最も打てない現役野手は誰だ?五年ぶり大調査で凡打王に輝いたのは…【公式戦開幕一週間前特別企画】
凡打王は誰だ?拙blog開設二年目に調べた、最も打てない野手は誰か?という調査を五年ぶりに行ってみた。
凡打率の定義は、安打はもとより、四死球による出塁、犠打および犠飛による貢献にもならない打席を凡打とし、凡打に終わった打席の全打席に占める割合が凡打率である。計算式は
凡打率=(打席数-(安打+犠打+犠飛+四球+死球+打撃妨害出塁))÷打席数
この数式だと、例えば無死二塁の場面で送りバントでなく、右方向に狙ってゴロを打って走者を進めるチーム打撃が凡打に含まれてしまうが、残念ながら現状敗戦処理。が知り得るデータ、記録統計ではこれらチーム打撃を考えた凡退を普通の凡打と区別したものがないので、ひとくくりに凡打とした。もちろん、これが高いほど凡打率が高い、イコールチームに貢献しない打者と解釈した。
五年前は野手の新人王の資格がなくなる60打席以上の経験者を対象としたが、今回はより選手を絞る意味で一年間の規定打席数に当たる446打席以上の選手を対象とした。60打席以上で調査した五年前には実働一年のゴールデンイーグルスの西村弥が凡打王になったということもあり見直した。
五年前に今回と同じ通算446打席以上に限定すると凡打率1位になるのはジャイアンツの實松一成。今回は?
(写真:凡打王の大本命!?ジャイアンツの實松一成。 2011年7月撮影)
ランキングを発表する前に、凡打率の標準的数値を考えてみた。投手が打席に立たない指名打者制を採用しているパ・リーグの昨年の各球団のチーム凡打率を調べてみた。
2011年パ・リーグ球団別凡打率(カッコ内はチーム打率)
マリーンズ .677(.241)
ゴールデンイーグルス .674 (.245)
ファイターズ .671 (.251)
バファローズ .669 (.248)
ライオンズ .654 (.253)
ホークス .652 (.267)
リーグ全体 .666(.251)
全体で凡打率.666だからこれより凡打率の数値が高ければ高いほどチームに貢献出来ない打席に終わる確率が高い打者、これより低い選手は低ければ低いほどチームに貢献出来る確率が高い打者ということになろう。また統一球使用前の2010年のリーグ全体の凡打率は.643だったからここでも統一球使用の影響が出ていると示唆される(リーグ打率推移、2010年.270→2011年.251。リーグ凡打率推移、2010年.643→2011年.660)。
おおよそチーム打率の逆順になっており、「打てない」、「打撃面で役に立たない」指標として使えそうだ。
ちなみに昨年の規定打席到達選手の凡打率を計算すると、パ・リーグ規定打席到達者27人で最も凡打率が高かったのは両リーグ唯一の七割台到達の中田翔の.703。そして松井稼頭央が.696、ホセ・フェルナンデスが.679で続く。逆にパ・リーグで最も凡打率が低かったのは本多雄一で.574。糸井嘉男.576、栗山巧.591と続き、この三選手だけが六割を切った。27人合計の凡打率は.643。一方セ・リーグ規定打席到達者24人で最も凡打率が高かったのはセ・リーグ本塁打王でありながら打率最下位のウラディミール・バレンティンで.676。次いで.675の相川亮二、.669の村田修一。逆にセ・リーグで最も凡打率が低かったのは首位打者の長野久義で.614、次いで.612の田中浩康、.619の畠山和洋。24人合計の凡打率は.648。
それでは現役選手凡打率ランキングを発表する。まずは上位トップ10から
順位 凡打率 選手名<所属>
1位 .753 的場直樹<M>
2位 .747 實松一成<G>
3位 .727 岩本貴裕<C>
4位 .724 鈴木郁洋<Bs>
5位 .723 小田幸平<D>
6位 .715 炭谷銀仁朗<L>
7位 .712 塀内久雄<M>
8位 .711 上本達之<L>
9位 .7103 武山真吾<L>
10位 .7102 一輝<DB>
凡打率1位=凡打王の大本命、實松一成は2位に後退。代わってマリーンズの第二捕手、的場直樹が1位に輝いた。
実は2010年までは實松の凡打率が.75039で的場の凡打率が.75042と小数第4位の僅差の争いだった。ところが2011年に實松がタイガースの藤川球児からサヨナラ安打を放つなど初めて年間で打率が二割を超える活躍をしてしまったため、的場に水を開けられた。
凡打率上位に守備力重視で起用される捕手陣が並ぶのは致し方ないところだろうが、3位にカープ期待の長距離砲、岩本貴裕が入ったのは残念としか言い様がない。金本知憲が在籍当時に付けていた背番号10を背負う期待の大砲のはずなのだが、現状この凡打率は酷すぎる。また捕手ではあるがどちらかというと打力を評価されてベンチ入りし、代打での起用が目立つ感じの上本達之の凡打率の高さが意外だ。
