「聖域」なのは「巨人の四番」の座なのか、長嶋茂雄という存在なのかという、卵が先か鶏が先か?みたいな議論になってしまうのだが、いずれにせよ「巨人の四番」の座は球団(含むOB)、マスコミ、ファンの三位一体とも言える総意によって聖域に祭り上げられた。清原が例えた総理大臣や横綱との同列化は失礼かもしれないがあながち的外れだとは敗戦処理。は思わない。

余談だが総理大臣はともかく、同時に東西の両横綱が存在するのが普通である大相撲の横綱を第○○代と呼ぶのは日本語としてはオカシイと敗戦処理。は思っている。

原監督自身が「聖域」としてこだわっているくらいだから、長野の四番抜擢に関しては慎重の上に慎重を期しただろう。小笠原道大を三番から外し、六番や七番に落とすのにも本人の実績とプライド、復調までの猶予などを考えて慎重だったが、ラミレスも低調。一方で二年目の長野はルーキーイヤーの昨年を上回る安定した成績を残し、統一球をものともしない飛距離の打球を放つなど打線では孤軍奮闘とも言える働きをしている。打順の入れ替えがあっても不思議ではないが、今回のラミレスの故障によるスタメン外れで初めて長野を四番に据えた。

ラミレスはこの欠場まで469試合連続で「巨人の四番」を務めてきた。スワローズから移籍直前の2007年には日本球界初の右打者として年間200安打を放つなど、実績充分で移籍してきたが移籍一年目の2008年、最初から「巨人の四番」を務めたわけではない。これも「聖域」視する原監督ならではの配慮かもしれないが、この年の開幕四番はイ・スンヨプだった。イ・スンヨプは前年の2007年に四番打者として文句ない成績を残したわけではなかったが、移籍の新外国人選手にいきなり「巨人の四番」を託すのは躊躇したのだろう。

ラミレスは開幕7試合目に初の四番に抜擢されるが、11試合連続で四番を務めた後、高橋由伸に四番の座を奪われて五番に降格。再び四番に返り咲くまでに13試合を要した。そして200854日のスワローズ戦にて四番に返り咲くと、三番の小笠原とともにいわゆる「オガラミ」砲として固定されて三年間が経過した。

469試合も続いた「巨人の四番」は球団新記録だが、それはまず故障をしない強靱な身体とコンディショニングのたまものもあるが、打順交代の心配不要な安定した好成績が一番だろう。唯一その座を脅かしかねない小笠原がファイターズ時代から三番打者が指定席としてパフォーマンスを発揮していることもあって、この間ラミレス以外の選手が四番を打つ姿などジャイアンツファンは想像しなかったに違いない。ただ、今季で小笠原が38歳になり、ラミレスも37歳になる。近い将来、この二人に代わる打線の中軸が必要になるのは明白で、敗戦処理。もその旨指摘したりしたが、原監督は今季のオープン戦で坂本勇人を三番に据えるなど「近未来型打線」をテストしたりしていたが、さすがにラミレスの四番を外しはしなかった。

小笠原の欠場時に三番の代役を務めた坂本はそれ以来調子を崩し、小笠原の不振と不在の及ぼす影響の深刻さを露呈したが、長野がもしもこの三試合、チャンスを潰すなど四番打者として不的確な結果に終わっていたらと考えるとぞっとする。

もちろんその不安は長野が「巨人の四番」を続けている限り常につきまとう不安である。ネットでのファンの声を拾うと「ラミレスがいた時より打線に繋がりがある」「ラミレスが復帰しても長野四番でいい」などの意見も散見されるが、こうした意見の持ち主こそが往々にして四番長野が調子を崩してチームの足を引っ張ると、バッシングを始める急先鋒になりかねないのである。もちろんマスコミも同様だ。実際レビ・ロメロがセーブを記録し続けた時には「クルーンを切って正解!」などと大はしゃぎしていたファンの世論と、成功の回数に比べたら少ない失敗をやたらに取り上げて不要論を展開するファンの世論には同一人物も少なくないことだろう。

「聖域」化最大の被害者である原監督だからこそ、今季低調なラミレスの四番を動かさなかったのだろう。抑え投手が固定できない面もあるが、ここまでのチームの低迷の最大要因は打線全体の低調ぶりだ。そうであれば活発にメンバーを入れ替えたり打線を入れ替えたりするのも対策だろうが、打線全体的に低調であるという事実を考えれば、なまじ「巨人の四番」を代えて失敗したら代役四番が立ち直れなくなるリスクがあると判断したのだろう。

かつて原に代わる「巨人の四番」になるべくして獲得された落合博満はジャイアンツに限らず四番打者の重みを「風よけ」と表現したことがある。落合は試合に負けたら四番の責任と自認し、実際そういう発言を現役時代に繰り返してきた。他の打者にミスがあっても四番打者が批判を一手に引き受けるべきであり、自分はどこの球団であろうと四番を務める以上その覚悟を常に持って務めてきたと言っていた。原監督がラミレスを動かさなかったのはラミレスに「風よけ」を引き受けさせていたのだろう。

そしてついにそのラミレスが出場出来ないときが来た。本当に数日間の一時凌ぎという観点で考えるなら、高橋由伸なり阿部慎之助に四番を打たせて「ラミレスがいないんじゃ仕方ないか…」と思わせる手もあっただろうが、敢えて長野を抜擢した。長野は早速結果を残したが、ラミレスが復帰するまでにチームの足を引っ張るような試合があったらファンもマスコミも手のひらを代えたようにバッシングを始めるかもしれない。その時初めて「巨人の四番」の重圧を思い知らされるのだろう。そしてその時は必ず来ると思う。個人的にはあくまで今回は代打の四番で、ラミレスに早期の復帰を期待したい。登録抹消すると十日間再登録出来ないが、オールスター期間を挟むこの時期、登録抹消しても五試合の欠場にしかならないのだが、それでも登録抹消しないし、また16日には登板間隔の関係で澤村拓一が登録抹消となったが、外野手を補充することもなかったところをみると、復帰に時間を要さないと思っている。今、長野が壁や重圧に潰れて調子を崩すようなことがあったら、本当にジャイアンツ打線はおしまいかもしれないから…。

長嶋茂雄は現役を引退するときに「わが巨人軍は永久に不滅です」と言って、結果的に自分で自分の首を絞めることになったが原辰徳も「聖域」発言で自分の首を絞めることになりかねない。万一そうなってもそこでの犠牲者は自分にとどめるべきで有望な選手に必要以上なプレッシャーを掛けるのは阻止して欲しい。それこそ落合博満が表現した風よけになって欲しい。

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