ジャイアンツは本当に村田修一を獲得するべきか?
当blogの前エントリー、4日付 男村田はベイスターズに残ってこそ男村田ではないのか? で敗戦処理。の意見として村田に横浜DeNAベイスターズに残って欲しいと主張したが、じゃあジャイアンツはどうなのか?という事になろう。
村田が守る三塁手のポジションはレギュラーが固定されておらず、今季までの四番打者、同じ右の大砲、アレックス・ラミレスが退団した。村田は補強ポイントに合致した選手と言えよう。だが、前エントリーで書いてきた様に(といっても敗戦処理。の妄想だが)このタイミングでベイスターズ球団を出ようとする選手が本当にジャイアンツで役に立つかどうか、個人的にはどうも疑わしいのである…。
(写真:今季最終戦で通算250号をジャイアンツの澤村拓一から放ち、馬場敏史三塁ベースコーチに祝福される横浜・村田修一。来季はジャイアンツの味方としてプレイするのか… 2011年10月撮影)
以前に原辰徳監督が「いい選手はいらない。強い選手が欲しい」と言ったのを思い出した。選手の故障渦に泣かされたため、簡単に故障をせず、かつ簡単な故障なら屈せずに戦う、技術だけでなく心技体が備わった強い選手が欲しいというニュアンスでの発言と記憶しているが、村田はまさに「いい選手であっても、強い選手ではない」選手に思えるからだ。
こういうと「内川が新天地で活躍できたのだから、村田も移籍したら活躍できるだろう」という意見が聞こえてきそうだ。ただホークスはどうだかわからないが、ジャイアンツはこれまで多くのFA選手を獲得している割に、今一つその選手の本来の姿が発揮されないケースが多い。FAで、「いい選手で強い選手」だったのは長嶋茂雄監督時代から遡っても、工藤公康、小笠原道大、にせいぜい落合博満くらいであろう。早くも村田を「清原の二の舞い」呼ばわりするアンチのファンもいる。チームにメンタル的な面も含め、好影響を及ぼした選手は獲得する選手の多さの割には少ないと思える。
村田にジャイアンツが何を求めているかはっきりしないので、とにかく足し算の発想で、現在空席の四番打者と三塁手というポジションにマッチしているから獲れというのでは、横浜DeNAベイスターズが優勝を目指す五年後、逆にジャイアンツはBクラスに低迷しているかもしれない。
ジャイアンツのこのオフの戦力補強は、解任された清武英利前球団代表兼GMの後任に当たる原沢敦球団代表・GM兼編成本部長が当たっている。新任者の腕が早速試される局面だ。村田の今季までの打棒ぶりはこんな仰々しい肩書きの人でなくても、要は敗戦処理。程度の野球ファンであれば誰でも知っている。その村田が来季からのジャイアンツに本当に必要な選手かどうか、それを判断するのがプロの編成担当者の仕事であろう。ましてやGM職ならなおさらだ。
原沢代表の肩書きにGMとあるが、現在ジャイアンツ以外の十一球団でGM制を採用しているのは高田繁を招聘して採用するベイスターズと、山田正雄GMが奮闘しているファイターズだけだ。どの球団にもGM的なチーム編成の責任者は(監督、コーチ以外に)存在するが実際にGMという名称で担当を置いているのは今挙げた球団だけである。では他の球団にGMがいないのは何故か?アメリカ大リーグほどのGM専門職でないことと、主に選手OBでない人が当たっているからだろう。
今、映画「マネーボール」が公開中だ。敗戦処理。も先日鑑賞した。というか、既に本で読んだ。オークランド・アスレチックスというあまり予算のない大リーグの球団で、独自の指標を用いて選手獲得の判断を下し、アスレチックスをプレーオフに導いたビリー・ビーンGMの実話に基づいた映画である。
これはあくまで、各球団がGMを擁している大リーグの中でも異色のGMだから書籍になり映画化されたのであって、大リーグのGMとはこういうものですよと紹介する為の作品ではない。GMは球団の編成面に関してはかなりの権限を握っているが基本的にビーンの様に試合での選手起用や采配にまで口を出すものでは無い。それらはGMに対してフィールドマネージャーと称される監督の領域であるからだ。監督とGMはお互いの領域を決して侵さないのが当然のルールとなっている。そしてビーンの判断基準とした指標が、例えば出塁率と長打率を合計したOPSなどのセイバーメトリックスと呼ばれる指標なのであり、それが注目されているのである。
ビーンは特殊な事例の範疇だと思うが、いずれにせよ球団編成の専門職であり、これまで日本の各球団は安易にGMという肩書きを付与してこなかったのだろうと敗戦処理。は推測する。だがジャイアンツは新任の原沢代表にいきなりGMという名称を付与した。