次に11位以下を紹介する。
順位 凡打率 選手名<所属>
11位 .709 米野智人<L>
12位 .708 井手正太郎<DB>
13位 .701 中田翔<F>
14位 .696 川本良平<Ys>
15位 .696 飯山裕志<F>
16位 .6953 山崎勝巳<H>
17位 .6950 倉義和<C>
18位 .693 鶴岡慎也<F>
19位 .692 林威助<T>
20位 .691 渡辺正人<M>
11位の米野智人は昨年までは捕手登録だったが今季から外野手。この凡打率を見る限り打力を活かすための外野手転向とは思えない。また、13位の中田翔は先述の様に昨年の両リーグ規定打席到達者の中での凡打王。ここまでの上位20人の中で唯一、年間の規定打席に到達した選手。つまりまだ若いとはいえ、レギュラークラスの選手の中で最も凡打率が高い選手と言うことになる。もちろんまだレギュラー歴一年の選手。これからさらにレベルアップして凡打率も下がることだろう。
21位 .6904 大島裕行<L>
22位 .6898 脇谷亮太<G>
23位 .6888 英智<D>
24位 .6886 田上秀則<H>
25位 .6881 武内晋一<Ys>
26位 .6878 亀井義行<G>
27位 .6854 野本圭<D>
28位 .6849 大野奨太<F>
29位 .6839 松元ユウイチ<Ys>
30位 .6835 細川亨<H>
21位から30位の間には、打撃を売りにしなければならない選手が目立つ。凡打率が高い選手というのは単に打率の低い選手の裏返しではない。例えば打率は低いが本塁打が多いという確実性の低い選手でも相手投手の警戒が厳しく、四球を稼げる選手なら凡打率は低くなる。犠打、犠飛も凡打率を下げる要素である。長距離砲と期待されて入団した大島裕行は確実性が低くてなおかつ四球で出るケースも少ないと言えよう。脇谷亮太は昨年、シーズン開幕からスタメン二番打者の座を勝ち取ったが、犠打や四球が多い選手とは言えないから凡打率が高い。26位の亀井義行は前回の調査では通算60打席以上の選手で凡打率が第6位。外野手では最上位だった。2009年にはジャイアンツ打線でクリーンアップを打つほどのブレークを果たしたが、その後二年間低迷。鉄壁の守備力を誇る外野手でありながら一塁、三塁の守備を兼任させられ、今春のキャンプでは二塁守備に挑戦とも報じられた。敗戦処理。的には亀井は外野オンリーで勝負させたい選手なのだが、この凡打率では内外野掛け持ちの扱いにされても仕方あるまい…。
なお30位までに十二球団で唯一ゴールデンイーグルスの選手が登場しない。ゴールデンイーグルス所属で446打席以上で凡打率が最も高いのは38位の牧田和久で.678。
なお、ここまで外国人選手が出てきていない。凡打率が高い外国人選手は昨シーズン限りでクビになっているからと思われる。外国人選手で凡打率が最も高いのは先述の昨年のセ・リーグの凡打率1位のウラディミール・バレンティン。45位に登場で.676。49位のクレイグ・ブラゼルが.674、そして意外やアレックス・ラミレスが.653で83位に登場。ちなみにラミレスの1ランク上の82位がラミレスより2毛高い村田修一。ラミレスがジャイアンツから自由契約となってベイスターズに移籍し、村田がベイスターズからFAでジャイアンツに移籍したことからこの両選手の入れ替わりを疑似トレードの様に語るファンもいるが、その視点でこの両選手を比較するとどっちもどっちと言える<苦笑>。ただ村田は2011年セ・リーグ凡打率第3位に加え、得点圏打率がセ・リーグ最低の.196。新天地で変われるだろうか…
なお、このランキングは通算446打席以上の現役野手に限ったが、現役の投手で通算446打席以上経験しているのが5人いる。石井一久、石川雅規、川上憲伸、三浦大輔、山本昌。この中で最も凡打率が高いのは.800の石井一。最も凡打率が低いのは.696の山本昌。先述のランキングを見直すと、山本昌より凡打率が高い野手が1位の的場から15位の飯山裕志までの15人。これは不甲斐ない。山本昌に限らず投手は打席に立ってもその後の投球重視ではなっから打つ気が無い打席もあるはずだから、本気で打ちに行った打席に限定したら凡打率は下がるはずだから…。
ところで、ここまでお付き合いいただいた方の中には既にお気付きの方もいると思うが、この計算で逆に凡打率が低い選手は、チームに貢献できない打席の確率が低い、つまり高い確率でチームに貢献する結果の打席をしている選手ということになる。
同じ基準で凡打率ワースト10を選ぶとこうなる。
1位 .5958 松中信彦<H>
2位 .5966 カブレラ<H>
3位 .5969 糸井嘉男<F>
