東日本大震災復興支援ベースボールマッチ
今日3月10日はファイターズスタジアムでは教育リーグとともに鎌ヶ谷ファイターズファンフェスタが開かれるから、観戦がてら鎌ヶ谷に出向き、そこから東京ドームにとも考えたが、昼にも社会人と大学生の試合があると知り、昼夜東京ドームでの観戦に切り替えた。
正直、個人的にも震災直後と比べるとだいぶ復興支援という感覚がやや薄れているのも事実。今日はチケット収益の一部も復興支援に向けられるそうなので、社会人選抜対大学選抜の試合と、侍ジャパン対プロ野球台湾代表の試合双方のチケットを購入し、観戦することとした。大学野球も社会人野球もほとんど選手を知らない。さらに言えば台湾の野球も。それでもチケットを購入し、グッズを買ったりすればそれが微力ながら復興支援に繋がるのだと思えば、鎌ヶ谷断念もやむを得まい。
そして先に行われた社会人選抜対大学選抜では数少ない敗戦処理。が知っている大学生、東浜巨(亜細亜大)が先発した。
昨年右肘を痛めた影響でまだ本調子ではないと言われているが、案の定初回に先頭の田畑秀也(JX-ENEOS)に内野安打を打たれると、一死から落合成紀(JFE東日本)に左中間を深々と破られて1点を献上。結局2イニングを投げて1失点。奪三振は1つだけ。良かったのか悪かったのかわからないうちにマウンドを降りた。
東浜が所属する亜細亜大は明日は沖縄で復興支援試合を行う。地元出身の島袋洋奨を擁する中央大との対戦。島袋と並ぶ二大目玉となる東浜は明日に備えたか…。
東浜と対照的に、社会人選抜の先発、畠山太(富士重工業)が緩急自在の投球で大学選抜打線を翻弄した。
ストレートとスローカーブの配合が絶妙で、三番から六番までの四連続奪三振を含め、三回二死までパーフェクト。あと一人抑えてお役ご免かと思ったら九番打者を迎えたところで降板した。
ほとんどの選手の名前を知らない中、試合前の選手紹介でスタンドをどよめかせた選手が東浜と、東海大の伏見寅威捕手以外にもいた。
社会人選抜の「七番・DH」でスタメン出場した ながしまかずしげ だ。HONDAに所属する内野手だ。長島一成と書くが、場内アナウンスでは「ながしまかずしげ」だからスタンドがどよめいた。
この選手、名前がすごいだけではない。四回裏の第二打席、中條健佑(東日本国際大学)から狙い澄ましたように振り抜いた打球は見事にライトスタンドに一直線。
これがスリーランホームランとなって4対0と突き放した。遠くに飛ばすセンスは長嶋一茂に負けず劣らずかもしれない。
ちなみに「長島一成」というとこの選手よりも有名なのが、かつての共同石油の社長で、後に日本鉱業と合併して日鉱共石、ジャパンエナジーの社長をも務めた実業家の方。この人も「ながしまかずしげ」と読む。スワローズ、ジャイアンツ時代の長嶋一茂と同様に、油を売るのがうまかったに違いない…。
閑話休題。この長島の一発をきっかけに試合は一方的になり、社会人選抜は五回裏にも佐々木大輔(東京ガス)の左中間タイムリー二塁打で2点を追加。6対0とした。
社会人と大学生の力の差といってしまえばそれまでだが、大学選抜は社会人選抜の小刻みな投手リレーの前にほとんど走者すら出せない。七回表に一死から多木裕史(法政大)が左中間に二塁打を放ち、続く四番の山川穂高(富士大)がライト線に安打を放つが、ホームを狙った多木をライトの野坂亮太(かずさマジック)がレーザービームでホームで刺し、得点ならず。続く八回表の二死一、二塁のチャンスも逃すと、結局7対0で社会人選抜の圧勝だった。
【10日・東京ドーム】
大 000 000 000 =0
社 100 320 01× =7
大)東浜(亜細亜大)、萩野(東北福祉大)、中條(東日本国際大)、小室(立教大)、三嶋(法政大)、西宮(横浜商科大)-伏見(東海大)、吉田(立正大)
