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2012年3月 5日 (月)

週刊ベースボール編集長の「予告打順」案

Cdsc_0055 31日のセ・リーグ理事会で結論が持ち越しになったセ・リーグの予告先発導入の件は、オーナー会議も行われる8日に緊急理事会で再び話し合われることになっている。相変わらずファンの間では賛否両論という感じだが、週刊ベースボール(ベースボール・マガジン社)の携帯公式サイトの33日付、同誌の小林光男編集長によるコラム「野球の風」で触れている予告打順がいろんな意味で面白い。

週刊ベースボール誌の携帯公式サイトに、毎週土曜日に更新される、同誌の小林光男編集長のコラム「野球の風」33日付は-いっそのこと「予告打順」も!?-と題して、予告先発のパ・リーグの経緯や1日に行われた理事会について説明した上で、同編集長の意見のひとつとして、

いっそのこと「予告打順」も同時に行ってしまうのはどうか。相手の予告先発を確認する前に「予告先発」をすれば、例えば左投手に対して右打者ばかりをずらりと並べるという戦略を取ることもできなくなる。

と述べている。

この意見のどこを面白いと思ったかというと、予告先発というファンに事前に先発投手を公表するというサービス(この場合は投手だけでなく先発オーダーまで)を行いつつ、予告先発が特定の球団に不利になるケース(地力に劣るチームが地力に優るチームに一泡吹かせるために相手の予想の裏をかく投手起用をする等が出来なくなる)を排除し得る点だ。

現在のパ・リーグの予告先発は翌日の試合の投手だけを先に発表するから、お互いに相手の投手に合わせた打順を組むことが出来る。ただその半面、先述した様に相手の裏をかくことが出来ない。野村克也元監督や落合博満元監督に特に顕著に見られる反対理由は、こうした駆け引きを制することも監督の技量であり野球の醍醐味の一つであるという点の様だ。

もちろんこうした意見も数多くある意見の中の一つとして等しく尊重されるべきである。ただ227日付エントリー セ・リーグも予告先発制度を導入か? でも述べた様に、だから予告先発は邪道だとか、野球の本質からかけはなれるなどと、あたかもこの制度が誤りであるかの様に決めつける意見は意見の域を超えていると思う。また、特に野村元監督の場合は「ファンの人も先発を予想する楽しみが減る」などともっともらしいことをいうが、敢えていわせてもらえば、今回のセ・リーグ導入か云々という報道が出る以前に、ファンの何%が予告先発を評価し、何%が否定しているかのデータを野村元監督が把握しているとは思えない。普通に考えてファンの間でも意見が二分するであろうテーマに関して自分の考えを正当化しようとするために「ファンの人も…」と言っているとしか思えない。

繰り返しになるが、だからこそ敗戦処理。は「どっちでもいい」と思っているのだ。極論すればセ・リーグは理事会でお偉いさん同士で話し合うより、ファンの多数決で決めればいいと思う。そうすればファンの声を導入したことになる。予告先発なんてあろうと無かろうと野球の本質に関わるとは思えないからだ。

ただし、先述の様に、相手の裏をかいたりしなければならないチーム事情のチームは現存するだろうし、先発ローテーション投手の頭数が少ない球団はいわゆるローテーションの谷間が多くなるから、その試合くらいは相手を攪乱したいというのもあろう。そこで週刊ベースボール小林編集長案である。この「予告打順」ならファンには投手だけでなくオーダーまで発表出来る一方、打順を相手投手がわからない段階で考えなければならないので、逆に言えば相手の裏をかくことも出来る。一挙両得だ。

しかし、そうはいうものの「予告打順」には運用上の問題が多数予測される。

まず投手の予告先発なら、先発投手は普通はその前日には登板どころかベンチ入りすらしないだろうから、事前に決めることも出来るし発表も出来ようが、野手となると「予告打順」を提出した後に試合で故障することも考えられる。逆に言えばどのタイミングで「予告打順」を提出してどのタイミングで発表するかも難しいだろう。また投手は相手打者一人を追えないと降板できないが、野手はそうではないから「予告打順」では偵察要員を使うことが出来るが、それでは「予告打順」にならない。このように運用上の問題はいくらでも出てくる。

要するにこの案は、相手の裏をかくという、戦術の中でこれまた選択肢の一つでしかないことを、いかにも監督の腕の見せ所だと主張し、ファンに可能な限り情報をオープンにしてフェアな闘いを見せるという発想のない監督あるいは球団関係者への強烈な牽制球に使えると言うことだ。自分の都合を正当化するために「ファンの人も先発を予想する楽しみが減る」等と言う主張を否定できるのだ。だから面白い。現実味は別の次元だ。

ところで、「予告打順」の採用例だが、敗戦処理。の知る限りでは1996年のパ・リーグの開幕戦が「予告先発(投手)」だけでなく「予告打順」だった。その結果、何が起きたかというと、開幕でホークスと対戦するマリーンズの江尻亮監督がホークスの裏をかいてサウスポーの園川一美を先発させたのである。

Cdsc_02 小宮山悟伊良部秀輝と言った右のエースの先発を予想してオーダーを決めたホークスの王貞治監督はまんまと裏をかかれた。王監督は「うちもなめられたものだ。開幕投手には“格”ってものがあるだろう。開幕試合は特別のものだよ」と報道陣に不満をぶちまけたという。開幕投手のあるべき人選の姿はともかく、自分の野球観が絶対だと思っている監督を一泡吹かせるには「予告打順」のようなシステムは有効だろう。