内紛騒ぎで解雇した清武前球団代表兼GMへの腹いせと、脱清武体制でも旧体制に負けず劣らずチームの編成面を強化しなければならない対抗上の感覚でいきなり新任者にGMという名称を付与したのかもしれない。原沢代表と言えば、敗戦処理。には長嶋終身名誉監督が病に倒れた時にその病状を発表していた人物という程度の印象しかない…。「清武憎し」なら、裁判で決着をつければ良いだけのことで、適材適所を誤ると清武体制以下になってしまう。あるいは、かつて藤田元司監督が「長嶋の遺産で…」と揶揄された様に「清武さんがやったことでしょ…」とみなされるだけだ。
清武前球団代表兼GMにしても、いきなりGM職を務めたのではない。
明治大学在学中のドラフトの有力候補選手、一場靖弘への裏金供与で当時の渡邉恒雄オーナー以下の球団トップが退陣した後に球団代表に就任し、補強一辺倒のチーム方針に限界を感じ、選手育成の重要度に気付いて、育成選手制度の採用に尽力したのだ。そして球団強化には育成と補強のバランスが大切と考えて補強にも力を入れていく中で、渡邉会長のお墨付きを得てGMという地位を得たのだ。突然の内紛で降って沸いた感じで球団代表に就任した人物に本来の意味でのGMが務まるとは考えにくい。
「村田を獲らないなら、他に誰か来季の四番を任せられそうな奴はいるのか」という声が聞こえてこよう。ラミレスの代役と言うだけでなく、小笠原も年齢的にそう長くは期待出来ない。高橋由伸も同様。問題視された清武補強の要因である外国人助っ人獲得のパイプが改善されたとは思えない現状では、やはり村田に手を伸ばすしかないのかもしれない。
日本一に輝いたホークスがメジャーで84本塁打を記録したウイリーモー・ペーニャ獲得を既に表明しているが、この選手が評判通りならジャイアンツの外国人スカウト網には引っかからなかったのか?という疑問が出てくる。外野手で右打ちの長距離砲だとしたら、まさにラミレスの後釜にぴったりではないか…。
脱清武の象徴として、日本野球に合う、ジャイアンツファンに愛される様な外国人のパワーヒッターを探して来るくらいの意気込みを見せて欲しいところだが、当blog10月10日付エントリー さよなライアル…今年もジャイアンツが自前で獲得した外国人は駄目だった。で言及したとおりジャイアンツが自前で探してきた外国人選手(日本の他球団でのプレイ経験がない外国人選手)で最後に規定投球回数ないし規定打席に達したのはバルビーノ・ガルベスとシェーン・マックであり、ともに1990年代の出来事だから、清武前代表兼GMの着任以前から外国人選手獲得ルートが機能していないのであり、いきなりラミレスの穴を埋められるレベルの選手を探してくるとは思えない。
ところで外国人選手獲得と言えば、今季適任者を欠き、二転三転したあげく久保裕也で落ち着いたクローザー役にスコット・マシーソンを獲得した。マシーソンをクローザーに固定できれば、その前のイニングを八回は山口鉄也、七回は久保に任せたいという青写真がある様だ。このマシーソンが抑えとして機能するかどうかが原沢新体制の試金石といえるだろう。
昨オフ、ブライアン・バニスター、ジョナサン・アルバラデホ、カルロス・トーレスという三人の新外国人投手を獲得していながら、シーズンを通して不成績だったセス・グライシンガーとディッキー・ゴンザレスを解雇せずに残留させて保険をかけるという金満球団ならではの球団編成をしたが、今オフもゴンザレスは残留させる様だ(保留選手名簿に載ったらしい)。グライシンガー、アルバラデホ、トーレスが自由契約選手となり、レビ・ロメロは残留した。その一方でホークスとの契約でこじれて自由契約選手扱いになった今季のパ・リーグ最多勝利投手、デニス・ホールトンにも食指を動かす様だが、FAでの村田獲得を見込んで、外野手の外国人選手獲得も狙っているだろう。ホークスの選手ではFA権を行使した杉内俊哉の獲得も狙っている様だ。先発ローテーション投手が揃っているわけでもない。特に左投手は内海哲也のみ。杉内獲得に躊躇することはあるまい。
