斎藤佑樹を開幕投手に指名したことが問題なのではなく…
19日、ファイターズの栗山英樹監督が今月30日に行われるパ・リーグ公式戦開幕戦、対ライオンズ戦の先発投手に斎藤佑樹を指名したことを公表した。
昨年まで五年連続で開幕投手を務めていた「大エース」ダルビッシュ有がポスティング移籍で退団し、誰がその座を奪うか注目されていたが、おそらくは多くのファンがイメージしたであろう武田勝ではなく、二年目の斎藤佑樹だった。
「斎藤が開幕投手で大丈夫か?」、「武田勝がかわいそう」などファイターズファンからも疑いの声が出ている様だ。
などファイターズファンからも疑いの声が出ている様だ。
だが、もうすぐ公式戦開幕を迎えるファイターズに対して今敗戦処理。が最も心配していることと比べれば、開幕投手が斎藤なのか武田勝なのかということは大した問題ではない。
(写真:早々と開幕投手を斎藤佑樹と発表した栗山英樹監督。2012年3月撮影)
勝利数でこそボビー・ケッペルに劣っているものの、防御率でケッペルに大差を付けている武田勝が開幕投手の本命と普通にファイターズファンは考えているだろう。だが栗山英樹監督はその武田勝ではなく、斎藤佑樹を指名した。
まずはファイターズで昨年先発で勝利を挙げた投手を列挙する。
ケッペル 26試合14勝6敗 防御率3.22
ウルフ 26試合12勝11敗 防御率3.60
武田勝 25試合11勝12敗 防御率2.46
斎藤佑樹 19試合6勝6敗 防御率2.69
糸数敬作 5試合2勝1敗 防御率4.50
八木智哉 3試合1勝1敗 防御率4.20
【参考】
ダルビッシュ有 28試合18勝6敗 防御率1.44
「大エース」が抜け、この中から選ぶと考えるのが普通であろう(今季のローテーション入りが期待される吉川光夫は昨年未勝利なので除外)。誰を開幕投手に選ぶかは監督が、チームとして開幕戦をどう位置づけしているかによる。
開幕戦を年に一度の特別な試合と見るか、144試合ある公式戦の中の単なる1試合と見るか、あるいは開幕からの2カードか3カードを一区切りと考えてローテーションを組むなど、いろいろな考え方があるだろう。
対戦相手のライオンズで開幕投手と予想されるのは一般的には涌井秀章。オープン戦での結果が完璧ではないらしく、まだ渡辺久信監督から景気の良い言葉は出ていない様だが、本命ではあろう。涌井に次ぐ安定感の岸孝之とベテランの西口文也のコンディションが悪く開幕に間に合うか微妙らしい。ファイターズに相性の良い帆足和幸がFA移籍で去ったため、他には石井一久、牧田和久、ルーキーの十亀剣あたりが開幕ローテーションに加わりそうだ。そうなると安定感随一の涌井との勝負で武田勝を避け、斎藤をぶつけておいて三連戦の二戦目、三戦目を重視という考えに栗山監督が至っても不思議ではない。
栗山監督は監督就任会見で自分の目指す監督像として、三原脩元監督を挙げた。ジャイアンツや西鉄ライオンズ、大洋ホエールズで優勝監督となった名将で日本ハムが球団を買収した時の初代の球団代表だ。栗山監督の背番号80は三原元監督が最後に監督を務めたヤクルトアトムズ時代の背番号に因んだという。その三原元監督は「三原魔術」と呼ばれる奇策を数々的中させたという。栗山監督が三原元監督を理想とするならば、オーソドックスな発想では考えられない策を講じても不思議ではないと思う。
もちろん、斎藤で涌井に対して勝ち目がないとは敗戦処理。も言わない。ただ一般的な開幕戦を特別視する傾向からすると、斎藤では開幕投手は荷が重いと普通のファンは考えるだろうし、“本命”の武田勝のモチベーションの低下をファンが心配するのもよくわかる。だから斎藤の開幕投手抜擢、武田勝第二戦先発なら斎藤と武田勝の当事者二人だけでなく、チームの全員、少なくとも一軍選手全員に対してどういう意図で武田勝でなく斎藤で開幕戦に臨むのかを説明し、意思の疎通を図らねばならないだろう。
開幕投手にあっと驚く人選というと、最近では2004年のドラゴンズの川崎憲次郎や、1996年のマリーンズの園川一美が思い出される。園川に関しては拙blog3月5日付 週刊ベースボール編集長の「予告打順」案 で触れた様に、予告先発ならぬ予告スタメンだったため、完全に裏をかかれた相手ホークスの王貞治監督は激怒したが、開幕投手に定義や資格はないのだから、相手の開幕投手にケチをつけるのは筋違い。ただ川崎や園川と今回の決定的な違いはまだ約二週間先という時点で発表したと言うこと。これが昨年までのダルビッシュなら、契約更改を済ませた翌日に梨田昌孝前監督が「予告」しても驚かないが、斎藤先発をこんなに早く公表する理由があるのかというのは確かに謎だ。
一説によると開幕戦のチケットの売れ行きが伸び悩んでいるから発表を早めたとのことだが…。
