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2011年9月10日 (土)

マー君vs佑ちゃん5年ぶりの投げ合い

Adsc_0423 ファンが待ち焦がれた対決が、ついに実現した。

 

 

昨年のドラフト会議で斎藤佑樹がパ・リーグのファイターズに入団が決まったときから、誰もがこの対決を頭に描いたことだろう。2006年全国高校野球選手権大会決勝戦、二日間にわたる死闘を演じた早稲田実業の斎藤佑樹と、駒澤大学付属苫小牧の田中将大の投げ合いが5年の歳月を経て実現した。時あたかも、明日であの東日本大震災から半年になるという節目の日を直前とし、仙台地区復興のシンボルとなっている日本製紙クリネックススタジアム宮城で実現。試合はプロでのキャリアに四年の差がある田中将大が貫禄勝ちという感じだったが、梨田昌孝監督も斎藤を完投させるなど、宿命の対決を彩った。

 

 

またこの試合は早くからチケットが完売になるなどファンの注目度の高さにも驚かされた。

(写真:チケット完売を告知する日本製紙クリネックススタジアム宮城の窓口)

この試合のチケットを購入したのは8月7日。まだその時点では斎藤と田中の登板日は噛み合っておらず、別に二人の対決を見込んでいたわけでもない。今年中に一度は仙台でプロ野球を観ようと考えており、オールスターゲームでのチケット入手に失敗した時点から9月にでもと考えていた。日曜日に当たる明日11日にしようかなとも考えたが、東日本大震災からちょうど半年後に当たる9月11日という節目の日。他にも様々な行事があろう。野球観戦という趣味、いくら生活の一部と言ってもいわば遊びで東京から訪ねて良いものかと自問自答した結果、今日9月10日を選んだのである。それがまさか宿命の対決に当たり、プラチナチケットになるとは…敗戦処理。ももってるな<>

今季は同じカードで7月20日に東京ドームでのダルビッシュ有と田中将大の投げ合いをも生観戦することが出来た。この日はスポンサー企業による二階席貸し切りという事情もあったが、当日試合中に完売した。NPBナンバーワン投手とナンバーツー投手による投手戦必至の対決にファンが色めきだったのだろう。年に二回もこういう試合を生で観戦出来たのはプロ野球愛好家として本当に感動的だ。

もちろん昨年6月の交流戦の中止振替試合で神宮球場に観客実数発表導入以来最少の6,202人しか集まらなかった試合の観客の一人だったことも同等に感動的だが。

試合の結果や経過はご存じの方も多かろう。

一回裏に斎藤佑樹から二本の安打で一死一、三塁としたゴールデンイーグルスが山崎武司のライトへの犠飛で1点を先制した。

Dsc_0120 この時、山崎のカウントはスリーボールナッシング。一球待たれて、その後四球で満塁にでもなっていたら、初回からビッグイニングにされていたかもしれない。防御率1点台でナンバーワンの投手相手に初回から先制点は痛いが、大量点よりはマシである。続く横川史学を二塁ゴロに打ち取って1点止まりに終わって、最悪の事態は免れたという感じだった。

Dsc_0099 田中は初回からエンジン全開という感じで、隙を見せない投球だった。前日から四番を外れ六番に降格された中田翔も完全に手玉に取られた感じで三振した。

Dsc_0124 三回表に二死から九番の鶴岡慎也がセンター前に安打を放ったとき、内心「これで完全試合もノーヒットノーランも免れた…」と思ったほどだ。梨田監督もロースコアでの勝負と腹をくくったのか、続く四回表に先頭の今浪隆博が安打で出ると、続く三番打者でチームトップ、いやパ・リーグ打率トップの糸井嘉男に送りバントを命じたほどだ。

試合の中盤からクリーンアップの選手に送りバントをさせるのは相手に今日はお手上げですと言って相手に優位感を持たせるようなもので個人的には好きでないのだが、それでも四番の小谷野栄一、五番の稲葉篤紀が打ち取られ、ホームが遠い。

Dsc_0111 一方の斎藤は二回以降は時折走者を出しながらも何となく抑えるいつもの佑ちゃんらしい投球を続けていたが、六回裏に先頭の高須洋介にライト前に運ばれると、何とか二死までは漕ぎつけたものの、二死二塁からルイス・ガルシアにセンター前に運ばれて2点目を失う。

Dsc_0209 田中の内容を考えるとこの時点でアウトっぽい感じだったが、斎藤も落胆したのかこの後、中村真人にレフトフェンス直撃のタイムリー三塁打を浴び、さらに嶋基宏にもライト前にタイムリーを浴びて0対4と一方的にしてしまった。