話を戻そう。原監督は今季終盤に四番を務めた阿部慎之助にも期待しているようだが、捕手業への負荷を考えると、故障が無くても定期的に休ませた方が無難と思われるポジションの選手に「巨人の四番」を託すことが正解なのかという気がする。個人的には長野久義の四番抜擢も考えた方が良いと思っているが、そもそもこの球団には四番打者を育てるという発想が乏しい。確実に四番を任せられそうな選手に四番を託すというのがジャイアンツのスタイルだ。これが清武前代表兼GMならば、既成概念にとらわれず、敢えて補強一辺倒から脱却して四番打者を内部育成する選択肢も考えるかもしれない。今季、いかにも付け焼き刃な印象を植え付けたシーズン中の高橋信二、大村三郎獲得があったがこの両選手は旧所属チームで「つなぎの四番」として成果を挙げてきた選手だ。何らかの意図があったに違いない。残念ながらシーズン途中の補強は起爆剤とはならず、ともに出場機会の増加を求め、高橋信は自由契約を求め、大村はFA権を行使した。
敗戦処理。なら長野を四番打者に育てるか、新外国人選手と天秤にかけながら四番打者を決めていきたいところだ。日本で実績のある外国人選手で自由契約になっている中ではホセ・フェルナンデス、ターメル・スレッジ、ホセ・オーティズがいるが、脱清武を機会に安直な外国人選手獲得も見直してもらいたいところだ。だが現実にはそれは理想論の域を出ない。結局、来年は「四番、サード村田、背番号25」ということになりそうだが、ジャイアンツには誰か、村田の首に鈴をつける存在はいるのか?それがいなければそれこそ「清原の二の舞い」、プチ清原和博になりかねないと思う。
そして原沢球団代表がチーム作りを任せられる様なGMを早く見つけてくることを切望する次第である。来季は我慢の年になることを覚悟しなければならないかもしれない。
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コメント
読売様、初めまして。コメントをありがとうございました。
> 彼が決めたことなので自分は応援するし文句もないです。
ぜひ応援してあげて下さい。
> アンチ巨人はかなり叩きますが叩く権利ないと思います。
権利がないとは言いすぎだと思います。プロ野球に興味を持ち、この移籍に関心があるのであれば、叩くのも誉めるのもファンの権利でしょう。
> 好きなチームでプレーしたい気持ちがあるなら応援するのが本当のファンだと思います。
それだと私は本当のファンにならないですね。心外です。
読売さんの応援するスタンスを否定する気持ちは全くありませんが、「応援するのが本当のファン」という書き方だと、それに当てはまらないものは「本当のファンではない」とも受け取れます。
もしそういう意味も含めて書いてあるのであれば、残念ですね。
応援するチームや、その選手のことなら何でも肯定しろ、応援しろ、というのだけが本当のファンだと思いません。
私はジャイアンツファンとして、今年ジャイアンツに優勝して欲しいと思っています。
残念ながら3位に終わってしまった昨シーズンからどう巻き返すかという意味でどのような補強をするかに注目していましたが、私には村田獲得に疑問な点があったので、このようなエントリーを立てたまでです。
私はジャイアンツとファイターズのファンですが、どちらの球団に対しても、盲信的に何でも誉めるという様なスタンスを取りません。
具体的に村田獲得に関するスタンスで言えば、私は村田が「好きなチームでプレーしたい気持ちがある」かどうかには全く興味がありません。興味があるのは村田がジャイアンツの優勝のために効果があるかどうかだけです。
村田はジャイアンツが好きだそうですから、全力でプレーしてくれるでしょうが、問題はその結果がどうかです。少なくとも昨年と同じような成績では困ります。
ただ、ジャイアンツの村田を応援しないと言っている訳ではないですよ。村田が今年はジャイアンツの一員としてプレーするのですから、グラウンドに立てば応援はしますよ。獲得は疑問ですけど、決まった以上は応援しますよ。
> 村田さんは巨人のユニフォームが1番似合ってますね。
記者会見場では似合って見えるものですよ<笑>。グラウンドでプレーしている時にどう映るかですね…
投稿: 敗戦処理。 | 2012年1月15日 (日) 14時12分
彼が決めたことなので自分は応援するし文句もないです。
アンチ巨人はかなり叩きますが叩く権利ないと思います。
好きなチームでプレーしたい気持ちがあるなら応援するのが本当のファンだと思います。
今年こそ連勝して優勝ですね。
村田さんは巨人のユニフォームが1番似合ってますね。
投稿: 読売 | 2012年1月14日 (土) 14時10分
ごくらくトンボこと西清治様、コメントをありがとうございました。
> わたしもジャイアンツの村田獲得には反対ですね。清武代表が解任されてから、次代を担う選手を自前で育てるという方針を、フロントが放棄してしまったのでしょうか?