実は敗戦処理。は個人的にはケッペルを開幕投手に推したかった。ダルビッシュのいない今シーズン、ファイターズは「エース」不在の状態で一年間を戦わざるを得ない。ダルビッシュの代役が出来る投手を獲得する事が不可能なのは間違いないが、トレードなり新外国人の投手も獲得していない。ボビー・スケールズを解雇した代わりの新外国人は投手でなく野手のターメル・スレッジだった。となると先発ローテーション投手で力を合わせて皆で精度を高めるしかない。ならばダルビッシュに次ぐNo.2と誰もが見なすであろう武田勝に開幕投手を含めローテーションの柱になってもらうしかないと普通は考えるだろうが、敗戦処理。は、武田勝は現状のファイターズの先発ローテーション投手の中でNO.1であることは認めるが「エース」にはなり得ないと個人的には思っている。
印象でものを言ってしまって申し訳ないが、同じ勝つのでもだいたい六回まで投げてリリーフを二人はさんで武田久が最後を締めくくるという印象がある。昨年の武田勝は11勝だったが、勝利投手になった11試合の平均投球イニングは6.79だから実際には平均で七回の二死までは投げている計算になるが、「大エース」ダルビッシュは18勝した試合の平均投球イニングが8.39。敗戦投手になった6試合の平均ですら8イニングだ。当然、先発投手が長いイニングを投げれば毎試合ベンチ、ブルペンで待機しているリリーフ陣の負荷を軽くできる。そこまで成し遂げているから「大エース」なのだが…。
ダルビッシュが別格なのはわかるにしても比較されるのは避けたいところ。それならば武田勝より勝ち数は多いケッペルを開幕戦に先発させてローテーションの一番手に回した方が、見ているファンにもダルビッシュの穴を特定の投手で埋めようと思っていないことが明らかになる。
因みにケッペルの14勝の平均投球イニングは武田勝に遜色ない6.71。斎藤は5.89、ブライアン・ウルフは5.78になる。どの投手も中継ぎ、セットアッパーを経て武田久にたどり着くことになる。
昨年のシーズン終盤の失速は得点力の低下による面が大きかったと思うが、見方を変えればリリーフ陣がパンクしてパニックにならなかったのが不思議なくらいだ。いわゆる「勝利の方程式」組では宮西尚生が終盤に調子を崩したくらいだった。それも石井裕也の健闘でおおむねカバー出来た。
ダルビッシュが抜ける今季はリリーフ陣に頼る比重がさらに増す。毎試合ブルペンで待機するリリーフ陣は何年も連続で好成績を残すことが難しいことは歴史が証明している。そもそも武田久ですら、まだ二年連続でクローザーとして安定した成績を残したことがない。
その辺を考えれば、スケールズの代わりの外国人はウルフやケッペル並みの先発投手であるべきだろう。スレッジを獲るなというのではない。マイカ・ホフパワーを残したのが妥当なのかということだ。もっとも、ダルビッシュのポスティング・マネーをもってすれば外国人枠のだぶつきくらいは痛くもかゆくもないはずだ。今からでも遅くない。メジャーリーグの開幕登録に漏れた投手の中から日本向きな投手を獲得して欲しいものだ。
ダルビッシュの抜けた穴をどうするのかということの具体的な方策が見えてこないまま開幕を迎えることの方が問題であって、開幕投手を誰にするかは重要ではあるが、それに比べれば大した問題ではないと思う。
ただ、武田勝は今年34歳になる。最初で最後の開幕投手のチャンスかもしれない気がするのが…
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ラケル様、コメントをありがとうございました。
> 確かに、ダルビッシュの穴を埋めるより、極端に言えば運任せで開幕投手を斎藤佑樹に決めてしまった所があると思います。
運良く斎藤は完投勝利しましたが、これからの試合采配をその感覚で行われるのは恐いですね。
うーん、栗山監督は現時点では不思議な監督だと思っていますが、斎藤が完投勝利したのは運では無いと思いますよ。
> ツィッターも見ていますが、仕事中に書き込める環境なのでしょうか。
いえ、呟いているのは昼休みと、自分の裁量で業務に支障のない範囲で取れる休憩時間のみ、仕事場には持ち込めない私物の携帯電話やスマートフォンで呟いています。
投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月31日 (土) 22時39分
確かに、ダルビッシュの穴を埋めるより、極端に言えば運任せで開幕投手を斎藤佑樹に決めてしまった所があると思います。
運良く斎藤は完投勝利しましたが、これからの試合采配をその感覚で行われるのは恐いですね。
ところでパソコンをWindows 7でメモリ8GBの機種にしたので、敗戦処理。さんのブログを表示させてもネット回線が落ちなくなりました。
ツィッターも見ていますが、仕事中に書き込める環境なのでしょうか。
投稿: ラケル | 2012年3月31日 (土) 17時22分
チェンジアップ様、毎度ありがとうございます!