これだけでもファイターズファンには大打撃なのに、悪い時には悪いことが重なるもので、七回表の先頭打者、稲葉が自打球を顔面に当てるアクシデント。

Dsc_0218 この写真のアングルからもわかるように敗戦処理。は打席の後ろから見る角度になるので打球が当たったところを見ることはなかったが、打席のすぐそばにうずくまる稲葉の姿を見て、尋常でないことが起きたのはすぐにわかった。

Dsc_0219 トレーナーや首脳陣が稲葉の元にかけつけ、次打者の中田がタオルを持ってくる。

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Dsc_0231 結局稲葉はカウントがワンボール、ツーストライクの時点で退場。代打に杉谷拳士が送られるが、二塁ゴロに打ち取られると、意気消沈したのか結局この回も三者凡退。

六回裏の3失点で降板かと思われた斎藤だったが、七回裏のマウンドにも立った。

ファイターズは前日に連敗を6で止めたものの、勝ち試合に先発のボビー・ケッペルを含め5人の投手を登板させた。リリーフ陣は連敗中にどうしても登板過多になるから、明日がエースのダルビッシュ先発と言えども休ませたいというのもあったのかもしれないが、相手が宿命の対決の田中と言うこともあり、梨田監督は展開上出来るだけ斎藤で引っ張ろうと決意したのかもしれない。多くのファンが注目したこの試合、この時点でかなり不利な状況ではあるが、だからこそ敢えて斎藤の続投にこだわったのだろう。斎藤は七回裏にもさらなる追加点のピンチを迎えるが、42歳・山崎武司の鈍足芸とも名付けられるべき鈍足に助けられて併殺で無失点に切り抜けると、八回裏は簡単に三者凡退に仕留め、プロ入り後初めて八回を最後まで投げきった。

これで田中が九回を抑えて完封勝ちを果たせば宿命の対決第一ラウンドは田中の完勝ということになるが、同時に斎藤にもプロ初完投というステップアップの登板となる。ファイターズファンとしてわざわざ東京から乗り込んできた敗戦処理。にとっては大変残念な結果ではあるが、そういうシナリオになるのかと一度は覚悟した。

が、野球というスポーツはそう簡単に筋書き通りには事が運ばない。

田中が一回表のマウンドに上がるときと同様に、九回表のマウンドに上がって投球練習を始める田中を後押しするかのように、田中の登場曲、FUNKY MONKEY BABYS「あとひとつ」を二度目のBGMとして流す。完封や完投を目前にしたときにはいつもこういう演出をしているのだろうか…?ファンモンが出場した昨年の大晦日のNHK紅白歌合戦に田中がゲスト出演したのもこの曲を登場曲にしている縁だ。

先頭の今浪が左中間の真ん中を破り、無死二塁。今浪は完璧な田中から二本目の安打だ。今浪が一軍でプレイしていることにすっかり違和感が無くなってきたが、一死後に小谷野のショートゴロを松井稼頭央が尻餅の末に悪送球するという空気を読めないプレイをして一死一、二塁となると二死から中田が三塁線に内野安打を放って二死満塁。ここまで三打席連続三振のマイカ・ホフパワーの代打、二岡智宏が一球も振らずにフルカウントまでたどりつき、最後も堂々と見送って押し出しの四球を選んだ。

伊達にジャイアンツで多くの修羅場を経験してきた訳ではないなと感心するしかない貫禄の四球だ。

Dsc_0259 佐藤義則投手コーチがマウンドに出てきて一呼吸置くと、渾身の力を振り絞って陽岱鋼をストライクからボールになるスライダー攻めで三球三振に仕留めて田中は完封勝利こそ逃したものの、完投勝利を挙げた。

Dsc_0269

このスタジアムに来たのは四回目だ。

2005年、2006年に同じカードを観戦し、2007年はイースタンの公式戦だった。2005年や2006年にはスタンドのゴールデンイーグルスファンもこの出来たばかりの球団を何とかしようという暖かい声援が多かった。しょうもないエラーにも暖かかった。だが今日のゴールデンイーグルスファンはたまたま敗戦処理。の周囲だけかもしれないが、辛辣なファンが多かった。凡退を繰り返す嶋に「お前の底力を見せろよ!」とか、代走として出場した岩村明憲には失笑の渦。変われば変わるものだ…