余談だが王監督はジャイアンツの監督時代にも自分の価値観で相手球団の先発投手を予想して痛い目にあったことがある。

 

就任四年目の(四年目にもなって)1987年、ナゴヤ球場での対ドラゴンズ三連戦の三戦目。ドラゴンズはいわゆるローテーションの谷間であった。ジャイアンツは当時も今も「初物に弱い」というジンクスがあり、報道陣の間でもルーキーのサウスポー近藤真一(現.近藤真市)の先発を予想する向きもあった。ところが当の王監督は「たしかにウチは初物に弱い。近藤に手こずるかもしれない。でも逆の目が出たらどうなる?プロ初登板が責任ある先発で、それでめった打ちでもされようものならしばらく立ち直れなくなるかもしれない。僕なら先発させないね」という趣旨のコメントを報道陣に発し、実際に右投手予想の左打者を含めた打順を組んだ。しかし当たり前のことながら、ドラゴンズの先発投手を決めるのは王監督ではない。ドラゴンズの監督であり、当時であれば星野仙一監督だ。この試合でジャイアンツは近藤にノーヒットノーランを食らうが、試合前にこういうやりとりがあったと聞くと、ジャイアンツ打線や打撃コーチがどうのではなく、王監督が元凶と思える。

また、たまたまネットで見かけたのだが、漫画の作品中の出来事と現実の違いがわからずに例に出して予告先発を反対しているファンがいて笑ってしまった。

週刊モーニング(講談社刊)に連載の野球漫画「グラゼニ」(原作・森高夕次、漫画・アダチケイジ)で、監督が相手の意表を突いてファームにいる外国人投手を昇格させて先発させようとするのだが、その外国人投手が主役の凡田夏之介と行動をともにしているところを目撃したファンのツイートをたまたま目にした相手の監督が、ふとスポーツ紙を見たらその投手が一軍に昇格していることが判明し、その投手の先発を見抜くというストーリーがあるのだが、それを引き合いに出して、予告先発がないからこういう駆け引きがあり、どんな情報網を持つかというのも監督の優劣の内だと思うから予告先発反対というものだ。

Cdsc_0692 「グラゼニ」は評判がよい野球漫画の様で、一部には「平成版『野球狂の詩』」とまで評価される。『野球狂の詩』(水島新司作・講談社刊「週刊少年マガジン」)の水原勇気登場以前の不定期連載の頃の風合いを感じさせるからである。しかしあくまで漫画の世界を現実に引き合いに出すには注意を要する。現時点で予告先発を採用していないセ・リーグではローテーションの谷間などで先発投手隠しをする球団は当然存在するが、もし現実のセ・リーグの監督が上記作品の様な意表を突く先発起用を考えたら、当日のスポーツ紙に選手登録の公示が載る、前日の一軍入りなんてしない。平日のナイトゲームなら一軍登録の締め切りは当日の午後3時。少なくとも前の日に一軍に上げるなんてしない。「グラゼニ」はこのような現実の野球界のシステムというか、手法の描写に甘いところが時折見られる。他には一軍と二軍を行き来するベテランの第四の捕手の年俸が500万円とかいうのもあったが、これまた非現実的。

話が逸れたので元に戻す。

あらためて敗戦処理。の立場を明確にしているが、セ・リーグも予告先発を採用すべしとか、ましてや「予告打順」を採用すべしという立場ではない。ほんとうにどっちでもいいのだ。そしてファンが自分の野球観で賛成反対を表明するのは自由だと思うが、各球団関係者でどちらかではどうしても困るという人がいたら、その理由を明示して賛成なり反対を表明して欲しい。それが、予告先発などしないという前提でチーム編成をしているからというのなら、今季から導入する事を今頃決めるなという論理として理解出来るが、あとはおそらくどちらに決まってもそれに対応しようと思えば出来る理由だと思う。その意味で「予告打順」案は踏み絵ともいえよう。

しつこいくらい繰り返すが、予告先発をしようがしまいが野球の本質から外れるなんてことは無いと思う。

※ 週刊ベースボールの公式携帯サイトはパソコンからはアクセス出来ないと思われます。

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コメント

チェンジアップ様、コメントをありがとうございました。

> スタメンで、投手の名前が二人も並ぶのは、嫌なのかな?上手く言えないが、偵察は嫌い。

藤田元司監督時代の1991年だったと思いますが、開幕戦から相手の先発を読み切れずに、偵察要員を二人使ったのがありました。

「だいじょうぶか…」と思ったら案の定その年はBクラスに低迷しました<苦笑>。

投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月 7日 (水) 00時57分

こんばんは。私は個人的に偵察メンバーって嫌いなんですよね。正々堂々とかそういう意味じゃなくてね。

 まあ、不動のオーダー的な感じがいいわけですね。先発投手が左だから、右打者を入れるとか、そういうのが、何となく好きくない。

 ノムさん@阪神時代に5番に偵察入れて、右投手なら、大豊、左投手なら、広澤ってにはこっちが凹んだ。

スタメンで、投手の名前が二人も並ぶのは、嫌なのかな?上手く言えないが、偵察は嫌い。

あと、作戦上のこととは言え、代打の代打ってのもイマイチ。

投稿: チェンジアップ | 2012年3月 6日 (火) 01時41分

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