> だから、武田第二戦は理解するけど、斎藤ってのはね。武田がエースとしても、2,3番手ぐらいの先発を用意すべきでしょう。
開幕戦云々についてはノムさんが「144/144」と言い、落合さんが「1/144」と言ったりしますが。
個人的には(理由は異なりますが、2,3番手にあたる)ケッペル推しです。
ノムさんや落合が監督なのではなく、三原脩元監督を信奉する栗山=卓越した野球理論の持ち主=英樹が監督なので、私の様な凡人には理解出来ない野球をするのかもしれません<笑>。
> どうしても、彼だと「客寄せ?」という目で見られてしまいますしね。そこも考慮しないといけない。
とりあえず、今年は斎藤をじっくりと見てみたいと思います。
私もです。
投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月23日 (金) 01時20分
#lovefightersのひとり様、初めまして。コメントをありがとうございます。
> 個人的に新外人投手の獲得は反対です。
主力3人(勝、ケッペル、ウルフ)がいつまで日ハムにいるか分からない以上、斎藤以外にも一軍ローテを任せられる投手を育てる必要性があると思います。
基本的にはそうあるべきだと思います。
> よく薄い薄いと言われる日ハム先発陣ですが(事実薄い)、「大エース」ことダルビッシュが抜けたことによる危機感と薄いからこそ先発ローテに割り込める可能性を狙って、鎌ヶ谷の投手たちが発奮してくれることを私としては期待したいです。
「大エース」がいた昨年でも、別に先発ローテーション枠が埋まりきっていた訳ではありません。吉川、八木、糸数、中村…チャンスがあったにもかかわらず、定着出来るものはいませんでした。
残念ながら、昨年もチャンスがあったにも出来なかった訳で、それで今年発奮して…と期待したいのですが、現実的に、計算できる試合を作って行くには外国人先発投手獲得が必須というのが私の意見です。
そもそもはスレッジとホフパワーのポジションがダブり、野手の二人の外国人が同時にラインアップに並ぶと言うことが考えにくいと言うことがあります。外国人助っ人に代打要員を頼むくらいなら、一軍の四人の外国人枠を野手1+投手3にしてもいいんじゃないか、という発想から来ています。
私も #lovefighters の一人でありますが、同時に #lovekamagaya の一人でもあります。別エントリーで吉川光夫を鎌ヶ谷出入禁止にしたいと書きましたが、その吉川に次ぐファームの主力投手が、吉川と差が開いている様に思えます。土屋も中村も、期待していますがまだもうちょっと時間がかかると思います。
まあそういった投手を観るのが楽しみで、はるばる鎌ヶ谷まで足を運ぶのですが…。
理想と現実の狭間でしょうか…若手が急成長してくれればそれが一番ですが、ケッペル、ウルフ級の外国人先発投手がもう一人いたら…極端なことを言えばリリーバーでもいいと思います。
ちょっと贅沢ですかね<笑>?
今後とも拙ブログをよろしくお願いいたします!
投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月23日 (金) 01時12分
こんばんは。何だか、煽ったみたいでm(u_u)m。
栗山理論は理解は出来ますけどね。エース同士のぶつかり合いを避けたいという。
武田が投げる試合は確実に勝ちたいということでしょ?
広岡@ヤクルト監督時代
「巨人に勝っても、それ以外に勝っても、一勝は一勝。巨人に良い投手をぶつけるという総力戦をしても、その反動があったりする」とかなんとか。
それは正しい。
だから、武田第二戦は理解するけど、斎藤ってのはね。武田がエースとしても、2,3番手ぐらいの先発を用意すべきでしょう。
開幕戦云々についてはノムさんが「144/144」と言い、落合さんが「1/144」と言ったりしますが。
斎藤を先発させることに計算や勝算が経ってるのなら、いいですけどね。
どうしても、彼だと「客寄せ?」という目で見られてしまいますしね。そこも考慮しないといけない。
とりあえず、今年は斎藤をじっくりと見てみたいと思います。
投稿: チェンジアップ | 2012年3月22日 (木) 21時41分
個人的に新外人投手の獲得は反対です。
主力3人(勝、ケッペル、ウルフ)がいつまで日ハムにいるか分からない以上、斎藤以外にも一軍ローテを任せられる投手を育てる必要性があると思います。
そのためにも八木や吉川、森内…等々といった面々を一試合でも多く先発登板させる必要があり、先発ローテを埋める3人目の新外人投手の獲得は短期的には+となる可能性がありますが、長期的には更なる先発不測を招きかねない危険があります。
よく薄い薄いと言われる日ハム先発陣ですが(事実薄い)、「大エース」ことダルビッシュが抜けたことによる危機感と薄いからこそ先発ローテに割り込める可能性を狙って、鎌ヶ谷の投手たちが発奮してくれることを私としては期待したいです。
投稿: #lovefightersのひとり | 2012年3月22日 (木) 01時50分