ジャイアンツの「第二の二軍」が青山学院大に完敗…。
敗戦処理。はこれまでジャイアンツのファームの試合を観戦した事は数あれど、今季から本格的に活動している「第二の二軍」に関しては生で観たことがなかった。なかなかスケジュールを取れなかったのだが、今日(20日)、初めて生で観る機会に恵まれた。相手は戦国東都の雄、青山学院大学だ。一軍は東京ドームでナイトゲームでスワローズ戦、イースタンは西武第二でライオンズ戦というなか、第二の二軍はジャイアンツ球場で青山学院大学と対戦した。
が、タイトルにも書いたように、試合は0対2でジャイアンツの「第二の二軍」が完敗した。
(写真:試合後に吉原孝介育成チーフコーチ=背番号84を中心に反省会を開くジャイアンツの「第二の二軍」)_
ジャイアンツの先発は普段はイースタンでショートリリーフで投げる上野貴久。青山学院大は三年生の右腕、福島由登。三年前の夏の全国高校野球大会で大阪桐蔭高のエースとして全国制覇を果たした投手だ。ライオンズの浅村栄斗と同学年。ファイターズの中田翔の一年後輩。なお青学大の遊撃手は昨年までジャイアンツでコーチを務めていた篠塚和典元コーチの長男冝政。父と同じ右投げ左打ちで華奢な体型。
ジャイアンツの「第二の二軍」のスタメンはこんなメンツ。
(一)仲澤広基
(捕)河野元貴
(遊)福元淳史
(左)加治前竜一
(三)伊集院峰弘
(右)土井健大
(指)市川友也
(二)財前貴男
(中)和田凌太
(投)上野貴久
斜文字は育成選手登録。
余談だがジャイアンツでは二軍の選手が「第二の二軍」に落ちると、原則五日間は二軍に戻れないというルールを作って競争意識を持たせているという。つい先日までイースタンに出ていた仲澤広基、河野元貴、加治前竜一は不成績などで今日の西武第二でなくこちらに出ているようだったら猛省と奮起を促したいところだ。
イースタンでは左のショートリリーフという印象が強い上野の先発は初めて観た。今日は3イニングを投げて無失点。ただスタンドから観ていてボールとストライクがはっきりしている感じで、大学生相手でも引きつけて打つ感じの右打者には手こずっている印象を受けた。
二番手にはルーキーの田中太一。実は試合で観るのは初めてだ。思いっきり腕を振る力強いフォーム。上野に続いて青学大打線を3イニング無失点に抑えた。しかも四死球で走者を出しただけで被安打0!
ちなみにスコアボードの表示は「田中太」ではなく「田中太一」だった。これはおそらく田中大二郎の「田中大」と紛らわしいからだろう。
一方でジャイアンツ「第二の二軍」打線は福島を打ちあぐむ。
時折走者を得点圏まで進めても後が続かずホームが遠い。「野球小僧 世界野球選手名鑑2011」(白夜書房)によると「走者を背負ってスペシャルトップギアが入り…」との事だが、プロを相手にしても自分のペースを変えないのは素晴らしい。まだ三年生とのことだが、堂々たる投球だった。
そうして0対0のまま試合は七回に進んだ。ジャイアンツは七回表から、田中太一に代わり古川祐樹を投入。
古川は昨年投球フォームの左腕を下げ、上野以上に対左打者専用というイメージが強くなったが、代わりっぱな一死から井上にライトのフェンスまで達する二塁打を打たれると、続く丸山のライトフライで二死三塁とされた。
ここで青学大は代打に筒井を送って先制点を取りに行く。筒井は粘って四球。青学大はこの上野に代走今村を送り、途中からマスクをかぶっている九番打者、谷の打席でいきなり今村が二盗。ダブルスチール(ディレードスチール)も警戒しなければならない場面だったが、いともあっさりと二盗を許してしまった。大学野球の選手でデータ不足ということもあるのかもしれないが、わざわざ代走で出てくる選手なのだからもっと警戒すべきだったと思うし、古川は左投手なのに簡単に走られて情けない感じだった。
