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2011年11月27日 (日)

星野仙一監督が他球団で戦力外通告を受けた選手との獲得交渉制限に一石

Dsc_0045 今日27日の日刊スポーツに、ゴールデンイーグルスの星野仙一監督が現行の、戦力外通告を受けた選手に対して他球団は一回目のトライアウトの日まで獲得の交渉を出来ないというルールに疑問、矛盾を感じると指摘したとの記事が載せられた。

元の所属のチームの順位などにより、球団によって戦力外通告が発せられる時期が前後することから機会均等を考えての現行措置だが、それが選手達にとっても不利益を生じるおそれを懸念している様だ。

(写真:戦力外通告を受けた選手との交渉制限に異を唱えたゴールデンイーグルスの星野仙一監督。20119月撮影)

星野仙一監督の主張を要約すると、戦力外通告を受けた選手との交渉が解禁になる前にトレードや新外国人選手の獲得も出来、その時点で各球団の編成が固まってしまうと、戦力外通告を受けた選手は不利になるのではということだ。

まず、現行制度の流れを確認しておこう。

シーズンの終盤になると、各球団は来季の戦力構想に入っていない選手に対し、戦力外通告をするとともに、マスコミを通じて他球団やファンに通知する。

従来は戦力外通告の時期は球団ごとにまちまちだったが、選手会からの申し入れもあって2008年からは戦力外通告の時期が定められた。

第一次通告 101日から前球団のレギュラーシーズンの終了の翌日まで。

第二次通告 クライマックスシリーズ終了の翌日から日本シリーズ終了の翌日まで。ただし日本シリーズ出場球団に限り、日本シリーズ終了の5日後まで。

ただ今シーズンに関しては東日本大震災の影響でレギュラーシーズンの開幕が遅れたため、第一次通告を109日からとするとともに、第一回トライアウトが1124日に制定されていたので、日本シリーズ出場チームもその前日までとされた。なお、野球協約に定める減額制限(年俸が1億円を超える場合40%、1億円以下の場合25%)を超える減額提示をする場合も上記を期限としている。

これでいうと、10月の上旬に所属球団から戦力外通告を受けても、1124日の一回目のトライアウトまではどの球団とも入団交渉を出来ない。この時期には球団によっては秋季練習をしているが、秋季練習に同行して入団テストを行うことももちろん認められない。

なぜそんな堅苦しいことをしているかというと、日本シリーズに出場するチームが、日本シリーズまでは戦力と考えていても、もう来年は戦力としては使えないだろうという判断をすれば日本シリーズ出場後に戦力外通告をすることも考えられ、そうした選手にとっては、その時点で他球団の戦力補強に目途が立っていたら、就職活動の機会を得られなくなる。選手会は機会均等を優先させて現行の制度を機構、球団側と合意した。

ここで一つ補足すると、戦力外通告=自由契約ではない。

野球協約では、各球団は翌年も契約を結ぶ意思のある選手を1130日までにコミッショナーに提出することになっている。これはその時点で個別の選手との翌年度の契約更改を済ませているか否かを問わず、球団が契約の意思を持つ選手のことであり、保留選手と呼ぶ。12月2日にコミッショナーが保留選手を公示するが、それに含まれなかった選手が自動的に自由契約選手になるのである。つまり、選手に対する戦力外通告をするというのはこの11月末に行う翌年、選手契約の意思のある選手リストに載せない選手への事前通知に当たるのである。

従来はこの122日の公示を以て自由契約選手になるまで戦力外通告を受けた選手と他球団の選手が交渉できないと解釈されていた時期もあったが、十二球団合同トライアウトが実施される様になってトライアウトの日を以て交渉可となる。この場合トライアウトを受験していない選手に対しても同日からの交渉可となる。

また、理論上はこの1130日を待たず、シーズン狩猟後に選手を自由契約にすることは出来るが、その場合は野球協約上、ウエーバー公示にかけられなければならず、ウエーバー公示に伴う移籍には移籍料が発生してしまうために獲得する球団が出てくるとは考えにくいので、時期を待たずに自由契約、ウエーバー公示をする行為は非現実的である。

