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2011年10月23日 (日)

モバゲーか、京急か!?-鉄道会社が球団を持っていた時代…

Bdsc_0035 横浜ベイスターズの身売り問題で、本命と思われたDeNAの対抗馬として京浜急行電鉄を中心とした地元企業の連合体が浮上してきた。近日の報道では結局DeNAに落ち着きそうだが、より地元に根付いた対抗馬の出現に喜んだベイスターズファンは少なくあるまい。

敗戦処理。が日本のプロ野球に興味を持ち始めた頃には鉄道会社を親会社に持つ球団が五球団もあったが、今では阪神西武だけ。ライオンズも直接の親会社(大株主)がプリンスホテルになったりしたこともあるのでずっと存続しているのは阪神阪急ホールディングスがバックにいるタイガースのみと言ってもいいほどだ。

ある意味時代の先端を行く業種であるDeNAと、親会社の業種としては最古とも言える鉄道会社である京浜急行電鉄を中心にした地元企業の連合体という対照的な候補先。横浜ベイスターズの身売り先は…

(写真:現在の親会社、TBS系のマスコット、エキベー、ブーブに挟まれる球団マスコット、ホッシー、ホッシーナ、ホッシーゾ。来年は横浜スタジアムでは見られない!? 2010年9月撮影)

かつて日本にプロ野球が誕生した頃には、プロ野球の父と言われた正力松太郎の考えで、球団が親会社の宣伝のための媒体として過度に利用されることを避ける意味でプロ野球チームの親会社は公共性の高い業種に限定された。それが当時の概念では新聞社、鉄道会社、映画会社であった。現在の十二球団でも歴史と伝統のある球団はこの三つの業種のいずれかを親会社にしている。ただしその後、例えばテレビジョンの普及によって映画産業が下火になるなど、これらの業者の企業だけでは球団の親会社が集まらない状況が発生し、規制は大幅に緩くなった。国鉄、産業経済新聞の後を継いだのが清涼飲料メーカーのヤクルトだったり、大映、毎日新聞社の後を継いだのが菓子業界のロッテだったり…。そしてレジャー産業、流通業などの参入を経て、IT産業も参入する時代となったのである。

鉄道会社の場合は構造がわかりやすい。

基本的には沿線住民の通勤、通学、レジャーなどによる外出、移動時の交通手段として各地の鉄道会社が機能しているのだが、それだけでは商売にうまみが少ないので、例えば沿線住民への還元という大義名分も含めてターミナル駅に大規模な百貨店を建て、沿線住民に利用させて収入を増やすというのも定番だが、主にターミナル駅の逆側、沿線の先の方に、これまた集客力のある施設があると利用客が増える。そのような施設があればベストだが、無ければ作るのだ。関東でいえば小田急には新宿の反対側の先は観光地の箱根や江ノ島である。東武なら日光だ。京急なら羽田空港であり、京成なら成田空港だ。そしてそのような集約力のある施設を持たなかった西武鉄道が新宿、池袋の逆方向に自前の野球場を作り、球団まで引っ張ってきたのが西武ライオンズである。

今は無きパ・リーグの在阪鉄道チームの本拠地も、西宮球場は阪急沿線に、大阪球場は南海沿線に、藤井寺球場は近鉄沿線にある。在阪鉄道チームで最後まで生き残っていた近鉄は大阪ドームの建設予定地が当初は自沿線にあったのだが諸事情から外れてしまい、うまみが無くなってしまったという。大阪ドームはナゴヤドームと同じ1997年デビューで、東京ドーム、福岡ドームに次いで出来たということもあって当初は多くの集客があったが、その観客が近鉄にお金を落とさないのだ。球場使用料の問題などもあり、球団経営のプラス面はほとんど無かったという。そしてその結果が2004年の球界再編騒動である。

21世紀を迎える前後からホークスの親会社であるダイエーの有利子負債が天文学的な大きさになっていき、日本のスーパーマーケットの最大手が倒産するのではという危機的状況になった。阪神淡路大震災による打撃、福岡ドーム建設の負担など様々な要因が重なっていた。そしてしばらくして、日本で旧国有鉄道のJRグループを除けば最大規模の路線を持つ近畿日本鉄道の有利子負債がダイエー並みに近づいていることが明らかになる。近鉄グループは鉄道事業と直接関係が薄い事業をどんどん切り離し、経営のスリム化を図っていくが、その中でも大阪近鉄バファローズの運営だけは聖域化されていると思われていた。だが、違った。