まあ足し算で考えれば、村田獲得はプラスではあるでしょうが、これまで書いてきたようにどうも素直に歓迎できません。
もちろんジャイアンツの一員になった以上は選手の一人として応援しますが、小笠原や工藤、落合が移籍してきた時の様なワクワク感はありません。
> 大田は外野に回るのでしょうが、村田が三塁に収まることで腐ってしまう若手選手がまた増えてしまうのではないでしょうか。それがまたジャイアンツを弱体化させてしまうのではないかと心配です。
伸び悩んでいる中井にはとてつもなく大きな壁が出来たことになりますが、ポスト小笠原を見据えれば村田が一塁に回って三塁が空くかもしれませんから、モチベーションを下げずに精進を期待するしかないですね。
大田の外野転向はポスト・ラミレスを見据えたのと、三塁手としてのあまりの守備力の低さ(本人も諦めていた?)によるのでしょうから、村田入団で逆にもう三塁には戻れないという不退転の決意が出来るかと期待します。
また、あれだけ高い外野の守備力を持つ亀井に三塁を守らせるという監督の自己満足としか思えないコンバートもうやむやになり、亀井がまた外野一本に絞られ、課題を不振の打撃克服に絞れるという期待が出来ます。
少なくとも亀井と長野は外野で固定される様な、ジャイアンツファンが安心できる成績を残して欲しいですね。
村田は今季「スピードアップ賞」を受賞しました<苦笑>が、同学年の森本稀哲がベイスターズに移籍してきて啓蒙されたと専ら言われています。
ジャイアンツに森本の役割を果たす選手がいるでしょうか?
村田自身の活躍より、村田入団の相乗効果が、西さんが言われる様な弱体化でなく、プラス方向に繋がっていって欲しいと思います。
投稿: 敗戦処理。 | 2011年12月 9日 (金) 00時25分
敗戦処理。様、こんばんは。いつもツイッターに返信いただき、ありがとうございます。ようやくブログを開設いたしました。ぼちぼち更新しますので、よろしくお願いしますo(_ _)oペコッ
わたしもジャイアンツの村田獲得には反対ですね。清武代表が解任されてから、次代を担う選手を自前で育てるという方針を、フロントが放棄してしまったのでしょうか?
大田は外野に回るのでしょうが、村田が三塁に収まることで腐ってしまう若手選手がまた増えてしまうのではないでしょうか。それがまたジャイアンツを弱体化させてしまうのではないかと心配です。
投稿: ごくらくトンボこと西清治 | 2011年12月 8日 (木) 22時08分
名無しさん、コメントをありがとうございました。
繰り返しになりますが、ハンドルネームを入れて下さい。
IPから察するに、先日巨人はイチローを獲得するから村田は要らないとコメントして下さった方ですよね。
IPが同じだと私にはわかりますが、他の方からは見分けが付かないので次回は必ずハンドルネームを入れて下さい。
> こんな横浜に残って何になる?
「こんな横浜」になってしまった一因は村田にもあると思うので、「こんなチームじゃやってられねえ」なんて言って寄らば大樹の陰みたいにFA移籍するのでは「男村田」が廃ると思うのが、この一つ前のエントリーでの私が言いたかったことなのですよ。
> まだ原監督の巨人の方がましだろう。
この前のコメントと矛盾している様ですがそれは見なかったことにして<苦笑>、寄らば大樹の陰的な発想の選手が、かつて原監督が言った「いい選手はいらない。強い選手が欲しい」に相当するとは思えないというのがこのエントリーの趣旨なのですよ。
イチロー、もといイチロー改め鈴木一なら歓迎しますよ。
もちろん杉内も歓迎します。村田より先に速攻で杉内と接触して欲しかったですね、どうせなら。
投稿: 敗戦処理。 | 2011年12月 7日 (水) 23時35分
GM、監督、フロント、コーチ・・・みんな元巨人で古巣からお呼びのかからん年寄達。
こんな横浜に残って何になる?
ばからしくてしょーもない。
まだ原監督の巨人の方がましだろう。
投稿: | 2011年12月 7日 (水) 21時52分