2006年のシーズン終了後にホークスから戦力外通告を受けた大道典嘉に獲得の意思を示したジャイアンツはホークスに対し、大道のトレードを申し入れた。当該球団のレギュラーシーズンが終了していれば交換トレードは可能なので、このトレードはすぐに両球団の合意に至った。ホークスは大道を戦力外通告にした手前、ジャイアンツに対し見返りを求めず、無償トレードが成立した。これによって大道はジャイアンツの一員として秋季練習への参加が可能になった。

Dsc_0095 個人的にはこういうトレードは良いトレードだと思うのだが、このトレードを報じた新聞紙上に「無償トレード」と言う文字が躍ったために、一部のそそっかしいホークスファンが小久保裕紀の無償トレードの件を連想して「読売に大道を奪われた…」とネット上で騒ぐ一幕もあった。

大道のケースとは異なるが、今季のクライマックスシリーズが終わってから日本シリーズが始まるまでの間に、ホークスの小斉祐輔という外野手がゴールデンイーグルスに金銭トレードで移籍した。推測だが、例えばゴールデンイーグルスが小斉獲得をホークス球団に打診したとして、ホークス側が小斉を日本シリーズの40人枠に入れる戦力と見なしておらず、なおかつトレードに応じる気持ちがあるとしたら、日本シリーズ後にトレードを成立させるより、日本シリーズの前にトレードを成立させる方が小斉の移籍先でのスタートが早くなるので、小斉とゴールデンイーグルスのことを考えて日本シリーズ前に成立、発表したのだろう。

余談だが、日本シリーズに進出するチームの、日本シリーズ開始直前のトレードなんて聞いたことがない。ホークスはこの時期に、シーズン終盤は一軍にいて、過去の日本シリーズでは活躍していたベテランの柴原洋の現役引退を発表した。ホークスファンは少なからず動揺したであろう。そこに球団としては本意ではなかったであろうが、杉内俊哉がFA権行使との報道が一部から出て動揺が大きくなったに違いない。

星野監督が主張する様に、現行では戦力外通告を受けてから長ければ一ヶ月半以上、選手は他球団と交渉できない。球団は獲得を検討しようにも、その選手を秋季練習などに招いてテストできない(第一回トライアウト以降なら、結果次第という形でも選手を秋季練習などに招いてテストすることは可能)。日刊スポーツの紙面ではゴールデンイーグルスは、タイガースから戦力外通告を受けた下柳剛の獲得を検討しているが、独自にテストできない。トライアウトは多くの選手が受験するから、一人の選手のプレイ時間は限られる。

ここまでお付き合い下さった方なら理解していただけると思うが、星野監督の言う様な形も一理あると思うが、自由契約に関する野球協約上の扱いを一部改変しなければならない面もあり、一筋縄には行かないだろう。球団ごとにどんどん交渉が自由になれば、日本シリーズに出場するチームから戦力外通告を受ける選手が不利になるケースも出てこよう。今年で言えばドラゴンズの河原純一佐伯貴弘は球団から戦力外通告を受けている状態で日本シリーズに出場した。河原や佐伯に興味のある球団にとっては日本シリーズでのプレイが実質的なトライアウト代わりになるかもしれないが、入団交渉を進められない以上、現行制度でなければ不利になりかねない。

かつて2000年には日本シリーズに出場したジャイアンツで橋本清が日本シリーズ終了後の、しかも大半の球団で戦力補強の目安をつけていた時期に戦力外通告を受けて他球団への挑戦がままならなかった例がある。橋本はこの年、故障などもあってファーム暮らしだっただけに、早い戦力外通告が望まれた。橋本はホークスが獲得したが、当時ホークスの監督であった王貞治がジャイアンツの監督だった時にドラフト1位で獲得した選手。温情で獲得したとの見方を一部でされた。

この件は突き詰めると前エントリー1126日付 清武斬っても育成選手制度は斬らず で触れた育成選手制度の活用法にも関わってくる。個人的には現行の機会均等の考え方が、仮にベストではないにしても現実的なものだと思う。移籍の活性化と機会均等、このバランスが難しいのであろうが、如何だろうか…。

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