社)畠山(富士重工業)、鶴田(三菱重工横浜)、大山(セガサミー)、野田(東芝)、磯部(JX-ENEOS)、石田(住友金属鹿島)、末永(NTT東日本)-石川(JR東日本)、小澤(日本通運)
本塁打)長島(HONDA)3ラン(中條・4回)
東北福祉大とか、JR東日本東北とか、日本製紙石巻の所属選手に特に大きな拍手が贈られるかと思ったが特にそういう傾向はなかった。ただ、観客は夜の部とは較べものにならないほど少なかったがスタンドのあちこちから、大学野球ファンや社会人野球ファンからの選手評が聞こえてくるのはありがたかった。
試合の結果から導かれるのではなく、見た目で社会人の方が大学生より一回り上の動きをしている様に見えた。拙blog3月2日付 8年前にも社会人選抜と大学選抜の対戦があった。-豪華ドラフト候補がジャイアンツ球場に集結!!【回想】敗戦処理。生観戦録-特別編 2004年(平成16年)編 で触れた2004年の社会人選抜と大学選抜の試合からは多くのプロ入り選手が生まれた。今日の両選抜チームからも将来のプロ野球選手が多数出るのか、楽しみだ。
そして、侍ジャパン対プロ野球台湾代表の一戦。NPBを代表する強者達が、第二回WBC以来、侍ジャパンのユニフォームに身を包んだ。
敗戦処理。は台湾の野球にも疎い。今日のメンバーがどの程度のレベルなのか全くわからない。だから今日の結果が侍ジャパンの選手達にどの程度の手応えをもたらせるものかわからない。初めに書いた様に私が払った代金の一部が復興支援に充ててもらえればそれで充分なのだ。
国際試合らしく、国歌独唱から始まる。鈴木雅之が君が代を熱唱した。
個人的にはRATS&STARでの出演を願いたいところだが、それは叶わぬ夢…。だが重厚な感じの鈴木雅之の熱唱を聞くと、AKB48じゃなくて…以下自粛。
侍ジャパンの先発、田中将大は一回表に一死から藩武雄にレフトスタンドまで運ばれ先制点を与えるが、その後を無難に抑える。
侍ジャパン打線はその裏、プロ野球台湾代表の先発、元ゴールデンイーグルスの林英傑(インチェ)を攻めて本多雄一の安打、糸井嘉男の四球から作った一死一、三塁から四番中村剛也のレフト前タイムリーで同点。
二死から中島裕之がセンター前に渋く落とし、あっさりと2対1と逆転した。
侍ジャパンは三回裏に栗原健太の打った瞬間にそれとわかるツーランホームランで2点を加えて4対1とすると、その後も小刻みに追加点を重ね、プロ野球台湾代表を突き放す。四回裏あたりから野手も次々と交代。五回裏の攻撃では前の打席で本塁打を放った栗原に代えて中田翔がスタンバイ。この回の先頭、おかわり中村と夢のツーショット。
敗戦処理。もううるうる…「俺の育てた中田」がよくぞここまで…
中田は二度目の打席となった六回裏、一死満塁から三塁線を破るとどめの2点タイムリー。
こういう試合だから、あまり贔屓チームの選手に偏った見方はしたくないものだが、そうは言ってもやはり贔屓チームの選手に。
六回表にマウンドに上がった斎藤佑樹へのスタンドからのフラッシュの嵐には驚いた。佑ちゃん人気はまだ健在の様だがスタンドからのフラッシュ撮影はプレーの妨げになることはあっても写真撮影の効果には繋がらないのでもし当エントリーを読んでいる方で野球場の観客席からフラッシュ撮影をされている方がいたら自重願いたい。
そして、斎藤佑樹と同等、あるいはそれ以上にフラッシュの嵐を浴びたのが最終回にマウンドに上がった浅尾拓也。
昨年のセ・リーグMVP獲得で風格が増したか、貫禄の三者凡退で試合終了。侍ジャパンが9対2と圧勝した。
【10日・東京ドーム】
台 100 000 100 =2
侍 202 113 00× =9
台)林英傑、王鏡銘、沈鈺傑、曽兆豪、林其緯、耿伯軒、許銘倢-高志綱、鄭達鴻
侍)田中将大、内海哲也、吉見一起、斎藤佑樹、澤村拓一、平野佳久、浅尾拓也-嶋基宏、細川亨、炭谷銀仁朗
本塁打)藩武雄ソロ(田中・1回)、栗原2ラン(王鏡銘・3回)、林泓育ソロ(澤村・7回)