4位 .6008 田中浩康<Ys>
5位 .6010 小笠原道大<G>
6位 .604 関本賢太郎<T>
7位 .606 内村賢介<モ>
8位 .6065 栗山巧<L>
9位 .6067 和田一浩<D>
10位 .6097 金本知憲<T>
松中はこの調査の五年前の時も凡打率ワースト1位だった。ワースト2位のアレックス・カブレラとともに今季のホークスでは新外国人のウィリー・モー・ペーニャ次第でベンチスタートの試合が多くなりそうだが、何とももったいない話だ。しかし通算打率ではほとんど大差ないカブレラとラミレスで凡打率でこうも差が付くのが意外だ。しっかりと選んで四球を得るよりもバットが届く範囲の甘い球には手を出してしまいそうなカブレラの方が凡打率が低い、ましてや全体で2位とは意外だ。
ラミレスとカブレラはともに2001年から日本プロ野球でプレーしている。二人の凡打率に関係する通算成績をリストアップして比較してみよう。
通算成績
ラミレス 凡打率.653 6509打席 1850安打 犠打0犠飛57 282四球 68死球 打率.303
カブレラ 凡打率.597 5228打席 1362安打 犠打0犠飛23 667四球 57死球 打率.304
敗戦処理。の印象とは全く逆だった。カブレラはラミレスの倍以上も四球を選んでいるのだ。
敗戦処理。が凡打率を調査して当blogに掲載するのは五年ぶり二回目。前回、総括して下記の一文を入れた。
あらためてこの調査結果を振り返ると、實松の貧打ぶりが際立っている。60打席以上としたため10位になったが、500打席以上なら断トツの1位だ。実質的には實松が最も打てない現役選手といっても過言ではないかもしれない。
鎌ヶ谷を始め、イースタンの各球場では「打てないキャラ」でいじられるのが定着となっている。しかし昨年の3月にジャイアンツに移籍してから、残念ながらそのキャラがジャイアンツファン、特にジャイアンツの二軍戦を観戦するファンに浸透しているとは言い難い。これが打撃開眼で浸透しないというのならまだしも、単に存在感が薄いというだけなのが淋しいところだ。
と書いたが、五年経過しても凡打率で1位を争うレベルで変わりないところが實松らしいといえば實松らしい。今季はジャイアンツではかつての名捕手森昌彦が長く背負っていた「背番号27」を付けることになった。
FA移籍の杉内俊哉が「背番号18」を付けることになった事ばかり新背番号に関しては取り沙汰されるが、ジャイアンツで森以後、捕手が「背番号27」を付けるのは昨年、一昨年の市川友也以来二人目。阿部慎之助が正捕手であることはそうそうには揺るがないが、今季も實松らしさを存分に発揮して欲しい。もちろん「背番号18」の杉内と「背番号27」の實松がバッテリーを組めばジャイアンツでは堀内恒夫と森昌彦以来である。
凡打率全調査はこちらから「2011BONDARITU.xls」をダウンロード
最も打てない現役野手は誰だ?-現役選手凡打率大調査 (拙blog2007年1月6日付)
【参考資料】
「2012ベースボール・レコード・ブック」ベースボール・マガジン社刊
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
肉うどん様、初めまして。コメントをありがとうございます。
> はじめまして。肉うどん、と申します。「吉川光夫」でこのブログに到達しました。同年代の方とお見受けいたします。これからもよろしくお願いいたします。
こちらこそよろしくお願いいたします。ちなみに私は年齢不詳です。
> 凡打率、楽しく拝見いたしました。やはり、実松でしたか。でも、背番号が小さくなって、しかも、森さんの番号を貰うなんて評価されているのでしょうか。
ん?實松2位、的場1位ですよ。
> 個人的には捕手=打てなくてよい、とは全く思っていません。そこそこ打てて好リードの捕手を欠いて常勝チームになった例を殆ど知りません。
確かにそうですね。打順は下位でも、ここと言う時には役に立つ、そんな選手が多いですね。しかしそれを基準にされたら實松は致命的ですね<笑>。
投稿: 敗戦処理。 | 2012年4月10日 (火) 19時53分
はじめまして。肉うどん、と申します。「吉川光夫」でこのブログに到達しました。同年代の方とお見受けいたします。これからもよろしくお願いいたします。
凡打率、楽しく拝見いたしました。やはり、実松でしたか。でも、背番号が小さくなって、しかも、森さんの番号を貰うなんて評価されているのでしょうか。栄光のドラ1捕手、頑張って欲しいものです。
個人的には捕手=打てなくてよい、とは全く思っていません。そこそこ打てて好リードの捕手を欠いて常勝チームになった例を殆ど知りません。
投稿: 肉うどん | 2012年4月 9日 (月) 23時49分