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2012年1月19日 (木)

そして僕は途方に暮れる

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君の選んだことだから

きっと大丈夫さ

君が心に決めたことだから

そして僕は途方に暮れる

大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」/作詞:銀色夏生

ダルビッシュ有の大リーグ、テキサス・レンジャーズへの移籍が現実に決まり、敗戦処理。の心境…ダルビッシュは心配ないが、ダルビッシュが抜けた後のファイターズは…

(写真:ファイターズ入団一年目、新人合同自主トレでのダルビッシュ有。20051月撮影)

こういう結果になるのがわかっていても、なかなか結論が出ないのでつい淡い期待をしてしまったが、19日、ダルビッシュ有のテキサス・レンジャーズへの移籍が決まった。

5年前の松坂大輔のポスティングシステムによる移籍の時を上回る、高額の入札に高額の契約。ダルビッシュを応援し続けたファイターズファンの敗戦処理。としては誇らしげな感覚もないではないが、どうしてもダルビッシュが抜けたファイターズのことも頭をよぎる…。

このオフはダルビッシュ以外に真田裕貴中島裕之青木宣親の三人がポスティングシステムを利用しての大リーグ移籍を試みたが、真田にはどこも名乗りを挙げず、中島に対しては交渉権を得たニューヨーク・ヤンキースがまさかの低評価。ダルビッシュの前日に移籍がまとまった青木でさえ、現地でテストされた上での契約と、かなり日本球界から移籍を目指す選手が見くびられた形になっていたが、さすがにダルビッシュだけは違った。

交渉期限ぎりぎりまで決着が付かなかったのは球団が提示した六年契約より早い、五年後でFA扱いになりたいというダルビッシュの要求との折り合いの問題だった様で、この点を見てもいかにダルビッシュが他の日本人選手とは異なる次元で高く評価されていた証と言えよう。

blog1月7日付エントリー ポスティングシステムなんて所詮こんなもん でも触れた様に、この制度ではイチロー、松坂クラスでないと、思う様な好条件での移籍は望み得ないのだろう。

それはそれで、ダルビッシュには素晴らしいことで、絶賛の言葉を贈りたい。よくぞこんなに凄い投手が、七年間ファイターズでファイターズとファイターズファンのために投げてくれたと本当に感謝している。

Adsc (写真:ルーキーイヤーに謹慎処分を受けた後の初の公の場、鎌ヶ谷でのファンとの交流会でのダルビッシュ。隣は2004準ミス鎌ヶ谷。2005年3月撮影)

だが…、

上記別エントリーでも書いたが、かなうことなら、海外FA権取得の前年くらいまでファイターズでプレーして、それからのポスティング挑戦であって欲しかった。ましてや今年は栗山英樹監督の就任一年目のシーズン。少しでも良い条件で勝負させてやりたかった…。

敗戦処理。はファイターズのファンとして、このような素晴らしい投手が常に味方として七年間ファイターズでプレーしてくれたことを誇りに思うとともに感謝をするが、同時にこの「大エース」が抜けるファイターズの今シーズンからのことも考えなければならないのである。

ダルビッシュがファイターズに入団したのは2005年。ファイターズが北海道に移転して二年目だ。つまり北海道のファイターズファンは「北海道日本ハムファイターズ」になってから、ダルビッシュのいない北海道日本ハムファイターズを一年間しか経験していないことになる。

Adsc_03 (写真:一年目。わずか三ヶ月あまりのファーム生活で、鎌ヶ谷での試合前のサイン会に参加するダルビッシュ。20055月撮影)

ファイターズ球団はダルビッシュの移籍に伴う高額の移籍金を背景にしているのか、ここにきて春季キャンプ地の沖縄県名護市や、北海道の旭川市に億単位の寄付をしているが、四十億円もらおうが百億円もらおうが、お金は野球をしない。野球をするのはお金でなく、人間がユニフォームを着た選手。ファンは例えば、FAで選手を獲得した時に、人的補償で選手を持って行かれると「FAっていってもトレードと大差ないよなぁ…」等とぼやくことがあるが、人的補償を伴わないFA移籍でも一部を除いて補償金が動くからその意味ではFA移籍は金銭トレードと大差ないのだ。ただ球団間のお金の動きはファンには見えない。人の動きがあって初めてファンは事の重大性を感じるものなのだ。