侍ジャパンの秋山幸二監督に勝利監督インタビューが始まるかという時、耳を疑った。
ライトスタンドの応援団が勝ちどきを上げ、「ニッポン!ニッポン!」とコールを初め、やがてサッカー日本代表チームが国際試合で勝利した時にサポーター達が歌う日本代表ソングを歌い出した。
復興試合とは言え、試合に勝てば嬉しいから盛り上がるのは勝手だが、サッカーのワールドカップ予選の様に相手国を倒して先に進むという試合ではない。冒頭にも書いた様に台湾側が日本の復興のために一肌脱いでくれた試合だ。当然台湾の各チームも開幕を間近に控えた中で主力選手を選抜して日本に送り出しているのだろう。絶大な協力をしてくれて実現した復興支援試合の意義を残念ながらはき違えている者が若干ながらいたようだ。
彼らは秋山監督へのインタビュアーが台湾代表チームに言及してスタンド全体から大拍手が送られるまで台湾チームへの感謝の気持ちをパフォーマンスで示すことはなかった。
本塁打を放った栗原のヒーローインタビューが行われ、その後もパフォーマンスを繰り返すライトスタンド。
マウンド付近で両軍選手が一同で記念撮影するのを見てようやく自重した様だったが、最後に嫌な気分にさせられた。
しかし、その後に再び台湾代表ナインがグラウンドでスタンドのファンに挨拶。主に台湾代表を応援する集団がいた三塁側スタンドだけでなく、冒頭の写真の様にマウンドを360度囲んで全方位のファンに挨拶をした。
頭を下げなければならないのはどっちだ?
最後は水をさされかけたが、素晴らしい一日を堪能した。野球の底力はやはりあると思うし、まだまだ続く復興支援をこれからも続けるモチベーションを保てるようなパワーを得た一日になったと個人的にも思えた。
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コメント
チェンジアップ様、毎度どうも。コメントをありがとうございました。
> 例えば、これが全日本オールスターみたいなチーム名で、各チームのユニフォーム。それこそ、斉藤が日本ハムのユニフォームで出るなら、こういう批判は少なかったと思うんですよ。
ああ、それは気がつかなかったですね。
まあ斎藤がどうのというなら、中田翔だってまだ日本代表は早いと思うし、出ていなければいけない選手がけっこう選ばれていないとか、1試合限定のチャリティーマッチと言うことで見ている方も「日本代表」に対する敷居を低くしていた面もあると思いますよ。
> 侍ジャパンにしちゃったから、こうなった。
監督とかの人選もオールスター式ですしね。
この辺をキチっとしておかないと、いつも物議を醸すことになるでしょうね。
そもそも来年のWBCに出場するかしないのかもまだはっきりしていないですからね。どうなることやら…
投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月14日 (水) 22時55分
こんにちは。再びです。斉藤が可哀想に思うんですよね。
例えば、これが全日本オールスターみたいなチーム名で、各チームのユニフォーム。それこそ、斉藤が日本ハムのユニフォームで出るなら、こういう批判は少なかったと思うんですよ。
侍ジャパンにしちゃったから、こうなった。
監督とかの人選もオールスター式ですしね。
この辺をキチっとしておかないと、いつも物議を醸すことになるでしょうね。
投稿: チェンジアップ | 2012年3月14日 (水) 17時07分
西清治様、コメントをありがとうございました。
> わたしも両方の試合を生観戦しました。昨年のアジアシリーズも観戦していて、統一ライオンズの選手はそこで見てますが、今回とアジアシリーズ両方に出場していた選手は少なく、スタメンでは2番の潘武雄、7番の劉芙豪、8番の高志鋼ぐらいです。4球団すべてから万遍なく選んだのかも知れません。
さすが、アジアシリーズに遠征された西さん!