二死二、三塁となって谷が振り抜いた打球は左中間へ。二者が生還し、ついに青学大が均衡を破った。ジャイアンツは2点のビハインドとなった。
青学大はその裏から福島に代えて石井をマウンドに送った。
これがまた気風の良い本格派という感じで、ジャイアンツ打線を翻弄。八回裏には二死二塁で、ジャイアンツ打線でここまで最もバットが振れていて二安打の土井を迎えたが、土井も三振に切って取り、ピンチを切り抜けた。
ジャイアンツは古川のあと、八回からこれまたルーキーの宮國椋丞を投入。
八回にも二死から振り逃げと死球で一、二塁のピンチを招くが辛うじて無失点に抑えていたが、2イニング目のこの回は先頭のレフトフェンス際の大飛球を加治前が落下点に入りながら落球して無死二塁のピンチに。しかもこの後牽制でミスが出て無死三塁と追加点のピンチを招くが、ここから三振と、相手のスクイズを投飛にして併殺を完成させ、無失点に切り抜けた。
その裏、ジャイアンツ打線がプロの意地を少しは見せるかと期待したが、この回も石井の前に三者凡退。あっさりと0対2で敗れた。
【20日・ジャイアンツ球場】
青 000 000 200 =2
G 000 000 000 =0
青)○福島、S石井-加藤、谷
G)上野、田中太、●古川、宮國-河野
本塁打)両軍ともなし
スタンドにはおよそ100人くらいの観客。いつもイースタンの試合で一塁ベンチ上の二列を占拠する常連さん達の姿もなく、全体の八割以上を占めると思われる青学大の関係者(選手の父兄、在学生)!?が終始盛り上がっている感じだった。
今日のジャイアンツ打線は全体に工夫がないというか、うまく言えないが漫然と打席に入り、来た球を打っているだけという感じがした。初めて対戦する投手というのはプロアマ交流戦なら当然のこと。土井と、他には福元淳史も二安打を放ったが、他の選手は寂しかった。福元は今季途中に育成選手から支配下登録され、イースタン公式戦にも多く出場している。他の選手は今日の福元を見て自分との違いを気付くべき立場なはずなのだが…。 ジャイアンツがイースタンでファイターズと首位争いする根底にこの「第二の二軍」との競争があることはおそらく間違いないのだろうが、育成選手を含む第二の二軍のレベルは、最も育成選手制度を有効に活用していると言われるジャイアンツでこうなのだから、まだまだごく一部の選手を除いては野球界の底上げに寄与されているとは言えない気がする。単に今までならドラフトで指名されない選手の一部が拾われているに過ぎないという気すらしてきた。もちろん一試合の観戦で決めつけるのは早計だが。 ただこの日の青山学院大のように、対戦する大学野球部、社会人、クラブチームらには有効な機会であることは間違いあるまい。ジャイアンツに限ってみても今月、23日には東京大学と、30日には東浜巨を擁する亜細亜大学と対戦する。これからもどんどん続けてもらいたい。
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コメント
長緯様、コメントをありがとうございました。
> ただ、小さい規模の大会でなく、今年は震災の影響で東京ドームで開催しないらしいですが本格的な社会人野球の大会である「都市対抗野球」の本大会に参戦するとか、そういったことができないだろうかと思うのです。
出るなら予選から、固定メンバーで登録して出るかでしょうね。特別枠でいきなり本選に出るというのも善し悪しのような…
> しかし育成制度に加えて第二二軍を設ける発想は悪くないと思いますが、目指す方向がもうひとつ分かりません。
基本的には裾野を広げ、頂点である一軍のレギュラーを目指す競争の分母を大きくすることで、よりレベルの高い選手が輩出されることを期待しているのではと思います。