個人的には外国人選手が一軍枠の上限の四人を超えることになろうと、先発投手となる外国人選手を獲得すべきだと思う。もちろんダルビッシュの穴を埋める投手など期待しない。ボビー・ケッペルブライアン・ウルフのような勝ち星と貯金を見込める投手をもう一人獲得して欲しいのだ。極論すれば、10勝したら10敗する投手でもいい。要は昨シーズンでいえばダルビッシュが先発した28回を埋めてくれる先発投手が欲しいのだ。そうすると外国人投手が三人になり、マイカ・ホフパワーと、復帰のターメル・スレッジの一方が二軍に落ちることになるが、野手の外国人二人に関してはどのみち、二人揃ってスターティングメンバーに並ぶ可能性は低いだろう。それならば一軍外国人枠を投手3、野手1にした方が合理的に思える。

Adsc_03_2 (写真:ルーキーのオシゴト、鎌ヶ谷でバットボーイを務めたダルビッシュ。20055月撮影)

斎藤佑樹が二年目で伸びて、鎌ヶ谷から一軍を狙う若手の台頭があればと期待する向きもあるが、それはかなりの寛容の精神を持つファンでないと務まらないだろう。もちろん敗戦処理。も吉川光夫中村勝以下の若手の成長や、八木智哉、糸数敬作の奮起に期待していないのではない。ダルビッシュの穴は埋まらないけど埋まらないなりに手を尽くすべきだと言いたいのである。そしてその手段としてダルビッシュが置いて行く資金を元に、もう一人の外国人投手を獲得して欲しいということなのだ。

ダルビッシュのファイターズでの存在感に関しては今さら語るまでもないが、個人的には昨年1月4日付エントリー ダルビッシュ有は負けても凄いんです! で触れた様に、負ける試合でも長いイニングを1人でまかなってくれるから中継ぎ投手を休ませたり負荷を軽くでき、次の日(もちろん前の日もなのだが)の先発投手から抑えの武田久につなぐまでの継投が容易になるという面がダルビッシュの最大の貢献度なのである。想像して欲しい。六連戦の最後の日曜日に先発する斎藤佑樹が何とかして5イニングか6イニングを投げきって後はリリーフ陣にマウンドを託すにしても、その中継ぎ陣が皆、三連投、四連投目になるなんてことが今年は考えられるのである。

Adsc_0193 (写真:北京五輪の野球日本代表に選ばれ、直前練習に参加したダルビッシュ。20088月撮影)

ファイターズファンは今年は我慢のシーズンになることを覚悟しておいた方がいいだろう。

敗戦処理。のような東京時代からのファンはそういう事態になっても「今は我慢の時…」と経験則から辛抱強く応援する術を持ち合わせている人が多いと思うが、北海道移転後からファイターズを応援し始めた人達がそういう事態になった際にどういうリアクションをするのだろうか…?

「ダルビッシュがいたら…」大金に目が眩んで大エースを放出した球団批判に走るのか?

入る可能性が低い選手を1位指名して、即戦力の新人投手を獲得しなかったことを責めるのか?

「こんな時梨田だったら…」「ヒルマンだったら…」監督どころかコーチ経験もない人物を監督にしたことを批判するのか?あるいは監督そのものを罵倒するのか?

結果がすべての世界だから、信賞必罰という意味ではその方がむしろ健全なのかもしれないが、未知の領域に突入した時、北海道のファンがどういうリアクションを起こすのだろうか?

ファイターズは球団史において過去に例がないほど、北海道に移転してから安定した成績を持続している。地域密着、育成重視、その原因はいろいろ挙げられようが、一人の絶対的「大エース」によって牽引されていた部分が大きいことがこれからどんどん表面化してくるのである。

近年では自前の育成を重視するスタンスの様なファイターズだが、北海道移転元年には大リーグ帰りの新庄剛志の獲得に始まり、ほとんどダメ元であったろうが、大リーグ移籍を前提にFA宣言したライオンズの松井稼頭央にアタックしたり、家族の元でプレーしたいといってマリナーズとの契約年数を残して帰国した佐々木主浩にも交渉に出向くなど精力的にチームを変えようとした。翌年には球団史上唯一、他球団からFA宣言した選手を獲得した。大リーグ移籍を目指して宙に浮いていた感もあったが稲葉篤紀の獲得がその後のチームの支えになっているのは間違いない。

大黒柱ダルビッシュを失った今この時、ファイターズが手をこまねいているとは思いたくない。直ちに形に表れないにしても、新しいファイターズ像を造るべくスタートするはずだ。敗戦処理。はファイターズがそれをするという前提であれば、多少の困難には耐えながら応援し続けるつもりだ。ほんの十年前には「目の黒いうちに、もう一度ファイターズに優勝して欲しい」なんて諦め半分で言っていたのにあれから三回も優勝を体感しているのだ。また、やり直せばいいだけの話だ。

最後に、ダルビッシュ有、本当にありがとう!

Adsc_0221_2 (写真:ゴールデンイーグルス、田中将大との投げ合いに完投勝ちし、雄叫びを上げるダルビッシュ。20117月撮影)

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