> 特にホームランを打った潘武雄選手は、ライオンズの主力選手で、アジアシリーズでは主に 3番を打っており、11打数4安打の成績でした。
やっぱり逸材なのですね。11日のスポーツニッポンに、田中が打たれたという視点で「まさかの一発」と書いてあり、それはないだろうと思いました。
> 投手に至っては、アジアシリーズでは統一ライオンズの先発はすべて外国人だったので、この日の台湾人投手のことはよくわかりません。辛うじて知っていたのは、2番手で出てきた王鏡銘ぐらいです。
ああなるほど。助っ人への依存度が高いのですね。
それにしても、開幕前のこの時期に日本に集まってくれて本当に感謝ですね。
1999年の大地震で被災した際に日本からの支援に感謝しているから今回は是非にと名乗り出たそうですが、本当にありがたいですね。
投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月12日 (月) 22時25分
敗戦処理。さん、おはようございます。
わたしも両方の試合を生観戦しました。昨年のアジアシリーズも観戦していて、統一ライオンズの選手はそこで見てますが、今回とアジアシリーズ両方に出場していた選手は少なく、スタメンでは2番の潘武雄、7番の劉芙豪、8番の高志鋼ぐらいです。4球団すべてから万遍なく選んだのかも知れません。
特にホームランを打った潘武雄選手は、ライオンズの主力選手で、アジアシリーズでは主に 3番を打っており、11打数4安打の成績でした。
投手に至っては、アジアシリーズでは統一ライオンズの先発はすべて外国人だったので、この日の台湾人投手のことはよくわかりません。辛うじて知っていたのは、2番手で出てきた王鏡銘ぐらいです。
あまり参考になりませんが、ご参考までm(_ _)m
投稿: 西清治 | 2012年3月12日 (月) 08時23分
チェンジアップ様、コメントをありがとうございました。
> こんにちは。私はこないだ久しぶりに球場で観戦しました。広島対巨人のOP戦。
今年は公式戦も観たいですね。
そうですか。ちなみにお住まいはどちらですか?
> >だが重厚な感じの鈴木雅之の熱唱を聞くと、AKB48じゃなくて…以下自粛。
> 気になる表現ですね(;^_^A。何となく分かりますが、やっぱ上手いですよね。
昨日の様な復興支援試合だとか、開幕戦などは荘厳な雰囲気の中で行いたいですからね。鈴木雅之は良い人選だったと思います。
RATS&STARだったら…再度自粛
> 侍ジャパンにこういうガチな人がいるというのがあるわけで。その一方で、NPBはそういう意識がないんですよね。
> 今回はチャリティーだから、なんだけど。
侍ジャパンにガチな人達は「何故、斉藤を選ぶ!?」というのがあるんですよね。
斎藤は…チャリティーだからですよ<笑>。
あのライトスタンドにガチな人がどれだけいたかわかりませんが、私には条件反射ではしゃいでいる様に映りました。
> 侍ジャパンというものにダブルスタンダードをやってるという印象が私にはありますよ。
おーっとそれは近々別エントリーで…
投稿: 敗戦処理。 | 2012年3月12日 (月) 00時39分
こんにちは。私はこないだ久しぶりに球場で観戦しました。広島対巨人のOP戦。
今年は公式戦も観たいですね。
>だが重厚な感じの鈴木雅之の熱唱を聞くと、AKB48じゃなくて…以下自粛。
気になる表現ですね(;^_^A。何となく分かりますが、やっぱ上手いですよね。
>ライトスタンドの応援団が勝ちどきを上げ、「ニッポン!ニッポン!」とコールを初め、やがてサッカー日本代表チームが国際試合で勝利した時にサポーター達が歌う日本代表ソングを歌い出した。
台湾への感謝云々は別として。
侍ジャパンにこういうガチな人がいるというのがあるわけで。その一方で、NPBはそういう意識がないんですよね。
今回はチャリティーだから、なんだけど。
侍ジャパンにガチな人達は「何故、斉藤を選ぶ!?」というのがあるんですよね。
侍ジャパンというものにダブルスタンダードをやってるという印象が私にはありますよ。
まあ、私はWBCも侍ジャパンも否定的な人間ですけどね。
NPBはもうちょっと彼らのことを考えるべきでは?と思いますけどね。
投稿: チェンジアップ | 2012年3月11日 (日) 11時28分