景気も良く、問題なく利益が出ている頃ならば、球団が出す年間2030億円の赤字の補填など、たやすいことだった。沿線住民や広域のファンへの利益還元として公共性の高い鉄道会社がプロ野球チームを持つことは社会のニーズでもあった。

だが、グループ全体で経営改善が求められる事態になると、本業とは直接関係が深くない業種であるプロ野球チームの赤字はお荷物となる。売却しろ、他の球団と合併するなりしろ…となる。

近畿日本鉄道がプロ野球から撤退した翌2005年、JR西日本の福知山線で大事故が起きた。JR西日本の社員教育などの企業風土も問題視されたが、安全に対する万全の対策が図られていないことももちろん問題視された。この事件の報道を見聞きして敗戦処理。は、常に乗客の人命を預かっている鉄道会社は年間数十億の赤字を出す球団を補填する余裕があるのなら、その費用を安全対策に回す方が優先だろうと当時思った。もちろんどんな業種でも従業員や顧客、関係者らの安全を確保することは当然の義務であるが、危険と背中合わせという意味では鉄道会社は特に求められよう。球団が利益を出せるようならまだ問題はないが、そうでなければ切り離されるのも止む無しだろう。

時代のニーズなどを考え合わせると、新聞社、鉄道、映画会社ばかりが公共性が高いとはいいきれない。食品や飲料メーカーを親会社に持つ球団が後から増えたが、安全をキープしなければならないという点では鉄道に近いモラルが求められる。日本ハムの食肉偽装問題が報道されたときには、ちょうど北海道移転が表明された後だったので、移転中止、球団身売りという最悪の事態も一瞬覚悟したものだ。球団の親会社にふさわしい企業かという検証は慎重になされなければならないが、業種にこだわることはあまり関係ないような気がする。

2004年に楽天ライブドアが新規参入に名乗りを挙げたときのNPB側とのヒアリングが一部公開されたが、当時の記憶によると、双方の企業に対するNPB側の最初の質問は「年間で数十億という赤字が出ても、球団を続けられるか?」というものだった。どんなビジョンを持ってとか、そういうことより先にまず赤字体質に耐えられるかを問われたのだ。ということは、もはや体力勝負なのか?

まだ球界再編騒動が起きる数年前、敗戦処理。は企業経営のコンサルタント的な仕事をしている人に聞いたこともある。「プロ野球チームは赤字になっている球団が多い。その中には親会社が上場している球団もある。そういう会社は株主総会などで子会社の赤字体質に関して問われないものなのか?」それに対してその人は「公共性の高いプロスポーツの球団の赤字を補填していても問題ないくらいの盤石な財務体質ということが証明できればいいのですよ。企業の利益還元という側面も求められますから」といったような内容で応えてくれた。最近では株主総会で監督の采配までがとやかく言われるような球団、親会社もあるようだが、本来経営とはそういうものなのだろう。

だが日本の不況の深刻化もどんどん拍車がかかっている。「球団は赤字でも良い」という発想はもう通用しないのだろう。TBSがベイスターズの親会社として球団を運営して今年でちょうど十年。同じ事をやっていてはDeNAだろうと京急だろうと、十年以内にギブアップするだろう。それでは意味が無いのだ。どんな企業が親会社になるかも大切だが、その企業がどんなビジョンを持って球界に参入するかが問題なのだ。企業名が認知され、イメージアップに繋がれば球団の赤字なんて広報、宣伝費と思えば安いものという発想での参入が長続きする時代とは思えない。DeNAにはそういう雰囲気も感じられるし、京急には前述の近鉄撤退と同じケースが当てはまる。個人的には帯に短しというより、襷に短いようにも感じられる。週明けにも決着するようだが、決まったら新親会社のビジョンなりを早く聞きたい。もちろんそれはチームをどうやって今の長期低迷から脱却させるかや、スタジアム問題を含めた上でだが…。

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