「プロ野球ナイト」にもよく出演される構成作家のチャッピー加藤氏のツイッターでの呟きによると、最後、田中が1点を失い、一発出れば逆転という場面にまでなったのは梨田監督が斎藤を完投させたからだと思う。松井のエラーもあったが、敗戦処理。は完封がかかった最後のマウンドに上がった途端に自分の登場曲とは言え大音響で流されたためペースが狂ったのではと思ったが、チャッピー加藤氏が指摘したように宿命の対決である斎藤佑樹が最後までマウンドを降りなかったことが大きいと思う。

そして0対4と絶望的な展開になった時点で発想を変えて斎藤続投、完投を決意した梨田昌孝という男も素晴らしい判断力の持ち主だと思う。もちろんこれが逆の展開で1点でもリードしていたら、榊原諒、石井裕也、谷元圭介、宮西尚生、増井浩俊を総動員して最後は武田久で逃げ切っていただろうが…。

これまたツイッターからの引用で申し訳ないが、試合後の両監督のコメントは星野仙一監督が「みんなは楽しんでいるけど、私はまだ楽しむところじゃない。毎日必死ですよ」だったのに対し、梨田監督は「タダでベンチで見れてよかったです<>だったそうだ。梨田監督が一枚上のようだ。

チャッピー加藤氏の指摘に失礼ながら補足させていただければ、初回からエンジン全開だったのも相手が斎藤だったからだろう。田中の最終回の失点は非自責点だし、今季の防御率通りの結果だったに過ぎない、斎藤以外の投手が投げ合ってもよくて0対1の惜敗だったという見方もあるかもしれないが、おそらくそうではあるまい。

Dsc_0004 今日もミヤネ屋のリポーターが試合前と試合後にスタジアム敷地内のファンに果敢にインタビューを試みていた。田中将大と斎藤佑樹の宿命の対決というのはマスコミやファンはもちろんのこと、当の本人にとっても特別なものであるはずだ。

そして今日の気候。

夏の甲子園大会期間中を彷彿とさせる熱さが試合中盤までスタジアムを覆っていた。

すべてが二人のために動いていたのである。

ファイターズは明日、中四日でダルビッシュが先発する。今日はホークスが勝ったため再び首位ホークスとのゲーム差は7.0と拡がったが、まだまだ諦めていない意気込みのローテーションだ。別に投手がいない訳ではない。ブライアン・ウルフが中六日で投げられる。そんな中、今日の一敗は痛すぎる一敗で、甲子園での宿命の対決の余韻に浸っている場合ではないと考えるファイターズファンの方もいるだろう。しかし敗戦処理。的にはそうでないのである。田中にしろ斎藤にしろ、特に斎藤がそうなのだが、今のプロ野球界に一番欠けているピースを備えているのだ。それはプロ野球ファンという狭いテリトリーにとどまらない国民的注目を集める力を持っていることだ。もちろん敗れたのは残念だが、今日の対戦はそうしたしがらみを超越した次元にあると思うのだ。

わざわざ仙台にまで足を運んで良かったと思う。

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コメント

長緯様、コメントをありがとうございました。

> この試合に合わせて仙台へ行かれたのかと思いましたが、事前にとってあったチケットが注目の一戦に当たったのですね。さすがです。

まさしく私も もってる のです。

> その試合は大げさにいえば野球というスポーツの復権をもたらせてくれた素晴らしい試合であったと思いますし、

確かにそれはありますね。

当時の背景は、プロボクシングの亀田兄弟の、強ければ何をしてもいいのかと言われんばかりの振る舞いが話題になっていたときにその対極をなすような「ハンカチ王子」の登場。国民的人気になったのも頷けました。

> ただ一点、水を差すようで本当に申し訳ありませんが、相手を打席に迎えての二人の対決が現状では見られないのは、ちょっと残念です。


ああ、それはありますね。甲子園の最後も打者田中じゃなかったですかね

投稿: 敗戦処理。 | 2011年9月12日 (月) 00時43分

この試合に合わせて仙台へ行かれたのかと思いましたが、事前にとってあったチケットが注目の一戦に当たったのですね。さすがです。
甲子園での二人の名勝負については論ずるまでもありませんが、その試合は大げさにいえば野球というスポーツの復権をもたらせてくれた素晴らしい試合であったと思いますし、プロに入ってから再度投げ合いを見れる環境を整えてくれた両球団にあらためて敬意を表したいと思います。
ただ一点、水を差すようで本当に申し訳ありませんが、相手を打席に迎えての二人の対決が現状では見られないのは、ちょっと残念です。

投稿: 長緯 | 2011年9月11日 (日) 21時49分

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