ジャイアンツの本音は支配下選手の枠を取り払って何人でも契約できるようにしたいのでしょうが、多くの球団から反対されているので苦肉の策で支配下選手以外の選手枠を設けた。
今は一握りの球団しか多くの育成選手を抱えられない状態ですけど、どこかが始めないことには先に進まないからジャイアンツが育成選手を多く抱え、まず二軍の競争意識を高める。と同時に増えた分の選手にも実戦の機会を与えないと上達の機会が確保されないからプロアマ交流戦をどんどん増やしていくと言うことでしょうね。
もちろんアマの方にも実戦でプロの胸を借りる機会が増えるわけですから、上手く機能すれば一挙両得だと思うのですが、実態はどうなのでしょうか、私もまだ一試合見ただけなので何とも言えません。
投稿: 敗戦処理。 | 2011年8月24日 (水) 00時33分
こんばんは。
>あれ、昨年、フューチャーズだかシリウスだか、社会人の大会に出ませんでしたか
ええ、あまり詳しくない自分ですがそれは覚えています。
ただ、小さい規模の大会でなく、今年は震災の影響で東京ドームで開催しないらしいですが本格的な社会人野球の大会である「都市対抗野球」の本大会に参戦するとか、そういったことができないだろうかと思うのです。
しかし育成制度に加えて第二二軍を設ける発想は悪くないと思いますが、目指す方向がもうひとつ分かりません。社会人野球の廃部が相次いでいるようですが、その受け皿としてあるような印象でもなく、ましてジャイアンツのような球団では育成選手から一軍のレギュラーになるのは難関です。プロの試合をファンに見せるのが目的だとしたらイースタンとは違うカテゴリーの下部リーグを設けるのがよい気もしますが、育成制度には消極的な球団の方が多いです(その考えも当然と思います)ので、そういうのも無理でしょう。
話がまとまらず堂々巡りですみません。
投稿: 長緯 | 2011年8月23日 (火) 22時42分
長緯様、コメントをありがとうございました。
> 実戦とはいえ、アマチュアとの交流戦は非公式試合ですから、イースタンの試合に比べ選手のモチベーションはかなり低下すると思います。
そこは、「悔しかったらせめて『第一の二軍』に上がれ!」ということでしょう。
今までならプロのユニフォームを着られなかったレベルの選手が、新制度によってほんの末席にいるだけに過ぎないという自覚があれば、アマチュア相手の試合だからモチベーションがどうの…なんて言っていられる状況じゃないですからね。
その意味ではこの試合でジャイアンツが野手を一人も交代させなかったのが物足りなかったですね。いなかったのかもしれませんが…。
対照的に青学大は勝負所では代打、代走を躊躇せず送り、代走で出てそのまま守備についていた選手に打順が回ってくると、打席の途中で代打を送るなど、プロに胸を借りるというより、「ジャイアンツに勝つ」という目的に邁進していたように思えます。
> 第二の二軍が参加できる公式戦のようなものを設けてほしいと思いますが、難しいですね。都市対抗野球に参加するとかも考えられますが・・・球団の方針からしてどだい無理でしょうね。
あれ、昨年、フューチャーズだかシリウスだか、社会人の大会に出ませんでしたか?何かあったような気がしますが…記憶違いかな?
投稿: 敗戦処理。 | 2011年8月23日 (火) 01時14分
「第二の二軍」構想自体のベースとなる育成選手の獲得でプロへの門戸が広がることはよいことと思います。
しかし実戦とはいえ、アマチュアとの交流戦は非公式試合ですから、イースタンの試合に比べ選手のモチベーションはかなり低下すると思います。第二の二軍が参加できる公式戦のようなものを設けてほしいと思いますが、難しいですね。都市対抗野球に参加するとかも考えられますが・・・球団の方針からしてどだい無理でしょうね。
投稿: 長緯 | 2011年8月22日 (月) 21時12分